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INTERVIEW

2021.05.06

緒方恵美×草野華余子、“芝居をしない”“歌わない”のがプロの技である理由――アルバム『劇薬 -Dramatic Medicine-』スペシャル対談

緒方恵美×草野華余子、“芝居をしない”“歌わない”のがプロの技である理由――アルバム『劇薬 -Dramatic Medicine-』スペシャル対談

ポストコロナ時代のライブエンターテイメントの意味

――ライブのお話になったことで1つ伺いたいことがあります。緒方さんは2020年のコロナ禍において、いち早くオンラインライブを開催されて、その後も様々な形でステージに立たれました。また草野さんは改名後初の1stバンドワンマンライブが昨年から何度も延期になり、ようやく2021年7月に開催予定(※2021年4月記事執筆時)となっています。リスナー側がオンライン配信という選択肢を知った今、ポストコロナ時代のライブエンターテイメントの意味について、考えをお聞かせください。

緒方 リモートという選択肢が増えたということは、1つの進歩であるとは思います。ただ、だからといってそれによって現場で体験するライブの価値が下がったとは考えません。生でしか伝わらないものは絶対にあって、それはどうなろうと変わらないし、むしろ会場における濃度や熱は以前よりも高まっていると思います。それはお客さんからも感じますし、先日も、某大手プロモーション会社の社長が「今のライブ会場の現場はものすごくアツい」とおっしゃった記事があがっていました。お客さんは声が出せない代わりに拍手で一生懸命送ろうとしてくれていますし、同時に絶対にここからクラスターを出さない決意も、スタッフやミュージシャン、お客さん、全員から感じられる。熱量が感動的なのです。オンラインライブの金銭的な課題はまだ解決しきれていない課題として残っていますが、生のライブに足を運んでくれる方は、絶対にまた来るという意識を持ってくれているなと強く感じます。

草野 緒方さんがおっしゃったように、地方の方や学生さんなどリモートで観ることができるようになった選択肢が増えた一方で、生のライブでしか得られない何かは絶対にあって、それを求めて来られる方もいます。リモートで観て、「これ、ヤバい。絶対に生で観たい!」と思った方もいるでしょう。そんなふうに生のライブへの呼び水になるシステムになっていると思います。私自身はお客さんが3人くらいしかいない頃から頑張って一人でイベントを組んで、1,000人クラスまで人を集めたり、1年間で100本ライブハウスに出たこともあります。どの大阪のライブハウスに行っても家族みたいな関係でした。でも、今はその半分くらいがライブハウス自体を閉じたり辞めてしまったりしています。ただ、1年間踏ん張れた人たちは今、顔を上げ始めていて、ライブハウスという場やそこでの価値が稀有なものであると気づいています。その人たちは諦めていません。

緒方 今までの価値とシステムの中でみんなが動いて判断をして、こういう状況になっていると思うのですが、やっぱり何か考えながら変えていかなきゃいけないんですよね。国からの補償は本当に手薄ですし。私の周りにも残念ながら辞めてしまった方も大勢います。一方で、踏ん張ってきた人たちがリスタートするときに、どうやったらいいかわからない状態になっていたりもします。「完全な安全が確保できないから」と休止していた人は、ファンの方がいればいるほど、どうやってライブハウスに立てばいいかわからなくなっている。今はその分岐点にあるように感じています。ライブはまだ苦しいのですが、演劇の皆さんはすごく頑張っているなと思います。最初の緊急事態宣言の後に大道具・小道具さんの会社が軒並み撤退せざるを得なくなってしまった結果、今はスタッフさんが少なくなってしまい、現場の人手が足りないという状況もあり、それによって上演ができないパターンすらあるなかで。

草野 「補償はしませんが、頑張って自粛してください」って情けない話ですよ。本当に苦しんでいるシンガーソングライターの友人がライブハウスシーンに大勢いますので、私たちを含め音楽業界で食べている人や演者の皆さんが声を上げることはとても必要なことだと思っています。

――ファンの側にできることは何でしょうか。

草野 最終的にお客さん側が納得してもらうことになるのですが、私が思うに、エンターテイメント業界自体がライブ現場の価値にもっと気づいて、その1つとしてチケットの売り方を見直しても良いと思います。例えばアメリカでは入場料が一律ではなく、席によってS/A/Bと差をつけていたり、演劇では子供の席を安くするために大人の席のチケット代でその分を補填していたりします。

緒方 ミート&グリートといって、楽屋に会いに行ってお話できる権利を付ける売り方もありますよね。

草野 何でも世界標準に合わせろとは言いませんが、(ライブハウスの)チケット代が均一という日本のシステムは曲がり角にきているのではないかと思います。

――野球やプロレス、相撲といった興行ではずっと前から行えているので、音楽業界ができないことはないと思うんですよね。

緒方 今だって転売対策とか入場の管理が厳しくなっているじゃないですか。それがあるのだから、チケット代について大胆な改革はあるべきではないかと。

草野 そうですよね。採算が取れるようにグッズをセットにするとか、イベントの種類や曲数によって変えられるといったことも、アーティスト側やライブハウス側が提示できる時代になってほしいと思います。

緒方 演劇界にしても、昨年の7月の一件以降、お客さんの側には一切感染者を出していないわけですから、安全な開催が行われていることをきちんと報道してほしいですよね。本当にライブのシーンは今、アツいですしそこに来てもらえれば泣きそうなくらいエネルギーの交歓ができる。状況を見ながらではありますが、我々も諦めず、頑張っていきます。お客さんに勇気を出して来ていただけるように頑張りますので、ぜひ色々な形で、ライブにご参加いただければ嬉しいです。

INTERVIEW & TEXT BY 日詰明嘉


●リリース情報
「劇薬 -Dramatic Medicine-」

発売中

品番:LACA-15844
価格:¥3,300(税込)

01. Never, ever
作詞:em:óu/作曲・編曲:HISASHI
02. パンドラ
作詞:em:óu/作曲・編曲:黒須克彦
03. 祈り
作詞:em:óu/作曲:草野華余子/編曲:古川貴浩
04. Buster Master
作詞:em:óu/作曲・編曲:ANCHOR
05. ラボラトリー・マリオネット
作詞:em:óu/作曲・編曲:宮崎京一
06. Precious shining star
作詞:em:óu/作曲・編曲:manzo
07. Like a human
作詞:em:óu/作曲:芳賀政哉/編曲:中土智博
08. Try Out, Go On!
作詞:em:óu/作曲・編曲:伊藤 賢
09. Breaking Dawn
作詞:em:óu、ASH DA HERO/作曲・編曲:ASH DA HERO
10. Repeat
作詞:em:óu/作曲・編曲:佐藤純一(fhána)

関連リンク

緒方恵美 公式サイト
https://www.emou.net/

緒方恵美 公式Twitter
https://twitter.com/Megumi_Ogata

草野華余子 公式サイト
https://kusanokayoko.com/

草野華余子 公式Twitter
https://twitter.com/kayoko225

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