「リスアニ!」と大阪のラジオ局・FM802のラジオ番組「802 Palette(ハチパレ)」による新たな音楽メディア「リスパレ!」がレコメンドするシンガーソングライター・なるみやの主催によるイベント“なるみやと秘密のティーパーティー”が、2025年12月25日、神奈川・横浜ランドマークホールで開催された。昼夜2公演が行われた今回のイベントには、なるみやと同じくSNSやネットを中心に人気を集めているロスがゲスト出演。一緒に暮らしていた時期もあるという2人の仲睦まじいトークやライブなどでファンをもてなし、クリスマス当日に楽しいひと時をプレゼントした。本稿では夜公演のレポートをお届けする。
TEXT BY 北野 創
PHOTOGRAPHY BY Haruka Odaki (BRUME.)
作詞・作曲・編曲まで自ら手がけ、人間なら誰しもが持っている負の側面や暗い感情を独自のポップスに昇華するなるみや。“救われない不憫を救おうとする音楽”をテーマに掲げる彼女の活動は若年層を中心に支持を広げており、儚さと可憐さを併せ持った歌声や配信でのユーモア溢れる語り口を含め、新世代のアーティストとして注目を集めている。そんな彼女が主催する今回のイベントは、ライブパートとトークパートで構成。開演前にはクリスマスソングを中心としたスタンダードナンバーがBGMとして流れ、クリスマスシーズン特有のハッピーなムードが会場を満たすなか、照明が暗転してパーティーの幕が開ける。
「親愛なるあなたへ。この招待状を見つけたのは、きっと偶然ではありません。ここで開かれるのは、ほんのひと時の秘密のティーパーティー。名前も、肩書きも、ため息も、ここではそっとカップに沈めてください。ここにいるあなたは、もうすでに“特別なお客様”なのですから。それではこの秘密を、どうぞご一緒に」。
なるみや本人による開幕のナレーションに続き、まずはライブパートがスタート。ステージ前面を覆う薄い紗幕の向こう側になるみやが姿を現し、「みなさんこんばんは、なるみやです。今日はよろしくお願いします」と挨拶すると、彼女が10代の最後に発表したという楽曲「不純喫茶」を歌い始める。かわいらしいサウンドながらも不協和音をあえて取り入れることで、心が複雑に揺れ動く“純愛”を表現した本楽曲。なるみやはステージをゆったりと行き交いながら、その可憐で苛烈な感情の波を歌に乗せて届ける。それまでカラフルに色づいていた照明が、ラスサビ前のブレイク部分で一瞬だけ真っ赤になるなど、視覚効果も交えたステージングでファンを自身の世界観に惹き込んでいく。
「不純喫茶」のメルヘンチックなサウンドから一転して、色香の漂うジャジーな曲調で別の一面を見せたのが「リードコントロール」。支配欲や共依存的な関係性をモチーフにしたであろう歌詞、1番サビ後の優雅なハミングから2番Aメロでの軽やかに滑り行く変化に富んだ歌唱表現、ピンクや赤に明滅するライト演出などがインパクト大だ。その後のMCではいつも通りの柔和な口調でファンと交流。クリスマスの横浜はどんな様子だったかを聞いたところ、客席からのカップルだらけだったとの回答に「許せんな」とひと言。「その中で私のライブに来てくれたことが本当に嬉しいです」と感謝の気持ちを伝える。
ここでクリスマス当日ということで、back number「クリスマスソング」のカバーを披露。バラードかつ直球のラブソングということで、なるみやは普段あまり歌わないタイプの曲調だが、イノセントな響きを持った歌声が楽曲内で描かれるピュアな想いを強調して意外なほどのハマり具合。後半になるほど感情が強くなっていく歌い口も相まって、“君が好きだ”というストレートな言葉が心に沁みるカバーとなっていた。
歌い終えて、バラードを自分で作って歌うことに苦手意識があると語るなるみや。そんななか、2025年に発売したEP『まどろみの記憶』にて初のバラード曲「月夜の庭にて」を収録したこと、その楽曲はロスと一緒に暮らしていた時期のことを思って書いたことを明かす。「私の中では、あの生活があったから、こういう温かなバラードにも挑戦できたんじゃないかなと思っています」と告げると、その「月夜の庭にて」を歌唱する。ライトにより青みがかったステージに、なるみやの立つ位置にだけピンスポットが当たり、まるで月の光が彼女を優しく包み込んでいるかのよう。ゆったりしたテンポで刻まれるビートとピアノ、温かなメロディ、まろやかな歌声が重なり合って、心地良い時間が醸成されていく。後半では、なるみやが手を振るのに合わせて客席がペンライトを左右に揺らし、懐かしくも温もりに満ちた景色が作り上げられた。
その余韻に浸る間もなく、ライブは次曲「通心障害」へ。アップテンポかつ重心の効いた細かいリズムに乗せて歌われるのは、画面の向こう側の“あなた”への清濁入り混じった感情。その激しさが、先ほどまでの穏やかだった世界を鮮烈に塗り替えていく。綺麗でハッピーな部分だけでなく、心の闇や暗い側面にも切り込んでいく、なるみやの真骨頂ともいえる表現でオーディエンスを魅了した。
SHARE