2025年、怒涛の20周年アニバーサリーイヤーを駆け抜けたGRANRODEOが、2026年2月18日に放つ10枚目のオリジナルアルバム、それが『ChaosBlue』だ。
混沌=カオスを抱えて混迷する今の時代だからこそ、ロックユニットとしてベテランの域に足を踏み入れている彼らが、あえて“それでも青く、ブルーに澄み渡っていたい”という想いを込めた21年目第1弾リリース。ボーカル・KISHOWとギタリスト・e-ZUKAに楽曲制作の裏側をたっぷりと語ってもらった。
INTERVIEW & TEXT BY 阿部美香
――昨年はデビュー&結成20周年という大きな節目を迎え、21年目という新しい階段を上り始めました。その第一歩となるアルバム『ChaosBlue』は、10枚目のオリジナルアルバムになります。リリースとしても節目感がありますね。
e-ZUKA そうですね。だから、ちょっと気負うところもありました。“10枚目だから”以上に、20周年が終わっての1発目だから、ここでまた新しいことを見せたい、みたいな。しかも一昨年ですかね、20周年イヤーに向けて、KISHOWがソロアルバム(『深夜零時』)を出してツアーをやり、僕もギターインストのソロアルバム『LET’S GET STARTED』を出してツアーをやり、というのあったので、お互いがソロをやった後だからこそ、GRANRODEOに戻ったアルバムでは、ちょっとびっくりさせたい。そういう気持ちはありました。
KISHOW 僕のほうが“10枚目のアルバムだぞ!”という意気込みはあったと思いますよ。だから、『ChaosBlue』というアルバムタイトルも、自分の中でかなりひねった記憶がありますね。そもそも、ここに収録される既存曲は「大往生Everyday」、「鉄の檻」(TVアニメ『文豪ストレイドッグス』第5シーズンOPテーマ)、「魔ガツ夜ハ青ナリ」(アプリゲーム『學園文豪ストレイドッグス』主題歌)、今年1発目のアニメタイアップになった「GO GO PARADISE!!」(TVアニメ『拷問バイトくんの日常』OP主題歌)くらいで、あと数曲は新曲を作るわけじゃないですか。結果的に、今回リード曲も「ChaosBlue」になったわけで、e-ZUKAさんが作曲する時に、アルバムタイトルが先にあるだけでも随分イメージが湧きやすいだろうなと、色々案を書いてスタッフに授けたんですね。そして最終的に選ばれたのが『ChaosBlue』だったんですよ。
e-ZUKA その途中経過のヤツって(スマホを開いて文面を探し)……コレかな?
KISHOW (画面を覗き込んで)どれ?そう、多分それだね。ただね~、僕とe-ZUKAさんって実は直接やりとりはしてなくて。お互い、スタッフとのグループLINEが別にあって、そこを一度経由して決まっていくことが多いもんだから。
e-ZUKA そういえばお互いのLINEって交換したことなかった(苦笑)。
KISHOW 新しくグループLINE作るか!(笑)……という裏話はありつつなんだけど、まぁ僕としては、この言葉でe-ZUKAの中から膨らんだ曲ってのを聴いてみたかったので、そこはすごく楽しみでしたね。
――2026年の目標は、KISHOWさんとe-ZUKAさんのLINE交換ということになりそうですね(笑)。
e-ZUKA あはは、そうなるんだ(笑)。
――そもそもKISHOWさんは「ChaosBlue」というタイトルにどんな想いを込めたんでしょうか。
KISHOW 最近は皆さんも、AIがどうとかで新時代の到来みたいな機運、空気をなんとなく肌で感じている今日この頃だと思うんですね。そう考えると、ますます世の中はカオス、混沌を極めている。でも、そんな混沌の中でも、どこか青く澄み渡っていたいと思うんですね。あくまで抽象論ですけど、世の中が混沌を極めていっても、結局人はよりシンプルにもなっていくのかなと。映像も音楽も、もう人間はいらないんじゃないかと思うくらい進化していったとしても、個人的には揺り戻しが来るんじゃないか。まだ先の話かもしれないけれど、結局人の手作り、ハンドメイドが良いよね、となる予感がするんですよ。そういう気運が、どことなくこのアルバムの根底に流れてくれたらいいなと思うから、僕らの体感にも一番ふさわしいテーマじゃないかと。もちろん、人も世の中も、いつも混沌としていることには変わりないですしね。
――そう考えると、GRANRODEOとしての現在地だけでなく、普遍的なテーマでもありますね。
KISHOW そうですね。すごく深く考えているわけじゃないけど、とりわけ今はそうかもね。
――e-ZUKAさんは、この「ChaosBlue」という言葉から、何をイメージされたんですか?
e-ZUKA これは、リード曲の「ChaosBlue」の曲想にそのまま繋がるんですけど、文字を見た時、KISHOWのソロアルバムもそうでしたけど、近年の音楽全体に感じるシティポップやネオソウル系の流れを、GRANRODEOでもっとハードにするイメージが湧きましたね。特にこの“ブルー”という言葉から。GRANRODEOの音楽がカオスかどうかは置いといて(笑)。
KISHOW 実際、e-ZUKAさんから「ChaosBlue」のデモ曲が上がってきたのを聴いたら、爽やかだけど、よくよく聴いていったら、アレンジが変わってカオスな部分が見えてきた。僕が思い描いていたイメージにも近かったし、なるほどe-ZUKAさんを通すとこういう曲になるんだ!というのも面白く感じましたよ。
――ではここからは収録曲の中から、新しい楽曲たちについて、具体的にお話を伺います。というわけで、まずはオープニングを飾るリード曲「ChaosBlue」についてもう少し。イントロにはかなり、懐かしめのフュージョンを感じました。GRANRODEOのパブリックイメージをちょっと裏切った感じの。
e-ZUKA そうそう。さっき話していた曲全体のイメージがありつつ、一番最初に耳に入る音を、今までとは違う感じにしたかったんですよ。いわゆるディストーションの効いたギターが出てこないような曲も、あっていい。あと、プロデュース陣と打ち合わせをした時、“明るい曲がいい”というキーワードをもらっていたので、サビは明るくしようと。ギターのクリーンなカッティングから始まって、シティポップ感があり、そこからテクニカルになっていくところまではイメージできて、そこから先は作りながらだったんですけど、徐々にいつものGRANRODEOの感じにはなっていきましたよね。
――アルバムリリースに先駆けては、YouTube公式チャンネルでMVが先行配信されました。
e-ZUKA 僕のエゴサによると、新しい感じを持ってくれた人も多く、評判も良くてホッとしましたね。いつもお世話になっているエンジニアの白井(康裕)くんも、レコーディングの時からめちゃくちゃ良いと言ってくれていました。「ChaosBlue」は僕らの曲にしては、サビが2回しか出てこない構成なのもいつもと違っていて。1番はAメロ、Bメロ、サビですけど、2番はAメロからすぐラップパートに入り。
KISHOW ラップというか語りというか。
e-ZUKA で、間奏があって最後サビで終わるという、ちょっとひねった構成ですね。あまり長い曲にしたくなかったというのもあるし、一度終わっても、もう1回聴きたくなる曲になってくれればいいなと思いました。
――KISHOWさん、歌詞はアルバムタイトルの話にもあったように、混沌の中でも青く澄み渡っていたいというテーマが表れていますが、印象的だったのはサビに出てくる“ぶちまけた天使の絵の具の色/鳥たちは知らない”というファンタジックなフレーズでした。
KISHOW これ実は、谷川俊太郎さんの言葉から拝借したイメージなんですよね。谷川さんって子供の頃、空の“青”と宇宙の“黒”の間にははっきりと境界線があって、その色は天使たちが絵の具で塗っているんだと思ったそうなんですよね。その歌詞の前のところに、その“青”は“辿り着けどきっと誰もいないような絵空事”と書かせてもらったんですが、境界線までいけない鳥たちというのは、その嘘を知らないわけ。良いことなのか悪いことなのかはわからないけれど、鳥たちにとってそれは幸せなのかもしれない、と思ったりはしますね。
――求める“青”を“絵空事”だと言っていたり、カオスとブルーという相反するイメージを併せてしまう辺りに、非常にKISHOWさんらしさを感じます。もう1つ気になったのが、1番のAメロの最後。“僕らの業はいかんともしがたい/観じるでしょう現実”というフレーズに、「感じる」ではなく「観じる」という漢字を当てているのも、言葉遣いにこだわるKISHOWさんらしさかなと。
KISHOW おっ、お目が高い(笑)。そこは意図的ですね。「かん」は観察眼の「観」もあれば、感覚の「感」もあるし、鑑みるの「鑑」も、なんなら勘が良い悪いの「勘」とか、意味の微妙な違いによって、色々漢字が当てられると思うんですね。だからこそ、ニュアンスを感じてほしかった。歌詞カードがないと、気づいてもらえないんですけどね(苦笑)。
e-ZUKA さすがですよね。スタッフが言ってましたけど、ブックレットの歌詞カードの文字校正の時も、担当者が「“観じる”ってこれでいいんですか?」と聞いてきたらしいです(笑)。
KISHOW だろうね~(笑)。だから、YouTube観ていてもテロップとか気になるの。最近多いんだけど、格闘技系の切り抜き動画とかで、パンチを繰り出す時のことを「当て感がいい」とコメントしてる人がいると、おいおい本来は「当て勘」だけど、意味変わっちゃうけどいいの?と言いたくなる。街の話で「とちかん」を「土地勘」とか書いてあると、いや、元々は「土地鑑」だけど、まぁ心情的にはわかるけどね……とか(笑)。
e-ZUKA 詳しいなぁ。
KISHOW 声優なんでね(笑)。言葉に対する感受性は、大事にしているつもりですよ。
――サウンド的にもソウルフルな印象を残したり、ボーカルとユニゾンになるギターがエフェクタブルだったり、爽やかさの奥に、聴き込む楽しさがありますね。
e-ZUKA ボーカルとギターのユニゾンは、フックとしてオートワウ/エンベローブフィルターをかけてます。あと、イントロやBメロのギターのカッティングの裏にはクラーベなどのラテン的なパーカッションを入れているんですけど、その辺りはアース・ウインド・アンド・ファイヤーっぽさを採り入れました(笑)。そういえば、この曲のレコーディングの時、ドラムのSHiNくんが「この曲、ライブでどんな顔して叩けばいいんだろう?」って悩んでました(笑)。
KISHOW あはは、どこまで爽やかにいくかだねぇ。ツアーが楽しみだな(笑)。
――3曲目の「ナイトウォーカー」も、GRANRODEOらしからぬストレートでポップなロックンロールチューン……なんですが、リズムがちょっとカオスな。
e-ZUKA これは「ChaosBlue」と同じ時期に書いたんですけど、まさにちょっとカオス感、1曲くらいはヘンな曲を入れたいなと思って、7拍子があったり、8分音符の3連があったりという、リズムでも遊んだ曲ですね。
――サウンドも荒々しくて、80年代末期から90年代頭にかけてのバンドブームを思い出しました(笑)。
KISHOW そうそう!「イカ天」(三宅裕司のいかすバンド天国/TBS)に、こういう曲を歌う人たちいたよね!(笑)。あと初期のユニコーン感もある。
e-ZUKA レコーディングの時にベースの瀧田(イサム)さんは、セックス・ピストルズっぽいって言ってました。要するにパンクっぽいと。
KISHOW 元気でわちゃわちゃしてる感じ。だから歌詞もわちゃわちゃしました(笑)。テーマというか、イメージは夜の新宿・歌舞伎町。人生の光明みたいなものが見出せない若者って、いつの時代もいるわけだけど、そういう時に何かを見出すとしたら、“夜”にしかなかったよなと。夜、騒ぐことくらいしかない。だから「ナイトウォーカー」というタイトルにしましたね。
――歌詞には、“この青に見えるカオスなんて/所詮fake なんだ”というフレーズもありますし。
KISHOW そう、それこそ歌舞伎町なんか、昼間でもまだ混沌としているよね。そんなナイトウォーカーたちを、ちょっと人生に見立てていたりしてね。考えると憂鬱だしツラいんだけど、e-ZUKAがわちゃわちゃ楽しげな曲をくれたので、そういうダークさも内包してくれるだろうと思いましたね。
――そのわちゃわちゃ感を作っているのが、e-ZUKAさんのトラックメイクです。イントロの不思議なギターサウンドあり、オモチャのようなSEもたくさん入り。
e-ZUKA イントロはリフにフランジャーをかけたもの。色んなSEも、昔だったら、マイク立てて缶を叩いたり、オモチャの音を鳴らしたりして、わざわざ録音したもんですけど、今は音の素材も豊富でね。カートゥーンアニメの効果音みたいなものもあるし、たくさんありすぎるくらいですよ。
KISHOW 聴いて選ぶの、大変じゃん?
e-ZUKA 僕の頭の中に鳴っている音を、ひたすら探す作業ですね。あと裏話ですけど、最初はKISHOWの歌詞に合わせて、女性のセクシーボイスも入れていたんです。でもエンジニアの白井くんが、「これはいらないです」と止めてくれたので、健康的な仕上がりになりました(笑)。
――4曲目に収録された「STAR’S ROCK」は、GRANRODEOとしては久々の重量感のあるスタジアムロックですね。
e-ZUKA おっしゃる通りです。実はこの曲、最初は書く予定なくて。今回のアルバムは、例えばジノ・ヴァレリだったり、AOR(アダルト・オリエンテッド・ロック)的な、難しいコード進行の大人っぽい曲をやってみたかったんです。なんですけど……家から仕事場まで歩いている間に、この曲が浮かんじゃって。そうすると、もう耳から離れなくなっちゃうんで、1曲作りました(笑)。
――ベースラインとギターカッティングには、ファンクっぽさもありますよね。
e-ZUKA そうですね。あとジョーン・ジェット&ザ・ブラックハーツの「アイ・ラヴ・ロックン・ロール」とか、ああいう感じ。僕らの曲にも、スタジアム感のある「Love in shelter」があるんですけど、あれも10年以上前の曲なので、そろそろやってもいいかなと。曲の作りもめちゃくちゃシンプルです。
――歌詞もまさに、ロックスターの生き様がテーマですね。
KISHOW e-ZUKAさんがおっしゃっていたんですよ、仮歌で。サビで“I’m a ROCK STAR”だと(笑)。
e-ZUKA ふふふふっ。
KISHOW 毎回、e-ZUKAさんがでたらめな言葉を当てはめた仮歌が僕のところに来て、そこから新たに作詞をするんですけど、時々あるんです、「完全にそう言っちゃってるよね!」っていうフレーズが。その一部を参考にさせてもらう場合もありまして、今回はむしろそれに引っ張られちゃえ!って。楽曲全体の雰囲気もそうだし、メロディ的にもそっちのほうが上手くスウィングする。そこを突破口にして、ねじ広げようと思いましたね。
e-ZUKA なるほど。
KISHOW でもロックスターなんて、今までこすられまくったモチーフじゃない?もう星が磨耗して丸い石になったくらいの。だからロックスターを逆にして、スターズロック。小学生みたいな発想の転換なんだけど、“石を星に変えよう”というのがロックスターなのかなと。で、Aメロ、Bメロには、ちょっと自分の自虐史観みたいなものを取り込んで。この年になって、浮世離れしている気でいるけど、まだモテようとしてんの?と。そのダサさは、思いっきり自虐ではあるんだけど(苦笑)、そういうところをこそばゆく感じながら、「ロックまだやらせてもらってます!歌わせてもらってます!」みたいな気分が、前面に出た曲になりましたね。だってイマドキ、日本でロックスターって正面から言える人って、矢沢永吉さんくらいしかいないでしょ。
e-ZUKA それでいうと、僕にとっての最初のロックスターは、惜しくも昨年亡くなられてしまったKISSのエース・フレイリー。ずっと観てきたロックスターなので、この曲にもちょっとエースっぽいフレーズが入ってしまっていますね。
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