INTERVIEW
2026.02.25
声優でアイドルの芹澤 優が、2月25日にシングル「TIMELESS POWER feat. MOTSU / Horizon」をリリース。収録曲のうち「TIMELESS POWER」はアニメ『MFゴースト 3rd Season』OPテーマに起用。3期連続でMOTSUとのタッグを組んでのOP担当となった。そんな「TIMELESS POWER」はこのタッグならではのシャープかつスピード感あるユーロビートで、サビ冒頭で芹澤の力強いロングトーンをMOTSUのラップが追いかけていくさまは、まるでレースのドッグファイトを彷彿とさせるものとなっている。本稿では、そんな楽曲を生み出した2人の対談を敢行。楽曲制作の裏話はもちろん、1st SeasonのOPテーマ「JUNGLE FIRE feat. MOTSU」以降の共演を経て生まれた2人ならではの“ノリ”についてなど、多岐にわたって語ってもらった。
INTERVIEW & TEXT BY 須永兼次
――『MFゴースト 3rd Season』でもOPテーマを続投されると発表があった時から、SNSでは喜びのリアクションが非常に多く見られました。お二人は、そういう反響は感じられていましたか?
芹澤 優 はい。私も皆さんがウェルカムで迎えてくれているのと、あとは「きっとここでしか私のことを知らない人が、私のことを覚えてくれたんだな」と思いました。
MOTSU 『MFゴースト』をきっかけに知った人たち?
芹澤 そう。いつもはあまりアニメを観ないけど車が好きで『MFゴースト』は観ているような……普段からリプをくれたりするファン以外の、いつも見ないアイコンの方とかからの(笑)、肯定的なリアクションもすごく多くて。「ユーロビートをもっちゃん(=MOTSU)と一緒に歌う芹澤を応援してくれる人が、こんなにたくさんいてくれてたんだな」と感じましたね。
MOTSU 僕は色んな活動をしてきていますけど、『頭文字D』や『MFゴースト』にまつわる発表をすることの重大さ、みたいなものはすごく感じます。だから責任というか、プレッシャーみたいなものもありますけど……でも僕も、「嬉しい」や「ありがとう」みたいな反応はたくさん受け取りましたし、セリコ(芹澤)の言うようにいつもとは反応のメンツが違うのも感じます。逆に僕のところにはセリコファンがぐっと来てくれたりして(笑)。なのでいい感じで、シナジーしてるんじゃないですかね?
――そういったSNSでの反応の他、これまでご一緒のステージに立たれた際には生の反響も様々あったと思います。そのなかで印象に残っていることはありますか?
MOTSU 僕はときどきセリコのライブに出させてもらうんですけど、そこで「JUNGLE FIRE」みたいに既にリリースした曲をやる時に、セリコがファンの人と一緒に温めて育ててくれているのを感じるんですよね。その瞬間感じる変化が、毎回すごく面白くて。ライブ用のバンドアレンジで1シーズン試合をやってきた戦いの運び方みたいなものを見せてもらっているのが、すごく面白いんですよ。
芹澤 嬉しい……!やっぱり「もっちゃんが入って完成する曲」なのは間違いないんですけど、ライブのたびに来てもらうわけにもいかないので、もっちゃんがいない時もお客さんが楽しめるようにしたいんですよね。それこそ最初は「ファンのみんながもっちゃんパートを全部歌ってくれたらいいなぁ」とか思ってましたけど、私のファンはそういうタイプじゃなかったみたいで。それよりも「俺らは俺らなりのコールを入れたい!」というか……。
MOTSU あれ面白いよね!毎回「なんつってんの!?なんつってんの!?」ってなる(笑)。
芹澤 私のファンは結構独自性を極めるタイプなので、「私は私でもっちゃんがいなくても120%でやるから、足りないぶんは君たちが自分で補ってね」みたいな気持ちでいつもやってます。
MOTSU だから想像もしなかった育ち方をしてて、それが面白いんだ……ああいう“演者じゃないけど参加してくれるオーディエンス”みたいな人たちのアピールって、僕は大好きなんですよ。やっぱりそういうところから新しいカルチャーって生まれると思うので。
――そうやってステージをご一緒される回数を重ねるなかで、お二人の間でのノリのようなものが生まれたりも?
MOTSU ありますね!セリコがすごくちゃんとやる人だから、こっちも「ちゃんと全部間違えないでやらなきゃ!」と思う。今まで色んな人とやってきたなかで、歴代で一番ちゃんとやっている印象があります。
芹澤 本当ですか!?意外かも……。
MOTSU プロ意識が高いんですよ。「ミスしないのは当たり前」というスタンスだから。さっき自分でも言ってましたけど、セリコって本当に120%の人なんで、自然と「俺も120%でいかなきゃ……!」という気持ちになる。「そういうふうにやったら、こっちも楽しいだろうな」という気持ちを引き出してくれるんです。
芹澤 いや、でももっちゃんもリハまでにめちゃくちゃ練習してきてくださるんですよ!なんなら「YOU YOU YOU」のときは、MVでは踊ってなかったところまでライブで踊ってくれて。
MOTSU そうそう。そこは僕の120%ね(笑)。
芹澤 先生に教えられてないセリコの振付まで、全部自分で落とし込んでくれたんです。
MOTSU バックダンサー的な感じになるから、やっぱり振付を合わせたほうが観ている人も楽しいかなって。
――ちなみに、そういうステージ上で生まれた感覚やノリは、楽曲制作やレコーディングに反映されている部分もあるんですか?
芹澤 そうですね……ノリかどうかはわからないんですけど、本当にもっちゃんはいつも「何をやってもいいよ」っていうスタンスでいてくださるんです。だから、レコーディングで緊張したことはもう随分ないですね。もちろんもっちゃんは作家としては大作家さんだし超先輩だから尊敬はしていますけど、もうお友達みたいなところもちょっとあるから、「好きにやっちゃおう!」みたいな気持ちになるんです。
MOTSU いつの間にかずっとタメ口だしね(笑)。
――先ほどから「もっちゃん」と呼ばれていますし。
MOTSU でも逆に、それがいいんですよ。こういうユニットでやるとなったら、それが一番いい。逆にそうなってないと、つまんないと思います。
――さて、ここからは新曲「TIMELESS POWER」についてお聞きします。まずこのタイトル自体が3rd Seasonに加え、『MFゴースト』という作品自体にも非常にハマるように感じました。
MOTSU ありがとうございます。やっぱり過去と現在を繋ぐというか……そもそも『MFゴースト』の中の“現在”って、要は未来の話じゃないですか?富士山が大爆発した後の日本だから。なので「過去と未来を突き抜ける、ひとつの光の筋」みたいなイメージを言語化したのが、このタイトルなんです。
芹澤 かっこいい……その話は今初めて聞いたんですけど、たしかに“時代(とき)をつらぬき 照らす光 明日さえ追いこしていく”っていうフレーズもありますもんね。
MOTSU ただ、曲についてはすっごく悩んだんですよ。やっぱり3rd Seasonだし、完結している原作的にも起承転結の“転”にあたるところじゃないですか?だから僕としては1回メリハリの“メリ”をつけて、もし次があるならそこで最後に向かってラストスパート……みたいなイメージを持っていたんです。でもアゲでいきたいとのお話をもらったので、「うわぁ、どうしよう!?」ってなって。もう七転八倒して、何十パターンも曲を出したんです。
芹澤 へぇー……!
MOTSU そんななかで、ある時「あ、これサビ白玉(全音符)だ!」と閃いて。
――「サビ頭はロングトーンだ」と。
MOTSU そう。“TIMELESS POWER!!!!!”で主線を長く伸ばしているところにラップがまとわりついてくる、という構成が浮かんで、そこが出来たおかげで全部出来ちゃった……みたいな感じ。歌とラップの絡みを研究してきて35年くらいになりますけど、一番ができたんじゃないかな?
芹澤 えー!?嬉しい!
MOTSU 本当に「これはAIでも思いつかないだろうな!」と思うほどの快心の出来ですね。「これ、何回か他で天丼したいな」という気持ちが生まれちゃうくらい(笑)。
芹澤 “ロングトーン絡みつきラップ”を(笑)。
MOTSU これ、多分発明なんで(笑)。
芹澤 そうなんだ……でも私も、初めて聴いた時の「あ、これめっちゃ好き!」という気持ちは、今までのオープニング2曲を超える勢いでした。最初はもっちゃんが、1コーラスくらいの「こんなのどう思う?」みたいな音源を送ってくださったんですけど、その時点で「めちゃくちゃかっこいい!」と思って。「もう、天才……!」って。だから私ももしかしたら、史上“最LOVE”かもしれないです。
――そして芹澤さんの歌声にも、この曲ならではの魅力があるように思っていまして。どの部分からも、かつてないほどの厚みがベースにあるのを感じました。
芹澤 嬉しい……「JUNGLE FIRE」で初めてユーロビートを歌ったときから、自分なりに「一番かっこ良く、今までのソロとは違う印象にしよう!」と思ってはいたんですね。でもあのときは完成した音源を聴いて、正直自分では自分の歌声に対して「ちょっと軽いな」と思う部分もあったんです。低音の響きやハスキーさみたいなものが、まだ一歩足りないなって。でも、結構近い時期にやった「JUNGLE FIRE」と「ROCK ME KISS ME」のレコーディングから「TIMELESS POWER」までは2年くらい期間が空いていて、その間自分の中には「もっと低音を強くしたい」という課題がずっとあって……。「もし3rd Seasonも任せてもらえたら、絶対に今までで一番自分でも納得のいく歌声でうたうぞ」と、ずっと気にかけていました。
MOTSU なるほど……。
芹澤 だからライブで「JUNGLE FIRE」を歌うたびに「どんどん野太くなってるよね」みたいに言われていたんですけど、それはそう意識して歌っていたからだったんです。
――低音や歌声の厚みで、迫力を出したいという想いがずっとあった。
芹澤 はい。「悔しい」とまではいかないけど、「もっとできるはずだな」とずっと自分に対して思っていて。だから「TIMELESS POWER」をもらった時に、「今こそこれを使うときだ!」と気合いが入ったんですよ。
MOTSU ただ「TIMELESS POWER」ってBメロがめっちゃ低いし、メロディのレンジも広いんです。だけど演者さんの中にはレンジが広くて低音を使う曲を嫌う人もいる、だから、あらかじめセリコに確認したんですよね。「これでいけそうならこのままいっちゃうけど、狭めたいなら転調とかを使って辻褄が合うように作る。どっちがいい?」って。そしたら……。
芹澤 「低音でいきたい!」って答えました。
MOTSU それで、あのまま仕上げたんです。この曲はまだライブで一緒にはやっていないんですけど、彼女が去年末のライブでやったのがSNSで回ってきて。それがすごく良かったんですよ。
芹澤 わ、嬉しい……!
MOTSU まさにそのBメロの低音が、「もう、これですわ!(拍手)」っていう感じだったんです。でも同時に、「あ、これアイドルは捨ててんなぁ」とも思った(笑)。
芹澤 たしかに(笑)。“ただ解き放てばいい”のところは、もうアイドルじゃないかも。
MOTSU でもセリコのファンはみんなそういう振り幅の広さみたいなものが好きなので、多分そんなところも含めて楽しんでくれるだろうなと思って。色々葛藤はしましたけど、その選択をして良かったです。
――その低音部分以外にも、2コーラス目の序盤の歌い回しが非常にラフだったりもしていますし。
芹澤 うん。そこは、ちょっと(中森)明菜ちゃんとかを意識してました。
MOTSU あ、なるほど!
芹澤 Dメロの“ルルラララ”の辺りって、メロディラインがちょっと昭和歌謡っぽいじゃないですか?
MOTSU そうそう。完全に昭和。やっぱ僕がやるからには、昭和のアイデンティティが滲み出てきちゃうんで(笑)。でもこの曲ね、歌えばわかると思うんですけど、こういうメロディをこなすのって大変なんですよ!
芹澤 そう。この曲難しいんです!サビは高いし、最初の“TIMELESS POWER!!!!!”の途中で息絶えそうになって「長い長い……!」ってなる(笑)。で、サビの最後にもう1回“TIMELESS POWER!!!!!”ってもう1回くるー!……みたいな、試練の多い曲なんです(笑)。
あと、さっきもっちゃんが何十パターンも曲を出したとおっしゃってましたけど、私もその「TIMELESS POWER」の歌い方を2パターン提出しましたよね?
MOTSU そうだ!
芹澤 野太すぎて今までの私とズレすぎちゃうかもしれないと思ったから、音源になっているパターンの他にもう少し今までっぽいパターンの2つを歌って、MOTSUさんに選んでもらったんです。
MOTSU そうだったね。でも本当にプロ中のプロの歌唱なので、細かいところは本当にお任せして。その部分みたいに「どっちがいいですか?」みたいに聞いてくれた時には意見を言う……という感じでした。
芹澤 ただ、英語の発音はやっぱり毎回アドバイスしていただいて。
MOTSU あ、たしかに!
芹澤 前に「JUNGLE FIRE」を「ジャンゴーパイヨー」と言う、みたいにアドバイスしてくれたように、例えば「“Pure spirit”の“Pure”は『ピュア』じゃなくて『ピュオ』だから」とか、私にもわかるようにカタカナでアドバイスしてくれて。他にも“Close your eyes”の発音を何度もやり直したり……私が英語全然ダメだから、できるだけネイティブの発音に近くなるような調整はしていただきました。『MFゴースト』の曲っていつものアニソン以上に海外の方も聴いてくださるから、聴き馴染みが気持ち悪くないように。
MOTSU 今の時代、配信を通じて海外の人も観られるからね。
芹澤 「JUNGLE FIRE」のMVも、海外の方からのコメント多いですよね?
MOTSU うんうん。そういう時代になりましたよ。面白いですよねぇ……なので海外進出の際にはね、もうフックしていただいて(笑)。
芹澤 発音頑張ります。よりね(笑)。
――その一方で、歌詞を踏まえて作品と一緒に味わいたいポイントも多いように思いました。それこそ、フルで聴いてこその箇所といいますか……。
MOTSU そうですね。“内燃機関”とかね。
芹澤 あ、“内燃機関”ね。
――Dメロの“むねの内(なか)燃える機関(いのち)”というフレーズですね。
MOTSU そう。「やっぱり永遠に内燃機関なんすよ!」みたいに、ダブルミーニング的に入れたりしているので。そういう“走り屋”みたいなのが好きな人には、かなりエモいポイントなんじゃないかな?と思います。
――耳で聴いているだけでは想像できない表記ではありますけど、アニソンファンはそこまで含めて細かく楽しむほうが多いと思うんですよ。
MOTSU そうなんですよね!やっぱりアニソンファンの良いところは、そういう細かい仕掛けを読み取ってくれるところなんですよ。そういう反応を聞くと、「アニソンやってて良かったな」って思いますね。
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