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INTERVIEW

2017.08.09

TVアニメ『魔法陣グルグル』ED主題歌 「Round&Round&Round」 TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUND feat.ボンジュール鈴木 インタビュー

フジムラトヲル、石川智久、松井洋平によるテクノポップ・ユニットのTECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUNDが、ニュー・シングル「Round&Round&Round」をリリースした。

彼らが劇伴を手がけるTVアニメ『魔法陣グルグル』のED主題歌として制作されたシングル表題曲は、アーティスト/クリエイターとして数多くのアニメ作品に関わるボンジュール鈴木をシンガーとしてフィーチャー。彼女の甘いウィスパーボイスと全編アナログシンセによる躍動感いっぱいのサウンドがアニメの世界を華やかに彩る、お互いの音楽性が見事に合わさったポップ・チューンとなっている。

そんな相性の良さを見せる2組のコラボは、いったいどのようにして実現したのか。今回はTECHNOBOYSの3人とボンジュール鈴木に集まっていただき、「Round&Round&Round」の話題を中心にたっぷりと語ってもらった。

Interview & Text by 北野 創
at Lantis

TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUND feat.ボンジュール鈴木
「Round&Round&Round」のレビューはこちら

懐かしくてキュンとなる「Round&Round&Round」

───今回、ボンジュール鈴木さんをボーカリストとしてフィーチャーした理由はなんでしょうか?

松井洋平 最初はプロデューサーから、僕らとボンジュールさんで一緒に何かやると面白いんじゃないかと言われ、音源なども聴かせていただきました。エレクトリックな表現の共通項とフランスチックな表現の異質感が僕らと組み合わさったときにどんな表現になるのか?なにより、『グルグル』という作品の持つかわいらしさの部分にボンジュールさんの声を使わせていただきたいと思い、このタイミングでお声がけさせていただきました。

───ボンジュールさんはTECHNOBOYSさん側からお話をいただいて、いかがでしたか?

ボンジュール鈴木 私は以前からTECHNOBOYSさんの手がけられた作品やアニメのサントラを聴かせていただいてたので、とても光栄なお話ですごくビックリしました。TECHNOBOYSさんの楽曲はコードを取るのが難しくて、私では解明できないくらい難しいことをされているのに、完成形はポップなものになっていて、私がやりたい理想の音楽の最終段階のことをやっていらっしゃっていて。たくさん勉強させていただいています。

フジムラトヲル ありがたい話ですけど、この最終段階はどうなんでしょうねえ。

石川智久 だって仕上がりが(自分たちを指して)これになるんだよ。

松井 最終的にスーツ着ることになるよ(笑)。

石川 ローリー・アンダーソンみたいになるかもね。

アメリカのアートシーンで活躍するアーティスト/パフォーマー。前衛かつポップな電子音楽を発表しており、なかでも「O Superman」(1981)は人気が高い。跳ね上った髪の毛とメンズっぽいスーツ姿は、その頃の彼女のトレードマーク。夫はルー・リード。

───それはそれで見てみたいですが(笑)。そうして実現した初のコラボ曲「Round&Round&Round」は、TVアニメ『魔法陣グルグル』のED主題歌となっていますが、例えばアニメの制作サイドから楽曲についての具体的なリクエストはありましたか?

松井 今回は自由に作らせていただきました。

フジムラ なので、まず『グルグル』の原作を読んだうえで、僕らなりに解釈して作っていったんです。作品的には、いわゆる昔のアニメのエンディングみたいなエッセンスが合うのかなと思って、そういった楽曲を聴き直してみたりもしました。懐かしさみたいなものが出ればという話は最初の段階からしていましたね。

松井 だから全体的にノスタルジックな感じはあるかも。

───僕が最初に聴かせてもらって感じたのは、例えば矢野顕子さんの「春咲小紅」のような、昔のコスメ系CMソングに通じるポップス感だったのですが。

石川 すごい嗅覚。私が曲を作る場合においていちばん目標にしているのはそこなんですよ。それは今回の曲に限らず全部がそうなんですが。

松井 80年代の化粧品のCMソングが持ってるおしゃれ感ですね。

───楽曲自体はどのように制作を進めたのですか?

松井 基本的にいつもそうなんですが、骨子となる部分は石川が書きました。でも、この曲を作るときは全員いたよね?

フジムラ そうそう。彼が書いた曲をみんなで聴いて、その場で相談しながら作っていって。

石川 みんなが来る1時間ぐらい前に「もうすぐ来るから書いとかないとダメだなあ」っていうので書いて(笑)。

───ええっ!そんなに早く曲を書いてしまえるものなんですか?

石川 作ろうと思えばできますね。

松井 そこから1時間ぐらいで歌詞も出来ましたし(笑)。その場に僕ら3人とプロデューサーが揃っていたので、全員いるからOKが出るのも早いし、これ以上の速度はないから今書かないと損すると思って。

───そこはやはり長年の付き合いだからこそ可能な連携なんでしょうね。ボンジュールさんは最初に曲を聴かれてどう思われましたか?

ボンジュール 私は放送されていた『グルグル』のアニメを拝見していたので、お話をいただいてとても感激しました。聴かせていただいて、とてもかわいい曲だったので歌うのが楽しみだったんですけど、今まであまり自分が歌ったことのないタイプの曲でしたので、新しい挑戦をさせていただきうれしかったです。

───歌詞でお気に入りのフレーズはありますか?

ボンジュール とても素敵な歌詞なので全部好きなのですが……“くるりプライマリー” “おしゃまなビスクドール”など、メロディーと歌詞が生み出すリズム感がかわいくて、自分で歌いながらもキュンってしちゃって……特にお気に入りです。

───松井さんが歌詞を書くにあたって意識したことはなんでしょうか?

松井 今回は100パーセント『グルグル』の曲というよりも、そこにうまくボンジュールさんの要素を混ぜたいと思っていたので、例えば2番の歌詞に“ビスクドール”という言葉を入れたり、アニメの世界観を壊すことのないフランス感のある言葉をいっぱい探して(笑)。ボンジュールさんの作品のジャケットのイラストには、そういう雰囲気がありますし。

───それとこの曲はサビの後半部分の譜割りが印象的ですよね。言葉がサッと吹き抜けていくような感じで、不思議な爽快感があります。

松井 あそこの16分の頭を食うところは、元々頭で打つつもりだったんですけど、「これ16分で食ったらカッコいいんじゃね?」って思ってしまって。

フジムラ 僕らは「これは難しいから無理だよ」って何回も言ったんですけどね。

松井 でも、してしまいました、ごめんなさい(笑)。ただ、あそこの滑っていく感じはこれまでに聴いたことないと思ったんです。だからその部分だけコードも変えてもらって調整しました。めちゃくちゃ難しいと思うんですけど、でも聴くとスルッと流れていく感じがあるんですよね。

石川 あそこはドラムも生で演奏すると難しいと思う。パーカッショニストのよしうら(けんじ)さんがシモンズでフィルを入れるときに「んんっ?」ってなってたからね。

フジムラ 僕もベースを録るときに「んんっ?」ってなりましたから(笑)。

一期一会なアナログシンセへのこだわり

───TECHNOBOYSさんは『魔法陣グルグル』の劇伴も担当されていますが、そことED主題歌で合わせた部分はありますか?

石川 劇伴ではソフトシンセを排除して、アナログシンセだけを使ったんです。生楽器も極力使わない方向で作っていて。ED主題歌もその流れでアナログシンセしか使ってないので、懐かしさが出たんだと思います。

松井 ファミコンの時代ってBGMに生音を入れられなかったですからね。

───そこは『グルグル』の世界観である昔のRPG感を意識した部分なんですね。ちなみに今回新規導入したシンセはありますか?

フジムラ いちばん活躍したのはMono/PolyとProphet-T8※※じゃない?

1981年にKORGより発表されたモノフォニック/ポリフォニック・シンセサイザー。KORGは同年、ポリフォニック・シンセサイザー「Polysix」も発表。
※※「Prophet-5」などで知られるSequential Circuitsが、1983年に発表したポリフォニック・シンセサイザー。ハワード・ジョーンズやトンプソン・ツインズらが愛用していた。なお1983年には、ヤマハよりデジタルシンセの名機「DX7」が発表されている。

松井 たしかにMono/Polyはすごかったなあ。劇伴の制作の終盤くらいに届いたんですけど、石川くんが何か言ったらMono/Polyを入れようってなって。アニメでも展開ごとに使われてるんじゃない?印象的な駆け上がりのフレーズとかは大体Mono/Polyですね。

石川 「Mono/Polyはシンセ感がある!」って(笑)。ED主題歌のサビからAメロへチェンジするところの〈デロデロデロ〉っていうフレーズもMono/Polyですね。

松井 この話、誰か喜ぶの?(一同笑)

───でも、それだけ活躍したということはMono/Polyに独特のアジがあるということなんでしょうね。

石川 そうですね。昔にDumb Typeがよく使っていたシンセなんです。今ちょうど山中(透)さんのライブサポートをしているので、彼にMono/Polyの特色を教わったりもしたんですけど、高級なシンセサイザーではないので扱いが難しいんですよ。

松井 やっぱりMono/Polyに限らずシンセごとのよさがあるんですよね。Prophet-T8がなかったらあんなにオーケストラ感は出なかっただろうし、それぞれに使いどころがあるんです。

石川 昨年、お亡くなりになった冨田 勲さんはシンセサイザーで口笛の音を作ったりしてたじゃないですか。ああいうすごくめんどくさいことを『グルグル』の劇伴でやってるんですよ。もうシンセからオーボエの音が出た日には大騒ぎですから(笑)。

ボンジュール すごいこだわりですね。

石川 そういうことをEDでもやってるんです(笑)。

ボンジュール 私はハードシンセは2個しか持ってないので、どういうふうにすれば皆さんのような音が出せるのかわからなくって。ミュージシャンの友だちもみんな、TECHNOBOYSさんの音作りは勉強になるって言っています。

フジムラ みんな何を勉強してるんですか(笑)。

松井 試しに俺らで塾でも開いてみるか。「今日はオーボエの音を作りますのでT8を持ってきてください」って(笑)。

石川 それ、「今日はできませんでした」で終わるよ(笑)。

フジムラ でも、僕らの音は偶然性が大きいので、ほかの人が解明するのは難しいんですよね。ハードシンセを使ってるときも、ツマミを間違えて触ってしまったけど結果的に良い音になるみたいなことがよくあるし。

松井 少し話が逸れますけど、冨田さんが出演していた昔のドキュメンタリー番組の映像を観てたら、神戸の中学校のシンセサイザー部の人たちが出てきたんですよ。そこの副部長の女の子の発言がめちゃくちゃアツかったんです。「今日出る音が明日出るとは限らない」って(一同爆笑)。

松井 それを一緒に観てたオレと石川はジーンときてしまって。その瞬間にその女の子は今どうしてるのかネットで探したぐらいですからね(笑)。でも、その「今日出る音が明日出るとは限らない」という一期一会の精神で作ってる曲なんですよ。だからある意味、ライブでの再現は不可能なんです。

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