――ここからは収録曲について聞いていきます。表題曲「リミナル」をはじめ、カップリングの「Awaking Step」「GATCHA」もすべて作詞・作曲・編曲を重永亮介さんが担当していますね。
春咲 私、重永さんの楽曲がすごく好きなんです。A応P時代にユニット(OVERWHELM from A応P)の「Take you higher」を書いていただいたこともあり、自分のやりたい音楽性は重永さんの作られる楽曲と親和性があるなと感じていたので、今回思い切って重永さんにお願いしたいとリクエストしました。
――重永さんは数多くの楽曲を手掛けていますが、その中でも特に好きな曲を挙げるならどれでしょうか?
春咲 最近ですと、『学園アイドルマスター』(以下、『学マス』)の「極光」がすごく好きです。元々リーリヤというキャラクターが好きだったこともあって、「極光」を聴いた瞬間に感動しました。それで誰が書かれたのか調べたら重永さんで、やっぱり私は重永さんの作る曲が好きだと確信したんです。それもあったので、「誰の作る音楽がいいとか、イメージはありますか?」と聞かれた時に、重永さんのお名前を挙げさせていただきました。
――そして、最初に出来上がったのが「リミナル」。
春咲 はい。「リミナル」は、昨年夏に開催した「夏のうたたねまつり」(2025年8月3日開催“春咲暖 presents「☆夏のうたたねまつり☆ ~トキめく準備はできてるか~」”)で披露するために作っていただいた、私の初めてのオリジナル楽曲です。
――楽曲を制作するうえで、春咲さん自身のことや表現したいことなど、重永さんと事前に話し合いはあったのでしょうか?
春咲 直接お話ししたわけではないですが、箇条書きでざっくりとお伝えはしました。私、ファンや周りの人たちに持たれているイメージと、みんなには見せていない部分とのギャップに悩むことが結構あるんです。あと、自分のことが嫌いなんですけど、それを払拭したい思いもあり、そういった自分の葛藤を描いた楽曲を歌いたいとお伝えしました。
――ギャップがあるのですね。
春咲 私は普段、割となんでもできる人だと思われているみたいで、「さすがのんちゃん」を略して「さすのん」と呼ばれることが多いんです。でも、実際には何もできないんですよ。全然できないのに、なんでそう思われているんだろう?って。
――『学マス』で知った人なら間違いなくそう思っていそうです。
春咲 A応Pでもリーダーをしていましたし、舞台でも共演者の世話を焼いてしまうとか、そういうこともあって“しっかり者”のイメージが付いたんだと思います。それに、私は完璧主義なところがあるので、未完成なものを見せたくなくて、常にある程度完成度が高いものを見てもらえるようにしているんです。だから、なんでもできるすごい人だと思われちゃって。でも、そこに至るまでに1人で練習している時は歌もダンスも表情管理もできないから、試行錯誤の連続で……。他の子が30分で覚えられる振付を私は1時間とか1時間半かかるくらい、飲み込みも遅いんですよ。
――そういった葛藤が描かれているのですね。音源を聴いた第一印象はいかがでしたか?
春咲 「リミナル」は「中間」や「境界」といった意味なのですが、聴いた瞬間、私にピッタリだなと思いました。お渡しした箇条書きからここまで汲み取ってくれたことに感動しましたね。
――メロディの印象はどうでしたか?
春咲 まさに私が追い求めていた重永サウンドが来てくれたなって。ゴリゴリなロックサウンドが好きだったので、サビでそういう音が鳴っていたり、オタク心に染みるサウンドが鳴っていたりして、心から楽しめる最高の曲だなと思いました。
――「極光」もそうですが、イントロを聴いた瞬間に引き込まれるのもさすが重永さんという感じで。
春咲 本当にすごいですよね。
――大好きなサウンドと自身の葛藤を詰め込んだ楽曲になったのですね。
春咲 はい。ただ、練習するのが辛かったです。いつもは隠している自分の嫌いな部分を表に出さなきゃいけないというか、出すような表現をしたほうが活きる曲だとわかっていても……それが辛くて。マネージャーから「この曲を歌うの、辛いですか?」と心配されるぐらい出ちゃっていたみたいで、そういうところも葛藤しながら練習していました。
いままで見せてこなかったから、余計に試行錯誤したり思い悩んだりする姿を見せることに抵抗があるし、どういう反応が返ってくるか怖さもありました。でも、「リミナル」という曲をちゃんと表現するには、内側で葛藤している姿や普段の私の表情も見せなければならない。不安を抱えながらの練習だったので、辛くなっちゃったんです。
――本番のレコーディングも大変だったのでは?
春咲 大変でした。でも、レコーディングよりイベントでのお披露目が先だったので、辛さよりも歌詞を間違えられないプレッシャーのほうが大きかったです。間違えて歌ったら、それが正規のものとして書き起こされてしまいますからね(笑)。多分間違えなかったと思いますが、書き起こした歌詞を読んでも「早く音源化されたのを聴きたい」とか「またライブで聴きたい」とか「めっちゃオタクが好き(な内容)」などとみんなが好意的に言ってくれて。やっぱり重永さんにお願いして良かったなと思いました。
――みんな優しいですね。歌詞の内容とは別に、歌う難易度の高いところもあるなと感じましたが、そういった面ではどうでしたか?
春咲 そこに関しては、『学マス』で難易度の高い楽曲をたくさん歌うことで、鍛えていただいたと思っています。私が重永さんのサウンドを好きなこともあって曲の馴染みは早く、そこまで苦労はしませんでした。それよりもやっぱり表現方法に悩みましたね。
――フルで聴くと、葛藤が描かれつつも最後は希望を感じるものとなっています。
春咲 そうですね。最初は動揺や不安といった負の感情が強めで、1番のBメロくらいから徐々に自分のことを認められるようになっていきます。ただ、ネガティブは根強いので、2番のAメロでまたネガティブが襲ってきちゃうんですよね。私自身もそうなのですが、何回も何回も葛藤しないと明るい気持ちになれなくて。生まれてくるネガディブをなんとか飼いならして、自分を鼓舞して……というのを数百回繰り返して、ようやく一歩踏み出せるようになるんです。「リミナル」もまさにそういう流れになっていますが、最後は前に進むメッセージを込めています。
――なるほど。
春咲 私はずっとこうなんだと思います。根っからのポジティブになれる日はまだまだ遠くて、葛藤を繰り返しながらも前に進んでいくのが私の生き方だと思うので、それを表現している楽曲だなと感じました。
――ラストフレーズは“希望が咲いていく”。春咲さんの名前にかかっているのも素敵です。
春咲 「Awaking Step」もそうなのですが、“花”や“咲”といったフレーズがあったら嬉しいとお伝えして入れていただきました。本当に素敵なフレーズだなと思います。
――ちなみに、今は自分のことが好きですか?
春咲 頑張っている時の自分はちょっとだけ好きですけど、普段の自分はあまり好きじゃないですね(笑)。
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