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INTERVIEW

2015.12.17

『スクライド』から『落第騎士の英雄譚』まで。変わらぬ情熱を込めて――酒井ミキオ・中川幸太郎スペシャル対談

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好評放送中のアニメ『落第騎士の英雄譚』のOP主題歌として酒井ミキオの新曲「アイデンティティ」が流れてきたことに驚き喜んだファンは多いことだろう。そして劇伴を担当するのは中川幸太郎。このコンビにピンときたファンもいることだろう。これは2001年に放送され、現在でも熱く愛されている『スクライド』の再来である。聞けばふたりの出逢いはその作品であったという。そこでリスアニ!WEBではまもなくサウンドトラックの発売を控える中川と「アイデンティティ」が好評発売中の酒井ミキオの両氏にスペシャルな対談をしていただいた。そこでは14年越しの『スクライド』話からはじまり、本作へと連なる熱い思いが語られていった。

『スクライド』で作り上げた、若さと熱さ溢れる音楽

中川幸太郎 実はこうやってふたりでお話するのは初めてなんですよね。

酒井ミキオ ディレクターは一緒なんですけど、歌モノと劇伴では制作が違うので。今日はちょっと不思議な気分です(笑)。

中川 昨日、改めて『スクライド』のCDを聴いてきたんですけど、酒井さん、声変わらないなぁ。若い!

酒井 ほぼ同い年なのに(笑)。

――おふたりの出会いは『スクライド』のときですか?

中川 そうですね。打ち上げでご挨拶したくらいでしたね。僕の場合、ディレクターやミュージシャンの方以外にはほとんど会わないんですよ。当時は本当に駆け出しの頃で何もわからないなか、音楽メニューをもらって一生懸命作っていたので、振り返ると何も覚えていないんですよ(笑)。ひとつ覚えているのが、谷口悟朗監督に「使いづらくて困りました」って言われたことですね(笑)。

酒井 えーッ!

中川 それは今になってわかるんです。映像に曲を当てるときに切り貼りしますよね。そういう工程のことを考えずに自分の好きなように作っていたから、切りやすいところがなかったんです。

酒井 でもその若さや熱量はこもっていたと思いますよ。ラテン系の情熱というか。

中川 フォローありがとうございます(笑)。たしかにいろんなことに怒ったり悲しんでいたりしたので、いろんな勢いを込めていたなと思います。僕は映画とかアニメがずっと好きな10代を過ごしてきたから、それをやれる立場になったらこうやりたいという思いがあって、それを形にしたのが「スクライド」の音楽だったんです。

――酒井さんは当時、どんな状況でしたか?

酒井 僕にとってはこの作品が初めてのアニメ主題歌だったんです。あそこまで熱いものってそれまで歌っていませんでしたから、歌詞に引っ張られたところがあるのかもしれません。聴かれ方も新鮮でしたね。ファンレターでもそれまでだったらいわゆるJポップシンガーにくれる王道のような文章表現だったのが、アニメ作品を通じての感想で「この曲を聴いて受験を“頑張りました”」とか、作品を通して音楽を聴くからまったく違った受け取られ方をして広がっていくのが面白かったですね。考えてみると僕も子供の頃“YOUはSHOCK”って頭に思い浮かべたときには、必ずケンシロウが思い浮かんでいたわけですから、アニメの主題歌はそういう付加価値が付く聴かれ方をするんだなと感じました。

――主題歌を作るうえでの苦労は何かありましたか?

酒井 スクライドのときは、谷口監督との打ち合わせで世界観のことを話したときに抽象的なワードが多かったので、それをどう具体的にJポップやJロックの文脈に落とし込むかについて、結構悩んだ覚えがありますね。あとはオープニング曲の「Recless Fire」はストーリー展開に応じて歌詞が2番3番と変わっていくので、「このときにカズマはまだこう思っていない」とか、「ここではまだ具体的な言葉は使ってくれるな」とか細かく指示をいただいた覚えがありますね。

――谷口監督は劇伴についてはどんなオーダーをされましたか?

中川 谷口監督の劇伴オーダーはわかりやすいですね。こういう状況でかけたい曲と具体的におっしゃるのでイメージしやすかった覚えがあります。それに僕は何十曲も作るから、多少ピントがズレていても何か当たるだろうと少し気楽に考えているところがあって(笑)。ミキオさんのように主題歌の場合は一曲ですから、ピンポイント当てるしかないので大変だろうなと思います。

酒井 特に『スクライド』の場合は主人公がふたりいてどちらも熱いんです。カズマの場合はわかりやすい熱さでいいんだけど、劉鳳はどこか悲しみを背負っているので、熱さのなかに切なさみたいなものを入れる必要があって、そうしたワードの選択に悩んだ記憶がありますね。

――その後、谷口監督とのお仕事は『プラネテス』『ガン×ソード』『コードギアス』とありますが、作品は違えども一貫していると感じられる部分としては何がありますか?

酒井 漠然とした言葉ではありますが、精神をえぐるというか訴えかけるメッセージ性がありますね。例えば『プラネテス』ではハチマキという男を立てながらも貧困、差別、宗教といった地球上で起こっているさまざまな問題を投げかけて考えさせるものがある。「スクライド」にしても「コードギアス」にしても、戦いとか男たちの生きざまについての熱いメッセージが込められている気がします。

中川 打ち合わせでもえぐられたり?(笑)

酒井 僕自身がえぐられるわけではないんですけど(笑)。結構いろんなことをポンポン言ってくるので、その言葉をメモして数日経ってから紐解いて歌詞として具現化していきますね。

中川 『スクライド』の次が『プラネテス』ですから、舞台がまったく違うわけです。考えてみると幅の広いかたですよね。そのなかで一貫してテーマを投げかけて、最終的にはひとつ筋が通っているのがさすがです。劇伴も60曲ぐらい作るわけですが、そこで同じようなものばかりではいけないのはもちろん、バラエティさの中にもひとつ筋が通ってないといけないわけです。そのへんのバランスが難しくもあります。その匙加減を計算ずくで作っている方もいれば、当時の僕みたいに何も考えずにやってしまっている人もいる。今だったら僕ももっと計算してやっていただろうけど、当時のあの作品には幸いにもいろんな意味で合致していたんだろうなと思います。

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