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INTERVIEW

2015.09.10

『BEST OF SOUNDTRACK【emU】』『o1』2枚同時リリース記念 澤野弘之インタビュー!

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澤野弘之のボーカル・プロジェクトとして2014年にスタートしたSawanoHiroyuki[nZk]が待望の1stアルバム『o1』をリリースする。[nZk]としてこのアルバムに込められたものとは。『o1』と同時リリースされる、ドラマやアニメの劇伴をコンパイルしたベスト・アルバム『BEST OF SOUNDTRACK【emU】』という2作から、澤野弘之の過去と現在に迫る。

自由なアプローチで生み出された『o1』の楽曲たち

――昨年春の本格始動から、ついにSawanoHiroyuki[nZk]としての1stアルバムがリリースとなりますが、この制作はいつ頃からスタートしたのでしょうか?

澤野弘之 アルバムを出すとていう話は去年ぐらいからあったのかな? それでアルバムを作るならどういう曲がいいかなって考えていて、それがより具体的になってきたのは『終わりのセラフ』のシングルを作ったあたりだと思います。そこでシングル曲も自由なアプローチで生み出された『o1』の楽曲たち出揃ったということで、それ以外の曲をどうするか考えてくようになりましたね。

――これまでの[nZk]の楽曲は、主にアニメ作品とタッグを組んだプロダクツという印象もありますが、純粋に[nZk]としてのアルバム制作というのは、これまでと変化はありましたか?

澤野 曲作りという点においては、そこまで考えてなかったというか。これは以前から言っていますけど、サウンドトラックを作っているときからも何か制限されて制作しているというよりかは、作品を通して好きなことをやらせていただいているという印象で。ただ、[nZk]としてのアルバムとなると、やっぱり意識として今回はいつもと少し違うというか、作っている最中よりも、アルバムを一枚作り終えたときに、“アーティスト活動としての[nZk] ”というものは出せたかなって思いましたし、そこは感慨深いというか。

――そのアーティスト活動の本質、いわば本作『o1』に澤野さんが込めたものというのはなんでしたか?

澤野 [nZk]というプロジェクトとしていろいろやらせてもらっているなかで、『o1』は3つの要素が入っていると思っています。ひとつはシングル・カットした作品、『終わりのセラフ』『アルドノア・ゼロ』と作った楽曲で、もうひとつは今年になって自分が単純に作りたいなって思った、作品と関係ないものを作ったボーカル楽曲。で、もうひとつはAimerさんに歌ってもらった「s-AVE」とかGemieさんとの「Saving Us」とかで、過去に作った曲を掘り起こして[nZk]バージョンとして作り直したもので。完全な新曲ではないんですけど、自分にとってはすごく思い入れのあった曲だったので、このプロジェクトを通して知ってもらえたらなっていう。 こうした要素が含まれて、[nZk]というものの意味をより感じられたなって思いました。

――さて、それでは『o1』の新録曲についてお伺いしていきます。まず冒頭のイントロダクション的な「[nZk]o1」。

澤野 まず自分が劇伴作家というのがあって、普段はそこに歌も入れていますけど、インストゥルメンタルの曲を作ってきたというのがあるので、歌をフィーチャーしている[nZk]にも劇伴寄りのようなサウンドを入れるものも面白いかなって思って。

――そこからデジ・ロック・テイストの「Pretenders」へと続きます。

澤野 この曲に限らずではありますけど、普段から洋楽を聴いていて。昨今のアメリカとかイギリスとかのトップチャートに入る楽曲があるじゃないですか、ちょっとエレクトロニカが入っていたりするような。例えばテイラー・スウィフトとかアヴリル・ラヴィーンとか、ロックのなかに打ち込みが入っていたり。洋楽を長く聴いてきてはいるんですけど、また最近洋楽熱が再燃してきて、そういう影響を出してみたいなと思って。Gemieさんとmicaくんをフィーチャーしたのもまた気に入っていて。

――以降ロッキンな楽曲が続きますが、そのあとの「oI」がまた不思議なテイストの楽曲で。

澤野 これはロック寄りというかエレクトロニカが入っていたりして、これも海外の影響が強いですね。

――サビがまたリズムが特殊で、メロディもクセになるというか。

澤野 そうですね。サビもすごいメロディアスというよりかはハーモニーというか、mizukiさんの歌声で聴かせる感じなのかなって思っています。

――続いては「Song of ..」。

澤野 (朝の連続テレビ小説)「まれ」の曲ですね。

――この印象的なサビはOP主題歌「希空~まれぞら~」をはじめ劇中でもさまざまなシーンで展開されていますが、これはどのようにして生まれたのですか?

澤野 もともとは「まれ」の話をもらって、最初に劇中のメインテーマのようなもの作って、そのサビが「希空~まれぞら~」になったという感じで、もとはインスト曲なんです。それでオープニングで起用するのにもうひとつメロディを足してほしいという話になって、それも劇中の希のテーマとして作ったものを合体してあの曲になったんですね。そのあとに長いサイズにしたいのと、英語バージョンを作りたいというのがあって小林(未郁)さんに歌ってもらって……という、段階を経て作っていきました。

――[nzk]バージョンとなった「Song of ..」では、Aimerさんがボーカルを担当していますね。

澤野 やっぱり「まれ」という、今年やった作品を[nZk]でもカバーしたいなって思っていて、今回Aimerさんが参加してくれるというので歌ってもらいました。オリジナル・バージョンもややロック寄りではありますけど、また違ったアプローチでもやってみたいなっていうのがあって、それを[nZk]バージョンで、バンド・サウンドでやったというのはありますね。

過去のマテリアルを[nZk]で、今あるかたちに

――さて、アルバムも後半に入ります。続く「Saving Us」ですが、以前ドラマで使用した楽曲のカバーということですが……。

澤野 これは「東京タワー オカンとボクと、時々、オトン」のドラマ版のメインテーマ(「motherhood~me & my mon~」)ですね。そのときは関山藍果さんという子に歌ってもらったバージョンでオーケストラの上に歌ってもらったんですね。これはアマチュア時代から温めていた楽曲で、ドラマに合ったので使ってみたんですけど、自分的には「東京タワー」で作ったアレンジよりも、今回のようなアレンジをやってみたいというのが当時からあったんですね。あとGemieさんとの出会いがあって、彼女にこういう楽曲を歌ってもらいたいというのがありました。

――非常に感動的なバラードで、またメロディが素晴らしいですね。

澤野 2000年代頭の頃にこのデモは作っていたと思うんですけど、曲として影響を受けていたのは90年代前半のR&Bとかで、ボーイズIIメンといったアーティストに影響を受けていたような記憶がありますね。最終的にそれとは違うものになったんですけど、そういうメロディにしたいと思って作っていたと思います。

――そして「aLIEz」を経て、ヘビィな「Rise Above」へ。

澤野 これは新規で作った曲としてはいちばんヘビィな楽曲ですね。

――いわゆる2000年代アメリカのロックの、インダストリアル的なサウンドになりました。またギターのリフがカッコイイですが、これはどのように作っていきましたか?

澤野 この曲はリフとリズム隊と同じタイミングで作ったと思います。後ろで鳴っているグルーヴを作りながら、一緒にリフを同時進行で作っていったような。

――またこの曲でのYoshさんの荒々しいボーカルがピッタリですよね。

澤野 そうなんですよ。このシャウトがまたいいというか。Yoshさんとは『終わりのセラフ』で存在を知れたからこその仲というか、もともとYoshさんを想定していたわけではないんですけど、プリプロの段階から相乗効果でいいものになっていくなっていうのは感じていましたね。とにかくリフ重視というか、メロディはそんなにメロディアスというわけではないんですけど、勢い重視でいきたいなと思っていて。

――続いては、メロディアスな「Summer Tears」です。

澤野 これは以前からずっと温めていた曲で、[nzk]のプロジェクトをやっていくうえで形にしたいなと思って今回作りました。[nzk]のアルバムがなければ、サントラなどで使っていたかもしれないですね。[nzk]で、特にmicaの声がこの曲に合うんじゃないかなって思っていたので、今回入れてみました。あとはアルバムのバランスを見て、ちょうどいいかなって。アルバムの新規の曲のなかでは、わりと後半にアレンジをした楽曲になっていますね。

――そしてアルバムのクライマックス、壮大なバラード「s-AVE」です。

澤野 これは以前アーティストに提供した曲で、[nZk]のプロジェクトを始めてあらたに作り直すにあたって、いちばん聴いてもらいたかった曲なんですよね。アレンジも変えて、歌詞も当時作詞していただいた方に許可をとって、自分が考えるサウンドに当てはまる歌詞に直して。本当に今考えるかたちで出せるなということで、やる意義はあったなということでアルバムの最後に入れたんですね。

――本作は澤野さんの最新ともいえるアプローチがあったり、過去のマテリアルを現代にリブートしたりと、[nZk]という表現方法のなかで実に多彩な、充実した作品だということがわかりますね。

澤野 それはあります。自画自賛じゃないですけど、自分のなかでやりごたえがありましたし、アーティスト的な意識も感じられるようになったというか。自分でもよく車のなかで聴いているんですよ。

――一方でこれが[nZk]の1stアルバムということで、一枚目という緊張感もありますよね。

澤野 それは……あります(笑)。どれだけの人に聴いてもらえるかとかもありますしね。やっぱり、音楽は人に聴いてもらうことで意義が出るというか。もちろん聴いてもらえないとそのものに意味がなくなるというわけではないと思うんですけど、聴いてもらえることによって自分自身でもより思い入れが強くなってくると思いますし。納得いくかたちでできたぶん、より多くの人に聴いてもらいたいなって思いますね。

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