3月14日、【トゲナシトゲアリ Zepp Tour 2026 “拍動の未来”】の最終公演がZepp DiverCity(TOKYO)で開催された。
「拍動の未来」は、アニメ『ガールズバンドクライ』の主人公たちによるバンドと連動するリアルバンド・トゲナシトゲアリ(以下、トゲトゲ)初の全国ライブツアー。井芹仁菜役の理名(Vo.)、河原木桃香役の⼣莉(Gt.)、ルパ役の朱李(Ba.)の3人は2月11日の神奈川・KT Zepp Yokohama公演を皮切りに福岡、愛知、北海道、大阪と全国各地のZeppでライブを開催。そして3月13、14日にZepp DiverCity(TOKYO)で東京公演を行った。その2日目にしてファーストツアーの千秋楽、14日のZepp DiverCity (TOKYO)はオールスタンディングのアリーナエリアは文字どおり立錐の余地もなく、椅子席のバルコニーエリアも全席トゲトゲファンで埋め尽くされていた。
TEXT BY 成松 哲
PHOTOGRAPHY BY 冨田味我
定刻、大歓声の中、サポートキーボーディストとサポートドラマーとともにステージに現れた理名、⼣莉、朱李は、2024年のテレビアニメ『ガールズバンドクライ』のオープニング主題歌「雑踏、僕らの街」でツアーファイナルの幕を切って落とした。
フロアの左右両壁面にレーザー光でバンド名が英語で綴られ、ステージ上でもやはりレーザー光が飛び交うド派手な演出のなか、⼣莉、朱李ら楽器隊それぞれが手数の多いフレーズを複雑に絡ませ合い、理名が切迫感あふれる歌声でまくし立てるやはりド派手なプレイで、バンドの“始まりの曲”を高らかに奏でると、バンドは間髪入れずに自身のディスコグラフィのなかでは珍しい正統派ロックナンバー「ダレモ」をドロップ。物の例えではなく、文字どおりZepp DiverCity (TOKYO)を“揺らして”みせた。
そんなフロアを理名が「しょっぱなから飛ばしがちなトゲトゲですが、乗り遅れに注意してください」と煽るも、オーディエンスは飛ばすトゲトゲに乗り遅れたりはしない。理名の言葉のとおり、バンドは初披露となる「蜃気楼ニ問フ」をライブ序盤から大盤振る舞い。ドライブ感溢れるボーカルに、それを加速させるかのような変幻自在なカッティング、留まるところを知らない流麗なオブリガードにストレンジながらも絶妙なブレイクやキメを多投するリズムパターンをまさに”飛ばして”みせると、勘のいいフロアからは大歓声が巻き起こる。さらに「蜃気楼ニ問フ」から一転、理名のセンチメンタルな歌声と、ループを多用する楽器隊のマッチングの妙が光る「闇に溶けてく」にもフロアはビビッドに呼応。そのプレイに熱いコールを送って、自らの熱狂を加速させていた。
初の全国ツアーも無事最終公演を迎え、ホームタウンとも呼ぶべき東京に帰ってきたことを「ただいま!」と喜ぶ朱李にオーディエンスが「おかえり!」と返すと、その朱李は「あれ、やっちゃいますか?」と⼣莉に水を向ける。すると、その⼣莉はギターをラフにストロークしながら「空の箱」の頭サビを歌い出し、彼女の「トーキョー!」のシャウトを合図にバンドが合流。リズム隊とキーボーディストが横ノリのグルーヴを生み出し、理名がクールな歌声を響かせれば、⼣莉は前のめりにギターをカッティング。そんなアンビバレントなコンビネーションで客席を踊らせ、そのあとにはエレクトリックな「理想的パラドクスとは」を投下。パープルのレーザー光が四方に飛び交い、変化し続けるアブストラクトな幾何学模様の映像が流れるステージで彼女たちは、ダーティなドラムサンプルと奇妙な電子音のシーケンスを背に、ループを効果的に響かせるある種マシナリーでダンサブルなプレイを披露した。
続くMCタイムで⼣莉が“拍動の未来”というツアータイトル通り、ツアーを通じて全国のファンにトゲトゲの今までと現在を観てもらうことで未来に繋いでいければと語れば、理名は「いつかは全都道府県ツアー……いや、全市町村制覇を目指す」と笑いを誘いながらも、まさにリアルな未来予想図を描いてみせる。そして朱李も「今回のツアーで初めてトゲトゲを観る人も多いと思うので、カッコいいところを見せたい」と千秋楽に臨む決意を新たにしたのだが、なぜか「ツアー中、話したくてしかたない話題があった」と言いながらベースを降ろしてステージ袖に引っ込んでしまう。
そして数瞬の後ステージに舞い戻った朱李は、これまたなぜかライオンズのユニフォーム姿にお色直し。曰く、野球ファンの彼女は、今回のツアー中のMCタイムのたびに各地の地元球団を紹介・解説するトークを繰り広げてきたという。そして首都圏開催の今回の公演で取り上げる球団は出で立ちのとおり、埼玉西武ライオンズ。“おかわり君”こと中村剛也選手のレプリカユニフォーム姿の彼女は球団にまつわるデータがまとめられているのだろうクリップボード片手にライオンズについて大いに語り始めた。
……のだが、その愛は理名と⼣莉には届かない。プロ生活25年目となる今シーズン限りで引退することを表明しているベテラン・栗山巧選手がどれだけここ一番に強いか、どれだけライオンズ愛にあふれているのかについて熱弁を奮うも、2人はお互いの衣装を整え直してみたり、サポートメンバーとの雑談に花を咲かせてみたり。そして栗山選手の話をひとしきりした朱李が次の話題に移ろうとしたところで⼣莉が「長い!」と一刀両断。さらにはバンド最年少、ティーンエイジャーの理名が「ライオンズの話は埼玉でライブをするときまでとっておこう。そのほうがよくない?」と優しく諭しだす。
そんな妹分の言葉にお姉さんであるはずの朱李が「埼玉でのライブがガチで楽しみになった」とライオンズトーク第2弾を予告したところでライブは再開。ソフトでジェントルなロックバラード「吹き消した灯火」、理名のウィスパーボイスと⼣莉のアルペジオをフィーチャーした静謐な序盤からパーカッシブな4つ打ちダンスロックへとだんだんギアアップするかのようにドラマチックに展開する「黎明を穿つ」、楽器隊それぞれが刻むストレンジなフレーズが絡み合ってトゲトゲならではという他ないグルーヴを生み出す「薄采ディスプレイ」と、直前のライオンズトークとは裏腹なシリアスな楽曲群とプレイでオーディエンスをブチアゲた。
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