リスアニ!WEB – アニメ・アニメ音楽のポータルサイト

INTERVIEW

2026.04.10

sajou no hana・sanaが“自分の言葉”で歌い始めた理由――TVアニメ『姫騎士は蛮族の嫁』EDテーマ「シルベキコト」が示す新しい世界への一歩

sajou no hana・sanaが“自分の言葉”で歌い始めた理由――TVアニメ『姫騎士は蛮族の嫁』EDテーマ「シルベキコト」が示す新しい世界への一歩

sajou no hanaが2026年に放つ最初の新曲「シルベキコト」は、TVアニメ『姫騎士は蛮族の嫁』のEDテーマとして書き下ろされた、これまでの楽曲とは一線を画する挑戦を盛り込んだ一曲だ。ボーカルのsanaが自ら手掛けた歌詞には、作品の主人公である姫騎士・セラの“新しい世界”との出会いや恋心に重ねつつ、sana自身の今言葉にしたい想いや感情が込められている。楽曲制作の裏側から、アニメの世界観に寄り添いながらも自身の内面をさらけ出したという歌詞の真意、そして彼女が大切にする“優しさ”という信念まで、現在のsanaの核心に迫るインタビューをお届けする。

INTERVIEW & TEXT BY 北野 創
PHOTOGRAPHY BY 堀内彩香

姫騎士・セラと自身の心境を重ねて綴った“新しい世界”に踏み出す歌

――新曲「シルベキコト」は、TVアニメ『姫騎士は蛮族の嫁』のEDテーマ。最初にお話をいただいた時の感想はいかがでしたか?

sana まず、女性が主人公の作品ということで、今回も自分で歌詞を書くことができればいいなと思いました。それとsajou no hanaとしては「ラブコメ」というジャンルの作品に携わることが少なかったので、そこもすごく新鮮で嬉しかったです。

――言われてみればバトル系の作品のタイアップが多かったですものね。とはいえ『姫騎士は蛮族の嫁』はファンタジー世界が舞台の作品で、一般的にイメージするラブコメとは少し毛色が違いますよね。

sana そうなんです。主人公のセラ(セラフィーナ・ド・ラヴィラント)が敵国のバルバロイ側に連れ去られて、族長の息子のヴェーオルにいきなり「嫁になれ」と言われるところから物語が始まるので(笑)。最初は衝撃の連続で「この先どうなっちゃうの?」とハラハラしながら原作のコミックを読み進めました。でも、セラが思っていた以上にその環境に馴染むのが早くて。ああ、彼女は本当にピュアな子なんだなと感じて、一気に親近感が湧きました。それと漫画で描かれている景色がすごく綺麗で、読んでいて毎回普通に感動するんですよね。これがアニメになったらどんな風に描かれるんだろう?と思いながら楽しく読ませていただきました。

――主人公のセラに共感を抱く部分はありましたか?

sana 共感とはちょっと違うかもしれないですけど、彼女は新しい環境に対して不満をこぼしたりしているわりには、美味しいご飯を食べるとすぐにご機嫌になってしまって、どんどん周囲の輪に馴染んでいくんです。それを見て「ああ、やっぱりご飯って偉大だな」と思いました(笑)。私も食が合わない国には住めないと思うので。

――sanaさんは最近、ライブで海外遠征することも多いですが、食文化の違いで困ったことはありますか?

sana 私は結構何でも食べられるので、あまりそういう経験はないですね。でも、以前台湾に行った時に八角だけは少し苦手だなと感じてしまいました。独特のスパイスの香りにだけは、まだ馴染みきれなくて(笑)。台湾という場所自体や、そこに住んでいる人たちは本当に優しくて大好きです。

――楽曲制作について詳しく伺わせてください。「シルベキコト」はボカロPとしても活躍する青谷さんさんが作曲を担当しています。ご一緒するのは初めてですよね。

sana はい。関係者の方からご紹介いただいて、素敵な楽曲を作られているので、「ぜひ曲を書いて欲しいです」とお願いしました。今回は、まず青谷さんにメロディを作っていただいて、そこに私が歌詞を乗せていくという流れだったのですが、青谷さんは『姫騎士は蛮族の嫁』の世界観にすごく寄り添ってくださって。民族音楽のようなエキゾチックな響きがありつつ、現代的なポップス感も共存していて、普段はボカロの楽曲を作られている方なので、メロディがギュッと詰まっていて歌い手として挑戦しがいのある、とても面白い曲だなと思いました。

――歌詞を書くにあたってはどんなことを意識しましたか?

sana 実は今回、アニメの制作サイドから「よく聴いたら恋愛ソングにも聞こえるような曲にしてほしい」というオーダーがあったんです。私にとって、恋愛ソングの歌詞を書くのは初めての経験だったので、正直に言うとちょっと気恥ずかしさもありました(笑)。今まで作詞した曲は、作品の世界観もあって“苦しみ”や“悲しみ”といった深刻な感情を描くことが多くて……。

――TVアニメ『異修羅』の第2期EDテーマだった「THE IOLITE」(2025年)は、まさにそういう楽曲でしたね。

sana そうなんです。それで今回の歌詞は“花”をテーマに書き始めたんですけど、最初は歌詞の中で最終的にその花を枯らしてしまって。で、その歌詞を一旦スタッフの方に見てもらったら「暗すぎます」と言われました(笑)。「ラブコメなので枯れるようなお話ではないです」と。そこから周りの方にいろいろ意見やアドバイスをいただいて、書き直したのが今の歌詞になります。sajou no hanaの楽曲の歌詞って、あまり明るくし過ぎない、という暗黙の了解みたいなものがあったんですよね。でも、今回は女性が主人公の作品でもあるので、そこを一旦取り払って、セラの気持ちに重ねつつ、自分自身の内側にある「誰かを想う純粋な気持ち」を素直に言葉にしてもいいんじゃないか、と思いながら歌詞を書いていきました。

――「歌詞を明るくし過ぎない」というのは、渡辺 翔さんやキタニタツヤさんと一緒に活動していた頃からあったのでしょうか。

sana はい。暗黙の了解というか、そういうお話もしていました。明確なラインがあったわけではないんですけど、「明るくするにしてもこのぐらいのラインだよね」という何となくの基準があって。そういえば翔さんとキタニさんが曲を作っていた時も、「暗すぎるからもうちょっとどうにかしよう」みたいなやり取りがあったことを思い出しました。全く同じことをやってますね(笑)。

――恋愛をテーマに書くのは少し気恥ずかしかったという言葉もありましたが、実際どんな風に書いていきましたか?

sana 私は別に恋愛脳というわけではないんですけど、恋愛に限らず、人と人の関係性や誰かを信頼したり尊敬する気持ちも「好き」という感情に当てはまると思うんです。その意味で、私はsajou no hanaがソロでの活動になってから、本当にいろんな人に助けてもらって、導いてもらってきたので、そういう思いをこの曲に込めて書ければいいなと思いました。

――なるほど。一方で作品の主人公であるセラの目線で意識したことはありますか?

sana セラは自分の気持ちにあまり正直になれない、少しシャイな部分があると思うんです。そこは自分自身の心情ともリンクするところがあるので、上手く歌詞に落とし込んでいければと思いました。セラは母国をすごく大切にしてきた人だと思うのですが、敵対しているバルバロイ側のヴェーオルと出会うことで、本人が望む形ではなかったとはいえ突然新しい世界に飛び込むことになって、そこで新しい価値観を知ったり、新しい人々に出会って導かれることで、彼女自身も成長していく。そういう姿を描けたらと思いました。

――そのお話を踏まえて、sanaさんにとっての「新しい世界」に踏み出す経験がどんなものだったのかを聞いてみたいです。

sana それこそ作詞はずっとやりたいという気持ちはあったのですが、シャイだったもので、なかなか言い出すことができなかったんです。以前は偉大な作曲家が二人もいましたし(笑)。でもソロになったタイミングで、「sanaちゃんの言葉で伝えていくべきだよ」と周囲の方に背中を押していただいて、いろんな人に導いてもらって夢を叶えることができました。

――ちなみに作詞に対する興味はいつ頃から抱いていたのですか?

sana sajouの活動を始めてから徐々にですね。ライブ活動やイベントにも出演させていただくなかで、やっぱり自分が歌っているからには、自分の言葉でも伝えたい気持ちがどんどん湧いてきて。そうすることでファンの方たちとの繋がりをより強く感じたり、心の距離みたいなものを縮めることができるんじゃないかなと思って。今回の楽曲でも、私が最近感じている、人と人との関係性や信頼みたいなことを書くことができたと思います。

――歌詞の中にある“大切な箱庭”というワードも印象的でした。ここにはどんな思いが込められていますか?

sana 箱庭って、自分が大切に育てて、守ってきた小さな世界だと思うんです。そこから抜け出すのは勇気がいるけれど、外の世界に飛び出したとしても、自分がそれまで大切にしてきた原点まで捨てる必要はない。育ててきた箱庭を心に抱いたまま、新しい場所へ向かっていく。そんなイメージでこの言葉を選びました。

――sanaさんにとっての「原点」とは何でしょう。

sana デビューのきっかけをいただいた『モブサイコ100』の楽曲だったり、当時チャンスを与えてくださった皆さんの存在ですね。今の活動の目標の一つは、その頃からお世話になっている大人の方々に恩返しをすることでもあるんです。だからこそ、新しいことに挑戦しつつも、自分の始まりの場所はずっと大切にしていたい。その思いもこの歌詞に落とし込むことができたと思っています。

――歌詞には“気づいてないふりで 誤魔化しの嘘を 重ねたこの蕾は 咲かないまま”ともありますが、最後は“揺らめいた世界の中 始まりの蕾が今”と、これから新しい始まりに向けて花開いていく予感と共に終わります。これはsanaさん自身が本心をさらけ出せるようになった軌跡と重なるのかなと思って。

sana 確かに!そう言われると意外とさらけ出しているんですね、私。恥ずかしいですね(笑)。

――昔と比べて自己開示ができるようになったと自分でも感じますか?

sana そうですね。昔は言わなくてもきっと通じるだろう、と信じていたところがあったんですけど、そんなことは全くなくて。やっぱりちゃんと言葉にしないと伝わらないし、応援してくれる人たちへの感謝の気持ちも、言葉にすることが大事だなと思い始めたんです。なので、作詞に関しても自分から「ぜひやりたいです」と言ってみるようになりました。今後も頑張ろうと思っています。

女性らしいしなやかさとsajou no hanaらしいハードさを併せ持った曲

――「シルベキコト」の歌唱面でのアプローチについてはいかがでしたか。

sana すごく繊細で柔らかなメロディだったので、あまり力を入れすぎず、女性らしいしなやかさを意識してレコーディングに臨みました。sajou no hanaの曲はハードなものも多いのですが、今回は清々しい気持ちで気持ち良く歌うことができました。サビの“もっともっと見せてよ”のところは、セラのかわいらしさとちょっとわがままな感じが出るといいなと思って、こだわったポイントです。

――冒頭は英詞から始まる構成も印象的です。これはsanaさんのアイデアですか?

sana はい、ちょっとしたこだわりです。ここまでしっかりと英詞で始まる曲は今までのsajou no hanaにはなかったので、聴いてくださる方をドキッとさせたくて。あと、日本語よりも英語の方が、たくさんの情報を凝縮して伝えられる気がして。楽曲の世界観を表現するために、あえてこの形を選びました。作曲の青谷さんも「まさか英詞始まりで来るとは思いませんでした」と驚いてくださったので、手応えを感じました。

――サウンド面では、爽やかなアコギで始まったかと思えば、力強いドラムが効いていて、意外と骨太でがっしりしたアレンジですよね。

sana そこはまさに、アレンジをしてくださったナノウさんのサウンドですよね。私も完成した音を聴いて「さすがナノウさん、バチバチに決めてきたな!」と思いました。これまでのsajou no hanaが持っていたバンドとしての強さをしっかり残してくださっていて。ナノウさんは今、ライブ活動でもご一緒させていただいていて、私のこれまでの活動も知ってくださっているので、今までのsajou no hanaとしての像を大切にしつつ、新しい扉を開けてくれたような気がします。

――アイリッシュフルート風のケルト音楽っぽい音色の軽やかさとバンドサウンドのタフさ、その両方の要素が合わさっていて、姫騎士の「清廉さ」と蛮族の「力強さ」が融合しているようにも感じました。

sana 本当にそうですね。やっぱりナノウさんの音作りは面白いなと思いました。まさかこんなに力強い曲になるとは思っていなかったのでびっくりしました。

――MVについても伺いたいのですが、sanaさんがお花に囲まれているシーンがとても印象的でした。

sana 今回、本物の生花をたくさん用意していただいたんです。フラワーデザイナーの方がスタジオに入ってくださって、スタジオに入った瞬間に鮮やかな景色が広がっていてすごく感動しました。面白かったのが、朝のうちはまだ蕾だった花が、撮影が進んでいくうちに、どんどん開花していったんです。監督さんがその様子もしっかりと収めてくださって、楽曲のテーマである“開花”とリンクするような、素敵な映像になりました。

――衣装も水色で、まるで妖精のような雰囲気でしたね。

sana 原作のイメージをお借りして、お姫様のようなシルエットの衣裳にしてもらいました。青いリボンもこだわりポイントの一つです。

――最後にそのリボンをほどくシーンがありますが、あそこにはどんな意図が?

sana 自分を縛っていたものからどんどん解き放たれていく、という様子を表現したくて、最後はリボンをほどきました。実はあのシーン、アニメのようにパッと綺麗に解けるまで何度も撮り直したんです。今回の撮影で一番頑張ったシーンなので、ぜひ注目して観ていただきたいです。

――sanaさん自身、お花は好きなんですか?

sana 好きです……と言っても、いただくのが好き、という意味ですけど(笑)。ライブでいただいたお花は、できる限り持ち帰って部屋に飾ります。翌朝、目が覚めた時にお花がいっぱいあると、すごくロマンチックな気持ちになって感動するんですよね。ただ、育てるのはあまり得意じゃなくて、すぐに枯らしてしまうんですよね……。

――だから最初に歌詞を書いた時も、無意識に花を枯らしてしまったのかもしれませんね(笑)。

sana あ、そうか!きっとそういうことですね(笑)。でも、2026年のsajou no hanaは枯らしません。ちゃんと咲かせていきます!

次ページ:作詞を通して見つめ直した自分自身、“優しさ”という芯

SHARE

RANKING
ランキング

もっと見る

PAGE TOP