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REVIEW&COLUMN

2017.01.11

村川梨衣『RiEMUSiC』レビュー

村川梨衣『RiEMUSiC』レビュー

自身の音楽“RiEMUSiC”をタイトルに名付けた1stアルバムが完成。ポップなサウンドに明るい歌声があふれる全12曲を収録。

『のんのんびより』一条 蛍役、『ご注文はうさぎですか?』メグ役、『エスカ&ロジーのアトリエ~黄昏の空の錬金術士~』エスカ・メーリエ役、『ビビッドレッド・オペレーション』二葉あおい役、『アイドルマスター ミリオンライブ!』松田亜利沙役、『トリニティセブン』倉田ユイ役などで知られる声優の村川梨衣

2016年、自身の誕生日となる6月1日には、TVアニメ『12歳。~ちっちゃなムネのトキメキ~』のオープニングテーマを収録したシングル『Sweet Sensation/Baby, My First Kiss』をリリースし、アーティストとしてデビューを飾った。同年11月2日にはTVアニメ『私がモテてどうすんだ』エンディングテーマの2ndシングル『ドキドキの風』をリリース。そして、2017年1月11日には1stアルバムとなる『RiEMUSiC』をリリースした。

自身の音楽を“RiEMUSiC”と名付けている村川梨衣だが、それがそのままアルバムタイトルとなっている今作。演技と同じぐらい歌うことが大好きだという彼女の明るい歌声があふれんばかりに収められている。

「Baby, My First Kiss」

2016年6月リリースの両A面デビューシングル『Sweet Sensation/Baby, My First Kiss』に収録のナンバー。作曲・編曲は、i☆Ris、petit milady、また『プリパラ』などの楽曲を手がけているhisakuni。最近では内田 彩のシングル『SUMILE SMILE』に収録されている「Everlasting Parade」や、山崎エリイのデビューアルバム『全部、君のせいだ。』へ提供した「ドーナツガール」などの楽曲も印象深い。今作には、GS歌謡の雰囲気も漂う「クリームソーダとエンドロール」も提供している。

恋が始まる様子をミッドテンポのメロディで綴る、hisakuniらしい華やかなサウンドは、初期のカイリー・ミノーグをちょっと思い出すようなキュートなテクノポップ。ハイレゾは80年代のUKサウンドのようなベースシンセも引き立つ仕上がりで、程よいバランスで低域が繰り出すグルーヴが心地好い。またちょっとレトロなティーンズ・ポップを演出するエレドラの響きも抜けが良く感じられる。立体的な音場の中、ときめきを描く淡いタッチのシンセや高鳴る胸の鼓動のような煌びやかな鐘の音、サビ前に連打される808系のクラップなど、カラフルなサウンドが鮮やかに弾ける、爽快感に包まれる。

ヴォーカルは抑えきれない気持ちを映し出すようにやや前のめりな勢いがあり、ビートのアクセントとともに語頭での強い抑揚やサビの“大人にはまだなれない”のファルセットからも高まる恋心が伝わってくる。健気さといじらしさのニュアンスを交え、合間には朗らかに弾むコーラスを挟みながら、サビでは開放的なヴォーカルが明るく花開く。二人のキスシーンを描く“Baby baby My First Kiss, It’s you”のフレーズも清々しい。

「Anytime, Anywhere」

作詞は、the ARROWSの坂井竜二。作曲は、『ぱにぽにだっしゅ!』『ひまわりっ!』(妹尾 武との共作)『ネギま!?』や、『花物語』『憑物語』『終物語』ら〈物語〉シリーズのファイナル・シーズンの音楽を手がけた羽岡 佳。佐藤清喜とのコンビでは、petit miladyやFairy Story、チェインクロニクルキャラクターソングアルバム「ソングス・オブ・チェインクロニクル」などの作品に楽曲提供を行なっている。編曲は、元nice music、そして2016年に8年ぶりにNEWアルバムをリリースしたmicrostarの佐藤清喜。今作では、軽やかな疾走感に包まれる「Dreamy Lights」も手がけている。星野みちるや内田 彩、山崎エリイなどの作品に携わっている佐藤清喜だが、2016年12月にリリースされた井上ほの花『ファースト・フライト』にも参加をしている(ミックスは、おニャン子クラブからムーンライダーズまで数々のポップス・サウンドを支えてきたプログラマー/エンジニアの森 達彦。GANGWAYでおなじみ“Hammer label”のオーナーでもある)。

フィドルをフィーチャーした爽やかなサウンドは、クランベリーズやボビー・ヴァレンティノが参加したザ・ブルーベルズのアルバムの楽曲をイメージさせるようなアイリッシュ~スコティッシュ・ラインのギターポップ。その美しいメロディに村川梨衣の柔らかな歌声が重なると2000年前後のアニソンのような、懐かしい記憶も呼び起こす。彼方まで広がる空間にフィドルがたなびく雲のように流れる旋律を踊らせ、楽曲に牧歌的な空気をまとわせる。乾いたスネアは瞬発力のあるビートを刻み、エレキギターはなめらかに奏でられる。たゆたうような背景と躍動的な音色が見事に調和しており、楽曲全体に夢心地な雰囲気を生み出す。

ヴォーカルはアクセントもまろやかな温かな質感で、リヴァーヴを多めにかけた“「もう いい かい?」”の呼び声が郷愁を誘う。サビではちょっと熱のこもったエネルギッシュな歌唱になるところが村川梨衣らしく、登りあがるサウンドと相まって昂揚感があふれ出す。透明感のある歌声がみずみずしく響き、伸びやかな抑揚も魅力的に伝わってくる。

春風のような柔らかい音が優しく広がる「ドキドキの風」
佐々倉有吾が手がけるゴシックさを加えたサウンドに情熱的な歌声が響く「Breath」
真夜中に轟くヘヴィなロックで妖しい魅力をふりまく「MaGiK」
華やかなサウンドが軽やかに走り抜ける「恋するパレード」
アッパーなトランス・サウンドにハイトーンのヴォーカルが浮かぶ「Eternal」
進む勇気を奮い立たせる力強い歌声にギターが絡み合う「戻れない旅」
明るく弾けるタッチで恋の予感を伝えるデビュー曲「Sweet Sensation」
内田 彩や壊れかけのテープレコーダーズの遊佐春菜らに楽曲を提供しているシンガーソングライター金子麻友美によるセンチメンタルなラブソング「夜明けの恋」

何処へ向かうのか予断を許さないトークが特徴でもある、テンションの高い普段の本人のイメージとは裏腹に、ヴォーカリストとしての確かな技量をしっかりとアピールした今作。ロックや打ち込み、歌謡や洋楽志向のナンバーまでごく自然に歌いこなす歌唱力は、サウンドの幅が今後ますます広がりそうな期待をいだかせる。“RiEMUSiC”はまだ底知れぬ可能性を秘めているようだ。

COCX-39786村川梨衣
RiEMUSiC

日本コロムビア
2017.01.11

FLAC・WAV 48kHz/24bit

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 収録曲

 1.Anytime, Anywhere
   作詞:坂井竜二 作曲:羽岡 佳 編曲:佐藤清喜

 2.Dreamy Lights
   作詞:渡部紫緒 作曲・編曲:佐藤清喜

 3.ドキドキの風
   作詞:中村彼方 作曲・編曲:坂部 剛

 4.Breath
   作詞・作曲・編曲:佐々倉有吾

 5.MaGiK
   作詞・作曲・編曲:鈴木裕明

 6.恋するパレード
   作詞:大西洋平 作曲・編曲:横関公太

 7.クリームソーダとエンドロール
   作詞・作曲・編曲:hisakuni

 8.Baby, My First Kiss
   作詞・作曲・編曲:hisakuni

 9.Eternal
   作詞:大西洋平 作曲・編曲:横関公太

10.戻れない旅
   作詞:坂井竜二 作曲・編曲:松坂康司

11.Sweet Sensation
   作詞:渡部紫緒 作曲・編曲:持田裕輔

12.夜明けの恋
   作詞・作曲:金子麻友美 編曲:佐藤清喜

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