REPORT
2025.12.19
そのブリッジムービーには、手作りの年表を制作しながら10年間の活動を振り返る水瀬と、その年表の世界の中の水瀬といった“2人の水瀬いのり”が登場。過去のライブ映像や、その中のMCで伝えた言葉を織り交ぜて10年間の歴史を振り返っていく。そうして年表が完成し、年表の世界の水瀬の道のりが鮮やかに彩られると、映像を締め括る星空のイメージから繋がる形で後半戦は「Starry Wish」からスタート。その星空をバックに、ファルセットも駆使しながら言葉に込められた想いを1つ1つ大事に届けていく。直前の映像があったからこそ“一人じゃ歩けないと気付いた”とのフレーズはいつも以上に心に響くものに。そんな雰囲気を一変させたのが続く「スクラップアート」。歌い出し1フレーズで自らその空気を塗り替えると、序盤はやや無機質めに歌唱。サビではそこに少し力も込めつつ、高音を力押しせずにミックスで乗りこなしたりと序盤からの表情も引き継ぎ歌唱。ここまでとはまた一味違った表現でしか感じられない表情を繰り出してくる。
独特なムードの楽曲で前半とは異なる魅力を発揮すると、それに「NEXT DECADE」を続けることで、次の10年を切り拓きに行く姿を堂々提示。浮遊感と力強さを併せ持つ楽曲をもってまた雰囲気をガラリと変えると、そのサウンドと噛み合うロックバンドのライブのような照明演出も相まって、視覚・聴覚の両面から心を捉えに来る。2コーラス目でタンギング気味に歌う部分の歌声や、2サビ明けの間奏で逆光の中で顔を伏せて立つ姿など、この曲ではライブ序盤とは異なるかっこ良さを堪能させてくれた。
MCパートではこれまでの軌跡を辿ったブリッジムービーの意図を説明しながら、「みんなの特別が紡がれて、水瀬いのりというアーティスト像にみんなの想いが乗って、10年歌い続けることができました」と感謝。そのなかで悩みや迷いもあったことにも触れつつ、「好きだからこそ続けることができて、好きだから真剣に向き合ってきたアーティスト活動でした。ライブを通じて必ず“ここでしか出会えないもの”に出会えているのは、皆さんのおかげです」と、重ねて感謝を伝えていた。
そんな言葉に続く形で始まったのは、そのメッセージとリンクするナンバー「海踏みのスピカ」。軽快なギターのリフと共に幕開けるこのナンバーに、またも瑞々しく真っ直ぐな歌声を乗せていくことで、希望の光を感じさせていく。サビのハイトーンなフレーズも地声で力いっぱいに歌い、ファンへの感謝と未来を共に迎えたいという想いを精一杯に表現。それをあらゆる方向を向きながら伝えていき、後奏ではイヤモニを外してシンガロング。早速“ここでしか出会えない「海踏みのスピカ」”を完成させ、嬉しそうに笑顔をのぞかせていた。そこからまた一気に雰囲気を変えたのが、「TRUST IN ETERNITY」。シリアスなシンフォニックロックに、さらに力を込めていく水瀬。2サビ明けの間奏では胸に手を当てて湧き起こるコールを受け止めると、Dメロからはそれを推進力にしたかのように歌声にはさらなるエモーショナルが。大サビでさらに一段ギアを上げて歌声を力いっぱい叩きつけた水瀬は、ギターソロのなか降壇。しばしバンドメンバーによるセッションを挟み、水平線からの日の出や大きな満月の前を風船が横切る映像へ。その風船が海に落ちるとステージ前方に紗幕が降り、深海をイメージさせる映像が映し出される。それを前にピアノの音色が奏でられ始めると、紗幕の向こうにはライトに照らされた水瀬が登場。「BLUE COMPASS」を歌い始める。
イエローのドレスという衣装も相まって、さながら深海で美しい歌声を響かせていくプリンセスのような姿をみせる水瀬。イノセントでありながらも楽曲の壮大さにもマッチする、感情の膨らみをしっかり乗せた歌声がまた、観客をライブの世界へといざなっていく。落ちサビで紗幕が落ち改めてその姿を顕現させると、大サビでの歌声のスケール感はさらに増幅。改めて心を引き込み、最後に笑顔で“どこまでもいっしょに”というメッセージを届けると、そのまま突入した「Starlight Museum」はおしとやかに花道を歩きながら歌唱をスタート。センターステージに到着するとくるりと回り、自身を囲んだあらゆる方向の観客へと想いを届けていく。そして突入した大サビ。入りから歌声が少々跳ね気味になっており、感情が溢れていることが感じられたのだが、さらに込み上げる想いがあったのか、途中から涙が込み上げて声を詰まらせてしまう。それをすかさず会場中のファンが合唱で支えると、水瀬はどうしてもこの想いは伝えたかったのか、“「ありがとう、好きだよ!」”のフレーズから歌唱に復帰。これもまた、ファンとともに作り上げた“この日だけの「Starlight Museum」”だった。
歌唱後にはその涙の理由を「無観客だった初めての横浜アリーナでの思い出と重なる部分があって、皆さんに囲まれて歌うことがどれだけ大変なことなのかを身をもって知って。それが叶えられて本当に嬉しいです」と明かし、その直前の「BLUE COMPASS」について生で演出やメッセージを届けられたことへの喜びを語る。そして「幸せすぎて涙が出てしまった」とまとめていた。「私らしく、私のペースでいいよとついてきてくれたみんなに、私も『みんならしくていいよ』と届けられるようにこれからも歌っていきます」と未来に向けた意気込みも改めて伝えられたところで、「ぜひ一緒に歌ってください!」との呼びかけに続きスタートしたのが「harmony ribbon」。その場の空気をギュッと抱きしめるように歌い始めたこの曲。直前に彼女が流した涙が序盤の歌詞と奇跡的なリンクをみせるなか、未来を見据えた“今”の想いを届けていく。引き続き瞳を潤ませつつも、微笑みと共にファンとのやり取りも交わしながら歌唱していく水瀬。最後はイヤモニを外し、両手を広げて観客の大合唱を受け止め、そこにフェイクも重ねて温かな空間を作っていった。
歌唱後には一歩ずつファンと紡いできた10年間に改めて想いを馳せ、「私たちの旅はまだまだ続いていきます」と宣言。「私と、私たちだけのこの10年を、この曲に乗せて咲かせたいと思います!」との言葉に続けて、「Innocent flower」がスタートする。夢への想いを込めつつ聴く者の隣で寄り添う、彼女らしいミドルバラードであるこの曲。そこで響かせる彼女の歌声は、優しくもときに寄りかからせてくれるような強さも持ったものだった。それは彼女がこの10年をかけて“みんな”と作ってきたかけがえのない歌声だ。Dメロではまたも感情が溢れ声を詰まらせかけるが、ここで水瀬は止まらない。最後まで微笑みと共に“この10年”の想いを乗せて歌い切り、一礼とともにステージを降りた。
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