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INTERVIEW

2016.11.09

TVアニメ『フリップフラッパーズ』ED主題歌「FLIP FLAP FLIP FLAP」TO-MASインタビュー Vol.2

だからTO-MASって全員日本人なんですけど、出身国が違う感じがしますよね

──お互いに驚かせ合いのような制作過程なんですね。

ミト 松井くんは楽器を触れる人じゃないですけど、オーディオを切って貼ってという作業ができる人なんですよ。

松井 「これテンポ違うわ」「これキー違うわ」と思ったら、「じゃあテンポとキーを合わせよう」「こぼれたから合わせよう」と(笑)。

ミト それが彼のTECHNOBOYSたるゆえんである、マッドサイエンティックなエディット(編集)なんです(笑)。でも歌モノとしてちゃんと成立しているうえで、私が作った劇伴のメロからは離れていかないんですよ。

松井 だからTO-MASって全員日本人なんですけど、出身国が違う感じがしますよね。文化が違うというか。真澄さんは伊藤真澄という国から来て、ミトさんはクラムボンという国から来て、僕はTECHNOBOYSという国から来て、ここで出会ってお互いに何か面白いことができないかと話し合って。それぞれが「うちの国ではこういうノリ方するんだよ」というのを受け入れてくれるんですよね。

──たしかに物作りの文化圏がそれぞれに違うんですね。

伊藤 だけど、最初からすごく自然でしたよね。

松井 お互いのことを全然知らないからこそ、できることだと思うんですよ。ちょっとでも自分と相手の文化圏が被っていると、「ここは譲れない」というのが出てきてしまうじゃないですか。でもこの3人は、その譲れない部分が全く被らないんですよね。

ミト そうだね。今のところはぶち当たったことはないですね。

松井 せいぜい「行き過ぎる部分をどこで止めるか」くらいですね。そうそう、劇伴制作のなかで「OP主題歌(※ZAQの「Serendipity」)のインストを作る」という作業があったんですよ。それで「ミトさんのギターと真澄さんのピアノでシンプルに作りましょう」という話になって、そしたらふたりがその場で曲を聴いて覚えて、すぐに演奏を始めるんですよ。

伊藤 譜面もなかったよね。

ミト なかったですね。

松井 それでできちゃうんですよ、このふたりは。でも唯一の問題が、2人ともその演奏を延々と続けてるんです(笑)。誰も止めないんで。「おいおい……いい加減、そろそろ終わりにしましょうよ!」ということで、僕がふたりを止めにいくんです。

伊藤 すみません(笑)。あれは松井さんが指揮してくれましたね。

──それでもう、アレンジの方向性が固まってしまうんですね。

ミト 全体で20分くらいですかね。5分で全員聴いて、「メロわかる?」「わかんなかったらわかんないでいいんじゃない?」みたいな感じで(笑)。演者として即興セッションのスキルもあるし、それをディレクションしてくれる役割として松井くんもいてくれる。だからリアルタイムの、ジャム・セッションでの制作もいけちゃうんですよ。もちろんスコアも書けますしね。

松井 今回のレコーディングに至っては、真澄さんのピアノを録って、そのトラックを僕がもらって、次の曲のレコーディングの最中に同時進行で編集したりしていましたから。おそらく普通はしないですよね。

ミト それでできあがっちゃうんだから、すごいんですよねえ。

しかもまた、見えにく~いパスをしてくるんですよ(笑)

──TO-MASの皆さんの制作における方法論などを伺うつもりで来たのですが、すべての回答が想像を絶していて言葉を失っております(笑)。

ミト 普通は無理ですよ。

松井 でもやっていてあんまり違和感はなかったですよね。

伊藤 全然なかったですね。でもたしかにすごいかもね。

松井 何かやったときに「面白いと思ってくれる」か「全部拒絶される」かの2択だったら、みんな「面白いと思ってくれる」人だったってことですよね。

伊藤 いつも褒めちぎり合いながらやってますからね(笑)。「最高ー!!」「素晴らしい!!」って。

松井 それがある意味でいちばん出たのが、ED主題歌じゃないですかね。3人の面白いと思うことがまとまっていると思います。「FLIP FLAP FLIP FLAP」は音の方法論をみんなで出し合っていて、「OVER THE RAINBOW」はアイデアの方法論を全員で出し合ったイメージがありますね。だから後者に関して僕は「音は入れなくていいですよね」という姿勢でした。完成した音に対して何もアプローチする必要がないときは、あえて動かないこともあるんです。

──「メンバーだから」と、無理に自分のエッセンスを足すということはないわけですね。

松井 「自分も入れなきゃ」とは思わないですね。例えばTO-MASとしてミトさんが作ったものに僕と真澄さんが「何もいじるところがない」と思ったら、おそらく何もしないですよね。

──そのうえで先程仰っていたように、「意図的に完成させずに持っていく」ということもあると。

伊藤 その通りです!

松井 「パス!!」って。

ミト しかもまた、見えにく~いパスをしてくるんですよ(笑)。

松井 「こんなところからボールが来るのかよ!」というね(笑)。

──「自分以外が遊んでくれた方が楽しくなりそう」という狙いがあるのでしょうか?

伊藤 そうそうそう。自分だけだと小っちゃい世界になっちゃうじゃないですか。それを広げてもらえるんですよ。

「にしても!(怒)」って書いておいてください(笑)

──「OVER THE RAINBOW」のお話にもなりましたが、パピカ役のM・A・Oさんとココナ役の高橋未奈美さんが参加されたこちらの楽曲のボーカル・レコーディングでは、何かTO-MASならではのディレクションなどはあったのでしょうか?

松井 ……ややこしいコーラスをつけて怒られました(笑)。

ミト それな!(笑)。ボーカルが歌をメインに活動している方ではないので、それなりのエクスキューズがあったうえでレコーディングに臨んだ方が事故が起こりにくいんですよ。でも松井くんは、ド頭から大事故が起こるような難解なコーラスを付けてきたんです。

松井 あっはっはっは(笑)。

ミト で、彼は「まあイケるっしょ」って言いながらプレイバックをたったの1回だけ聴かせて、「このラインなんで、じゃあ行きましょう!」って進めようとするんです。絶対無理ですよそんなの!(笑)。キャラソンというのは特に、声優さんへのエクスキューズもありつつお互いに支え合って作っていくんですよ。そうすることで良いものになることが多いんですよね。

──相手は歌が本業ではないわけですからね。

ミト ただし、これが凄いのですが、自分は声優さんを見くびってはいないかというふうにも思わせてくれたんです。最初からできないと思って突き放してはいないだろうかと、気付かせてくれた部分もあった……にしても!(笑)。

一同 (笑)。

ミト 「にしても!(怒)」って書いておいてください(笑)。普通はステイで、同じ音をずっと歌っているだけでもちゃんとハモリになるんです。でも松井くんの作るコーラスはめちゃくちゃ動くんですよ! 上とか下とか、長4度や短6度を超えるのとか、声優さんじゃない普通の歌い手でも難しいですよあんなの。それを1回聴かせて「だいたい覚えましたねー?」って、「覚えるわけないだろー!!」と(笑)。

松井 イケるかなーと思っちゃったんですよね(笑)。

ミト 「誰でもTECHNOBOYSじゃねえんだよー!」ってね(笑)。でもこれはこれで面白いことですよ。ディレクションするのなんて普通はひとりですけど、こちらは3人いるわけですから。私が「これくらいのピッチだったら大丈夫かな」と思ったら、真澄さんは「いや、まだまだイケるでしょ」って言ったり。

──歌い手のポテンシャルを引き出せる皆さんだからこそ「もっとできる」と、さらに上を狙ってしまうのかもしれませんね。

ミト それにしてもM・A・Oちゃんと未奈美ちゃんは、ふたりともスペックが高かったなあ。M・A・Oちゃんとはほかでもお会いしてますけど、最近また格段にレベルが上がってましたよ。

松井 いやー、うまかったですねえ。

伊藤 ねえ。すぐに終わっちゃった。

ミト 未奈美ちゃんはコーラスやハモリもうまかったので、音感のセンスが良いんでしょうね。

──結局、松井さんが作ったコーラスはそのまま使われているんですか?

ミト もちろん使われておりますよ。でもコーラスのラインに関しては、今後は1回チェックを入れようかな(笑)。

松井 今回も一応譜面は出したんですよ!(笑)。

ミト 聴いた時点では気付かなかったんですよ。短6度も超えてるなんて思わなかった。普通は上と下がそんなに離れていたらパートをふたつに分けるんですけど、ひとつのコーラスにまとまってるし……。

──上ハモと下ハモを重ねて3声にするのではなくて、ひとつのコーラスが上と下に動くんですか。それは難しそうですね。

伊藤 やっぱり聴いた感じが自然だったんですよ。だから違和感がなかったんじゃないかな。

松井 僕は「歌は続けて歌ってほしい」という気持ちがあるんですよ。「ここは弦の音と当たるから変えよう」というのもあったりして、その辺りは現場での変更もありましたね。そのときはまだ弦は録っていなかったんですけど、真澄さんには先が見えていたので。

ミト そういう調整は、私や真澄さんはよくやっていることですからね。和声はこちらで確認して、そこに自由に当てていく松井くんがいて、だからやっぱり独特な個性になるのかもしれません。

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