劇場版 はいからさんが通る 前編 ~紅緒、花の17歳~ 花村紅緒役・早見沙織インタビュー

発売中の「リスアニ!」Vol.31では、3rdシングル「夢の果てまで」をリリースする早見沙織に、劇場版アニメ『はいからさんが通る 前編 ~紅緒、花の17歳~』の主題歌についてなど、彼女の音楽面を深く掘り下げるインタビューを掲載している。そこで、リスアニ!WEBでは、本作の主人公・花村紅緒を演じる声優として、改めて早見沙織へのインタビューを敢行。40年の時を経ていまだ褪せぬきらめきを放つ少女漫画の金字塔の魅力を掘り下げる。

演じていてすごく開放的な気持ちになれたんです

――今作の前から原作の存在はご存じだったかと思いますが、いかがですか?

早見紗織 物心ついたときから作品のことは知っていました。母が作品のファンだったので、大学の卒業式は「『はいからさん』みたいにすればいいじゃない」と言ってくれて、袴とブーツで出席しました。そのときはまだ原作をしっかりと読む前だったので、明るくて元気な女の子が素敵な王子様と恋に落ちて……というお話だと勝手に想像していたんです。でも、実際に読ませていただいたら、そういう部分も素敵だと思いましたし、何より紅緒の人となりにすごく憧れを持ちました。ハプニングに遭遇しても逞しく生きていく姿やダメダメな部分など(笑)女性としても人間としても愛着が湧いて、「こんな女性になりたいな」と思いました。

――原作を読んで得られたそういった感覚は、紅緒を演じるうえでのイメージに影響を与えましたか?

早見 どの役でもそうなのですが、私はアフレコ当日まで役を決め込んでいかないようにしているんです。特にこの作品は、テンポがいいなかで生まれてくる空気感や会話がすごく大事になると思っていましたので。少尉役が宮野(真守)さんなのでそこは安心してすべて委ねて、お互いの間(ま)や空気感といったものが演じていく間に作れればいいな、と思っていました。なので、どうやって紅緒を演じようかと思いながら原作を読むというよりは、ただ面白くてずっと読んでいた、という感じでしたね(笑)。

――では、アフレコに入ってから掴んだ感覚というものがあれば教えていただけますか?

早見 最初は(主人公役ということで)作品のカラーを背負うことと、誰もが知る『はいからさん』を演じるということでものすごく緊張しました。でも、収録に入って紅緒を演じていくうちに開放的な気持ちになれたんです。朝から録り始めていて、お昼を食べる前くらいには気持ちがほぐれていくのを感じました。

――『はいからさん』を演じることで気持ちがほぐれたと感じたのはなぜですか?

早見 映画は、紅緒が口ずさむところから始まるんですけど、実はアフレコの前に音響監督の若林(和弘)さんから「ここの歌をちょっと考えといてもらいたいんだ」みたいに言われたんです(笑)。

――あの歌は早見さんのオリジナルだったんですか?

早見 私も「音源はないんですね」と聞き返してしまいました(笑)。当日歌ってみてから決めようということになって、何テイクか録った中から選んでいただきました。宮野さんもいらっしゃれば、TVアニメ版の『はいからさん』にも出られていた、ばあや役の鈴木れい子さんといった皆さんもいらっしゃるなか、第一声を発するというだけでもすごく緊張感がありますよね。

――なのに、最初のアフレコが歌からのスタートとなるとさらにイレギュラーなことで。

早見 はい。不安感とドキドキでいっぱいでした。ところが、紅緒って3秒に1回表情が変わるようなキャラクターなんですけど(笑)、そうすると必然的に自分もこうしよう、ああしようと思わなくなっていくというか。良き波に乗っていこうとするサーファー精神ではないですが(笑)、どんどんと流れに乗っていこうという気持ちになりました。やっぱり紅緒が制限なく振り切ることで見せられる美しさというのがあると思うので。もちろん、細かい尺あわせなど難しいところはたくさんあったので、そういう緊張感はずっと持っていたんですけど、気持ちに広がりがあったんですね。あと、若林さんや古橋(一浩)監督が、「ひとまずやってみてください」という感じだったんです。やりすぎだったら言ってくださったでしょうけど、どれだけやっても「いいよいいよ」と言ってくださったので、その包容力を感じながらアフレコが進みました。それから個人的なことなんですけど、なんとなくその日の服装は白のリボンがついたTシャツに黒のパンツという動きやすい服装だったんです。私的にそれが功を奏しまして(笑)、気持ちの問題なんですけど、ダンスレッスンをするような格好がよかったんだと思います。

――声優でもシンガーでも服装からその日の気分を高める方がいらっしゃいますね。裸足でやるとか。

早見 あぁ、いらっしゃいますね。私もたまにあります。

――監督や音響監督から止められることはなかったということですが、こういう紅緒を求めてる、というところで感じるところはありましたか?

早見 紅緒は、見ている人、読む人に全部を見せてくれるキャラクターで、だからこそ共感し合えると思うんです。演技に制限を設けないということも、「もっと全部見せていいよ、ということなんだろうな」と思っていました。自分に制限をつけないように引き出してくださったんだと思います。例えば、お父さんと喧嘩するシーンで机をバンバンバン叩くところも、あの時代の父というのはすごく威厳があるのでどこまで出して良いのか、テストでは探りながらだったんです。でも、もっとどんどんバンバンやって、いいテンポでいったほうがいいというお話をいただきました。なので、出す方向のディレクションをいただくことの方が多かったですね。

――「早見さんの紅緒は……」という話は共演者の方々とされましたか?何度も映像化された『はいからさん』だけに。

早見 どうなんでしょう(笑)。そこは怖くて聞けないんですけど、宮野さんはインタビュー取材をご一緒したときに、「紅緒みたいなところがあるよね」と仰っていました。

――それはどのあたりで?

早見 そこまでは聞いていないのですが、高校生のときから現場でご一緒させていただくことがあったので、当時から知っている方が見ると感じるものがあるのかもしれませんね(笑)。私は、わりと始めはしっかりしているんですが、やんちゃな部分や男らしい部分もあるので(笑)。

――ちょっと少尉と紅緒さんの関係に近いですね。駆け回る姿を見守って。

早見 少尉は、周りから見たらすごく華のある「王子様」だけど、ご本人は微塵もそんなことを意識していなくて、ただ軍人たる姿で生きていますよね。宮野さんご自身も、意識せずしてとても華のある方なので、そこが少尉と通じるとは思っていました。すごく気さくで現場の空気を作ってくださる方なんですけど、お芝居をされているときやステージに立たれているときは華やかで存在感があって……、うん、とても少尉らしい気がしますね。

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