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INTERVIEW

2016.11.09

TVアニメ『フリップフラッパーズ』ED主題歌「FLIP FLAP FLIP FLAP」TO-MASインタビュー Vol.2

lis_flipflap_02TVアニメ『フリップフラッパーズ』の劇伴と、ED主題歌「FLIP FLAP FLIP FLAP」を担当するTO-MAS SOUNDSIGHT FLUORESCENT FOREST=“TO-MAS”は、伊藤真澄、ミト(クラムボン)、松井洋平(TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUND)の3人からなるユニット。それぞれが個別にクリエイターとして活躍する彼らが、なぜ「劇伴ユニット」を結成するに至ったのだろうか?今回は、“TO-MAS”始まりのいきさつから、『フリップフラッパーズ』の音楽におけるプロフェッショナルな制作過程まで、メンバー3人にたっぷりと話を聞いてみた。
インタビュー Vol.2では、Vol.1に引き続き劇伴の制作秘話や、パピカ(cv.M・A・O)&ココナ(cv.高橋未奈美)によるカップリング曲「OVER THE RAINBOW」のレコーディングなどについても触れている。

●TVアニメ『フリップフラッパーズ』ED主題歌「FLIP FLAP FLIP FLAP」 TO-MASインタビュー Vol.1はこちら

Interview & Text by 青木佑磨(クリエンタ/学園祭学園)
at Lantis

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TO-MAS feat. Chima『FLIP FLAP FLIP FLAP』のレビューはこちら

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TO-MAS『TVアニメ『フリップフラッパーズ』オリジナルサウンドトラック Welcome to Pure Illusion』のレビューはこちら

そうですね。超絶プロフェッショナルな投げっぱですよ(笑)

──それぞれがキャリアを積んできているからこそ、ゴールを定め過ぎなくても「きっと誰かが面白いゴールに気付いてくれる」というような信頼が生まれるんですかね。

松井 たぶん信頼感というか、まず最初からお互いにフランクな感覚があるんです。普通の人だったら「その2MIXをよこせ」って、怖くて言えないですよ(笑)。これがたまたま揃った集まりだったら絶対やりませんけど、僕らはもうTO-MASというひとつのユニットになってしまっているので、思いついたことは何でもやろうと。やってダメだったらノーと言ってくれる人たちだし、面白かったら受け入れてくれますしね。

──そういった遠慮や垣根がまったくないんですね。

松井 その垣根は最初から、『ももくり』のときからないですね。

ミト たぶんそれは、劇伴ユニットだからでしょうね。確たるものとして、コンテンツという中心点があるじゃないですか。ということは、極論を言ってしまうと最終的にはそこに寄りかかることができるんです。自分たちのアイデンティティがどうかというより、まずコンテンツに作用しなければならないと。でもこのユニットに関しては、そういうふうに寄りかかるだけでもオリジナリティーが出ちゃうくらい汁の濃い人たちなんですよ。だからあんまり考えないでいる方が、口から出てないのに耳から漏れてるみたいな状態になるんですよ(笑)。

松井 ただ真澄さんとミトさんが、作品側が求めているものを渡そうとしていたとは思えない(笑)。

ミト いやいやいや、何をおっしゃいますやら。

松井 「作品の世界観をもっと広げてやろう」とか、「向こうが想像していたとおりのものを、そのまま渡すことだけは絶対にしたくない」とか、そういう気持ちを感じていましたよ。

ミト そうですね。超絶プロフェッショナルな投げっぱですよ(笑)。

──「完璧に相手が受け身を取れるように、しかしできるだけ遠くまで投げる」というような(笑)。

ミト そうそうそう、プロレスと同じですよね。大怪我をさせずに、どこまできれいに対戦相手に技をかけられるかという勝負ですよ。でもこれが、UWFかWWEかで全然違うわけじゃないですか!(笑)。そのコンテンツに対してちゃんと応えていくというのが、私たちのできることですから。そういった意味で、中心があるからこそ自由にやらせてもらっていますね。

みんなが引き出しを開けたまま閉めないみたいな状況になりました(笑)

──楽曲の幅が多様になっても、最終的には作品を軸に全体がまとまるわけですね。

ミト (TO-MASの資料を見つつ)そもそもTO-MASが今までに劇伴を担当してきた3作品の、CDジャケットの並びが既におかしいでしょって話ですよね。

──『ももくり』『彼女と彼女の猫-Everything Flows-』『フリップフラッパーズ』……たしかにまったく雰囲気の違った3作品で、劇伴担当が同じとは思えないですね。

松井 でも『ももくり』と『フリフラ』の間に『彼女と彼女の猫』が入ったのは、ある意味僕らにとっては僥倖でしたね。『ももくり』でベーシックなものをやったあとに、『彼女と彼女の猫』ではミニマムに、最小限の人数で作ったんですよ。このほぼ3人だけでの作業で、意外といろんなものが見えたんです。

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TVアニメ『彼女と彼女の猫 -Everything Flows-』オリジナルサウンドトラック

ミト 『彼女と彼女の猫』は、本当に人が入ってないもんね。

伊藤 そうそう、弦が入っているくらいですね。

──そのときは「音数の少ないものを」というオーダーだったのでしょうか?

伊藤 そうですね。静かなものをお願いされました。

松井 世界観に合わせて、コンテンツに寄り添って、というのはさっき言った通りです。ただ「コンテンツに合わせた、静かなもの」というだけで終わっていいのか、という部分はちゃんと表現できていると思います。

ミト 花澤香菜さんが歌う、キャラソン的な歌モノもやりましたしね。

松井 そうですね。『彼女と彼女の猫』で、いろんなことが整理できました。それで次に『フリップフラッパーズ』の依頼が来たときに、これがものすごい作品だったんですよ。いろいろな曲を書かなくてはならないから、みんなが引き出しを開けたまま閉めないみたいな状況になりました(笑)。その挙句、レコーディングに3日かかりましたね。

ミト あれはカロリー高かったなあ……。普通の劇伴レコーディングはだいたい半日か、長くても1日ですからね。

──生楽器などの録音に、3日かかったということですか?

松井 はい。弦楽器だけじゃなく、いろんな楽器がありましたからね。これから作品で流れたり、クレジットを見てもらえればわかると思いますが、「こういう人が来るんだ」と思ってばかりでした。

伊藤 お祭りみたいでしたよね。3日間お祭り騒ぎでした。

──珍しい楽器も多く使われているのでしょうか。

松井 ええ、普通は入らないような楽器が入ってます。

伊藤 特にミトさんがお呼びした方々は、非常に面白いですよ。

ミト ああ、「ホーメイ」(※ホーミー、フーミーとも)ですかね。ホーメイはモンゴルなどに伝わっている、声に倍音があってひとりで2声、3声に聴こえる歌唱法です。それの歌い手がたまたま知り合いでですね(笑)。

──たまたまよくいましたね(笑)。

ミト たまたまホーメイの人が知り合いでして、そのふたりを呼びました。押山清高監督が面白い方で、結構トライバルな楽器がお好きなので、自分で口琴を入れたりとか「これにはディジュリドゥ(オーストラリア大陸の先住民・アボリジニの管楽器)を入れてほしい」とお願いされたりしましたね。この面子だからハマりましたけど、ほかの現場でやったら事故が起きますよ(笑)。

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