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INTERVIEW

2026.02.04

ASCAが辿り着いた“与える者”としての矜持と“自己犠牲”の精神を巡る現在地――『龍族Ⅱ -The Mourner’s Eyes-』日本版EDテーマ「Giver」インタビュー

ASCAが辿り着いた“与える者”としての矜持と“自己犠牲”の精神を巡る現在地――『龍族Ⅱ -The Mourner’s Eyes-』日本版EDテーマ「Giver」インタビュー

中国に端を発し、その圧倒的な映像美と重厚なシナリオで話題を呼んでいるTVアニメ『龍族Ⅱ -The Mourner’s Eyes-』。その日本版EDテーマとして、物語の核となる“自己犠牲”の精神を美しくも力強く昇華させたのが、ASCAのニューシングル「Giver」だ。アニメの主人公たちが抱く精神と、かつてASCA自身が苦しみ、そして乗り越えてきた“与える者(Giver)”としての生き様が重なる渾身の一曲は、いかにして作り上げられたのか。最新アルバム『28』のフェーズを経た今の彼女だからこそ歌える、自分を愛するための歌、そして他者に尽くすための歌。「Giver」と共鳴し合うカップリング曲「Rose」を含め、「2026年の一発目、この2曲で攻める」と力強く語る彼女の、シンガーとしての矜持と新たなフェーズへの決意表明を受け取ってほしい。

INTERVIEW & TEXT BY 北野 創

かつて“自己犠牲”に縛られていたASCAが歌う、“与える者”を肯定する歌

――新曲「Giver」は、現在放送中のTVアニメ『龍族Ⅱ -The Mourner’s Eyes-』日本版EDテーマ。龍の血を引き言霊を使える龍族と圧倒的な力を持った龍王の争いを描いた現代ファンタジー作品で面白いですよね。

ASCA 面白いですよね……!しかも驚愕する程の映像の美しさで。中国制作のアニメーションということで元々クオリティが高いという話は聞いていたのですが、ここまで美しいとは。シナリオの面白さもさることながら、毎話、映像の美しさに度肝を抜かれていたら、気づくと「Giver」が流れています(笑)。

――「Giver」は『龍族』の世界観に合わせて制作したわけですか?

ASCA そうです。まずタイアップのお話をいただいて、台本を読み進めつつ、アニメサイドから作品の大まかな流れと、作詞するにあたって参考にしていただきたいワードをいただいて。そこからテーマを定めていきました。

――そのテーマというのは?

ASCA 第2期ということで物語的にかなり過酷な内容になって、主人公のルー・ミンフェイと先輩のチュー・ズーハンは、自分の持っている力を半強制的に引きずり出されるような状況が続くんです。その中で二人が持っている“自己犠牲”の精神に共感したので、それをテーマにしました。今、私が自分の気持ちを重ねて歌えるテーマを探しながらシナリオを読むなかで、ミンフェイのセリフに「世界がどうなろうが知ったことか。それよりも自分の周りの大切な人を救いたいんだ」というセリフがあったんですね。そこに一番共感しました。

――“自己犠牲”は、これまでのASCAさんの流れを踏まえると、確かに刺さるワードですよね。

ASCA そうなんですよ。最新アルバムの『28』の時から“自己犠牲”はテーマのひとつとしてあったものなので。自分事として捉えることができて、かつ、自己犠牲に対して苦しんでいた時間が長かった分、そこから一歩進んだものを届けられると思ったんです。なので今、自己犠牲の最中にいる人に対して何かしらのメッセージを伝えたいと思い、NiiNoさんに歌詞を書いていただきました。

――NiiNoさんは「I DON’T CARE」「Maze」「#kwk」「エスキース」と近作でご一緒されている方で、以前の取材でも意気投合したとお話しされていました。

ASCA 本当に素敵な方に出会うことができました。NiiNoさんは私と同世代で、私と同じように上京して東京で戦っている方なので、近い感覚で物事を見ているところがあって。私としても言葉数を多くせずともマインドを理解してもらえるので、誰かに自分の思いを歌詞にして欲しいと思った時に、NiiNoさんにお願いしたいとなるんですよね。

――ASCAさんが過去に自己犠牲的な精神で苦しんだ時期や経緯があったことを、NiiNoさんは知っていた?

ASCA はい。「#kwk」の制作の時にリモート打ち合わせをして、まず私がどういう人間なのかを知ってほしかったので、生い立ちや家庭環境、自分が家族の中でどういう立ち位置にいたのか、というところからお話ししたんです。なので私に対する理解はとてつもなく深い状態で「Giver」の作詞をしていただきました。

――「Giver」は直訳すると“与える者”という意味ですが、そのタイトルからもASCAさんらしさを感じたんですよね。『28』の取材(https://www.lisani.jp/0000290947/)で、自分の意見を抑えて他者を立てるタイプ、他者に尽くすタイプというお話しを聞いたことがあるので、そこと繋がる部分があるなと思って。

ASCA まさに。今までの人生を振り返ると、自分の気持ちだとか自分がやりたいことよりも、目の前にいる人が何を求めているのかに思いを馳せてきた時間が多かったと思っていて。ただ、それを一生懸命やっている時は別に自分が不幸せだとは思っていないわけですよ。「誰かのために」という気持ちで、自分が起こした行動や言葉で、相手に喜んでもらえることが幸せだったので。でも、それをやり続けた先で、「あれ?意外と心が削られていたかも?」と思うようになって。自分の気持ちを無視して与え続けてきたことで、自分が本当にしたかったことや好きなものがわからなくなってしまったんですよね。10代の頃はそんな疑問を持つことなく「これが私だ!」と思って「Giver」であり続けてきたけど、徐々に限界がき始めて、大人になってようやく「これじゃダメなんだ」ということに気付いたんです。

――改めて自分自身を顧みたわけですね。

ASCA それで『28』の表題曲(「28」)で、人にばかり与えてしまう自分を一度手放す、ということをテーマに歌詞を書いて。その先に生まれたのが今回の「Giver」なので、今の自分だから伝えられることがあるのかなと思っています。

――一方で「Giver」は、先ほどおっしゃっていただいたように、『龍族』の登場人物たちの自己犠牲精神を表現したものですよね。自分の命を投げ打ってでも何かを守りたい気持ちが描かれていて。

ASCA 彼らが自己犠牲したことで世界が救われる。シナリオを読んだ時に、結局世界はそういう風に回っていると思ったんですよね。今のこの世界が成り立っているのも誰かしらの犠牲があったからだし、文明が発達しているのも、昔の人たちが家庭や命、色んなものを犠牲にした先に今があるはず。やっぱり何か犠牲を払わないと幸せにたどり着けないというのが真実だなと。自分の命を犠牲にしても守りたいと思った時の凄まじいパワーは絶対にあると思うので、そこを歌にしたいなと思いました。

――「自分の命を犠牲にしてでも守りたい」という話も、過去のASCAさんのインタビュー(https://www.lisani.jp/0000271484/)で聞いているんですよね。妹さんを守るためなら自分の命を投げ打ってでもいいと。

ASCA そうなんですよね!「明日世界が終わるとしても」の作詞をした時は、まさにそういう精神でした。妹に対しての、目に入れても痛くないくらいの……いや、もちろん痛いですけど(笑)。ともかく自分を犠牲にしてでも守りたいものは何かを考えた時に、家族や妹だなと思って書いた曲なので、自分の中にセルフサクリファイスはずっとあるんだと思います。切っても切り離せない精神だし、自己犠牲をして与えてきたことで、確実に誰かを救っているはず、ということに対する肯定も今回歌いたいと思いましたね。自己犠牲に関しては今までもテーマにしてきたけど、そのもう一歩先の気持ちというか。そういう自分自身も認めていいと思うし、認めたいっていう。

――なるほど。

ASCA この曲を制作するにあたって、たくさん考えたんですよね。レコーディングしたのは去年の8月だったんですけど、その頃に改めて「自己犠牲って何だろう?」って色々調べたうえで考えて……私は一時期、「自己犠牲=良くないもの」という捉え方をしていたんですよね。「私は自己犠牲をしていたから苦しんでいたんだ」と思い込んで、自己犠牲を全部辞めようとしたんです。私、ゼロヒャク(0/100)思考の人間なので(笑)。でも、辞めたら逆にもっと辛くなったんですよね。

――それはそれで自分の気持ちに無理していたわけですね。

ASCA 「自分のためだけに自分の思ったことだけをやる人生って、何が面白いんだろう?」と思ってしまって。これは綺麗ごとではなく、与えることは自分のためでもあるんです。自分が満たされる行為でもあるし、与えられた相手も嬉しいっていう。そこから自己犠牲を否定するフェーズを越えて。流れとしては、自己犠牲をしがちな自分がいて、それを辞めて「本当の自分を取り戻そう!」と歌ってきたフェーズがあって、そして今。自己犠牲は決して悪いことではない。そういうことが「Giver」で伝えられるのかなと思っています。

――自己犠牲してきた過去の自分自身を否定することは、ASCAさんが『28』で掲げていた“自分を愛する”というテーマに反することになりますから。

ASCA そうなんですよ。私自身も自己犠牲をテーマに「Giver」と向き合ってきましたけど、これは永遠のテーマだと思いますし、これからもサクリファイスについて考えていきたいなと思います。とにかく今の私は「Giver」である自分のことを誇りに思っています。

――その意味では今までの歩みがあるからこそ、しっかりと気持ちを乗せて歌える曲になったのかもしれないですね。

ASCA はい、私の“自己犠牲”の集大成みたいな曲です。これが終着点とは思わないですけど、現時点での到達点だと思います。

――NiiNoさんから歌詞が届いた時は、どう感じましたか?

ASCA 私から書いてほしいテーマをテキストにして送ったうえで作詞してもらったんですけど、本当に「これでもか!」と思うくらい私の気持ちが反映されていました。“サクリファイス”という言葉もそうですし、Dメロにある“ドクダミ”の花言葉も“自己犠牲”なんですよ。私はお花を活動のテーマのひとつにしていて、ファンの方をお花にたとえて作詞したこともあるし、お花の名前を歌詞に入れることが多いので、私としては大事な思いを込めて送った言葉だったんです。しかもアニメや世界観に対する理解もしたうえで書いてくださっていたので、歌詞を見た時はぐうの音も出なかったですね。

――言い方が(笑)。でも確かに“タブー犯そうとも”というフレーズは『龍族』のイメージが浮かびますよね。

ASCA そうですね。自分に課されているルールとか破ってはいけない掟が『龍族』にはたくさんあるので。アニメを想起させてくれるような単語がたくさん入っています。

――なおかつASCAさんの楽曲としてしっかりと成立していて。

ASCA 本当に自分事として生涯かけて歌えると思います。「今後死ぬまでこの歌詞を歌えるのか?」というのは大切なところなので。その意味でもぐうの音も出ない歌詞でした(笑)。

――歌のこだわりについてもお伺いしたいです。この曲、リズミカルかつ音域や声音の振り幅もすごくて、歌いこなすのは非常に難しいと思うのですが、堂々たる歌声を響かせていますね。

ASCA 嬉しい!この曲は本当に意地とプライドをかけて歌ったので(笑)。『龍族』のEDテーマを歌わせていただくとなった時に、まずは楽曲探しからスタートしたのですが、コンペでたくさん楽曲をいただいたなかで、このデモを聴いた瞬間に「絶対にこの曲!」と思ったんですよ。これを歌いたいと明確に思って。というのも、聴いた私の気持ちがワクワクしたし、めっちゃ難しそうと思ったんです。「えっ、これ私、歌えるのかな?いや、やってみよう」と一歩踏み出すことができた曲で。

――その挑戦心、難曲に立ち向かうマインドは、以前から持ち合わせていた?

ASCA 歌手を志していた頃やデビューが決まったタイミングの時はそういう気持ちが強かったです。でも、その後に喉を壊したり色んなことがあって自信をなくしていた時期があって。だから取り戻した感覚ですね。

――いいですね。

ASCA そう、いいんですよ(笑)!帰ってきたんですよ、このマインドが。出来るかどうかはわからないけど、心は「やりたい」と思っているんですよね。「やれるまで練習しようよ」「ちゃんと形にしようよ」というハードルを自分に対して課せるようになった、自分に期待できるようになったのかもしれないです。「きっとできるはずだ」って。

――それで意地でも歌ったと。

ASCA いやあ、とにかく難しかったです。下から上まで音のレンジが広い曲なので、練習しながら思わず笑ってしまいましたね(笑)。そもそもこの曲を作曲してくださった夢見クジラさんは、レンジの広い曲を作るのが得意な方で、その方にお願いしている時点で、技術的に求められることが高い楽曲になることはわかっていたんですよね。音楽ディレクターの角田(崇徳)さんもそれをわかったうえでオーダーを出してくださって。その時点で姿勢が攻めですよね。

――確かに。

ASCA 攻めの姿勢というのは2024年からは始まっていたんですけど、その流れの中でもとにかく難しい曲でしたし、レコーディングも8月に一度行ったんですけど、自分の中でサビの部分が納得がいかなくて、録り直しました。というのも技術的に追いついていない部分があって、「Giver」が発揮するとんでもないエネルギーを表現したいのに、どこか揺らいでいる感じがして、歌を通して圧倒的な自信みたいなものが届いてこなかったんですよね。「これは私のやりたいものではない」「この声を届ける意味がない」と思って。

――そうやってこだわり抜いた結果が、今のエネルギッシュで迫力を感じる歌声なんですよね。

ASCA これは余談なんですけど、歌を録り直す前日に富士山に登っていたんですよ(笑)。安月名莉子ちゃんと私の妹と3人で。その時の私は自分の中の理想に対してがんじがらめになって、つまりは煮詰まっていたんだと思うんですよね。でも、富士山に登って帰ってきた翌日にレコーディングしたら、めっちゃ声が出たんですよ(笑)。

――すごい(笑)。何か気持ちが晴れたんですかね?

ASCA 富士山に行ったことが、邪念を全部吹き飛ばしてくれたんだと思います。考えすぎているものを一度全部取っ払って、目の前の音楽にシンプルに向き合う。脳内がすごくクリアになった感覚があって。声って意外とちょっとしたことで変わるんですよね。例えばリフレッシュするためにエンジニアさんと話したり外に出ると、まったく違う声やテンション感になったりするるので……その意味では自分の感情をコントロールできるようになってきました。

――そもそも前日に富士山に行くマインドがすごいですよね。

ASCA 攻めていますよね。その攻めマインドが伝わる曲になったと思います!

――「Giver」のMVも攻め攻めです。バラのように豪華絢爛な衣装を着ていて。

ASCA ショーで着られているような唯一無二の衣裳を着用しました。衣装からも攻めを感じていただけるんじゃないかと思います。

――あの衣装はASCAさんの希望で?

ASCA 楽曲負けしない衣装を着たかったんですよね。楽曲的にも新しいことに挑戦していますし、2026年の一発目に出すシングルということで、攻めを感じさせる斬新なパッケージにしたい思いがあって。そんななかでこの衣装のアイデアをスタイリストさんに見せていただいたんです。長いドレスなので全体像として見た時に龍を感じさせるところがアニメ『龍族』とリンクしますし、花びらのような飾りがたくさん付いているところは、カップリング曲の「Rose」にぴったり合うので、これしかないと思って決めました。着こなせるかは不安でしたけど、着こなせたと信じています(笑)。

――着こなせていますよ。華麗でゴージャスでした。

ASCA すごく重たくて、背中が空いているので寒かったです。でもお洒落は我慢なので!

――MVにダンサーが参加しているのも珍しいですよね。

ASCA これも初めての試みです。CHIMENさんというコレオグラファーの方に振り付けと振り入れをしていただいて。MVの撮影前にCHIMENさんとダンサーさんとスタジオに入ってリハーサルをしてから本番に臨みました。すごく楽しかったです。私こういうのが好きなんだなと思って。最近ライブで「自分のやりたいことを探して」「自分の好きを大事に」と言ってきましたけど、私は音楽に合わせて体で表現することが好きなんだなと気付いて。自分の好きを見つけてしまいました(笑)。

――ということは今後も振り付きの表現が期待できそうですね。

ASCA やっていきたいですね。動きを合わせた表現の楽しさに目覚めたんですよね。今まで自分がリリースしてきた曲にも、体を使った表現を1曲1曲見直していくことで、全く新しいライブを作っていけるんじゃないかという可能性も見出してくれた撮影でした。自分にとって、新しいアプローチの映像を皆さんと作れたのでぜひ観てください!

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