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2015.04.01

菅野祐悟『「PSYCHO-PASS サイコパス」Complete Original Soundtrack 2(配信バージョン)』レビュー

菅野祐悟『「PSYCHO-PASS サイコパス」Complete Original Soundtrack 2(配信バージョン)』レビュー

「闇」に眼差しを向けた美しく破滅する音楽……『PSYCHO-PASS サイコパス』の音楽ここに極まる。

先が読めない展開と壮絶な映像描写でノイタミナ史上、最もハードコアな作品となったディストピアSFアニメの傑作『PSYCHO-PASS サイコパス』。TV1期は2012年10月より、TV2期は2014年10月より放送が開始され、また劇場版は2015年11月に公開された。TV1期の監督は、『踊る大捜査線』の本広克行。2期は映画『劇場版BLOOD-C The Last Dark』の監督を務めた塩谷直義(劇場版では、本広克行が総監督、塩谷直義が監督を担当)。『ブラスレイター』『魔法少女まどか☆マギカ』などでおなじみの虚淵 玄がストーリー原案、脚本参加。TV2期では『蒼穹のファフナー』シリーズで壮大なSF観による人類の壮絶な死闘を描いた作家の冲方 丁がシリーズ構成に参加している。

人間の精神が数値化された未来社会。“シビュラシステム”が測定する数値「PSYCHO-PASS(サイコパス)」に従って、人々は生活を送らなければならなかった。犯罪も“犯罪係数”によって数値化され、ある者は潜在犯として、ある者は実行犯として、執行官が用いる特殊な拳銃“ドミネーター”によって裁かれる……。管理社会の構造や人間の心理に鋭くメスを入れ、正義という存在自体をその天秤にかけた、この現代にも通ずる社会ドラマであり、刑事群像劇としてのエンターテイメント性も兼ね備えたユニークな今作品は、そのシリアスな面白さが話題を呼び、幅広い人気を獲得した。

音楽は菅野祐悟が担当。2004年にTVドラマ『ラストクリスマス』で劇伴デビューし、『ガリレオ』『SP』『軍師官兵衛』など数多くのTVドラマや映画の劇伴を手がけている。初期の活動からアニメ劇伴も多く担当しており、近年では『ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース』『ガンダム Gのレコンギスタ』『亜人』など話題作の音楽を手がけている。

ビル・エヴァンスやキース・ジャレットにピアノを学び、ドビュッシー、ラヴェルらフランス印象派に傾倒しつつも、J-POPやR&B、クラブミュージックに耽溺していたという菅野祐悟。常にその時代のトレンドを読み取り、求められているサウンドを形にしてきた彼によれば『PSYCHO-PASS サイコパス』の1期ではその世界観を表現し、2期では登場人物を深堀することを音に託しているそうだ。

『「PSYCHO-PASS サイコパス」Complete Original Soundtrack 2(配信バージョン)』は、TVアニメ2期『PSYCHO-PASS サイコパス 2』と『劇場版PSYCHO-PASS サイコパス』に使用された楽曲を収めたオリジナル・サウンドトラックCDから、OP&EDテーマ4曲を除いた劇伴48曲を収録した配信版となる。

2期では朱を主軸として物語は進行するが、サウンドトラックは前作の1曲目に収録されていたテーマ曲「PSYCHO-PASS」をアップデートした「PSYCHO-PASS feat.AKANE」から幕を開け、躍動するビートとギターの轟音が疾走感を呼び起こし、ストリングスがドラマの情景を美しく彩る。
「ハレーション」では地を這うようなベースとジャズ音響でテクノロジーの暗部を活写。
反復するシーケンスとサイレンのような音色が強迫的な「執行官」
ノイズと増大する低域が混迷を指し示す、今作のキーワード「What Color?」
音の刻み方と加工された人のような声が偏執的な悪夢を喚起させる「コントロール出来ません」
工事現場の音をシミュレートしたような「全能者のパラドクス」
絢爛なクラシックに不穏さをにじませる「共同幻想」
チープな8bitによる最凶のゲーム音楽「ハングリーチキン」
歪んだ空間が表出しそうな「国外捜査」……などなど。どれも暗雲たるイメージが増幅するものばかりだ。

テクノ、ブレイクビーツ、インダストリアル、音響とオーケストラ・サウンドの融合は、スロッビング・グリッスルや『ラバー・ジョニー』とクラシックの邂逅と言うべきなのか。やりすぎなくらいなエフェクトや、エディットと弦楽奏の優美さが際立つ。ピアノが美しい小品「思い」「望み (Movie Mix)」「人と法を守るために (Movie Mix)」と対照的に、展開が悪い冗談にしか聴こえてこない「透明人間」「破壊が追いかける」「標的の探索」など音の響きから構成まで徹底的にダークな美学を極めたサウンドトラック。もちろんおどろおどろしいだけの恐怖音楽では決してなく、「闇」にベクトルを向けた美しく破滅する音楽だ。

解像感と躍動感、またスケール感が増したハイレゾは、それをリアルにスリリングに描写する危険な音の遊戯が広がる。近未来の世界を映し出すにふさわしい空間的な、立体的なサウンドとなっている。1期サウンドトラックのハイレゾ版『「PSYCHO-PASS サイコパス」Complete Original Soundtrack(配信バージョン)』も配信されており、サウンドの特色や傾向を聴き比べてみるのも面白いだろう。

参考_SMER_2CD_BLH14菅野祐悟
「PSYCHO-PASS サイコパス」Complete Original Soundtrack 2(配信バージョン)

Sony Music Labels Inc.
2015.04.01

FLAC 48kHz~96kHz/24bit

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e-onkyo music
mora

 収録曲

   作曲・編曲:菅野祐悟

 1.PSYCHO-PASS feat.AKANE

 2.サイマティックスキャン

 3.ハレーション

 4.執行官

 5.What Color ?

 6.殺意の肯定

 7.忍び寄る虚実

 8.サイコパス汚染

 9.コントロール出来ません

10.黒く染める力

11.エリアストレス

12.透明人間

13.生体コンタクト

14.全能者のパラドクス

15.人と法を守るために

16.裁きの場

17.最後のキー

18.生み出された怪物

19.共同幻想

20.ハングリーチキン

21.2116.7

22.朱の疑問

23.あの人は・・・

24.密入国

25.脳波モンタージュ

26.国外捜査

27.思い

28.思想と尊厳

29.シビュラの制圧

30.現状整理

31.シャンバラという天国

32.破壊が追いかける

33.捜査の一貫

34.望み (Movie Mix)

35.地に呪われたる者

36.ゲリラ狩り

37.悪夢

38.独り善がり

39.人と法を守るために (Movie Mix)

40.標的の探索

41.組織暴力

42.怒りの眼差し

43.執行モード

44.PSYCHO-PASS feat.AKANE (Movie Mix)

45.槙島聖護 (Movie Mix)

46.生み出された怪物 (Movie Mix)

47.命の在り方 (Movie Mix)

48.PSYCHO-PASS (Movie Mix)

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