TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUND『trinity heaven7 : MAGUS MUSIC REMIXES TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUND』レビュー

ポップなトラックとキュートなヴォーカルが炸裂!リミックスの面白さを極めた刺激的なアルバム。

2014年1月より放送されたTVアニメ『ウィッチクラフトワークス』では、EDテーマ「ウィッチ☆アクティビティ」を始め、劇伴、数々のキャラソンを手がけ、多彩なサウンドを披露したTECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUND。続いて2014年10月にはTVアニメ『トリニティセブン』でもEDテーマと劇伴を担当。EDテーマは8人のヒロインがユニットを組み、それぞれ4曲を歌唱(ヴォーカルのみを差し替えた別ヴァージョンではなく、4種類の書き下ろし曲)。これらEDテーマとサウンドトラックに収録されている7曲、そしてZAQによるOPテーマ「Seven Doors」をリミックスしたアルバムが『trinity heaven7 : MAGUS MUSIC REMIXES』。

通常のリミックス・アルバムは多数のアーティストがリミキサーとして参加して出来上がるものだが、今作はすべての曲をTECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUND(以下、TECHNOBOYS)自らがリミックスを行なっている(ZAQ作曲のOPテーマもTECHNOBOYSがリミックス)。『ウィッチクラフトワークス』のサウンドトラックでも「ウィッチ☆アクティビティ」のリミックスをした彼らだが、さすがに全曲は初めてのことで非常に珍しい試みだ。『らき☆すた』のリミックス・アルバム第2弾『らき☆すた Re-Mix002~『ラキスタノキワミ、アッー』【してやんよ】~ 』でもエッジの効いたテクノを聴かせたTECHNOBOYSだが、このアルバムでもエクスペリメンタルかつ、洒脱なポップサウンドが飛び出す極上のリミックスに仕上げている。

レコーディングは96kHz/32bitで行なわれ、「TECHNOBOYS第四のメンバー」と言われるプロデューサー・佐藤純之介がミックス。マスタリングはCD、ハイレゾともにYMOのレコーディング・エンジニア、小池光夫が手がけている。CDは音の尖り具合やパワフルさが刺激的で、ハイレゾは音の生っぽさや空気感が濃厚。それぞれのマスタリングの方向性の違いがうかがえて興味深い。先鋭的な高音質のレコーディングに対して積極的に取り組んでいるTECHNOBOYSだけに、今作のハイレゾも解像感や空間描写が優れており、オーディオのリファレンスとしても使用できるクオリティに仕上がっている。

「BEAUTIFUL=SENTENCE(IS IT A BEAUTIFUL WORLD?)」

メイガス・トゥー【浅見リリス(CV.原 由実)&神無月アリン(CV.内田 彩)】歌唱によるエンディングテーマ第1弾シングルである、テクノポップ・テイストの原曲とは打って変わり、リミックスは静謐な雰囲気が漂う室内楽アンビエントポップ。雑踏の足音やこだまする独唱のSEがピアノの静かな音色と絡み合うメランコリックなサウンドは、窓には鉛色の雲に重く被われた空が広がるヨーロッパ映画のワンシーンといったモノクロームのイメージを想起させる。

トラックは音数も少なくリズムも入らず、そのためヴォーカルの存在がアカペラのように際立つ。そして解像感が繊細な高域の声質を、息遣いまでをリアルに伝える。ゆっくりと時間が進むようなサウンドに矢継ぎ早に折り重なる2人の巧みなリリック、また美しく声が重なるユニゾンが印象的だ。またハイレゾでは音の配置とそれぞれの残響により奥行きのある空間を構築していることがよく理解できる。

「BEAUTIFUL=SENTENCE」をTECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUNDがカヴァーし、さらにリミックスを施した「Nervous Sightseeing(IT’S A BEAUTIFUL WORLD)」を今作のラストに収録。TB-303によるアシッドさが昂揚感をさらに煽る仕上がりで、英語によるヴォーカルがエンディングテーマ原曲とはまた違ったクールな感覚をもたらす。

「SHaVaDaVa in AMAZING♪(OUT OF LOGIC)」

原曲はエンディングテーマ第2弾のシングルで、ユイレヴィ♡【風間レヴィ(CV.佐倉綾音)&倉田ユイ(CV.村川梨衣)】による歌唱。原曲の雰囲気をそのままにグルーヴ感が増したリミックスでは、まずイントロのチョップされたヴォーカルが鮮烈に響く。原曲のヴォーカルを生かしつつ、さらに刻んだスキャットを加えることでキュートな声の魅力が倍増。リヴァーブまでも精緻に捉えた情報量がその活き活きとした表情を映し出す。またリズムを作り直すことにより、スレンダーでスピード感あふれるサウンドになっており、フジムラトヲルによるベースプレイも曲の勢いをグイグイと引っ張る。ヴォーカルとの一体感が絶妙な、そしてフロア映えするトラックは、アニメファンからクラブ好きまでを魅了する刺激的な仕上がりとなっている。

この曲のチャームポイントであるスキャットに焦点を当てた「MISCHIEF!(MORE CUTE)」では、声優ならではの声の可愛さが所狭しと弾けだす。トロヴァヨーリやピッチオーニなどのイタリア映画音楽風の原曲から、初期YMOのようなフュージョンとテクノポップが入り混じったサウンドへと変化したリミックスは、エフェクトがかかったスキャットがコラージュのように散りばめられており、左右から囁かれるスキャットの甘い嵐に陶酔できる。

「TRINITY×SEVENTH+HEAVEN(TRUTH BEGINS)」

第3弾となるエンディングテーマの歌唱は、Security Politti【山奈ミラ(CV.日笠陽子)&不動アキオ(CV.柚木涼香)】。原曲のデジタルなラテンファンクから、デジタルファンクへとシフト。Sequential Circuitsのドラムマシーン「Drumtraks」によるキック連打とホーンセクションの追加が、ミネアポリス・ファンクへの憧憬を映し出す。低域の分離感がProphet-5のベースラインを浮き彫りにし、量感も豊か。全体的にサウンドの躍動感が増したリミックスとなっており、音を詰め込んだ細いエディットもダイナミックなアレンジに埋もれずに聴き取れる。情報量の多さがヴォーカルの質感を浮かび上がらさせ、中低音部の倍音に大人の色香を漂わせる、2人のたおやかな歌声の立ち位置も定位良く表現されている。

「ReSTART ”THE WORLD”(inseparable relation)」

4番目のエンディングテーマは、TWINKle MAGIC【リーゼロッテ=シャルロック(CV.東山奈央)&セリナ=シャルロック(CV.洲崎 綾)】による歌唱。80年代中盤の日本のデジタルポップといった原曲が、イギリス流に調理されたようなリミックス。分離感と音の抜けが良くドラムマシーンのクラップとキックも華やかに響き、またシンセサイザーのキレも鮮やか。音色による質感の違いも丁寧に描かれており、凝った音響処理の細部までも把握できるサウンドのコントラストも強い。ポップなサウンドに漂うヴォーカルは、透き通るような響きが耳に心地好く、柔らかな輪郭を形作る2人の歌声が目の前でお互いに移り変わる、鮮やかな臨場感で伝わってくる。

 

ヴォーカル曲だけでなく、サウンドトラックに収録された曲のリミックスも面白い。高速シーケンスと繰り返されるフレーズが印象的な「TURN THE TABLES(ON THE FLOOR)」、エクスペリメンタルなダブミニマル「Spell Succeed(access circuit)」、洗練されたパルスエレクトロニカ「Alea iacta est!(endless game)」、クールな上ものにファンキーなベースラインが戯れる「MAGUS MODE」、ジャーマンエレクトロと現代音楽が融合した「LAST CREST(miserere nobis)」など、どれも魅惑的な女性ヴォイスと疾走するトラックが刺激的だ。

一聴してわかるのが粒立った音が飛び出してくるような高品質なサウンド。TECHNOBOYSは、ソフトシンセではなくアナログシンセサイザーにこだわり楽曲制作を行なっているが、ハイレゾではその音の勢いが損なわれることなく、スタジオからそのまま届けられたような鮮度を感じられる。ハイレゾはアコースティック楽器が生々しく聴こえると言われるが電子楽器もその通りで、シンセサイザーやドラムマシーンの本来の音を再現できるのもその強み。このアルバムではそんなアナログシンセの「生っぽさ」やマシーンビートの太さを体感できる。

これらリミックスではトラックを新たに作り直し、声の素材を多用しているが、メロディとヴォーカルを残してサウンドを再構築しているため普段リミックスを聴かない人にとっても親しみやすく、また『トリニティセブン』を知らないリスナーが聴いても充分に楽しめる内容となっている。

音楽の新しい解釈、新しい楽しみ方を、新たな切り口で提示するリミックスの醍醐味がたっぷりと詰まっているこのアルバム。作品の世界観を失わずに、しかしそこからさらに跳躍するイメージをスリリングなサウンドで作り上げている。原曲とリミックスの関係が音楽の進化/深化を促すような内容で、TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUNDの才気溢れる素晴らしい出来映えだ。

なおリミックス原曲であるエンディングテーマ・シングル、また劇伴を収めた41曲(CDの40曲にハイレゾ版のみ1曲追加)サウンドトラック『TRINITY SEVEN : MAGUS MUSIC ARCHIVE』もハイレゾで配信されている。リミックスと聴き比べるとそれぞれ意図する所が理解できて、面白さがさらに倍増する。

TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUND
trinity heaven7 : MAGUS MUSIC REMIXES TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUND

avex pictures
2015.03.25

FLAC・WAV 96kHz/24bit

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 収録曲

 1.TURN THE TABLES(ON THE FLOOR)
   作詞・作曲:TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUND

 2.Seven Doors(TRINITY FORM)
   ZAQ
   作詞・作曲:ZAQ

 3.BEAUTIFUL=SENTENCE(IS IT A BEAUTIFUL WORLD?)
   メイガス・トゥー【浅見リリス(CV.原 由実)&神無月アリン(CV.内田 彩)】
   作詞・作曲:TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUND

 4.MISCHIEF!(MORE CUTE)
   作詞・作曲:TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUND

 5.SHaVaDaVa in AMAZING♪(OUT OF LOGIC)
   ユイレヴィ♡【風間レヴィ(CV.佐倉綾音)&倉田ユイ(CV.村川梨衣) 】
   作詞・作曲:TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUND

 6.Spell Succeed(access circuit)
   作詞・作曲:TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUND

 7.ReSTART ”THE WORLD”(inseparable relation)
   TWINKle MAGIC【リーゼロッテ=シャルロック(CV.東山奈央)&セリナ=シャルロック(CV.洲崎 綾)】
   作詞・作曲:TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUND

 8.Alea iacta est!(endless game)
   作詞・作曲:TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUND

 9.MAGUS MODE(TRINITY FORM)
   作詞・作曲:TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUND

10.LAST CREST(miserere nobis)
   作詞・作曲:TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUND

11.TRINITY×SEVENTH+HEAVEN(TRUTH BEGINS)
   Security Politti【山奈ミラ(CV.日笠陽子)&不動アキオ(CV.柚木涼香)】
   作詞・作曲:TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUND

12.Nervous Sightseeing(IT’S A BEAUTIFUL WORLD)
   作詞・作曲:TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUND

©サイトウケンジ・奈央晃徳/KADOKAWA 富士見書房/トリニティセブン製作委員会

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