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INTERVIEW

2019.11.27

TVアニメ『僕のヒーローアカデミア』第4期EDテーマ「航海の唄」担当 さユりインタビュー

TVアニメ『僕のヒーローアカデミア』第4期EDテーマ「航海の唄」担当 さユりインタビュー

『Fate/EXTRA Last Encore』のエンディングを飾った「月と花束」や、MY FIRST STORYとのコラボレーションで『ゴールデンカムイ』第2期を盛り上げた「レイメイ」など、数々のアニメタイアップを歌ってきた2.5次元パラレルシンガーソングライターの“酸欠少女”さユりが、今度はTVアニメ『僕のヒーローアカデミア』第4期のEDテーマを担当。個人名義では久々となるニューシングル「航海の唄」は、『ヒロアカ』との出会いがあったからこそ、今彼女が歌いたいことがはっきりと具現化された、運命的な楽曲となった。その歌に込めた「信じる」ことへの想いについて、本人に語ってもらった。

――今回の新曲「航海の唄」は、TVアニメ『僕のヒーローアカデミア』第4期のEDテーマとして書き下ろされたとのことですが、曲作りはどのように進めましたか?

さユり 音やメロディは登場人物たちの勇敢な精神を表現できればと思ってイメージを膨らませて、歌詞については登場人物の誰かを投影するというよりは、曲に合う言葉を選んでいくことで、ヒロアカの精神とリンクできればいいなと思いながら進めて今の形になりました。『ヒロアカ』の主人公のデクくん(緑谷出久)は、「周りと比べて何も持っていない人」というレッテルを貼られて、そこからヒーローに向けて進んでいく姿に共感できて。自分は音楽をやっていますけど、「自分には音楽しかない」というよりは、音楽に一生懸命すがりついていた気持ちのほうが強くて。歌の上手い人や素敵な曲を書く人に憧れて見上げることが多かったし、何も持ってないと思うことがしばしあったんです。

――デクはそれでもヒーローになる夢を諦めず、やがてオールマイトから「個性」を継承して、最強のヒーローになるために努力を続けます。そうやって登場人物たちがみずからの「個性」を磨いて成長していく姿は、『ヒロアカ』の魅力のひとつです。

さユり そうですね。そこが自分の歌いたいメッセージとも重なると思いました。作品の中でも、敵と比べて今の自分は強くないからといって、少しでもマイナスの気持ちになると負けてしまうけど、その状況のなかでも自分の個性を信じることで突破口が見えるシーンが描かれるじゃないですか。みんな信じることでしか進めない。だから「強くなくていいし、それでいいんだよ」という気持ちはこの作品に重なるし、私もそういう気持ちを歌いたいと思いました。

――その想いがサビの歌詞にある“強さは要らない 何も持って無くていい 信じるそれだけでいい”に繋がるわけですね。このフレーズは非常に力強くて、さユりさんも少なからずそう思っていないとなかなか出てこない言葉だと思うのですが、例えば自分の活動の中でそう感じることはありますか?

さユり 自分も活動している中で、単純な「強さ」が前に進む力になるわけではなくて、信じる想いの積み重ねで進んでいけることを感じていて。私は「ミカヅキ」でデビューした頃から、自分は足りないものばかりだけど、それでも進みたいという気持ちがあって。強くなくてもいいから自分のできることを必死に見つけ出していくことが、自分の活動や歌ってきたことの核にあると思います。

――このフレーズはいわば自分自身を信じるための言葉でもあると。

さユり はい。例えば、自分を信じる力が足りなくて迷うこともありますけど、そんなときでも答えは自分の心の中にあると思うんです。自分にとって大事なものというのは、いろんな環境や取り巻くものの変化のなかで見えなくなってしまうこともあるけど、なくなるわけではなくて。「信じる強さ」という言葉がありますけど、私がこの曲で表現したかったことは「信じる静けさ」なんです。

――と言いますと?

さユり 私の中では「静か」なものは「きれい」という感覚があって、昔からきれいな場所といえば静かな景色を思い浮かべるんですよね。しんとした海とか、冷たいコンクリートとか。たぶんみんなも日々いろんなことに悩まされたり、何を選び取ればいいのかわからなくなるなかで、静かになりたいときがあると思うんです。そこにあるのは自分の身体で、そこにたしかな真実が存在するんだなっていう。自分の肉体は自分として存在していて、その情報に耳を傾けられたら、すごく澄んだ状態でいられるんじゃないかなと。精神統一じゃないですけど、ライブ前によくそういうことを考えることがあって。

――周囲の環境に惑わされることなく、自分の中から出てくるものに心を向けることが「信じる静けさ」と言いますか。

さユり ふとしたときに自分が求めるのは、自分の小さい核みたいなもので。日々生きているといろんな出会いがあるし、自分を取り巻く要素というのはどんどん増えていくけど、迷ったときには、自分の気持ちの中心みたいなところに立ち返るようにしていて。

――「自分を信じる」と書いて「自信」と読むわけですが、さユりさんは今、自分自身に自信はありますか?

さユり うーん……(苦笑)。自信があるとかないとかを考えない日か、自信がない日のどちらかですね。

――なるほど。「自信」のあるなしに捉われないことが、きっと「信じる静けさ」でもあるんでしょうね。

さユり それが不安とかを凌駕するし、自分の純粋に楽しい気持ちだとか、本当にやりたいことに繋がるんだと思います。

――また、今回の「航海の唄」というタイトルからは、さユりさんの1stアルバム『ミカヅキの航海』を連想しました。そこは意識してタイトルを付けたのでしょうか?

さユり 「航海の唄」の歌詞ができて改めて見たら、デビュー曲の「ミカヅキ」や『ミカヅキの航海』のタイトルに込めた気持ちを曲として表しているんじゃないかなと思って。デビューからいろんな楽曲を発表して、広がっていくものはたくさんあったけど、この曲にはそれでも変わらずに続いてきた部分がこもっているんだと思います。

――その「変わらずに続いてきた部分」というのは?

さユり 100%の光というよりは、後悔しながらも進んでいくところだったり、「航海の唄」の歌詞にそのままありますけど、“足りないものは足りないままで構わないよ、今から探しにいこう”という気持ちだったり。例え弱かったとしても前に進みたい気持ちは、曲ごとに表現の仕方や歌詞は違うかもしれないけど、変わらず表現したいことです。

――たしかに「航海の唄」と「ミカヅキ」はテーマ性が共通していますが、「ミカヅキ」は文字通り三日月を「不完全な自分」の象徴として、そんな自分でも前進したいという願いを“それでも あなたに見つけて欲しくて”という歌詞と共に描く一方で、「航海の唄」は先ほどの“信じるそれだけでいい”という歌詞にも表れているように、聴き手にメッセージを投げかけるような内容になっていて。

さユり やっぱり今回の『ヒロアカ』との出会いだったり、これまでの旅があって変わってこれた部分だと思います。特に「航海の唄」に関しては、歌詞の中に一人称の言葉が出でこないのですが、それも自分で意図してというより、この曲に合う形を探す中でそうなったのですが、そうすることで聴く人が受ける印象が大きく変化したと思いますし、宿る力はあったと思います。

――あと、この曲には“ねぇ目を閉じて 心を聞いて 見つめた願い今もまだ歌い続けてる 月の下”というフレーズがありますが、さユりさんはデビュー曲「ミカヅキ」や前作のシングル「月と花束」でも「月」をモチーフに使われていて。月が好きなのですか?

さユり 好きみたいです(笑)。月は見えるけど手に届かなくて、みんな同じものを見てるけど感じ方が違う部分があるので、いろいろ投影しやすいですし、単純にきれいだなとも思いますし。でも私は月に限らず、自然全般が曲を作るうえで大事なカギになっています。自然というのは遠いのか近いのかわからないし、大きいものに目を向けることで一周回って自分と向き合うみたいな感覚が曲を作るときによくあるので。直接はいけないから、すごく遠回りしながら何かを伝えるのが音楽という表現だと感じますし、「航海の唄」も「海」のイメージが結構あります。

――よくよく考えたらさユりさんの曲にはスケールの大きなものが多いですね。「平行線」の歌い出しは“太陽系を抜け出して平行線で交わろう”ですし。

さユり 「十億年」という曲もありますしね(笑)。

――そういった自然のなかでも、月は常に満ち欠けして変化しますし、さユりさんの描きたいテーマに合ったモチーフなのかもしれないですね。

さユり そうですね。月の捉え方も作品ごとに膨らんでいくところがあります。「ミカヅキ」のときは欠けているものの象徴として投影していましたけど、「月と花束」のときは、月は実は自分自身では光っていなくて、太陽の反射で光っているということに投影していたりとか。今回の「航海の唄」では、満ちては欠けていく、その欠けていくことも救いなんだなと感じます。満ちたままじゃなくて、欠けていくからこそ、また新しくなれるし、進んでいける。そうやって新しく航海が続いていくことに光を感じることもあるし、だからこそ私も歩いていってるのかなって。

――「ミカヅキ」もいずれは満ちるわけですものね。

さユり そうですね。

――「航海の唄」はすでにインストアイベントなどで歌われてるそうですが、ファンの方の反応はいかがですか?

さユり 「『ヒロアカ』に合ってる」と言ってくださる人が多くてうれしいですし、受験シーズンや就活をしている人、今人生の岐路に立っている人たちに「力になる」と言われることもあって、すごくうれしいです。現実世界では戦ってる姿というのは見えにくいけど、みんな戦っているんだということを、この曲を歌うことで内側から教えてもらえるので、私も頑張ろうと思えるし、作ってよかったです。

――この曲を作ったことで、さユりさん自身、得られたものは大きかったと。

さユり 歌詞でも一人称を使わずに新しい表現ができたので、表現の幅も膨らみましたし、次回もそういう部分を含めて新しい表現を身につけていきたいです。

――さユりさんは今、自分の航海を楽しんでいらっしゃるみたいですね。

さユり はい、楽しいです(笑)。

Interview & Text By 北野 創(リスアニ!)


●リリース情報
さユり ニューシングル
「航海の唄」
11月27日発売

【初回生産限定盤(CD+DVD)】

品番:BVCL-1020〜21
価格:¥1,727+税

<CD>
M1 航海の唄
M2 オーロラソース
M3 トイ-弾き語りver.-

<DVD>
1st全国ツアー「ミカヅキの航海2017 〜夜明けの全国ツアー〜」
渋谷TSUTAYA O-EASTライブダイジェスト映像

特典
・3面デジパック仕様
・酸欠少女さユりキャラカード(3種の中から1種ランダム封入)

【期間生産限定盤(CD+DVD)】

品番:BVCL-1023〜24
価格:¥1,545+税

<CD>
M1 航海の唄
M2 日向雨-弾き語りver.-
M3 航海の唄- TVアニメ「僕のヒーローアカデミア」EDver.-

<DVD>
TVアニメ「僕のヒーローアカデミア」ノンクレジット(歌詞入り)ED映像

特典
・「僕のヒーローアカデミア」アニメ描き下ろしジャケット デジパック仕様
・初回限定:TVアニメ「僕のヒーローアカデミア」アニメキャラカード2種封入

【通常盤(CD)】

品番:BVCL-1022
価格:¥909+税

<CD>
M1 航海の唄
M2 フラン-弾き語りver.-

初回仕様限定特典
酸欠少女さユりキャラカード(3種の中から1種ランダム封入)

●作品情報
TVアニメ『僕のヒーローアカデミア』第4期
放送中
毎週土曜夕方5:30 読売テレビ・日本テレビ系全国29局ネット※一部地域を除く

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