幕間、サポートバンドによるサイケデリックなジャムセッションののち、愛美のアーティストカラーである赤と紫がミックスされた黒のボーダーニットにオリーブ色のワイドなパンツという出で立ちの愛美がステージに現れるとライブは後半戦に突入。彼女はそれまでとは一転、”新世界の創造主”の肩書きを脱ぎ捨て、声優であり、ボーカリスト・ギタリストである“愛美”のステージをスタートさせた。
そんな“愛美”が組み上げたライブ後半戦のセットリストは、表するなら一気呵成の一語に尽きる。ステージに復帰するや、シンセサイザーのヌケの良いリフが耳に残り、ラップを巧みに織り交ぜたリズミカルなリリックが心地いい「What’s up FIRE!」をパフォーマンスしたかと思えば、その後は肌合いの異なる3曲を連射。重心を後ろに置いた硬質でタフなビートを自在に乗りこなす彼女の姿がまさに“星”のごとく輝く「STAR」、8ビート、ブラストビート、2ビート、ブレイクダウンと目まぐるしくリズムチェンジする「ザ・センセーション」、“高速キャバレージャズ”といったスウィンギンな「HELP」と、カラフルな楽曲群を畳みかけた。重く凶暴なサウンドやシアトリカルなステージングがなくともオーディエンスをロックできるセットリストを構成できる。愛美の楽曲カタログの分厚さと強さが証明された瞬間だった。
事実、オーディエンスは後半戦のこのプレイと楽曲群にビビッドに反応。ときにはウルトラオレンジのペンライトでフロアを一斉に照らし、また時には自由にステップを踏みながら高らかにコールを送るなど、“新世界の創造主”のステージに負けず劣らぬテンションで、“愛美”のステージを盛り上げていた。
後半戦はMCタイムのノリも一変。トーンや話題やしぐさ、そのすべてがラブリーでちょっとファニーな“愛美”らしさで彩られていた。ニコニコと「通常の愛美です」と切り出した彼女は、ツアー各地のチケットセールスについてぶっちゃけたかと思えば、続けて「えーっと、ここまでお送りしてきたライブですけど、もう終わります」と、このあとのステージ構成もぶっちゃけ放題。オーディエンスの大きな笑いとちょっとの悲鳴を誘うトークでフロアにブライトなムードを現出させていた。
そして愛美とバンドは「もう終わり」だというライブ本編最終盤に「will」「ドレス」「CROWNED」の3曲を連投する。“ねえ、これが人生最後の 歌になるかもしれないから”というリリックとキレのいい8ビートが印象的な「will」、世界と折り合えない生き辛さを歌うエモラウドロックナンバー「ドレス」、『A/CODE』のラストを飾る、孤独や理不尽に見舞われても生きることを宣言した楽曲「CROWNED」。強烈なメッセージを放つ3つのアッパーチューンでこの日一番の熱狂を演出した彼女たちは大歓声のなかステージをあとにした。
熱烈な声援に応え、リメイクしたツアーTシャツ姿でステージに舞い戻った愛美がアンコール1曲目にセレクトしたのは「不完全ドリーマー」。エモーショナルなギターロックサウンドとメロウなピアノに乗せて、夢半ばの自身の“物語は始まったばかり”“never ending story…”と力強く歌い上げることで、自身とオーディエンスが紡ぐ音楽を巡る物語が道半ばであり、決して終わらないことをあらためて宣言してみせた。
そして、アンコールを求めてくれたオーディエンスに感謝の言葉を贈った彼女が新世界=NEW WORLDに軸足を置いたコンセプチュアルなライブを目指したがゆえにセットリスト作りに腐心したことを振り返ったところでライブは大団円を迎えることに。
この日のラストナンバーは、セットリストに悩んだ彼女が「一番騒げる曲を持ってきた」と胸を張る「メリトクラシー」。ストレンジなアレンジながらも聴く者を確実に踊らせる、“愛美楽曲ならでは”と言うほかないダンスロックが繰り出されると、オーディエンスは思い思いのスタイルでダンス。フロアは確かに大騒ぎの様相を呈してこの日のライブ、そして【AIMI LIVE TOUR 2025 “NEW WORLD”】初日のステージの幕は下ろされた。
ライブ後半戦最初のMCで愛美は「さっきの(気取った声を作って)『皆さん、こんばんは』みたいなMCでみんなが笑ってくれて安心しました」「愛美のお客さんも笑いがわかるようになってきたんかな?」と笑っていたが、こんなものは話半分で聞いておくべきこと。コンセプトライブという新機軸に挑んだことへの単なる照れ隠しに過ぎない。
この日前半のステージには最新作『A/CODE』の楽曲群を手に、新たな音楽表現の道を切り拓かんとする彼女の姿が確かにあった。愛美の言葉と『A/CODE』から放たれるメッセージを借りるなら、ライブ前半の彼女はジョークでもなんでもなく、“新しい愛美の音楽の世界”の創造主であったことは間違いない。それだけにヘヴィロックとシアトリカルなステージ表現という2つの武器を手にした彼女は今後どんな音を響かせるのか。そんなことに思わず期待を抱きたくなった一夜だった。
AIMI LIVE TOUR 2025 “NEW WORLD”
2025年11月1日(土)神奈川・YOKOHAMA Bay Hall
<セットリスト>
M01. NEO ELDLADO
M02. Noise in me
M03. AthisCode
M04. MAGICAL DESTROYER
M05.キャンセルさせて人生
M06. C’est la vie drive
M07. LIGHTS
M08. What’s up FIRE!
M09. STARS
M10.ザ・センセーション
M11. HELP
M12. will
M13.ドレス
M14. CROWNED
—アンコール—
M15.不完全ドリーマー
M16.メリトクラシー
愛美 OFFICIAL WEB SITE Site
https://aimi.info/
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