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2026.06.12

【エッセイ連載】「伊藤美来のmoi!」第25回目:コンクリートジャングル

【エッセイ連載】「伊藤美来のmoi!」第25回目:コンクリートジャングル

声優アーティスト・伊藤美来が日常で感じたことを切り取り、私らしく文章にしていくエッセイ連載「伊藤美来のmoi!」。

「初めましての方や応援してくれている方にも、表面的な私だけではなく自分の頭の中を見てもらう気持ちで書いていきたい。“伊藤美来”がどんな人間か知ってほしい」。
そんなオモイを込めて言葉を綴っていきます。

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最近、運動をしなきゃという気持ちに急に駆られることが増えた。私は身体を動かすことは大嫌い……というほどではない。学生の頃、マラソンはとにかく辛いから嫌いだったけど運動全般に拒否反応が出るようなことはなかった。まあ好きなわけでもないけど。小学校の体育の授業では、サッカーやバスケなどのゲーム性のあるものが好きだった。しかし学年が上がるにつれて、私は体育の授業を面倒だと思い始めた。そもそも授業という単語が嫌だったし、学校の人間関係も複雑になるなか、体育祭に向けての練習がまとまらなかったり、クラスで口喧嘩が始まったり。運動が苦手というより、みんなで運動するときのこの空気が苦手だと感じるようになった。それが運動=苦手に繋がってどんどん運動に気が向かなくなったのかもしれない。

そんな私が昨今人気のピラティスに通い始めた。筋トレとヨガの間のようなイメージだとよく言われる。インナーマッスルを鍛え、体力向上を目指せるトレーニング。女性がダイエットやスタイルアップのために始めるイメージがあるが、男性でピラティスをやる方も増えているらしい。私はお仕事でも役立ちそうなことと、もうすぐ30歳迎えるにあたって運動不足を解消し、健康に日々生活したいと思ったのがきっかけ。まずは近所のスタジオに体験入会を申し込んだ。清潔感がありピカピカのフローリングが眩しいスタジオには、全人類が憧れるようなヘルシーで柔らかい雰囲気を纏ったインストラクターのお姉さんが迎えてくれた。最初に気になる箇所や鍛えたい部位を用紙に書いていく。私は控えめに、お腹と脚と書いた。本当はもう全部に丸をつけたいくらいだったが、心配されすぎるのも気まずいのでやめておいた。一通りトレーニングに使う器具の説明を受けたあと、早速体験メニューが開始された。まずは、ロールダウンと呼ばれる背骨を一骨一骨倒していくストレッチをやり、あまりに背面がバキバキなことを思い知らされる。いつからこんなに固くなってしまったんだろう。子供の頃は、肩こりなんて大人がカッコつけたいときに言ってるだけだと思ってたのに。痛いとか疲れなんて感じたことなかったのに。あの頃から今までにかけて、自分を全然大事にできてなかったんだと悲しくなった。その後、脚を鍛えるトレーニングをするためテレビなどで見たことがあるあの器具”保健室にありそうなベッドが鉄の棒で囲まれていて、上から太いゴムがぶら下がり、ゴムの先に脚をかけられる輪っかがついた器具”に横たわった(なんて名前なんだろう)。脚を上げ、足裏をその輪っかにひっかけて、ゴムに反発するように脚を開いたり閉じたりする。これがなかなかにきつい。プルプルが止まらない。こんなのめっちゃ面白くなっちゃってるじゃん、恥ずかしい!と先生をチラとっと見たが、にっこり笑顔で「いいですね、はいゆっくり吸って〜吐いて〜」と私のプルプルにはお構いなしだった。そうだ、ここには運動をしにきてるんだし、そのためにお金も払ってるんだからできないこと恥ずかしがってたら時間がもったいない。外から見て面白くなっちゃってるとか関係ない、よし、やるぞ。一生懸命に脚を動かし、あと1回でもう無理と思ったその時、私の心の声が聞こえていたのか「ではあと1回いきましょう〜」と声をかけてくれた。その後、腹筋や腕のトレーニングもしたが絶対に「あと1回が限界」というところで「ラスト〜」と言われる。この先生、エスパーか何かか?と考えたのも束の間、私の限界顔とプルプルがすべてを物語っていたんだろうなと気がついて、やっぱり恥ずかしくなった。

そんな体験入会を経て、家も近いし週一から通って見ることにした。相変わらず先生は美しく穏やかで、行くたびにトレーニングだけでなく、体に優しくすることについても教えてくれる。「食生活を整えることが大事なので、体を温めるものを食べたほうがいいですよ」とか「目を休ませてあげる時間を作りましょうね」とか。先生があまりにずっと綺麗でヘルシーで笑顔でいるので、ある日「先生はどうしてそんなに穏やかなんですか。独自のリフレッシュ方法とかあるんですか」と聞いてみた。先生は「そうですね、お休みがあったら旦那と一緒にまず都心から離れて、このコンクリートジャングルから抜け出しますかね」と言った。ん?コンクリートジャングル?私はこのとき初めてこの単語を聞いたのだが、東京を例える際によく使われている造語らしい。理解すると妙に納得した。そっか、今いるのはコンクリートのジャングルで、私はそのジャングルにいる人間という動物の1人。ジャングルだから周りに色んな危険はあるし、森で迷子になるように、コンクリートだらけだからこそ道がわからなくなったり、高さや硬さに押しつぶされそうになることもある。面白い。誰が最初に言い出したんだか。こんなパワーワードをふんわりニコニコしながら言ってる先生のことがますます好きになった。このコンクリートジャングルでの自分に合った生き方、そしてプルプルしない筋肉の付け方を、これからも先生から学び続けようと心に誓った。


私がコンクリートジャングルから抜け出した日。
確かに自然は目が休まった。


関連リンク

伊藤美来 公式サイト
https://columbia.jp/itomiku/

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伊藤美来 公式YouTube
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https://www.instagram.com/itomiku_official/

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