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INTERVIEW

2019.09.25

「作品を背負って歌う」ことの覚悟を語る angelaの新たな挑戦!「angela Asia Tour 2019 “aNI-SONG”」ライブBDリリース記念インタビュー&ライブレポート

9月25日にリリースされる「angela Asia Tour 2019 “aNI-SONG” LIVE Blu-ray」は、angelaが今年新たにスタートさせたライブシリーズだ。これまでもエンターテインメント性あふれるさまざまなライブパフォーマンスを示してきたangelaにとって、「作品を背負う」、「アニソンアーティストのあるべき姿」を追求したという、これまでにないテーマをもったライブがこれだ。VJにも”ガチオタ”を起用したり、ストリングスカルテットを使って意外な楽曲を弾くなど、演出自体も凝りに凝っている。このライブはいかなる思いから生み出されたのか? angelaのふたりを直撃した。

アニソン専門アーティストは絶滅危惧種!?

――angelaのライブの中でも5月2日に開催された“aNI-SONG”というライブは、アニメの映像を背負って行なうというこれまでアーティストの単独公演では類を見ない作りになりました。この構想はどのようにして生まれたものなのでしょうか?

KATSU 話は数年前に遡りますが、キング・アミューズメント・クリエイティブ本部が設立されて三嶋(章夫)プロデューサーとお話した際に、「キンクリのなかで声優ではないアニソン専門のアーティストは君たちしかいないのだから、海外でライブを演るにあたってはアニメを背負って歌うんだよ」ということを、熱く語っていらしていたのがずっと頭に残っていたんです。おっしゃるようにangelaはキンクリのなかで唯一の声優ではないアニソンアーティストです。そして彼らと比べて表現方法というものは限られていて、そうした状況の中ただライブを演ることを続けてていいのか、ということにずっと疑問を感じていたんですね。そこで考えたのが文字通り、「アニメ映像を背負って歌う」という形式でした。最初の構想では作品イベントに出演して、名シーンを流してその後に演奏したり、声優さんが台詞の掛け合いをして、そこから歌に入るみたいな考えだったのですが、angelaはアニソン専門のアーティストとして、せっかくいろんな作品で主題歌を歌わせてもらっているのだから、もっと多くの作品を背負っていけたらいいなと思ったんです。そのあと実現にこぎつけるまでは大変でしたが(笑)。

atsuko 映像をバックに歌うということはアニメのイベントだと割とあることだし、お客さんからするとそんなに珍しいことでもないように見えるかもしれません。でも、作品を離れて、いちアーティストの公演のなかで、しかも複数の作品を一度に上映させてもらうということは、本当に大変なことなんです。それをキングレコードの担当のプロデューサーとディレクターが手分けして製作委員会や関係各社さんに説明して、皆さんからご快諾をいただいて公演に漕ぎ着けたという形。ただ、これはお客さんに対して「こんなに大変だったんだぞ」というひけらかしをしたいわけではなくて、普通に観に来て感動してくれた方が「久々に『COPPELION』を観てみようかな」とか、「『アスラクライン』を観てみよう」といったことを思ってほしいというだけなんです。

KATSU もちろん、『蒼穹のファフナー』や『K』の映像を出せばangelaのファンに響いてライブが盛り上がるだろうという意味での勝算はありました。そこで『ファフナー』のファンがこの公演をきっかけに「angelaのライブでこんなに推すんだったら」と、『BLAME!』を観てくれたりするような相乗効果が生まれていたらこの“aNI-SONG”というライブは成功だなと思っています。

――angelaのライブがハブとなって他の作品につながっていく。

KATSU そう。加えて言うと、こちらからお客さんにこう見えていてほしいなと思っていた演出は「ステージのどこを見ればいいのかわからない」というものでした。

――まさに私自身もそうでした。それは意図的だったんですね。

KATSU ええ。後ろに流れる映像だけでも楽しめるし、ステージのangelaを観てくれてもいいし、キレキレのダンサーさんを追ってくれてもいい。そういういろんな見方ができるようにと、演出方針を固めていきました。

――そして今回エポックだったのは背景に流れる映像が非常に凝っていたことです。オープニング・エンディングそのまま流すのではなく、曲の入りの演出とも連動したかなり凝った内容だったと記憶しています。

KATSU 当たり前だったり予定調和的なこと、もっと言えばいかにも公式っぽい総集編は今回避けようと思っていました。あくまでファン目線でいちばん心に刺さった映像を作ってくれるVJさんがいないかと、以前から仲良くしていたDJシーザーとかDJけいたん from RAB(リアルアキバボーイズ)に相談したところ、「僕らがやりますよ!」と引き受けてくれたんです。

――最後の方のMCで紹介されていた方々はそういう経緯だったんですね。

KATSU 彼らって、アニクラでDJをしているときにどんな映像が盛り上がるかを肌で感じているので、その嗅ぎ分けが半端ないんですよ。それに本人たちも言っているように、ものスゴいオタクですし(笑)。それでディスカッションをしたり、こちらからオーダーをしたりして編集をしてもらいました。できあがったのを見てちょっと長かったので切ってもらうように言ったら、「ここはどうしても重要なシーンなんです!」って、こっちを説得してくるんですよ(笑)。それに仕事ぶりがプロフェッショナルで、僕が「今回『BURN』を演るときに赤のクランの吠舞羅のマークを背負いたい」と言ったら、「それ、メチャメチャたぎりますね!」って、揺らめく旗をCGで作ってくれたりもしたんですよ。

――演出面でも結構採り入れたんですね。

KATSU そうですね。VJに関しては半分以上は彼らの意見ですね。VJチームは良い意味で遊んでるんです。「ここでこのシーン流してやったろう」とか、その化学反応がめちゃくちゃ面白かったですし、実際お客さんにも刺さっていましたしね。

――atsukoさんから彼らにオーダーしたことは?

atsuko 私からは文字を出せるなら、掛け合いのときの文字を入れてほしいといったことくらいですかね。私はよく、「歌って~」とお客さん側にマイクを振るのですが、そのとき初めて来た人でも文字が出るとその世界に入りやすいし、「ここでこういうことを言うんですね」ってわかるように示してもらいました。いつもは「Shangri-La」をサビの後半の落ちサビのところだけみんなに歌ってもらっていたのですが、いつも聴いて覚えているだろうから最初から最後まで歌ってもらおうと。その代わり、初めての方のために歌詞を全部出してもらうようにセットしました。これもある意味で「Shangri-La」という私達のなかでの超定番曲が予定調和にならないようにという試みです。終わってからハッシュタグで感想を追いかけたところ、「『Shangri-La』をあんなふうに最初から最後まで歌えたのがすごい新鮮だった」と書いていただけたのは良かったかなと。

――このアイディアはどうやって思いついたんですか?

atsuko 海外で公演を行なったときですね。アジアのお客さんは頼んでもないのに歌うんです(笑)。それが私にとっては新鮮で。日本のお客さんって、基本的に周りのことを考えて行動するので、「歌って」と言われてないときに歌うことをしない。でも、そういうしがらみをとっぱらう瞬間があるのもいいんじゃないかなって、ずっと思ってて。もっとみんな「好き」を出していいんだよって。

KATSU 良い意味で裏切るということだと、「蒼穹」が終わった後に映像演出として、『蒼穹のファフナー RIGHT OF LEFT』の最後のシーンを淡々と見せて、「ここで(EDテーマの)『Peace of mind』」だろうという流れを作っておいて、(挿入歌の)「果て無きモノローグ」を歌うとか。そのあとの弦カルテットのコーナーもそうですね。弦カルといえばバラードが定番だけど、そういうのではない曲をアレンジして、イントロからお客さんに「これ何の曲?」って思わせる。激しい印象の曲がバラードになったり、「全力☆Summer!」も、普段は太鼓で演るところを弦カルで演るとか。

――映像演出って、そういうふうにセットリストを”ミスリード”させるようにも使えるんですね。

KATSU 映像を使う際にこういう意図でこの場面を使うんだということもきちんと製作委員会の人達に伝わって、それを踏まえてOKをいただけたのもよかったです。今後としてはまったくの構想レベルですがカバー曲を入れて、さらにその作品の映像をこんなふうな形で流したいですね。もちろん、主題歌オリジナル歌手ではない僕たちがとなると、今回よりもハードルは上がると思います。でも諦めたら本当に何も始まんないですよね。ダメ元でもぶつかってみないと。だってアニソン専門のアーティストって、もう絶滅種に片足突っ込んでるんですよ?

――絶滅……? どういうことでしょうか?

KATSU それは最初に三嶋さんの言葉を受けて思った、「声優ではないぶん、ライブでの表現方法は限られている」ということです。だって近年の声優アーティストのスキルの伸び方はハンパないんですよ。とくにキンスパ(キングスーパーライブ)で一緒になったみんなは、歌だけでなく、ダンスも踊れて声も良くて演技もできてビジュアルもいい。そうなったらそっちに主題歌の仕事が渡っていきますよ。そうした状況において、僕らとしてはアニメ専門のアーティストにしかできないことを見つけなくてはいけない。それが今回のやり方です。アニメ専門アーティストなんだからアニメを背負ってライブ演ろうよ、ということを最初に提唱したかった。それにこれで終わらせてはいけない。アニソンアーティストのその先を考えて行動する必要があると思います。これが当たり前になればお客さんはもっと喜ぶと思うので。

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