REPORT
2026.09.10
声優、アーティスト、そして自ら作詞・作曲を行うシンガーソングライター/クリエイターとしても存在感を増している雨宮天が、その才能を全方位で存分に発揮したステージ。それがこの夏に行われたライブイベント“LAWSON presents 雨宮天 Live Event 2026 -Room Theory-”だ。大阪と東京の2都市で計4公演、今までのワンマンライブとは一味異なるスタイルで届けられた今回のワンマンライブイベントのうち、8月1日に東京・Shibuya LOVEZで開催された東京での初日公演のレポートを通じて、彼女が導き出したファンと楽しむための新たなセオリーを紹介したい。
PHOTOGRAPHY BY 江藤はんな[SHERPA+]
TEXT BY 北野 創
今回のライブイベントは、今年5月にリリースされた雨宮の最新EP『ノンシナリオ・エチュード / 雨宮天作品集2-Theory-』のリリースに伴い企画されたもの。同EPには雨宮自身が作詞・作曲した全5曲の新曲が収録され、サブタイトルに『Theory』とある通り、彼女がこれまでの活動で築き上げてきたアーティスト/クリエイターとしてのセオリーを示すものとなっていた。そんな作品を携えた今回のライブイベントもまた、アーティスト・雨宮天のライブ活動におけるニューセオリーを提案するものに。アイデアマンでもある彼女の本領発揮となるステージとなった。
会場には開演前から雨宮の楽曲の音源が大音量で流れ、客席の青き民(雨宮天のファンネーム)たちがクラップして早くも盛り上がるなか、この日のライブをサポートする“天ちゃんバンド”のメンバー、宮永治郎(g)、奥野翔太(b)、高尾俊行(ds)、荒幡亮平(Key/バンドマスター)がスタンバイ。ステージが青や紫の光に彩られるなか、バンドのエネルギッシュな前奏に導かれて、この日の主役・雨宮天が登場。演奏がストップして1拍間を置くと、雨宮の“ご期待ください!”という歌い出しと共に1曲目「ノンシナリオ・エチュード」がスタート。「“Room Theory”へようこそ!一緒に楽しんでいきましょう!」と声をかけて、自身がヒロインの水原千鶴役で出演するTVアニメ『彼女、お借りします』(以下、『かのかり』)第5期オープニングテーマでもある本楽曲を、笑顔で晴れやかに歌唱していく。
ストライプ柄のシャツにゆったりしたシルエットのパンツを合わせた衣装の雨宮は、続いて「PARADOX」を披露。こちらも自身がヒロインの氷室菖蒲役で出演したTVアニメ『理系が恋に落ちたので証明してみた。』の第1期オープニングテーマであり、ラブコメ作品らしいキュートネスが堪能できる楽曲。なおかつ雨宮が「THE FIRST TAKE」に初登場した際に歌った、ソロアーティストとしての代表曲の1つでもある。雨宮は愛らしい仕草を交えながら明るくピュアな歌声を会場中に振りまき、バンドの竿隊2人もステージ前に躍り出て盛り上げる。自身の持ち曲の中でもラブリーな魅力をもった2曲で青い民のハートを奪う立ち上がりとなった。
今回は“Room Theory”というタイトルの通り、まるで雨宮が青き民たちを自分の部屋に招き入れるような、普段のライブよりも距離の近い空間作りを意識した「実験的な」ライブイベントになっているとのこと。MCで「10年以上やっててこんなに緊張する?」と笑いながら青き民たちに語りかけつつも、バンドメンバーの紹介や自身が好きな歌謡曲の話を経て緊張の糸がほどけてきたのか、昨年に開催したリサイタルの話題に触れて、同公演でカバーした歌謡曲の一節をアカペラで披露してだんだんいつものペースに。その歌謡好きの一面を自身のアーティスト活動に導入するきっかけとなったのが2017年のシングル表題曲「irodori」で、それ以降は歌謡やジャジー路線の“赤宮”とロック路線の“青宮”の二軸で活動を行っていることを改めて説明すると、「さっそく赤宮になっちゃおうと思います」と宣言。雨宮の衣裳を担当しているスタイリストの戸村優香を呼び込むと、赤い羽織り衣装を着せてもらいながら雨宮から戸村へ質問するコーナーへ。戸村はマイクを装着していないので、回答は雨宮がそのまま代弁して観客に伝える形になるのだが、「私の衣装選びのポイントは?」との質問に対し、「天ちゃんのかわいさとスタイルの良さを最大限に活かしつつ、こんなにかわいい天ちゃんもいるよ、っていう新しい提案をするようにしています」という回答を雨宮本人が口にする羽目になり、めちゃめちゃ照れながら一言一句漏らさず伝える雨宮がとてもかわいらしく、客席からは特大の歓声が巻き起こった。
「違うの!こんなに恥ずかしい、照れ臭いコーナーになるとは思ってなかったんですけど」と戸惑いながらも、今回はいつも舞台裏で行っている衣装チェンジの様子も見せたくて、このコーナーを設けたと説明する雨宮。「これから“赤宮曲”を歌うのでかっこつけなくちゃいけないのに…」と照れ隠しをしつつ、表情をキリッとさせてジャジーな歌謡風ナンバー「irodori」へ。マイクスタンドを用いてグッと艶味を増した歌声とパフォーマンスで青い民たちを翻弄する。そこから小悪魔的に魅惑する歌謡ロック「Catharsis」でカタルシスを解き放つと、最新EPより雨宮自作の新曲「TOXIC♡」を披露。強烈なエレクトロニックビートに乗せて、高圧的とも言えるほどに気高く力強い歌声を放つ雨宮は、まさに甘い毒のように蠱惑的だ。ラストは締めの歌詞“後ろも正面も私♡”というフレーズに合わせて、後ろを向いて振り返るポージングでバッチリ決めて魅せた。
歌い終えて「だいぶ強めの選曲」「好きじゃない?この辺」と嬉しそうに語った雨宮は、ここからステージに用意されたソファに腰掛けてトークコーナーへ。今回はステージセットも衣装もルーム感をイメージしており、部屋でゆったりくつろいでいるような雰囲気の中、雨宮は最新EP『ノンシナリオ・エチュード / 雨宮天作品集2-Theory-』に収録された自作曲の制作エピソードについて語っていく。この日の公演でピックアップされたのは、ライブの1曲目にも披露された「ノンシナリオ・エチュード」。前述の通り雨宮が出演するアニメ『かのかり』第5期のオープニングテーマであり、雨宮が初めて自分で作詞・作曲したアニメ主題歌だ。彼女は自分の寝室から持参したというミニキーボードでメロディやコードを弾きながら、本楽曲のこだわりについて解説していく。
サビのメロディについて、当初はアニメのOPテーマであることを意識してよりわかりやすいメロディにする案も考えていたものの、「天邪鬼なメロディ」が好みな雨宮の個性を尊重して現在のメロディが採用されたこと、サビの和音は半音ずつ上がっていく構成にしてお洒落さを演出したことなどを楽しそうに語る雨宮。さらに天ちゃんバンドのバンドマスターで作曲家としても活動している荒幡から「天ちゃんは自然とメロディをリフレインさせるのが上手だよね」とこだわりを指摘されて大喜び。さらに歌詞の“ご期待ください”と『かのかり』の“5期”が偶然かかっていることにスタッフの指摘で気づいたものの、あとから確認すると周りにいるスタッフの誰もそんな話をした覚えがないという「夏の怖い話」も披露して「ノンシナリオ・エチュード」の制作エピソードを結んだ。
SHARE