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INTERVIEW

2017.12.01

デビュー25周年アニバーサリー・プロジェクト第2弾シングル「ソフィア」リリース記念 奥井雅美インタビュー

デビュー25周年アニバーサリー・プロジェクト第2弾シングル「ソフィア」リリース記念 奥井雅美インタビュー

90年代にアニソンを進化させたアーティストのひとり、奥井雅美がデビュー25周年を迎えた。そのアニバーサリー・プロジェクトの第2弾シングルとなる「ソフィア」がリリースされた。TVアニメ『牙狼<GARO>-VANISHING LINE-』のEDテーマである表題曲も含めて、25年というキャリアを重ねた彼女が込めた、現在の世界に向けた歌とは。また25年のキャリアのなかでも激動の2000年代前半を彼女とともに振り返った。

――前回はリスアニ!Vol.30にてシングル「イノセントバブル」リリース前にインタビューさせていただきましたが、実際にCDがリリースになり、デビュー25周年というもの実感していますか?

奥井雅美 実はあまりなくて(笑)。でも「イノセントバブル」のリリース・タイミングでニコ生をやらせていただいたんですね。そこで少し実感したかな? その番組のために過去のことを思い出しながら年表を作ったんですけど、それを書いているうちにいろんなことを思い出して、「気づくと25年経ったんだな」って。気分は20代で止まっていたので、いろんなことがあったなって思いだしたというか。実感はないけどある、という感じですね。

――またその実感がソングライティングに反映されていくのかなと思うのですが。

奥井 たぶん、タイアップのものにはそれほどないかもしれないけど、カップリングにはすごく反映されていると思う。前回のカップリングの「あの頃の僕と今の僕」がまさにそうで、林原(めぐみ)さんのライブを観たことで生まれた歌詞だったし。やっぱり考え方とかは、25年大人になって歌詞に出ているんじゃないかなっていうのはあります。若いときはそこまで考えていなかったことを考えたり、大きく世の中を見るようになったかな?

――なるほど。

奥井 若い頃に書いた歌詞は、世間に対する不満などを含ませて書くことも多かったですけど、今は世の中に対する不満というより、もっと広いものになったというか。例えば今回のカップリング「THE COUNTDOWN」で書いた歌詞だと、テロや戦争を予感させる世の中をイメージしました。昔、ノストラダムスの大予言ブームの頃に書いた歌詞もあるんですけど、そこから何年も生きてきて、世の中に不満を言っている場合ではなくて、個々一人一人にに何かを伝えていかないといけないと思ってきたので、それを表現しました。昔は「なんでこうんなんだよ! 一生懸命頑張っているのに!」って世の中の理不尽なことについて歌詞を書いていたんですけど、そんなことも言ってられないというか。

――さて、そんななかデビュー25周年プロジェクトの第2弾シングルとしてリリースされるニュー・シングル「ソフィア」ですが、こちらはTVアニメ『牙狼<GARO>-VANISHING LINE-』のEDテーマとなります。JAM Projectも含めて、『牙狼<GARO>』との付き合いも非常に長くなりましたね。

奥井 そうなんですよ。代表曲は「輪舞 -revolution」って言っていますけど、『牙狼<GARO>』の曲はJAMでも書かせてもらっていますし、こちらも今の代表作という感じですし、そもそも『牙狼<GARO>』という作品が大好きなので。

――そのなかで本作から奥井さんが楽曲の着想になったものはなんでしたか?

奥井 今回は主人公のソードとソフィという女の子が『牙狼<GARO>』の世界とどういうふうにと関わってどう生きていくとかという歌詞で、最後まで観ると「なるほど」となるかもしれないですね。一見恋愛のことに見えるかもしれないんですけど、とにかくソフィのことを歌ったというか、彼女にイタコって書きましたね。で、ソフィという名前から「ソフィア」というタイトルが思い浮かんで。脚本も全部読んで歌詞に落とし込んだあとに、ソフィだけではなくいろんな人に合う歌詞にしていきました。例えばなんだか知らないけど運命に翻弄されるように自分も自分の周りも不幸ばかり…というときにこそ、誰かのために生きようと思って立ち上がる…そんな風に生きて欲しい、生きたい、という気持ちで……歌っています。

――一度作品のテイストに落とし込んだあとに、より広く刺さる歌詞に仕上げていくわけですね。

奥井 私はやっぱり現実でも使える歌詞にしたいと思っているんですよね。私の歌ってきたアニメ作品って基本的には気の強い、壁をぶち破っていこうとする主人公が多かったので、そういう意味ではやりやすかったのかもしれない。あと私のポリシーとして、暗いままで終わる曲にしたくないんですよね。最後にどこか、一筋の光を残したようなものじゃないとだめだと思っていて。人が聴くものなので、そこは言葉が難しいのですが“教育”として。子供たち向けに作っているわけではないんですけど、音楽は影響力があるものだと思っているので。

――そういった意味では、悲しげな導入から希望を持たせる最後まで、奥井さんの楽曲には物語性があると思います。

奥井 そうそうそう。起承転結ですよね、やっぱり。

――また同時にサウンドも、展開を広く感じさせるメロディアスな楽曲になりました。

奥井 私がそういうタイプかもしれませんね。落ち込んだままで終わりたくないというか、あとは人のせいにしたくない。

――そんな「ソフィア」のレコーディングはいかがでしたか?

奥井 レコーディングね、歌い出しの悲しいところを、最初は強気に行ったりいろいろ試して、最終的にこの感じにしていきました。普段私はあまり回数多く歌わないんですけど、頭のパートは何回か歌って、周りの意見も聞いて。そういうのが新鮮で楽しいんですよね、今までやったことのないチームだし。すごくいいですよね。

――前作の黒須克彦さんもそうですが、あらたなチームでの制作が今の奥井さんにもフレッシュに感じていると。

奥井 ゆくゆくは出したいと思っているアルバムに関しては、いろんな人に書いてもらおうと思います。書きたいって手を挙げてくださる方にはなるべくお願いしたいし。今回のプロジェクトでもアルバム、そしてライブを最終目標にしているので、そこまで自由にやってみたいというのがありますね。

考えて、意識を変えていくための“音楽”

――続いては冒頭でお話いただきました「THE COUNTDOWN」について。これもSNS上で歌詞を書き直したとおっしゃっていましたね。

奥井 これも最初は恋愛の歌詞を書いていたんですけど、「違うな」って。友達と話をしたり、自分でもいろいろ思うことがあって。

――こうしたヘヴィーなテーマはJAMで歌われそうなイメージがありましたが、改めてこうした重いテーマに至ったのは?

奥井 明日が当たり前に来ると思うなという、もしかしたら世界がカウントダウンに入っているんじゃないかってことを最近思っていて、そこでみんなどう生きたらいいのかって不安になったりするじゃないですか。そうした事件や悲劇が起こらないようにするにはどうすればいいのかなって思ったときに、やっぱり一人ひとりがもっと考えないとというか……なんていうのかな、最近は“自分が自分が”って自分さえよければ…という人が多い世の中だと思うんですよね。これってちょっとスピリチュアルな考えなんですけど、地球規模で起こっていることって、個々のそういう考えや生き方が大きく映し出されるのかなって。最近変な事件も多いじゃないですか。それってそれに目を逸らすなっていうことでもあるのかなと。もっと他人のことを気にしたり優しくなったりすれば、大きく言うと戦争は抑えられるんじゃないかなって。

――世界に警鐘を鳴らすテーマや平和についての曲はこれまでも歌ってきましたが、よりそれがリアリティを感じてしまう昨今だからこその「THE COUNTDOWN」なのかなと。

奥井 うん。当たり前のように音楽を作っていて、それがあと何年できるのかっていうのをリアルに感じてしまったんです。それを歌詞に書いて、世の中の人に考え方も変わっていく活動をしてほしい、そうやって戦争やテロを未然に防いでほしいと思う。そうじゃないとヤバイよって。それをなんとか音楽で表現したかったんです。

――“音楽には影響力がある”と先ほどおっしゃったばかりですが、この曲もまさにそういう願いがある。

奥井 やっぱりね、もっと考えなきゃいけないんですよ。みんなニュースを見て考えてはいると思うんですけど。若いときからちょっと重いものも書くんですけど、それが当時よりリアルになってきちゃったという。

シーンを代表する女性シンガーが迎えた、“変革”の2000年代

――さて、ここからは奥井さんの25年の歴史についてさかのぼってお話します。前回リスアニ!Vol.30ではデビューから90年代までのスターチャイルド時代についてお話を伺いました。今回はその続きになります。

奥井 2000年の頭からね。

――やはり奥井さんの歴史を聞くときには、新世代アニソンの扉を開いた90年代か、独立したevolution時代のことが多いと思うのですが、その間のお話、いわばスターチャイルドを離れ、evolution設立までの頃のお話は意外と少ないんですよね。

奥井 当時はあまり言えなかったことが多いから(笑)。スタチャを出たこともあまり話してないからね。スタチャを辞めたのはけじめをつけるためにやめたんですけど、矢吹(俊郎。奥井雅美の初期プロデューサー)さんと袂を分かつときに、一緒にやってきたからというのでけじめをつけたかった。あと本当は、当時いろいろあってもうアニメをやりたくなかったんですね。

――1993年のデビューから2001年までの間のリリース量は尋常じゃなかったですからね。

奥井 私も他のいろんなチームとも音楽をやりたい時期でしたから。なので矢吹さんと離れて、そのすぐ後の2000年の赤坂BLITZでのバースデイ・ライブで矢吹さんチームと共にやってきたバンドさんも最後にし、新しく心機一転カラーを変えました。結果、荒削りではあるけど勢いのある若いメンバーに変わりました。その後「アニメをやりません」と言ってアニメではない部署へ行きました。

――これまでやってきた場所から離れての活動は並大抵の決意じゃできないと思うんですが……。

奥井 最終的にそのあとキングレコードも離れるんですけど、そこでインディーズでやろうかとかどうしよかって考えていた時に現在MAGES.社長の太田(豊紀)さんと出会いまして。当時ドワンゴの副社長さんでね。私がドワンゴのCM曲(「SECOND IMPACT」)を担当させていただいたことがあって、めぐちゃんがナレーションをやっていたやつ。そのご縁で“アニサマ”の話があり「手伝ってください」となって。その流れでevlutionを立ち上げました。

――れが2005年の“Animelo Summer Live”の立ち上げに繋がっていくと。重大な決意でしたが、それがのちの大きな結果になっていったんですね。

奥井 その前にJAMにも入ってスタチャからJ-POPの部署に移って、そこでいろいろなことができて、林田(健司)さんたちとも会えたし、楽しくて良い経験もたくさんできましたから。

――林田さんのほかにも森田純正(Monta)さんや鈴木Daichi秀行さん、MACARONIさんなど、以降の奥井さんの楽曲に深く関わる人と出会っていくわけですね。

奥井 そうそう。

――ちなみに、JAM Projectの加入は2003年ですが、この時期に加入に至った経緯は?

奥井 これは大月(俊倫。当時スターチャイルドのエグゼクティブ・プロデューサー)さんの提案です。私がJ-POPの部署に移ったあと、大月さんから「あなたやっぱりアニソンやりなさい」って話になって、『マサミコブシ』というアルバムを出したんです。あれはJ-POPの部署にいて、制作はスタチャなんですね。あとは米倉さんとr.o.r/sを組んだりしていましたが……今だから言うけど、JAMにあまり入りたくなかったんですよ(笑)。それに周りも反対したんですよね、確立している世界観が違いすぎるから。

――たしかに、水木一郎さんや影山ヒロノブさんが築いてきたアニソン・シーンのカウンターが奥井さんたちが作った90年代アニソンだった、という構図からも、JAMに奥井さんが入ることは相当な衝撃でした。

奥井 ファンも少しネガティブな意見があったんですけど、やっぱりチャレンジでもあったし、あとレイジーのファンだったからね(笑)。兄さん(影山ヒロノブ)が当時よく言ってくれていたのは、「奥井ちゃんはひとりでやっていて確立しているからびっくりした」って。でも入るなら自分が得たいろんなことをJAMへ提示していこうと思いましたね。やるんだったらプラスにしていきたい。それを兄さんや井上(俊次。ランティス社長)さんも前向きに聞いてくださったんですよね。

――事実、奥井さんと福山芳樹さんの加入を経た2004年以降のJAM Projectはサウンドからライブ・パフォーマンスまで大きく変容していきましたよね。

奥井 そうですね。そこに福ちゃんのカラーも入ってきたから。ふたりともコーラス好きでしょ? 自分たちでコーラスを考えるようになっていって。それで意識が変わっていったんですよね。

――そしてこのひとつのきっかけがJAMとしても、アニソン・シーンとしても現在まで大きな意味を持ちました。

奥井 私も本当に入ってよかったと思う。今でも応援してくれる人たちがいるし、私も大人になってきたし。きっとソロだけでは限界があったと思う。

――やはり奥井さんの、未来を切り拓いていくという精神があっての、この25年なんですね。

奥井 そう、だからポリシーとしては「来たものは断らず受ける」試練かもしれないと思ってもピンチはチャンスだって、私は身をもって体験したので。“アニサマ”もそうですけど、言われたことを100パーセント以上の力を出すつもりでやっていくことなんじゃないかなって思いましたね。あとレコード会社をやったことで、CDの帯ひとつとってもいろんなスタッフがいて、お金がかかっているんだなって思うようになりました。私だけじゃなくて当時のスタッフもそれがあって今があると思うし。だから、そう考えると大月さんにも感謝ですね。たまにSNSで話すんですよ。……でもきっと当時のことは覚えてらっしゃらないかな(笑)。

Interview&Text By 澄川龍一(リスアニ!)


●リリース情報
TVアニメ『牙狼<GARO>-VANISHING LINE-』ED主題歌
「ソフィア」
11月22日発売

品番:LACM-14690
価格:¥1,200+税

<CD>
1.ソフィア
作詞・作曲:奥井雅美  編曲:長田直之
2.THE COUNTDOWN
作詞:奥井雅美  作曲・編曲:丸山真由子
3.ソフィア (Off Vocal)
4.THE COUNTDOWN (Off Vocal)

<奥井雅美プロフィール>
オクイマサミ/3月13日生まれの女性シンガー/ソングライター/プロデューサー。松任谷由美のバックコーラスを経て、1993年に「誰よりもずっと…」でデビュー。以降、林原めぐみらとともにスターチャイルドにて、90年代のアニソン・シーンを牽引した。以降もソロだけではなくJAM Projectの一員としても活躍。現代アニソン・シーンを代表する女性シンガー。

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