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INTERVIEW

2015.12.17

『スクライド』から『落第騎士の英雄譚』まで。変わらぬ情熱を込めて――酒井ミキオ・中川幸太郎スペシャル対談

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『落第騎士の英雄譚』へと受け継がれる魂

――さて、『落第騎士の英雄譚』の主題歌「アイデンティティ」は「Drastic my soul」を髣髴とさせるような楽曲で、それに中川さんも劇伴で参加されるとなると『スクライド』のファンに強く訴えかけるものになったのではないかと思いますが、おふたりに依頼するまでにはどのような流れがあったのでしょうか?

石川吉元(フライングドッグ・音楽プロデューサー) 今回のお話は映像サイドのプロデューサーからいただきました。その際、まず作品性として果たして合うのだろうかと考えたんです。男の信念と信念がぶつかるというのが『スクライド』のテーマだったわけですから。ただ、スタッフ側にはライトノベル原作のアニメだからといって、明るくソフトな音楽ばかりを付けても数多くのアニメのなかで埋もれてしまうと考えたのでしょうね。思う存分バトルを意識したものに振り切って、そこでこの作品を目立たせるんだという強い意志が感じられました。作品のメインスタッフにも当時、『スクライド』を観ていた方がいたそうで、その意味でこうやってそのときの意志を受け継いでいってくれるのは嬉しいですね。我々もずっとやってきているなかで、それぞれテクニックは上がっているんですが、そうなると作るときに当時の気持ちに戻っちゃいますので、すごく楽しい作品になったと思います。

中川 石川さんから「そういうことなんでぜひお願いします」と言われたら断れるはずもなく、こちらこそ是非にと。実はこの前、原作の先生とか制作スタッフの皆さんともお会いしたんですけど「当時、学校から帰って観ていました」なんて話を聞くと「年食ったなぁ」って思いました(笑)。うれしいような恥ずかしいような、あれを観ていた人が作り手になったんだなぁと。僕自身、アニメを観て「こういうものを作りたい」と思ってこの世界に入った人間なので、自分がその立場になったことがものすごくうれしかったですし、これは恥ずかしいモノを作れないなという、身の引き締まる思いでした。

――主題歌作りはいかがでしたか?

酒井 『スクライド』の「Drastic my soul」のような形でというオファーがあったので、すんなりできました。つまり、リズムはああいった感じでマイナーで歌謡ロックというイメージ。そういうのは得意といえば得意なタイプなので結構スコンとできました。

中川 そのときにオファーされた「ような」って、どこまで過去の自分に寄せるのかを考えたりしました?

酒井 寄せるということを考えなくとも、自然となってしまったのであまり考え過ぎないようにしましたね。直しもなくスムーズに出来上がりました。逆にボーカル入れは結構苦労しました。最近の業界のトレンドとしてテンポ感が早くなっているんですよ。細かく言うと「Drastic my soul」のbpmは118なんですけど、「アイデンティティ」は124なんです。この6の差がなかなか難しくて苦労しましたね。

中川 ご自分の作った歌の場合ってOKテイクをどういう判断していくんですか?

酒井 何をもって是とするのかっていうところも判断は難しいですね。そういうときに石川さんのようにジャッジする方がいないと。自分だけの判断よりは客観があったほうがいいですね。

――劇伴についてはどのように作られていきましたか?

中川 『スクライド』のお話を前提として聞いていたので、打ち合わせに行ったときに「あんな感じの曲を?」と聞いたら、どうやらそうではなく、意気込みとか気分においてあの熱い気持ちが感じられる曲にしてほしいと言われました。ですので、当時わからないながらもがむしゃらにやっていたときのことを思い出しながら作っていきました。

――方向性や主となる楽器についてはどのように考えましたか?

中川 『スクライド』の場合はどちらかというと土臭い感じで荒っぽいものだったので、今作の場合は洗練されたなかに熱いものが感じられるようにと作っていきました。そこで僕が今できることというのは、クラシック的なバイオリンの使い方であるので、その辺りを主軸に据えようと思いました。

石川 中川さんはジャズの家庭に育っていますが、高校大学では作曲科でクラシックを学んでいたんですよ。

中川 学校では「求められているものを作る」ということを学びましたね。というのも1年生のときにやりたいようにやったら散々な成績だったので(笑)。プロになっても自分のやりたいことはやりますけど、まずは作品ありきで作る音楽ですから。そこに自分のやりたいことをうまくフィットさせることができたら最高なわけです。仕事を始めたとき、すでにたくさんの先輩がいる中に僕が入って仕事をしていくためにはどうしたらいいかと考えたときに、僕はソフィスティケートされているけど熱いもの、そのふたつを両立させていこうと思ったんです。ものすごく技巧は凝らしているんだけど、それだけじゃない熱さがあるというのが僕のめざすところで、それを両立できたから15年間仕事ができたのかなと。この作品でも、気分的には『スクライド』なんだけど今の僕ならこうやりますよ、という部分をうまく出せた気がします。

石川 『スクライド』のときはふたりとも無謀な感じがしていましたね。とにかくやりきる熱さ、みたいな。

中川 この頃、自分で音楽を作っていて音楽って何もルールなんてないんだって自分の中で急に視界が開けたときがあったんです。それまでは「こうやらないと汚い音が出る」とか、「モーツアルトはこうやっていたから……」とか自分にすごく縛りがあったんですけど、「好きにやればいいじゃん」って。

酒井 クラシックにどっぷり浸かっていると決まりことが多いんですよね。でもそれって関係なくて、音がぶつかっていても聴感がよければそれでいいわけでです。逆にバンドマンが強いのはそういうところで、理論を知らないから感性でとんでもないものを作り上げてしまったりすることがあるんですよね。

――本編中の使われ方で印象的だった楽曲はありますか?

中川 話数ごとに必ず決めとなる戦いがあるので、バトルの数だけ曲を作っています。少し前にプロデューサーとやりとりをしていたら「4話の最後のバトルがすごくいいものになりましたので必ず観てください」と言われ、実際に見たところすごくかっこ良く当ててくれて自分が想像した以上のものになっていたので感激しました。ああいうふうに使ってくれると作曲家冥利につきますね。思っていることのとおりにいくのもいいんですけど、こちらが思いもしない使い方をしてくださるというのも嬉しいですね。

――酒井さんは年明けには新曲を引っ提げたライブが控えていますね。

酒井 はい。ぜひ拳を上げたい方は遊びに来ていただければと思います。『落第騎士の英雄譚』はもちろん、『スクライド』含め谷口監督作品をほぼフル放出しますので、自分自身も楽しみたいですし、お客さんと熱い時間を共有して素敵なものにしていきたいと思っています。ぜひ遊びに来ていただければと思います。

――劇伴のほうはサウンドトラックが発売されます。

中川 当時『スクライド』の音楽を作ったとき、「僕の作った音楽を聴いてくれた人が将来、同じように作る立場になってくれたらうれしい」と言った記憶があるんです。そうして実際にそういう人たちが出てきて、またこれで一緒に作ることができました。今度、『落第騎士の英雄譚』を観てくれたその下の世代が出てきたら、僕は世代的にはおじいちゃんです(笑)。そうなったらうれしいし、アニメの現場に来たいと思ってくれるような作品になったと思います。僕もそこまで頑張っていたいですね。

INTERVIEW & TEXT BY 日詰明嘉

<中川幸太郎プロフィール>
作・編曲/ピアノ・キーボード演奏/指揮。
1969年2月7日生まれ。父が音楽家という環境のもと、3歳からピアノ、バイオリン、クラリネット、ドラムを始め、中学生に入ると作曲を北村昭氏、林光氏に師事。その一方で父のバンドにピアノ、バンジョーで参加しセッションの経験を積む。その後、宮川彬良に師事し、ポピュラー音楽、舞台音楽等を学ぶ。東京藝術大学の音楽学部作曲科を卒業後は同大学院音楽研究科を修了。その後はジャンルにとらわれない活動を行い、CM音楽で活躍し、キャッチーなメロディで評判をとり、その後積極的に映像音楽、舞台音楽、ショー音楽など幅広い活動を続ける。代表作はアニメ『コードギアス~反逆のルルーシュ』シリーズ、『ガン×ソード』『プラネテス』『スクライド』東映「仮面ライダー ドライブ」など。
◇HPはこちら

<酒井ミキオプロフィール>
1970年8月24日生まれ、北海道出身。幼い頃よりリトミック(幼児のリズム教育)、合唱団、ヴァイオリンなどを学ぶ。中学時代に音楽に目覚め、キーボードに興味を持ちピアノに触れ、高校時代に本格的にキーボードを練習し始める。1991年には羽野晶紀のサポートキーボーディストを務める。1994年にシングル「今だけは君を離さない」でデビュー。その後は自主制作盤を含めシングル20数枚、アルバム10数枚、配信曲等をリリースしている。
Blogはこちら


●リリース情報
『落第騎士の英雄譚O.S.T.』
音楽:中川幸太郎
発売中
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品番:VTCL-60418
価格:¥2,800+税
【収録】
01 worst one
02 アイデンティティ(TV ver.)
03 cover stories
04 front view
05 nothing to sneeze at
06 sisters
07 you, blushy
08 a piece of me
09 small talk
10 trouble shooting
11 覚醒の無意識
12 mind sketches
13 green light
14 it hits home for me
15 vague rumor
16 sugar report
17 tense feeling
18 written in the stars
19 carry out a misson
20 nimrod
21 let’s go ahead
22 murdabad
23 another one
24 the finalists
25 epilogue
26 波羅蜜恋華(TV ver.)

●イベント・ライブ情報(酒井ミキオ)
「落第騎士の英雄譚」×「最弱無敗の神装機竜」合同スペシャルイベント
日時: 2015年12月20日(日)17:30 開場 / 18:00 開演
場所: 新宿明治安田生命ホール(東京都新宿区西新宿1-9-1 明治安田生命新宿ビルB1F)
チケット価格:3,800円(税込)
出演:
『落第騎士の英雄譚(キャバルリィ)』
 石上静香(ステラ・ヴァーミリオン役)
 金元寿子(東堂刀華役)
 酒井ミキオ(OPアーティスト)
『最弱無敗の神装機竜〈バハムート〉』
 田村睦心(ルクス・アーカディア役)
 Lynn(リーズシャルテ・アティスマータ役)
 藤井ゆきよ(クルルシファー・エインフォルク役)
 TRUE(OPアーティスト)
司会:砂山圭太郎(文化放送アナウンサー)
チケット受付URL:http://eplus.jp/sys/T1U14P002174330P0050001
【お問い合わせ】 ショウゲート

酒井ミキオ LiveTour2016~アイデンティティ~
2016年1月23日(土)新宿sact!
2016年1月30日(土)ミノヤホール(大阪)
2016年1月31日(日)ミノヤホール(大阪)
2016年2月11日(木・祝)恵比寿天窓Switch

●作品情報
TVアニメ『落第騎士の英雄譚』
10月より放送中
TOKYO MIX 毎週日曜 24:30~
テレビ愛知 毎週日曜25:05~
サンテレビ 毎週月曜 23:30~
BS11 毎週金曜 23:30~
AT-X   毎週土曜 23:00~

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