声優・アーティストの青山吉能が、4月8日に7作目となる配信シングル「lull」をリリース。昨年発表した「ルーガルー」に続き、青山が尊敬するシンガーソングライター・日食なつこが作詞作曲を手がけた本作。温かな声色とオーガニックなサウンドが印象的で、絡まってしまった心の糸をほどいてくれる、優しいミディアムナンバーとなっている。この曲が生まれた背景を本人の言葉と共に紐解いていく。
INTERVIEW & TEXT BY 逆井マリ
──「ルーガルー」での出会いを経て、再び日食さんとタッグを組むことになった経緯についてお聞かせいただけますか。
青山吉能 「ルーガルー」を制作した時に、日食さんから「青山さんとならすぐ曲が降りてきそう」とたびたび言っていただいて。もう夢みたいで、現実だとは思えず「ありがとうございます」と、ただただ言うばかりだったのですが……。その後、新しく曲を出すことになった時に、あの言葉を現実にしたいという欲深い気持ちが出てきてしまって……。「ルーガルー」でご一緒できただけでも十分すぎるほどだったのに「なんて浅ましいんだろう」と思いつつも、お声がけしたらご快諾いただけました。本当にありがたかったです。
──気づけば「ルーガルー」のリリースから1年ほど経って、その間には“青山吉能 Birthday LIVE 「i’ll DO me.」”もありました。そのなかで「ルーガルー」はどのような曲になっていきましたか。
青山 「ルーガルー」はこれまでの楽曲制作とは少し違って、日食さんと密にコミュニケーションを取りながら作った曲ということもあり、より自分らしさが反映された楽曲になったと思います。ただライブで扱うとなると、その位置づけがすごく難しくて。どの曲も我が子のように大切に思っているからこそ、「ルーガルー」という一匹狼のような存在を、どうセットリストの輪に馴染ませるかをすごく悩みました。でもバースデーライブでは上手くまとまって。歌い続けていくうちに、最初は尖って感じていた部分も、自分の中に吸収されて、自然に馴染んでいった感覚がありました。
──今年3月に行われた“81PRODUCE 45th Birthday LIVE 『PRESENT これまで×ここから』”でも「ルーガルー」を披露されていましたね。
青山 「ルーガルー」を歌うのはバースデーライブ以来だったので、ほぼ1年ぶりで。しかも東京国際フォーラムという大きな会場での、練り歩きでの歌唱。自分名義としてあれほど大きな会場で歌うこと自体初めてだったので、恐怖や不安も少しありました。「もうなるように、なれ~!」と思って出ていったら、気づいたら終わっていて(笑)。あまり記憶がないんですよ。
──客席の熱気は感じられていましたか? すごい盛り上がりでしたよね。
青山 それは感じていました!あの場で初めて聴く方も多かったと思うので、曲の力に助けられました。観客席を見渡して「たくさんペンライトや、名前の書いてあるうちわがある!」と舞い上がったのは覚えていて。フェスにも出たことがないので、そういった雰囲気が新鮮でしたね。あと、私のファンの人たちが、「ホールで1人で歌ってるよ」と言わんばかりに、感慨深げな表情をしてくれているのもわかりました。その関係者ヅラ感が、とても愛おしかったです(笑)。
──優しい空間(笑)。ではここからは「lull」の制作のお話について、改めてお伺いさせてください。最初に発表されたコメントによると、日食さんとはこの1年の日々を整理するところから始めたとか?
青山 久しぶりに日食さんとお会いした時が、ありがたいことに1年前よりも仕事の量が増えていて、声優としてもかなり踏ん張らなければいけない時期でした。そのぶん、「キャラクターではない自分」に向き合う時間や余裕があまりなくて。正直なところ、「どんな曲を作りたいか」や「自分が何に心を動かされるのか」すら、上手く言葉にできない状態でした。それでも、とにかく話してみようということで、本当にまっさらな状態から、自分の中にあるものを全部出していくような感覚で話をさせていただきました。
──自分の心の柔らかい部分を話したり、受け止めてもらったりすると、なんだか泣きそうになりませんか。
青山 そうなんですよ!途中からは、カウンセリングのような時間になっていました(笑)。ぬか漬けのように蓋がされていた心を全部出して、日食さんが受け止めてくれて。私自身でも上手く言語化できなかった感情を言葉にしてくれて、紐解いてくれました。まるで解剖されているような感覚でしたね。後日、マネージャーさん経由で連絡先も交換させていただいたんです。「あの場では話しきれなかったこともあると思うので」と言ってくださって。「俺は日食なつこからのLINEを持っている~!」と震えました(笑)。
──そこからやり取りがつづいていったんですか?
青山 はい。思っていることを全部、かなり長文で送ってしまって(苦笑)。きっと返信に困る内容もあったと思うんですけど、「今伝えないと後悔する」と思って、とにかく全部ぶつけさせていただきました。それまでは「自分には何もない、虚無だ」と思っていたのに、一度殻が剥がれると、泉のようにアイデアが溢れてきて。やっぱり、人に話してときほぐしていくことって大事なんだなと……。
──1人で抱えていると、どんどん考え込んでしまいますよね。今回の楽曲自体も、そうやって気持ちがほぐれていく曲だなと感じました。
青山 まさに聴いた人にも、同じように気持ちがほぐれてほしい、という気持ちがありました。それに気づいた時に、「これが自分にとって歌いたいということなんだな」と。今回の曲は、ゆったりとしたリズムの中に、オカリナやチェロなど、これまであまり使ってこなかった音も入っていて。だからこそ、すごく優しくて、誰にでも寄り添えるような曲になったのかなと思っています。タイトルの「lull」には「凪」という意味があって。無理もしていないし、かといって気取っているわけでもない。そのニュートラルな状態が、音や歌詞にも表れている気がしています。
──「lull」のコーラスはもしかして日食さんですか?
青山 そうなんです! 実は日食さんにハモリを入れていただきました!私のレコーディングの後に日食さんが録ってくださって、同じスタジオで、私がさっきまでいた場所に日食さんが立って歌っているのを見ていました。しかも本当にあっという間で、10分くらいで終わっていて。さすがだなと思いました。私自身のレコーディングもかなりスムーズに進みました。事前にプリプロをしていて、「どの自分で歌うか」というのを何度も試していたんです。その甲斐があって、本番のレコーディングは迷いなく、クリアな状態で臨めたと思います。
──日食さんと合わさった声を聴いた時はどのような印象がありましたか。
青山 日食さんの声って、本当に特別だなと改めて感じて。ただハモリが重なっているというだけではなくて、1つの声なのに、いくつものメッセージが同時に聴こえてくるような感覚があるんですよね。その声と一緒に歌えているというのが、純粋に嬉しかったです。
──青山さんの声の音域も印象的でした。まさに「凪」のような自然体な声色なのですが、高音もしっかり入っていて。
青山 実はそのバランスはかなり悩んだ部分でした。原曲キーだと少し無理しているように聴こえるかもしれないと思って、キーを1つ下げたバージョンも試していたんです。低音の温かみも出て、それはそれで良かったんですが……。ただ、キーを下げると、どうしても“自分の中に小さく収まってしまう”感覚があって。無理はしていないけど、外に飛び出していかないというか。改めて原曲キーで聴いてみると、やっぱりそちらのほうがしっくりきて。高音ならではのイノセントさみたいなものに惹かれて「やっぱり原曲キーでいこう」と決めました。
──サビの“太陽のねむる場所”の部分に、特に違いが出そうですね。
青山 あの部分は本当に難しくて。キー的には力強く歌いやすい位置ではあるんですけど、だからといって強く歌いたくはなくて。でも弱くすると、ただ薄い声になってしまうんです。そのバランスがすごく難しくて、かなりテイクを重ねました。特にラストサビは音域的にはかなり厳しかったのですが、そこはしんどい感を出さずに、温かさを出したいなと思っていました。
──“太陽のねむる場所”という発想自体も目からウロコでした。考えたことがなかった!と。
青山 そこから続く“星のランプを 灯しておいたよ”という言葉も「星ってランプなんだ! なんて素敵なんだ~!」と思いました。夜ってどうしても少しネガティブな感情と結びつきがちじゃないですか。でもこの曲では、「太陽は眠っているだけなんだ」と思える、すごく優しい捉え方だなと。
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