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2017.05.10

in NO hurry to shout;「ハイスクール [ANIME SIDE] -Bootleg- / スパイラル」レビュー

in NO hurry to shout;「ハイスクール [ANIME SIDE] -Bootleg- / スパイラル」レビュー

TVアニメ『覆面系ノイズ』OPテーマと挿入歌を収録した第1弾シングル。珠久里深桜(CV.高垣彩陽)が歌うOPテーマ「ハイスクール [ANIME SIDE] -Bootleg- 」と、“ニノ”こと有栖川仁乃(CV.早見沙織)がヴォーカルを担当した劇中歌「スパイラル」を収録。

累計160万部を突破した福山リョウコの人気コミックを原作としたTVアニメ『覆面系ノイズ』。歌を絆とするニノ(CV.早見沙織)・モモ(CV.内山昂輝)・ユズ(CV.山下大輝)、3人の関係を描く今作では音楽を中心にしてストーリーが進行している。劇中には人気オルタナティブ・ロック・バンド、“in NO hurry to shout;(以下、イノハリ)”が登場。ユズがギター/作曲を担当するこのバンドに、ヴォーカルとしてニノが加わることにより、物語が大きく動き始める。

イノハリの楽曲を手がけているのが、“COALTAR OF THE DEEPERS”のNARASAKI。オルタナティブ・ロックを基調とした楽曲を得意とする彼だけに、イノハリのイメージをそのままサウンドとして表わしている。主題歌や挿入歌に加え、イノハリのドラム演奏にも参加しているWATCHMANとともに“SADESPER RECORD名義で劇伴も制作。『覆面系ノイズ』の音世界を鮮やかに展開している。

SADESPER RECORDのNARASAKIとWATCHMANのロングインタビューはこちら

TVアニメ『覆面系ノイズ』は、主題歌や挿入歌、劇伴が連続してリリース。4月19日にリリースされた『ハイスクール [ANIME SIDE] -Bootleg- / スパイラル』はその第1弾のシングル(ハイレゾ版は5月3日より配信開始)。「ハイスクール [ANIME SIDE] -Bootleg- 」のヴォーカルは珠久里深桜(CV.高垣彩陽)、「スパイラル」は“ニノ”こと有栖川仁乃(CV.早見沙織)が務めている。どちらの曲も、作詞を三重野 瞳と原作者の福山リョウコ、作曲をNARASAKIが担当。コラボといった趣も感じさせる組み合わせで、原作の鮮烈なイメージを見事なまでに音像化している。

「ハイスクール[ANIME SIDE] -Bootleg- 」

第1話で、新入生のオリエンテーションとして軽音部が演奏した、イノハリのカヴァー曲。第2話、3話ではオープニングテーマとして使用されている。バンドは、ドラム、ベース、ギターとヴォーカルの編成。高校の軽音部(ベース以外はほぼ1年生)とはちょっと思えぬほどの腕前を持っており、カヴァーといえども華やかな演奏で新入生たちを魅了している。

サウンドはいわゆるオルタナロックに類するものだが、非常にメロディアスな仕上がりで、複雑に転調を繰り返しながらも、口ずさみたくなるようなサビのキャッチーさや、Bメロの洒脱なアレンジなど、イノハリの人気が楽曲にまずあることを示す、完成度の高さが伺える。激しさの中にほんのりと甘さを忍ばせたギターサウンドは、まさにNARASAKIの真骨頂。

クールかつエネルギッシュ、尖っていながらも滑らか。一見対立するようなサウンドと演奏の要素をギリギリのバランスで拮抗させたセンスが絶妙だ。変化を続けるサウンドに呼応しながら、爽やかな開放感を生み出す珠久里深桜のヴォーカルは、想いが前のめりになるかのように、語感から熱さがほとばしる。キャラクターのニュアンスを交え、青春のイメージを前面に押し出した高垣彩陽の演技力と歌唱力が素晴らしい。

音質は迫力を重視した傾向で、あたかも一発録りでレコーディングしたようなバンドの一体感が伝わってくる。劇中の演奏をそのまま収めたような、音の荒々しさや空気感もちょっとローファイっぽくて魅力的。

「スパイラル」

軽音部のギタリスト・ユズ(杠 花奏:ゆずりは かなで)の書き下ろし曲となる第1話の劇中歌で、「ハイスクール」を演奏した翌日に、軽音部が新歓ライヴで演奏。こちらは深桜の代わりにニノがヴォーカルを担当している。ニノが歌うシーンはここまでところどころで描かれてきたが、その優しく朗らかなイメージを大きく覆す歌声がステージ上に現われる。

心の叫びをあらん限り吐き出すようにマイクへと声を叩きつけるその姿は、初期衝動という形容がふさわしく、向こう見ずな激しさで暴走を始める。それは、このままでは喉をつぶしてしまうのでは?と見ているこちらが心配になってくるほどで、またニノの想いがこれほど深いものだったのかと改めて思い知らされる。ソロ作品などで、高垣彩陽とはまた違った意味でディーヴァ感のあるヴォーカルを披露している早見沙織だが、この曲ではそれらを知る人の度肝を抜く迫力で、まだ未完成のニノの荒削りな歌声をそのままに再現している。

爆発した感情の渦に身を委ねるニノの歌に触発され、バンドもアグレッシヴな演奏を展開。ナンバーガールなどを思い出す、ひりひりとした焦燥感を放つそのサウンドは、ヴォーカルとせめぎ合うように荒々しく奏でられ、メンバー全員で綱渡りをしているかのように、スリリングな瞬間を刻み続ける。その熱量の高さに圧倒されっぱなしだ。

5月10日にはニノのヴォーカルを収録したCDシングル『ハイスクール [ANIME SIDE] -Alternative-』と『アレグロ』がリリース。『アレグロ』のカップリング曲「サテライト」は、マイブラ直系のシューゲイズ・サウンドにニノのヴォーカルが漂う魅惑の仕上がりとなっており、「DEAR FUTURE」に続く、いわば声優シューゲイザーの最高峰。スロウダイヴ、22年ぶりの新作と併せて聴きたい。

in NO hurry to shout;
ハイスクール [ANIME SIDE] -Bootleg- / スパイラル

ワーナー ブラザース ジャパン
2017.05.03

FLAC・WAV 96kHz/24bit

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©福山リョウコ・白泉社/アニメ「覆面系ノイズ」製作委員会

 収録曲

 1.ハイスクール[ANIME SIDE] -Bootleg- (TVアニメ「覆面系ノイズ」オープニングテーマ)
   作詞:三重野瞳、福山リョウコ 作曲:NARASAKI 編曲:in NO hurry to shout; 歌:深桜(CV.高垣彩陽)

 2.スパイラル (TVアニメ「覆面系ノイズ」挿入歌)
   作詞:三重野瞳、福山リョウコ 作曲:NARASAKI 編曲:in NO hurry to shout; 歌:ニノ(CV.早見沙織)

 3.ハイスクール[ANIME SIDE] -Bootleg-(TV Size)

 4.ハイスクール[ANIME SIDE] -Bootleg-(Instrumental)

 5.スパイラル(Instrumental)

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