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INTERVIEW

2026.03.05

矢野妃菜喜、5年間の軌跡を詰め込んだ“おもちゃ箱”のような1枚――初フルアルバム『POPPING BOX』で表現した多彩なアーティスト像に迫る!

矢野妃菜喜、5年間の軌跡を詰め込んだ“おもちゃ箱”のような1枚――初フルアルバム『POPPING BOX』で表現した多彩なアーティスト像に迫る!

ソロデビューから5周年という節目の年を迎え、キャリア初となるフルアルバム『POPPING BOX』をリリースした声優・アーティストの矢野妃菜喜。これまでシングルやEPのリリース、そして精力的なライブ活動を通じて、その音楽性を多面的に広げてきた彼女。満を持して完成した本作は、まさにタイトルの通り、彼女の多彩な魅力がポップに飛び出す“おもちゃ箱”のような作品となった。これまでの活動の集大成でありながら、これからの矢野妃菜喜を予感させる本作の制作背景、親交の深い楠木ともりからの提供曲「ルリマツリ」や作曲家・杉山勝彦による衝撃作「HNK」のエピソード、そして今後の抱負まで、たっぷりと語ってもらった。

INTERVIEW & TEXT BY 北野 創

“おもちゃ箱”のようにポップでカラフルなアルバムに!


――ソロデビューから5年、今回が初のフルアルバムになります。まずは完成しての率直な心境をお聞かせください。

矢野妃菜喜 この5年の間に発表してきたシングルやEPの楽曲もたくさん収録したので、ある意味ではベストアルバムのような作品になりました。「こんなにたくさんの曲を作ってきたんだな」と感じましたし、最近はライブでも持ち曲すべてをセットリストに組み込むのが難しくなってきていて。アルバムとして形にできるだけの楽曲数を積み重ねてこられたんだなと、改めて実感する機会になりました。既存曲だけでなく「前説」や新曲の「HNK」「ルリマツリ」も収録しているので、新鮮に楽しんでもらえるアルバムになったと思います。

――昨年は5周年記念のトーク&ライブツアー「Happy!Next Key!」も開催されました。アルバム制作を含め、これまでの活動を振り返る良いタイミングだったと思います。矢野さんにとって、この5年間の音楽活動はどのような経験になりましたか?

矢野 “矢野妃菜喜”としての楽曲イメージについては、自分が作りたいものというのはもちろんなのですが、それだけでなく「ファンの方がどんな曲を聴きたいのか」ということを常に考えてきました。私の楽曲には本当にいろいろな方向性のものがあるので、「“矢野妃菜喜”といえばこういうジャンルのアーティストだよね」と一言で括るよりも、バラエティに富んでいるのが特徴だと思っていて。だからこそ、今回のアルバムを制作するにあたっても、「どうしたらこれらがひとつにまとまるんだろう?」ということはすごく考えましたね(笑)。

――確かに、多様な楽曲群をどうまとめるかはアルバム制作の肝ですね。

矢野 結果として、アルバムタイトルの『POPPING BOX』の通り、“おもちゃ箱”のような作品に仕上がりました。ただ、おもちゃ箱といっても全部が明るい楽曲ばかりというわけではなくて。みんなでワイワイ楽しめるポップな楽曲もあれば、自分の内に秘めている繊細な感情を表現した曲も入っています。1stアルバムを作るにあたって、「今の私はこういうアーティストです」という名刺代わりになるような作品になればいいなと思っていたんです。ちょうど5周年という節目でもありますし、これまでのバラエティに富んだ楽曲たちをひとつにまとめることで、私の多彩なアーティストカラーをしっかりと伝えられるものになったんじゃないかなと思います。

――5年間の模索と挑戦の軌跡が詰まった、まさに集大成と言える作品ですね。『POPPING BOX』というタイトルは、どのようなアイデアから生まれたのでしょうか?

矢野 もともと「おもちゃ箱みたいに色んなものが入っている作品にしたい」というイメージは最初からあったんです。でも、そこからこの『POPPING BOX』というワードに辿り着くまでには結構時間がかかりました。スタッフさんと一緒にあれこれ案を出し合いながら考えていたのですが、途中までは“おもちゃ箱”って言っていたのに“BOX”という言葉すら出てこなくて(笑)。そんな中で、ふと「サーティワンアイスクリームのポッピングシャワーみたいな名前だったらかわいくていいよね」という話が出たんです。“ポッピング=弾ける”という意味合いもありますし、そのイメージに合う言葉はないかと探した結果、『POPPING BOX』というタイトルに辿り着きました。

――アーティスト写真やジャケット写真も、タイトル通りカラフルでポップなビジュアルになっています。矢野さんが箱から飛び出してくるようなデザインが印象的で。

矢野 “おもちゃ箱”のイメージを具現化するために、本当に私が中に入れるくらい大きな箱を用意していただいたんです。ただ、撮影自体は結構大変でした。写真では見えない部分なんですが、実は箱の中にもぬいぐるみとか色んな小物が敷き詰められていて、風船が落ちていかないように見えないところで支えていたりして。完全生産限定盤にはライブ映像だけでなく、このジャケット撮影のメイキング映像も収録されているので、きっとその様子もチラッと観ていただけるんじゃないかなと思います。

――衣装も非常に鮮やかですね。お気に入りのポイントはありますか?

矢野 やっぱりポップな色味が良いなと思って選びました。色んな衣装をご提案いただいたのですが、ファンの方の中では、多分2ndシングルの「Follow me!」の影響なのか、私のアーティストイメージカラーは“黄色”の印象が強いみたいなんです。なので、黄色やオレンジ系といった明るいビタミンカラーを取り入れたいなと思って選びました。今回用意していただいた箱の裏地の色も黄色でしたし、統一感が出せたかなと思います。

――ご自身の中で、アーティストカラーは明確に決めているのですか?

矢野 明確に「これ!」と決めてはいないんですけど、活動していく中で自然と「黄色とか水色っぽい色が私の色なのかなあ」という認識になってきました(笑)。

――ライブのセットリストから漏れる曲が出てくるほどオリジナル曲が増えた中で、今回のアルバムの選曲や曲順はどのように決めましたか?

矢野 選曲や曲順に関してはあまり迷った記憶がなくて、それこそ、いつもライブのセットリストを決めるような感覚でスッと決めることができました。シングルの表題曲はしっかり入れつつ、あとはライブで人気のある、みんなに聴いて欲しい楽曲を中心に選びました。アルバムタイトルが『POPPING BOX』なので、最初は明るく楽しい感じで幕を開けたいなという思いがありました。

――5年間の活動の中で、ライブを通してファンと共に育ってきた楽曲もあるのではないでしょうか。

矢野 そうですね。アルバム収録曲で言うと、「ありがとうだよ」はみんなと心と心を通じ合わせられる楽曲なので、すごくライブ映えするなあと思いますし、「ポヤポノポ!」に関しては、みんなのコールが完璧に仕上がってきているので、ライブの現場で育った曲だと思います。それで言うと「ブルジョワタオル」も、ライブで披露するたびにみんなの声がどんどん大きくなってきていて、最近はもう私が歌わなくても大丈夫なんじゃないかと思っているくらいです(笑)。特に終盤のパートはみんなが歌ってくれるので、いつか私はマイクを外して、みんなの歌声だけで成立させるようなステージの見せ方もやってみたいなと思っています。

――ファンと一体になって盛り上がっていくのは、矢野さんのライブの醍醐味ですよね。アルバムの完全生産限定盤に収録されている2025年8月のワンマンライブ“矢野妃菜喜LIVE 2025 ~Girls in the Mirror World~”夜公演のライブ映像でも、その凄まじい盛り上がりを追体験できると思います。

矢野 やっぱりその時々によって皆さんの声の感じや熱量が違うので、それを感じるのもライブの面白いところです。この間のツアーでも、公演や地域によって「ありがとうだよ」の“ありがとう”の言い方やニュアンスが違っていて、すごく面白かったです。

――ライブで観客とやり取りしながら空間を作り上げることは、矢野さんが大切にしている要素なのでしょうか。

矢野 そうですね。活動を始めた最初の頃は、楽曲の中でのコール&レスポンスといったやり取りが大事かなと思っていたのですが、最近はMCの時間でも結構みんなが会話のように反応を返してくれるので、それも含めて全部がライブなのかなと感じています。

遊び心全開!杉山勝彦とのタッグで生まれたユニークな新曲

――さて、ここからはアルバムの新録曲について詳しくお伺いします。まず1曲目が「前説」から始まるという構成が非常にユニークです。

矢野 最初は別に「前説」というトラックを入れる予定はなかったんです。でも、何かのタイミングで私が「いきなり前説が入っていたら、みんなびっくりするんじゃないですか?」ってポロッと話したら、それが実現してしまいました(笑)。急に「某テーマパークのパレードみたいなものを作りたい!」と思い立って生まれたトラックです。

――そういえばサウンドも、どことなく某有名パレードの楽曲を彷彿とさせます(笑)。

矢野 まさに、その曲をイメージして作ってもらいました(笑)。

――矢野さんが語る前説自体が、かなり“ふわふわ”した内容で、ユーモラスな語りになっていますが、この口上を考えたのは?

矢野 私です(笑)。レコーディングの直前にスタッフの方と相談しながら考えて、最終的に出来上がったのはレコーディング当日でした。そもそも私が個人でやっているゲームの番組(「矢野妃菜喜のGAME the HINALAND」)で、ちょっと変わった前説というかアナウンスみたいなことをよくやっていて。そのちょっとふざけた感じのノリからも着想を得ています。「あ、このアルバムは結構トンチキなんだな」って最初に思ってもらえればいいかなと思って……もちろん、ちゃんとした楽曲も入っていますけど(笑)。

――「前説」があることで、アルバム全体に遊び心が生まれていますね。

矢野 そもそも「ライブが始まる前に前説があってもいいんじゃないか」という発想から、「じゃあアルバムにも前説があってもいいんじゃないかな」と思って。あと、この「前説」がなくて、もし2曲目にある新曲「HNK」が1曲目だった場合、「HNK」の冒頭の“ダダンダンダダン”という部分は私が歌っていないので、「1stアルバムの記念すべき幕開けが私の声ではないというのはいかがなものか?」という気持ちもありまして。なので、私の声から始めるために前説を付けたという裏事情もあります(笑)。

――ファン目線でも細かい配慮がなされているんですね(笑)。咳払いからスタートする演出も面白くて。

矢野 咳払いに関しては……あれ?なんで入れたんだろう?(同席していたスタッフに向けて)私が言い出したんでしたっけ?

スタッフ はい。

矢野 ああ、私が言い出したみたいです。完全にその時のノリだと思います(笑)。「前説」の文言に関しては歌詞カードにも載っていないので、ぜひ実際に聴いて確かめてもらえればと思います。

――こういった遊び心も“アーティスト・矢野妃菜喜”らしさのひとつなんでしょうね。

矢野 そうですね。私自身、「かわいい」と言われるよりも「面白い」と言われる方が嬉しいので。

――そして、その「前説」に続く新曲「HNK」。作詞・作曲・編曲はヒットメイカーの杉山勝彦さんという豪華さです。

矢野 杉山さんには今回、「前説」「HNK」「ブルジョワタオル」「鏡YO鏡」「ありがとうだよ」の5曲を作っていただいているんですが、そう考えると5曲中3曲は遊び心の強い曲なんですよね。

――めちゃくちゃ贅沢ですね(笑)。「HNK」はアイドル楽曲風のコールが満載のハイテンションかつ破天荒なナンバーで、個人的に「ブルジョワタオル」以来の衝撃を受けました。

矢野 ありがとうございます(笑)。この曲が生まれたきっかけは、限定盤のBlu-rayに収録されているライブで、私立恵比寿中学の真山りかちゃんと一緒に「仮契約のシンデレラ」をカバーさせてもらったことなんです。昼公演の時は、まさかこの曲をカバーするとは思っていなかったのか、みんな戸惑いながらコールしてくれていたのですが、夜公演ではもう完璧にコールしてくれたんですよね。それを見て「みんなすごいじゃん!こういうのをやりたいんだ!」と思い、「じゃあ、みんながコールできる曲を作ろうじゃないか」と。その結果、みんなが歌うパートが大量にある、ライブでお客さんが大変な楽曲が生まれました(笑)。

――「ポヤポノポ!」や「ブルジョワタオル」でのファンの完璧なコール対応力への信頼があってこそですね。

矢野 「君たちならいけるだろ!」みたいな信頼と期待はありました(笑)。でも正直、去年のツアーで初披露した時は、スクリーンにカラオケ風の字幕を出していたとはいえ、結構みんなついてこれていて。本当にすごいなと思いました。ツアー内でコールの練習をすることはありましたけど、楽曲自体は公開していなかったので、他で練習できるわけではないのに、なぜかみんな成長していって。ファンの皆さんの対応力がすごいなって、いつも驚かされます。

――そういえばエビ中の「仮契約のシンデレラ」も杉山さんが制作した楽曲ですが、それもあってこの曲も杉山さんにお願いしたのですか?

矢野 はい。むしろ杉山さんと「こういう楽曲があると面白いですよね」みたいな話をノリでしていたら実現した感じです。ちょっと怪しいところもありますけど、作っている人が一緒だから似ているだけです(笑)。“ダダンダンダダン”の部分も、途中で演歌風になるところも、「これ大丈夫なのかなあ?」と思いつつ(笑)。

――「HNK=ひなき」ということで完全に矢野さんのための楽曲ですが、楽曲が届いた時の印象は?

矢野 「できました!」っていう感じで急に送られてきたんですが、なんかとんでもない楽曲が来たなと思いました。「すごい……!」と思ったのと同時に、頭の中に「?」がたくさん浮かんだのを覚えています(笑)。「ブルジョワタオル」の時よりも「?」マークは多かった気がしますね。「ブルジョワタオル」は「タオルを振り回したい」という明確なテーマがあったので想像できていたんですけど、「HNK」に関しては杉山さんにお任せだったところがあるので。

――こう言うのもなんですが、「ブルジョワタオル」はタオル曲ということ以外は、歌詞の内容にあまり意味はなくて、その意味のなさに味がある曲だと思うのですが……。

矢野 まあそうですね(笑)。

――今回の「HNK」も同じ方向性の面白さがある楽曲だと思いつつ、「ブルジョワタオル」よりは何かしら意味を見出せそうな気がしていて。

矢野 あるのかなあ(笑)。でも“オタクって最高”のところはツアーで初めて披露した時、皆さんも爆笑していたので、みんなここで反応するんだと思って。ちょっと令和っぽい楽曲なのかなって思いますね。

――レコーディングはいかがでしたか?

矢野 杉山さん立ち合いのもとで行いました。全編を通して明るめに歌うように意識して、アイドルっぽい楽曲なので「かわいめに歌ってほしい」とか、アイドルがよくやる語尾がキュルンって跳ねているような歌い方はリクエストされました。それとガヤの部分は、声優の力を振り絞って色んな人格を召喚させて歌いました。元気キャラ、野太い声のオタクひなき、ツンデレひなき、とか。

――2番の演歌パートの歌唱は?

矢野 最初は力強く歌っていたのですが、グラデーションを付けるために「もう少し力を抜いて」と言われたのが結構難しくて、ここのパートは一番時間がかかりました。そもそも演歌自体、歌ったこともなかったですし(笑)。あとは“絶唱”のところも「絶唱して欲しい」と言われたので結構遊びました。

――歌詞にはゲーム要素も散りばめられていて矢野さんらしさがありますが、ご自身で気に入っているポイントは?

矢野 5周年ツアーのタイトルにしていた“Happy Next Key”というワードを入れてくれていたのが嬉しかったです。そもそも5周年ツアータイトルの「Happy!Next Key!」は、自分の名前のアルファベット“HNK”を頭文字にした言葉をタイトルにしたくて自分で考えたものだったので。ライブでは楽器の音、みんなの声、私の歌、全部が合わさって、ワーッてうるさい、色んな意味で“強そう”な曲になりそうで楽しみです。

次ページ:親愛なる同僚・楠木ともりからの贈り物「ルリマツリ」

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