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INTERVIEW

2021.05.03

作詞・作曲を手がけた全4曲で見つめ直した自分自身の感情、思考――。楠木ともり、2nd EP「Forced Shutdown」リリースインタビュー

作詞・作曲を手がけた全4曲で見つめ直した自分自身の感情、思考――。楠木ともり、2nd EP「Forced Shutdown」リリースインタビュー

幻想的なエレクトロニカ曲「sketchbook」が描き出す内面世界

――そのほかの楽曲についてもお聞かせください。2曲目の「sketchbook」は、インディーズ時代に発表された「スケッチブック」と同じメロディで、歌詞を改めたものですね。

楠木 以前の「スケッチブック」を書いた頃から時間も経っていたので、今リリースするなら自分の気持ちがしっかりと出た歌詞にしたくて。私が声優を目指し始めて、実際にお仕事を始めた頃のことを振り返りながら歌詞を書きました。自分の夢を見つけようとしたり、夢を目指し始めたりするなかで、「自分の良さって何だろう?」とか「どうしたらみんなに必要としてもらえるんだろう?」っていう、世の中に能動的に関わろうとする時期に関して書いた曲です。

――自分自身の理想と、実際の自分とのギャップの狭間で悩むようなニュアンスは、前作のEPに収録の「僕の見る世界、君の見る世界」で描かれていたテーマ、誰かに憧れる気持ちはあるけど自分らしくありたい気持ちとリンクしているように感じました。

楠木 この曲のほうがもう少しぼんやりしていて、時系列として「僕の見る世界、君の見る世界」よりも前の話になるので、ターゲットもはっきりしていなくて。歌詞に“君”や“あの子”といった、第三者を表す言葉が出てくるんですけど、実はこれが第三者ではなくて。

――それも自分自身ということですよね。

楠木 そうなんです。自分の中にいるもう一人の自分と言いますか、よく脳内会議みたいな形で表現されますけど、悩んでいるときって色んな自分がいるじゃないですか。そのイメージが強くて。最初の“カーテンを開けたまま 君が眠る時間を待つ”という歌詞がキーになっていて、これが実は月が部屋にいる私を見ている視点の歌詞なんです。“寝転び君に話した 私の思う私”は、私視点から“君”という月に向けて話しているのですが、それも月に自分を重ねていて。何かに自分を重ねて向き合っている時間を想定して書いた曲なので、このEPの4曲の中で一番自分の中に閉じこもった歌詞になっています。

――その意味で言うと、サビの“描いた景色は まやかしのまま”といったフレーズは、“私の思う私”を描きたいんだけど、どうしても取り繕ってしまったり、自分の気持ちに正直になれないことを象徴している?

楠木 まさしくその通りです。なりたい自分になるのは難しいということを書いています。夢を目指すのは、絵を描くことに似ているなと思っていて。絵を描くときは、なかなか上手く自分の描きたいものにならなくて、色を足し引きしたり、重ねたりしながら理想の絵に近づけていくと思うんですけど。自分が頑張ろうとしているときも同じで、何が必要で何が必要じゃないか、より魅力的な人間になれるかを考えると思うんです。そのリンクから「sketchbook」というタイトルにしました。

――最後のブロックに“くすんだ思い出も 怖がらず筆にとって 好きな色だけでは 彩るには足りなくて”とあるのは、自分ではネガティブに感じる個性も受け入れてこそ、自分の絵を描けるようになる、ということですね。

楠木 そうです! 全体的に比喩が多くて、ちょっとカラクリのある歌詞になっていますけど、先ほどお話したリンクを感じてもらえると、比較的理解しやすい歌詞だと思います。

――そういった内面の繊細な変化を、サウンド的にはエレクトロニカ~アンビエント系のアレンジで表現しているのも絶妙です。編曲はChouchouのarabesque Chocheさんが手がけていますね。

楠木 この楽曲は自分が今まで作ったメロディの中でかなり美しく書けたと思っているんですけど。その綺麗なメロディを一番活かせるアレンジを考えたときに、Chouchouさんの優しくて広がるようなサウンドが思い浮かんだんです。アレンジ会議の際も、普段なら「こういうサウンドがいいです」という説明をするのですが、この曲に関しては、頭の中に映像が浮かんでいたのでそのお話をしました。この曲のリリックビデオの絵に近いんですけど、部屋に一人でいて、風がちょっと吹いていて…。そのようなお話をarabesqueさんが共感してくださって、映像のイメージから曲を詰めていけたのが楽しかったです。

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