河野万里奈 再デビューシングル「真人間入門」リリース記念インタビュー

5月15日にシングル「真人間入門」を発売した河野万里奈。第4回全日本アニソングランプリにおいてグランプリを獲得、数々のアニメ作品のテーマソングを担当してきた彼女が、あらたな場所で再スタートを切る。彼女が今、どんな心境で新しい道へ進み出したのか、その胸の内を聞いた。

できないことの苦しみを忘れないでおきつつ、できることをやっていこう。

――河野さんは大の野球好きとのことですが、野球からいろんなスピリットを学んでいる感じでしょうか?

河野万里奈 もうほとんどの芸術や哲学は、野球から学びました。人生はホントに野球に繋がっています。

――そこまでとは……。河野さんは5月15日にシングル「真人間入門」を発売し、新しい環境で再デビューをされました。まずはそこへ至るまでの心境から聞かせてください。

河野 心境は、大きく分けてふたつあって。ひとつが、「歌えなくて地獄」ということと、もうひとつが、「でも絶対に戻る」という想い。苦しみと覚悟、ただただこのふたつの気持ちがあり続けました。

――その時期は、どう自分の気持ちをコントロールしていたのでしょうか。

河野 正直、できないことがたくさんあったし、できない理由もたくさんあったけど、でも、できることもたくさんありました。例えば、弾き語り動画をアップするとか。今まで自分で作詞作曲した楽曲を表に出したことはなかったけど、このタイミングで出してみるとか。野球のツイートもそう。野球のツイートは決してふざけてやっているわけじゃなくて、いつか表舞台へ戻るとき絶対に力になると信じて、「いいね」が1個しかつかなかったときから、「これだけは毎日欠かさずに続けよう」と決めて、ずっとツイートし続けてきました。そうやって、「できないことの苦しみを忘れないでおきつつ、できることをやっていこう」と、今でも取り組み続けています。

――その気持ちが原動力になっていたわけですね。

河野 はい。その気持ちがなかったら絶対に諦めていたなと思います。

――河野さん自身、再び歌える環境をつかむ自信はあったんですか?

河野 このお仕事っていろんな方々が関わって物事が進む世界だから、自分の一存だけでは再デビューできると確実に信じることはできなかったんですけど、それでも「言い続けることが大事だな」と思っていて。「なりたい、なりたい」と言い続けて、もうわかったと言われるくらい言い続けることによって、まわりの人たちも、フォロワーさんも「河野万里奈ちゃんは最終的に、もう一度デビューして曲を届けるのが目標なんだ」と理解したうえで応援してくれて。「きっとメジャーの世界へ戻ってくる」と信じてくれていました。

――その言葉が現実になったように、その想いを信じ、言い続けてきて良かったですね。

河野 そう思います。「再メジャーデビューを絶対にする」と明確に目標を提示するようになってから、いろんな面で変わりだしました。もちろん、うまくいくことばかりではなかった……というか、うまくいかなかったことのほうが多かったのも事実です。私、阪神タイガースの鳥谷(敬)選手が大好きで、尊敬し続けています。その理由が、鳥谷選手自身、年齢面でも現役を続けられるかどうかという時期を迎えていて、しかも若手も育ってきたことから、長年ずっとショートを守っていたんですけど、そのポジションを若手に取られ、他のポジションを守ることも増えてきて。それでも、ゴールデングラブ賞を受賞するようなものすごい選手なんですけど、ちょうど昨年のオフシーズンのときに、「選手生命がいつ最後になるかわからないからこそ、2019年はショートを奪還したい」と宣言したんですね。でも、決して簡単なことではなく、今もショートは奪還できていないんですけど、その表明をしたことが、私にはすごくインパクト強く胸に響いてきました。私自身も「歌を歌いたい」「歌手というポジションは絶対に譲らない」、その気持ちを隠していたら、そのまま消える可能性のほうが高いと思ったし、改めて口にし続ける勇気を鳥谷選手からもらいました。だから、私が再デビューするまでの歩みの中はもちろん、今でも、鳥谷選手の存在はとても大きなものになっています。

――信じる気持ちがあれば夢は叶う。いや、叶う叶わない以前に、想いを口にすることで、そこへ向かうためのモチベーションという力になれるんですね。

河野 そうだと私は信じています。その信じる気持ちと明確な采配をしっかりと考えて、拙いながらも行動してゆくことが大事なんだと思い、行動を続けています。

――再デビューが具体的に決まったのはいつ頃でした?

河野 具体的に決まったのは今年2月です。ただ、「メジャー再デビューをします」と発表をしたのは、昨年の5月の誕生日ライブのときでした。ただし、その時点ではまだ、どこのレーベルで、いつ、どんな曲でデビューするかまでは具体的になっていなかったことから、それが正式に決まるまで具体的な報告は控えてきました。

――ファンの人たちは、具体的な報告を2月に聞けたことで安心したんじゃないですか。

河野 続報がなさすぎて「どうなってるんだろう」という不安にさせてしまってた部分が大きかっただけに、安心していただけたと思います。具体的な進展がない時期でも、みんな私のことを信じてくれていたように、その思いへは一生をかけて報いようと思っています。最多賞を取った野球選手もよく言うんですけど、「とにかく塁に出ようと思いました」「ちゃんとコツコツやってれば、結果はついてくる」という言葉通りの気持ちで、私も今はいます。

――ここから、どんどんヒットを打っていく形ですからね。

河野 小さなシングルヒットが多いと思うんですけど、コツコツ点数を取っていきたいし、何より楽しみたいなと思います。

――再デビューシングル「真人間入門」を聴いての印象も教えてください。

河野 すごくインパクトのある五文字ですよね。私、「真人間」という言葉にもそれぞれの人なりの概念があると思っているので、印象を限定はしたくないんですけど、私が思う真人間とは「自分に嘘をつかないこと」。めちゃくちゃ真面目に、勤勉にしなくてもいいけど、大事なところでは絶対に嘘をつかない。自分だったら、歌をうたいたい気持ちに嘘をついたら終わりだなと思っています。実は再デビュー前に、このまま歌を続けるのか、歌をやめて違う芸能活動を選ぶのかという選択肢もありました。だけど私は、迷わずマイクを手放さない道を選びました。そこは、私の中で譲ってはいけないところ。楽な道へ逃げることなく、自分の気持ちに嘘をつかずに進むことが、私自身の思う真人間像。そういう気持ちも込めて歌っています。

――自分の生き方も「真人間入門」には投影しているわけですね。

河野 そうです。一行足りとも、嘘偽りのない歌になっています。

――カップリングに収録し、河野さん、自ら作詞作曲をした「アイキャントライ」の歌詞に詰め込んだ想いがとてもリアルに響いてきました。

河野 ありがとうございます、うれしいです。「アイキャントライ」は自分で作詞作曲をして、エンドウ.さんにアレンジしていただいた曲。自分で作詞作曲し作品化した曲はこれが初めてになるので、発売してからの感想の声がとても楽しみです。

――これが初作品?

河野 はい、とってもうれしいです。全人類に聴いてほしいくらいの自信作です。正々堂々と選手宣誓したみたいな気持ちです。

――「アイキャントライ」からは、河野万里奈像が見えますからね。それこそ、笑顔の裏にはいろんな涙が重なっていたのかなと想像しちゃいました。

河野 血反吐を吐いてることのほうが多いです(笑)。でも、それを知っているからこそ笑顔になれるんだと思います。野球選手は、一軍の選手として試合に出れることがステイタス。だからこそ、そこまでに死ぬほど鍛練していくわけじゃないですか。四六時中頭から野球のことが離れないだろうし。だからこそ、打席に立った瞬間がっこいいし。それで打とうものならめちゃくちゃ響くものがある。まさに、それだと思うんですよね。取り繕った姿や言葉よりも、血反吐を吐いて鍛練したうえで、やるべきことをやるべき場所でやった瞬間に、いいものが伝わると思っているので。ちゃんと苦しむときは苦しもうといつも思っています。

――河野さん自身も、二軍の苦しさを知ったうえで、再び一軍に上がってきた感覚ですか?

河野 やっと蓄積してきたチャンスが巡ってきたといいますか。塁に走者が溜まってて、今ここで私が打てばバーッと点がたくさん入るという、得点圏へたくさんランナーを置いた状態で打席がまわってきたように、今は満塁状態での勝負だと私は思っています。結果、ヒットを放つのか、フライで終わるのか……。そこを含めての戦いだからこそ、兜の緒をしめる気持ちでいます。どっちにしても絶対に楽しい戦いになるので、河野マリナの頃を知っている方々も、ホントに見逃さないでいてほしいと純粋に思います。

この記事に関するキーワード

この記事を書いた人