かつての自分の一歩先を走り続ける決意。「THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS 4thLIVE TriCastle Story」さいたま公演最終日レポート

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『アイドルマスター シンデレラガールズ』のライブイベント「THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS 4thLIVE TriCastle Story」さいたま公演最終日が10月16日、埼玉・さいたまスーパーアリーナで開催された。

神戸・さいたまを通して4日間のライブを締めくくる最終日には、島村卯月役の大橋彩香、渋谷凛役の福原綾香、本田未央役の原紗友里、多田李衣菜役の青木瑠璃子、双葉杏役の五十嵐裕美、アナスタシア役の上坂すみれ、神崎蘭子役の内田真礼、三村かな子役の大坪由佳、緒方智絵里役の大空直美、赤城みりあ役の黒沢ともよ、新田美波役の洲崎綾、前川みく役の高森奈津美、北条加蓮役の渕上舞、神谷奈緒役の松井恵理子、諸星きらり役の松嵜麗、安部菜々役の三宅麻理恵、木村夏樹役の安野希世乃、城ヶ崎莉嘉役の山本希望、城ヶ崎美嘉役の佳村はるか、TVアニメプロデューサー役の武内駿輔が出演。さらにサプライズゲストとして、高垣楓役の早見沙織と、川島瑞樹役の東山奈央が登場した。

今回のライブにはふたつのテーマがあった。それは「TVアニメ『シンデレラガールズ』を受けて行なわれた。

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昨年11月の3rdライブ「シンデレラの舞踏会」に欠けていたピースを埋めること」と、「『デレステ』やPSVR『ビューイングレボリューション』といった、シンデレラたちの未来を見せること」。それらが混在するセットリストにすることもできただろうが、シンデレラチームは奇策をもってどちらのコンセプトの純度も落とさないことを選んだ。3rdライブを補完しTVアニメを総括するライブ「346 Castle」を行なった後に、未来をテーマにした「The Future Castle」を続けて行なうという選択だ。

<「346 Castle」セットリスト>
M01:Star!! (THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS)
M02:Shine!! (THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS)
M03:STORY (new generations+Triad Primus(大橋、福原、原紗友里、渕上、松井恵理子))
M04:LET’S GO HAPPY!! (凸レーション(松嵜、黒沢、山本))
M05:Happy×2 Days (CANDY ISLAND(五十嵐、大坪、大空))
M06:Memories (LOVE LAIKA(洲崎、上坂)+内田)
M07:-LEGNE- 仇なす剣 光の旋律 (Rosenburg Engel(内田))
M08:私色ギフト (凸レーション(松嵜、黒沢、山本)+佳村)
M09:Heart Voice[CANDY ISLAND with 安部菜々ver.](CANDY ISLAND(五十嵐、大坪、大空)+三宅)
M10:Nebula Sky(上坂)
M11:Wonder goes on!! (アスタリスク(高森、青木瑠璃子) with ナツナナ(三宅、安野))
M12:できたてEvo! Revo! Generation! (new generations(原紗友里、福原、大橋))
M13:Rockin’ Emotion (安野)
M14:ØωØver!! -Heart Beat Version- (アスタリスク(高森、青木瑠璃子)+安野)
M15:Trancing Pulse(Triad Primus(福原、渕上、松井))
M16:こいかぜ (早見)※サプライズ
M17:Nocturne (早見、東山)※サプライズ
M18:この空の下 (LOVE LAIKA(上坂、洲崎)+Rosenburg Engel(内田))
M19:心もよう (THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS)
M20:流れ星キセキ (new generations(原紗友里、福原、大橋))
M21:M@GIC☆ (THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS)
M22:夢色ハーモニー (THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS)

まずはライブオープニングは「Star!!」「Shine!!」「STORY」というスリーSだったのだが、ライブが終わってから思うとこの3曲は「346 Castle」と「The Future Castle」両方のオープニングの意味合いを含んでいたように思う。「Star!!」と「Shine!!」はTVアニメオープニングテーマだが、出演者全員がキャラクターカードを再現した個別衣裳で登場。耳馴染みのあるサウンドでありながら、個々のビジュアル的な個性が前面に迫ってくるのは新しい光景だ。全員が揃って「Star!!」と「Shine!!」を歌っているだけで感動してしまうのは重ねてきた物語の力だろうか。そして、「STORY」は「デレステ」最新イベント楽曲なのだから本来「The Future Castle」に属するのだろうが、new generationsとTriad Primusというふたつのユニットが勢揃いした姿は「346 Castle」の柱の一つである、全部のユニットがみんないるよ、というかけがえのない当たり前をこの上なく体現したものでもあった。

そう、3rdライブの欠けたピースは何かと考えれば、それはLOVE LAIKAの上坂すみれの不在であり、Rosenburg Engelの内田真礼の不在であり、Triad Primusの渕上舞の不在だ。付け加えるなら、アニメ第15話で高垣楓の「こいかぜ」が残した衝撃も昨年の舞踏会で拾いきれなかったピースだろう。それらを全て丹念に集めて形にしたのが「346 Castle」だった。

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上坂と洲崎の2人が初めて揃った「Memories」。この曲を一緒に歌うのはLOVE LAIKAふたりの悲願だった。凛として清涼感のある洲崎の衣裳と、陽のない土地に淡雪が振るような上坂の衣裳はそれぞれイメージが違うが、青と白で構成された2人が並ぶととてもしっくりくる。左右鏡合わせのゆったりとしながらもキレのある動きは、なんども思い描いてきたLOVE LAIKAのイメージそのものだ。そして、アニメ第26話までの時間を過ごした2人にとって、2人の間に娘のような存在の蘭子がいるのは自然なこと。2番からは内田真礼が参加したが、この2人の初ステージに自分が入っていいのかと迷ったという内田と、そんな内田を心から歓迎する上坂と洲崎の姿はキャラクターの関係性にも重なるものだった。ステージでは出番の前に上坂から洲崎の手を握ったことや、洲崎が「ずっと待ってたよ」と上坂に伝えたことも語られていた。

一人ユニット・Rosenburg Engelとして内田が歌う「-LEGNE- 仇なす剣 光の旋律」は、去年3月29日に池袋の噴水広場で行なわれたリリースイベント以来の披露。驚いたのはダンスの振付が格段に増えていたことで、忙しい中よくも頑張ってくれたなぁと胸が熱くなる。4thライブではステージ上のLEDスクリーンを活かした映像演出がさらにパワーアップしたが、キャラクター性も含めて考えるとこの恩恵を一番受けていたのは小梅と蘭子(桜咲と内田)だったのではないか。血のような真紅や黒白の冴え冴えとしたコントラストが蘭子の世界観を補強していて、ステージに背を向けた内田の向こうにRosenburg Engelのロゴが表示された絵は、内田の背中に翼が見えるような気がした。素の蘭子としてのぎこちない感謝の言葉と、白と黒全部の蘭子を背負っての「やみにのまれよ!」の決めポーズは、今までの神崎蘭子の集大成のようだった。

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3rdライブでもっとも「欠落」を隠さなかったのは、Triad Primusの「Trancing Pulse」だろう。三位一体のこの曲のライブ初披露では、渕上舞のかわりに誰かが入ること無く、福原と松井の2人で披露された。その後、「ねんどろいどLIVE」という意外な場所で3人での初ステージは果たされたのだが、今回のステージはその再演には留まらなかった。原曲では福原が存在感を見せていたロングソロパートを、渕上と松井に大きく割り振るアレンジ。今回はメンバー的には渕上に注目が行きがちだが、ソロパートが印象的だったのは実は松井。会場の注目とプレッシャーを一身に集め、微かに声を震わせながらも力強く朗々と歌い上げる姿が強く印象に残った。見せ場を終えた渕上の晴れやかな笑みも印象的。この曲でにこにこしてるのはむしろ松井のイメージだったので、いろいろと新鮮だった。『デレステ』で見慣れたTriadとの最大の違いはスタンドマイク。両手でマイクスタンドをつっとなぞるTulipっぽい動きや、松井がスタンドを持ってくいっと腰を回すちょっと艶めいた動きなどが新鮮だった。高めの音を担い、抜群に安定した渕上のボーカルが加わったことによる安心感、なによりこの3人が揃った喜びは格別だった。

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2014年4月に舞浜で行なわれたシンデレラ1stライブでは、「こいかぜ」の圧巻の表現力から「ラスボス」と形容された早見沙織。だが2年半の時間とアニメや様々な媒体で楓を演じてきた経験は、そのラスボスをしてさらなる進化をさせていたのかもしれない。高垣楓そのもののドレス姿でステージに立った早見に、SSAという空間がまるごと飲みこまれたような感覚。元からあった旋律としての上質な美しさに、ライブならではの踏みこむ力強さが加わったというのだろうか。会場の大きさや客席の期待値などいろいろな要因があるのだとは思うが、表現のメリハリと振れ幅がすごく広がったように感じた。そしてライブならではのすごみをさらに感じたのが、早見・東山のオリジナルメンバーでは初披露となった「Nocturne」だった。

3rdライブにおける「Nocturne」は、東山と速水奏役飯田友子の組み合わせで歌われた。クール新世代でも表現力と歌唱力に長けた飯田の歌唱は、CD原曲のソリッドさとさわやかさをよく再現しながら、彼女自身の魅力も出していたと思う。だが他のアイドルから預かっている曲ではなかなか難しいのがライブならではの踏みこみだ。端的に言えばCD原曲よりも4thライブでの「Nocturne」はより攻撃的なライブ仕様。SSA全体を巻き込む嵐のようなテンションに東山も応えていくステージはライブならではの極上のセッション。東山も目を合わせるつもりがないところでまで目を合わせてしまったとのことだ。まるで別の曲のようにも感じる新しい表現は、オリジナルメンバーだからこそ踏みこめるアクセルなのだと思う。3rdとのテンション感の違いを一番感じたのが両方のステージに立った東山の足元で、前回は膝でリズムを取る感じだったのが今回は常に足の片方は浮いていてなんなら飛んでるんじゃないか…というぐらいの躍動感だった。ここまで熟成させてきた楽曲、サプライズで限られた楽曲に注ぎ込む演者と会場のテンション感から生まれた一度限りのステージだった。

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そして3rdに続けて登場したユニットたちも、キャラクターを再現した衣裳をまとって、さらに演者とキャラクターが近づいた姿を見せてくれた。山本のおなかをだした衣裳にびっくりしたのだが、この日のために麺類を断って努力してきたとのこと。凸レーションはそれぞれのキャラクターの個性と魅力を引き出した感じで、キャラクターらしさを表現することにずっとこだわってきた松嵜がきらりそのもののキラキラしてファンシーな衣裳をまとっているのは嬉しくなってしまった。CANDY ISLANDはユニットとしての統一感を出しながら、大空は四葉のクローバーをポイントで入れたりと差別化しているのが楽しい。アスタリスクwithナツナナは安野の髪型を含めた夏樹再現度が大幅に進化しており抜群だった。

セットリストを客観的に見て驚いたのは、早見と東山が鮮烈なステージを見せ、2人とプロデューサー役の武内駿輔が会話している間が、構成上は全員の衣装チェンジの時間にあてられていたこと。早見が「後半戦ラストスパート、スパーッと決めてきて?」と振った後、こちらもオリジナルメンバーが揃った「この空の下」からは、全員が3rdライブ衣装にチェンジ。あまりに自然だったので最初は気づかなかったほどだ。この衣裳で歌ったのは「この空の下」「心もよう」「流れ星キセキ」「M@GIC☆」「夢色ハーモニー」のわずか5曲。シンデレラプロジェクトを中心としたチームで歌うことに意味がある楽曲を、3rdには参加できなかったメンバーも含めて歌うためだけとも思える衣装チェンジには胸が熱くなった。

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ここまでの構成はユニット曲を中心に無駄を削ぎ落とした本当に美しい構成だ。待望された「Nebula Sky」や、アスタリスクの物語につなげる導入として必要な「Rockin’ Emotion」といった限られたソロ曲以外は本当に必要なピースだけで構成されている。ここで終わってもなんの悔いもないセットリスト、それこそが二段構えのライブにした意味だろう。

「夢色ハーモニー」のラスト、「ハイ、チーズ!」の声とともに記念撮影風に並んだメンバーたちの背後に、キャラクターたちの記念撮影の写真演出が重なったのは、本当に夢のような光景だった。実は記念撮影のイラストは、キャラクターデザインの松尾祐輔氏がこのライブの出演者が演じるキャラクターたちの記念写真を描き下ろしたものだったとのこと。付け加えるなら、ライブにふたつのエンディングがあることで、アニメ1st seasonと2nd seasonのエンディングテーマが、どちらも大切なライブの締めくくりとして機能したのも良かったと思う。

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<「The Future Castle」セットリスト>
M23:Yes!PartyTime (THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS)
M24:SUPER LOVE☆ (山本)
M25:NUDIE (佳村)
M26:おかしな国のおかし屋さん (大坪)
M27:Sparkling Girl (青木)
M28:ニャンと☆スペクタクル (高森)
M29:ステップ! (原紗友里)
M30:AnemoneStar (福原)
M31:はにかみdays (大橋)
M32:EVERMORE (THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS)
-Encore-
EC01:GOIN’!!! (THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS)
EC02:夕映えプレゼント (THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS)
EC03:お願い!シンデレラ (THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS)

「夢色ハーモニー」後に行なわれた、ライブのエンディングを飾るにふさわしい、プロデューサー役・武内駿輔の演説。あたたかい気持ちで聞いていたのだが、途中から流れが変わってくる。「TriCastle Story、みっつのお城の物語にはまだ続きがあります。ただいまより、皆様をよっつめのお城「「The Future Castle」へ!」と続けたときには驚いてしまった。武内の開門宣言により、ライブはいわば第二部へ。PSVR『アイドルマスター シンデレラガールズ ビューイングレボリューション』のテーマソング「Yes!PartyTime」を歌うために登場した全員が、今度は神戸公演で初お披露目されたアクロス・ザ・スターズ衣裳に着替えていたのにはさらに驚いてしまった。「Yes!PartyTime」は神戸でも披露されたのだが、さらなる大ステージ大人数で披露すると疑似ウェーブの振りも迫力と楽しさが増して感じられた。

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新しい曲、新しい衣装、新しい気持ちで臨む4つめのお城。それはシンデレラたちの「2周目」のソロ曲で構成されていた。「SUPER LOVE☆」「NUDIE」「おかしな国のおかし屋さん」「Sparkling Girl」「ニャンと☆スペクタクル」「ステップ!」「AnemoneStar」「はにかみdays」という、シングル8曲を並べたシンプルな構成。それは、シンプルであるが故に怖い。シンデレラガールズの未来を示すこと、そして時間を経た2曲目であれば当然期待されるであろう進化を、共通衣裳の身ひとつで体現しないといけない。格段に進化したノンストップの動きの中で莉嘉らしさを発散し続けた山本と、NUDIEでカリスマらしい大人の妖艶さを照れなくまっすぐに表現しきった佳村はその象徴だろう。

「346 Castle」では抑えめだったダンサーの出番が、後半はフル回転。「Sparkling Girl」での青木はダンサーと目線を合わせながら、エアギターや回転を促したりと、まるでダンサーが体の一部のようだった。高森の「ニャンと☆スペクタクル」の見せ場はなんといってもスーパー早口パートで、今回のライブでは背後のスクリーンを早口の台詞がリアルタイムでスクロールするという逃げ場のない演出の中、きっちりとやりきった。2周目はやりきって力尽きてみせ、だがすぐさまダンスに復帰する姿にはエンターテイメント魂を感じた。こうした、めちゃくちゃ努力したであろうパフォーマンスを、MCの掛け合いでお互いに笑いに落としこんでいくのは長年やってきた戦友ならではだろう。

シンデレラを常に先頭で牽引してきたニュージェネの3人が、2周目のソロ楽曲をトリで歌うのはプレッシャーも一塩なはずだ。原紗友里の「ステップ!」はどこかコミカルさをたたえながら、ハイテンションで駆け抜けるような楽曲。TVアニメシリーズの経験を経た原紗友里がこの曲で見せたのが「ここは未央は歩くと思ったから歩かせてもらった」というキャラクターの身体性にまつわる気づきだったのはすごく面白い。原は毎回歩くペースが違うからダンサーさんに合わせてもらっていると笑い話にしていたが、それだけ形をなぞるだけではない、「未央の呼吸」が原の中に息づいているということだろう。

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福原の「AnemoneStar」は一言で言えば超絶技巧!
歌い出しの「アネモネスター」の一瞬だけファルセットに引っ掛ける感じから始まり、低音でぐいぐい攻めていく疾走感、圧倒的な音の密度、歌い上げるパートで天井をひとつかふたつ突き抜けて増していく力強さ。ボーカリストとしての福原のスペックを信頼してさらに引き上げるような難曲でありながら、詞で描かれる世界の表現には誰よりも渋谷凛と物語を理解していることが求められる。そんな難題に、福原は真っ向から取り組んで軽やかに乗り越えて見せた。

大橋の「はにかみdays」は、この曲をトリに持ってくるんだ、と思うくらいポップでかわいい曲。冒頭の泳ぐような振付や、行進してみせるような動きがいちいちかわいい。だがそんなキュートでかわいく楽しい曲だからこそ、だろうか。大橋の歌のとてつもなく高いレベルでの安定感と地力を改めて見せつけられる思いだ。安定した畳み掛けから「今日はいい日だー」に表情をつけてちょっと崩す感じがまたすごい。「Yes!PartyTime」のソロでおどけるようなパートもそうだが、大橋は崩すポイントにこそ細心の注意を払っている気がする。アニメで卯月のあとを追いかけ、最後には並べたような気がするという大橋だが、この曲では技と練習を丹念に重ねてきた大橋が卯月の手を取って一段上に引き上げたような、そんな感覚だった。

だがそんな素晴らしい2周目にあって、個人的にあえてこの一曲、と言われたら、大坪の「おかしな国のおかし屋さん」を挙げたい。自分のナレーションに対して表情豊かにリアクションをしたり、ステージで泡立て器とボウルを使ったり、本当に大坪手作りのレモンタルトを用意してしまったり。シンデレラガールズ初のヘッドセット使用が、まさかお菓子を作るためだとは誰も思わなかったに違いない。小道具や他のメンバーの力を借りてステージ上に別の情景を描き出す手法は、宮本フレデリカの「き・ま・ぐ・れ Cafe au lait!」で蓄積されたノウハウの延長だろう。そんなステージにちょっとした遊び心で登場したのが、ケーキを食べる王子様として登場した「アナスタシア」だった。「スパシーヴァ!」とお礼を言い、大坪と寄り添ってキメポーズを決めるアーニャ(を演じる上坂)はとても楽しそうだった。

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昨年の3rdライブにおいて、宮本フレデリカ役髙野麻美の「き・ま・ぐ・れ Cafe au lait!」のステージに街行くパリジェンヌ?としてパンを頬張って話題をさらった大坪なら、そうした演者同士の遊び心による共演の楽しさや、あまり演者の負担なく絶大な見せ場になりえることをよくわかっているはず。パートナーにアーニャをというのは、大坪自身の強い希望だったそうだ。思えば今日のライブは研ぎ澄まされていて、アニメの世界のピースをすべて集める「The Future Castle」にも、ストイックなまでに新ソロ曲の成果を見せる「The Future Castle」にも遊びはほとんどない。そんな中で、キャストのたっての希望で実現したささやかな遊びが、久しぶりにシンデレラの舞台に参加する仲間と一緒に楽しんで、彼女を笑顔にするためのものだったことに、なんだか胸を打たれてしまった。この小さな遊び心は3つ目と4つ目の城をつなぐもうひとつの鍵だったようにすら感じたのだった。

本編のラストを飾った5周年記念曲は、「いつも」「永久に」といった意味がある「EVERMORE」をタイトルに冠した。シンデレラの魔法はいつかは解けるもの。だが新しい波の躍動と、先輩たちがさらに先へと進んでいく姿を見せた2日間は、終わらない魔法の存在を信じてずっと一緒に走り続けたいと、そう願いたくなるものだった。

TEXT BY 中里キリ

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