INTERVIEW
2026.08.19
メジャーデビュー10周年を迎えたBURNOUT SYNDROMESが、TVアニメ『ハイキュー!!』の主題歌を詰め込んだ珠玉のカバーアルバム『ハイキュー!! × BOS – 主題歌たちの宴 -』をリリース!彼らにとって名刺代わりであり、世界中で愛され続ける「FLY HIGH!!」から10年。がむしゃらに駆け抜けた軌跡を振り返ると共に、原作への深いリスペクトが生んだ今作の緻密な制作舞台裏と、音楽を背負い進むバンドの「今」に迫る。
INTERVIEW & TEXT BY えびさわなち
――デビューから共に歩んできた『ハイキュー!!』ですが、まさにデビューから10周年となる今年。あの10年前にデビュー、そしてアニメタイアップに向き合って「FLY HIGH!!」と向き合っていた時間を振り返ってください。どんな時間でしたか?
熊谷和海 とにかく曲を書いている時は一生懸命だったし、TVアニメ『ハイキュー!! 』のオープニングであるという、“ことの大きさ”がよくわかっていなかったです。とにかく「選ばれたらデビューできる」という言葉を頼りに曲を書いていましたし、選ばれた後や実際にデビューをした後にどうなるかとか、アニメの主題歌に選ばれることの影響を想像もしていなかったです。結局「FLY HIGH!!」は10年歌い続けることになるのですが、そうなることも予測できておらず、とにかく一生懸命にやっていましたね。
廣瀬拓哉 当時の熊谷は、その後「夕闇通り探検隊」になる曲も含めて3曲を提出していて、アニメソングを書くイメージがなかったんですね。もっとコアで複雑な曲を作っていたので、アニメソングを3曲も書いてきたことにまずびっくりしました。「これは選ばれるな」という謎の自信もありましたが、その先にどうなっていくのかは僕自身も全然わかっていなかったと思います。
石川大裕 メジャーデビューするバンドが多い時期だったんです。アニソンというよりは、J-ROCK界隈でのメジャーデビューと捉えていましたし、機会は一度しかないので、そこで「どれだけ評価してもらって最初のインパクトで高得点を叩き出すかが大事だ」とバンドマンの先輩に言われていたんです。その2年後に僕たちが出した「FLY HIGH!!」は、今思えばやはり、先輩の言葉通りに言えば「高得点を叩き出したな」と思えます。それくらいの力のある曲が、奇跡のタイミングで生まれたのだと、10年を経た今、確信しています。
――メジャーデビューの曲だからバンドにとって名刺代わりだけれど、アニメのオープニングという、作品の顔にもなる。バンドとアニメという作曲に作用する力のバランス感はいかがでしたか?
熊谷 がむしゃらだったからなあ……。アニメの持っている熱量と、当時の自分たちがメジャーデビューに賭ける熱量みたいなものが、奇跡的にシンクロしたような感覚です。烏野高校対青葉城西戦を描いたシリーズでしたが、そこで「強大な敵に立ち向かう」というスピリットが、たまたまシンクロして、自分たちの勢いを込めて作った曲が奇跡的にマッチした感がありますし、狙って作ったものではなかったです。
――しかもその1曲を、10年を経た今も世界中で鳴らしているんですよね。
熊谷 それも不思議で。技術としても10年前ですし、一番拙いはずなのに、それが受け入れられている。技術を積むことは逆の影響になっていくのではないかと思えて、悩ましいですよね。
石川 あるよね。そういうところ。
熊谷 技術がつくと、当時の勢いは出せないんです。あの頃の僕は喉のことなんて少しも考えることなく歌っていましたから。肉体的にも精神的にも、当時の勢いを今出すことは難しいです。
廣瀬 PCのデータ整理をしていたら、当時のライブ映像が出てきて。あの熱量は、上手くなったら出せないものなんだと思いました。技術を積んでいなかったからこそ、そのぶんを自分たちのエネルギーで補っていたんだなということを今になって実感しています。
熊谷 長くやっていて思うのは、技術は曲線的に上がっていきますが、若さ的な良さは直線的に下がっていくんですよね。僕らは今、ちょうどその交差点にいる気がしていて。技術は温まり、若さもギリギリ残っている。おいしいタイミングなんじゃないかと思っています。
――そんなタイミングでカバーアルバム『ハイキュー!! × BOS – 主題歌たちの宴 -』をリリースされるわけですが、まずは企画の立ち上がったきっかけや改めて作品への思いをお聞かせください。
熊谷 デビュー10周年の企画の1つとして「カバーアルバムを出す」という話が持ち上がりまして。内容を私とレーベルスタッフとで詰めていたのですが、「学園モノ」とか「スポーツ」とか題材の候補があがったものの、どれもピンとこなかったんです。ただ、それらを統合すると、それは『ハイキュー!! 』なのではないかというところに落ち着き、いっそのこと『ハイキュー!!』の主題歌のカバーをさせてもらったらどうだろうかと。そもそも今年の8月19日「ハイキュー!!の日」が、まさかの水曜日で、その日がリリースできる日であったという奇跡もハマって、制作の運びとなりました。
――今回収録した楽曲群はリアレンジをされていますが、どういうことを意識しましたか?
熊谷 カバーアルバムを作るとなった時に、まずみんなで話をしたのは「どれくらいアレンジをしようか」ということでした。他のアーティストさんのカバーアルバムを色々と聴きながら考えたのですが、やろうと思えば全然違う曲にもできてしまうし、かといってまったくアレンジしないのも面白くないので、1曲ずつ意見交換をしながら3人で「だいたいこれくらいのアレンジ感」というものを共通認識として持つことにしました。順番に聴いた時に楽しめるように、流れを意識して、原曲を大幅に残す曲や逆にしっかりアレンジする曲を決めていきました。
廣瀬 ファンの皆さんは『ハイキュー!!』の楽曲を聴き込んでいると思いますし、崩し過ぎないほうが良いかもと思うものもありましたし、「この曲はBURNOUT SYNDROMES風にしっかりアレンジしたほうがいいよね」という曲では手を入れたりという感じでした。最初に手掛けたのはtacicaの「LEO」。熊谷が「こういう感じにやってほしい」というデモを作ってきたので、それを改めて僕と石川くんが作り直していったのですが、「LEO」はかなりアレンジをしているので、この方針で他の曲もリアレンジしていくのかと思いきや、原曲を大切にした曲も多かったので、自分としても上手くまとまったなと思っています。
石川 僕は一番わがままなタイプだと思っているのですが、実は原曲に大きく手を入れるということ自体をあまり好んでいないんです。だからと言ってまったく変わっていないのも嫌。僕みたいなタイプの人は少なくないとも思っているので、原曲そのままでもなく、バンドの色を込めたアレンジをしているこのカバーアルバムはすごく良いところを突いていて、。一番気持ちが良いところで響いているんじゃないかなと思っています。
熊谷 目指していたのは、原曲を「もう一度聴きたいな」と思ってもらえるようなアルバムにすることだったんです。「原曲はどうだったかな?」と変化したところを探したくなるような、聴き比べたくなったら良いなと思っています。基本的にはデビュー10周年ですが、「ハイキュー!!の日」の企画の1つだと意識しているので、改めて主題歌の良さに気付いてもらいたい。カバーという面があることによって、オリジナルをもっと深く聴き込めるという盛り上がりが8月19日にあると、「ハイキュー!!」ファンの皆さんも楽しめるのではないかと思って制作しました。
――ではここからはそれぞれの曲のポイントを伺っていきます。まずはSPYAIRの「イマジネーション」です。
熊谷 (SPYAIRの楽曲は)3曲あるので、難しかったですね。同じようなニュアンスになっても違うし、だからと言って変えすぎるわけにもいかない。それで1曲は僕がしっかり入って、2曲目、3曲目では違うアレンジャーさんにお願いしました。
廣瀬 原曲のドラムがかなり完成されていて、おいしいところがたくさんあったので、そこは潰さないように考えていきました。アレンジャーは江口 亮さんに入っていただいているのですが、Bメロなんかはバレーボールの球が跳ねるような情景が浮かぶ感じで、これはこれで新しいなと思いながら演奏をしました。
石川 この曲は「FLY HIGH!!」とシンコペーションで叩き出す大事にしているところが似ていてそれが『ハイキュー!!』っぽさだとも思っているので、その良さはそのままにしたい、というのを意識しました。
――続いてカリプソっぽさのあるアレンジとなったNICO Touches the Wallsの「天地ガエシ」です。
熊谷 僕の中では、アニメが1クールあったら、5話、6話くらいで挟まってくる“夏休み”回のイメージで作りました。部活の合間にビーチバレーでもするような、よりエンディングっぽさが出ると面白い感じになるかなと思って、南国っぽいアレンジをお願いしました。
廣瀬 BURNOUT SYNDROMESではあまりやったことのないアレンジでしたね。僕自身、NICO Touches the Wallsさんが大好きで、ライブもよく観に行っていましたし、自分の中にバンドのニュアンスがDNAとして既に入っていたので、すごくやりやすかったです。
石川 BURNOUT SYNDROMESにはほとんどない16ビートのテンションに苦労しました。でもNICO Touches the Wallsさんが持っている西部劇感や荒野感が、熊谷くんも言うようなトロピカルな感じになったのは、BURNOUT SYNDROMESによって見えた新しい景色でしたね。
――スキマスイッチの「Ah Yeah!!」はいかがですか?
熊谷 デモ段階から僕が入っているので、そういう意味ではアレンジにかなり変化のあった楽曲かなと思っています。バカテクい感じ(テクニカル的に難しい感じ)にしたかったので、原曲もキメが多いのですが、もっとキメていくと面白いのかなと思ってやってみました。イメージとしては、モダンな感じにしようと思って、当時のポップスシーンにおけるモダンの第一線だったスキマスイッチさんの曲を、より今の感じにブラッシュアップすると面白い化学反応が起きるのではないかと考えながら臨みました。
廣瀬 原曲も素晴らしく難しいのに、どうしてもっと難しくするのかな、と思いながらも、しっかりやりきりました。
石川 非常に難しい楽曲になっているので、「ベースを弾いてみた動画」に挑戦をするのなら、この曲は挑み甲斐があると思います。
――そして先ほどもお話が出ていたtacicaの「LEO」です。
熊谷 これはアレンジャーさんにお願いせずに自分たちでアレンジをしました。アレンジャーさんにお願いすると、原曲を踏襲する傾向があるのですが、熊谷のみでアレンジした2曲のうちの1曲ですね。僕としてはモダンにしたくて、ダンスミュージックっぽい、エド・シーランのようなイメージです。ループですけど、徐々に音が広がっていくんです。ストリングスも最初はスピッカート的に跳ねているのですが、だんだんレガートになっていって、壮大になっていくという。
廣瀬 最初にアレンジが決まっていて良かったなと思うくらい叩けなかったですが、テンポを落として、一小節ずつやっていくという恐ろしい工程を経て形にすることができました。
石川 僕はすごく古い筋肉を使って演奏した思い出があります。それこそ「文學少女」(2015年)くらいの時のベースのフレーズを「もう一度やってみようかな」と出してみたのですが、熊谷くんが良いバランスでそういったニュアンスも抽出してくれました。
――続いてSPYAIRの「アイム・ア・ビリーバー」です。
熊谷 アレンジャーの江口さんにアレンジをお任せしたところ、原曲ではギターで弾いているイントロをエレクトーンで弾いてくださっていたんです。それがすごくかっこ良くて、より爽やかな仕上がりになりました。
廣瀬 原曲とまったく同じテンポのはずなのに、すごくスピーディに感じた1曲。なのでその疾走感を壊さないように演奏をしていきました。
石川 熊谷くんの声に一番合っている曲だなと思っていますし、個人的に大好きな曲です。
――CHiCO with HoneyWorksの「決戦スピリット」はいかがですか?
熊谷 原曲を踏襲していて、変えたのはキーくらいじゃないでしょうか。ギターは完コピしてやろうと思って、演奏しました。CHiCO with HoneyWorksのイベントに呼んでもらった時に一緒に歌ったこともあったので、バンドとしても馴染みがありましたし、男性ボーカルにするだけでも十分なアレンジなのではないかなという印象です。コーラスワークも3人で何度も声を録って重ねていきました。
廣瀬 久々に3人で歌えて良かったです。アニメイベントで何度か歌ったこともあったのですが、アレンジャーのejiさんから「世界を回ってきた廣瀬くんが見たい」という要望をいただきまして。「悪い廣瀬くんで思いっきり叩いていいよ」とのことだったので、思いっきりワル廣瀬で叩いた部分があったのですが、そこは見事に楽曲の抑揚になっていたので、「さすがだな、ejiさん」と思いました。
石川 原曲のベースがバカテクなのですが、逆にアレンジですごく簡単にした曲です。比較的引きやすいベースラインなので、本家で諦めた人は、こっちのアレンジで弾いてみることをお勧めします。ちょうどいい塩梅になったなと思います。
――SUPER BEAVERの「突破口」はどうでしょうか。
熊谷 アレンジャーにはいつもSPYAIRの楽曲のアレンジを担われているTasukuさんにお願いをしました。「FLY HIGH!!」を作っていた時にはもう「イマジネーション」を聴き込んでいたので、Tasukuさんのアレンジもまた「ハイキュー!!」らしさの1つの要素だと思っているんです。SUPER BEAVERの「突破口」をTasukuさんらしくアレンジしたらどうなるのだろう、と単純に見てみたかった、企画内企画のような1曲です。SPYAIRっぽいけど、SUPER BEAVERっぽいそれを、BURNOUT SYNDROMESが歌っているのは面白いですね。
廣瀬 この曲からレコーディングを始めたので一番思い出深いですね。ドラムテックとして、GO!GO!7188のターキーさんに入ってもらったのですが、色んな手札を見せてもらいながら、楽器もお借りして、短い時間でしたが、上手くドラムをまとめてもらえた1曲です。
石川 これは「やめないことが正義だ」と歌詞に勇気をもらった曲なので、皆さんも歌詞に注目して聴いてもらいたいです。
――最後はSPYAIRの「オレンジ」を収録しています。
熊谷 いつもBURNOUT SYNDROMESでご一緒させていただいている岸田勇気さんにアレンジをお願いしました。楽曲をキラキラさせることが得意な方なので、ストリングスをメインに壮大で煌めきのある、テーマパークのような曲にしてください、とお願いしました。アルバムの曲順として、時系列で入れていくだろう、ということは最初から想像をしていたので、おそらく最後に収録するだろうと構想がありましたし、1曲目に入れる林ゆうきさんの『ハイキュー!! 』に繋がるように、バレーボールの試合の環境音みたいな感覚で他の主題歌を挟めたら、ストーリーが生まれるかなと思いました。
廣瀬 Aメロ以降にパーカッシブなドーンという音が入ってきますが、これは僕自身にも手札やアイデアとしても持っていたので、レコーディング当日にやりとりをさせてもらいながらのレコーディングとなりました。あとは、岸田さんとアレンジの話ができたことがすごく嬉しかったです。
石川 この曲はベースのノリとして、すごくおおらかに弾かなくてはいけないんですよね。今までの曲に比べてとても壮大なので、そこを意識しながら演奏しました。結果的にエンディングにふさわしい壮大な音にできたと思っています。
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