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INTERVIEW

2025.11.19

寿 美菜子と高垣彩陽がソロアーティストデビュー15周年を記念してコラボ!共作詞で生まれたシングル「Beyond Days」の制作秘話、11月30日に行われるツーマンライブへの意気込みなど、たっぷり語ってくれた

寿 美菜子と高垣彩陽がソロアーティストデビュー15周年を記念してコラボ!共作詞で生まれたシングル「Beyond Days」の制作秘話、11月30日に行われるツーマンライブへの意気込みなど、たっぷり語ってくれた

寿 美菜子と高垣彩陽、2025年に揃ってソロアーティストデビュー15周年を迎える彼女たちがコラボ楽曲「Beyond Days」をリリースする。互いへのリスペクトと、これまで歩んできた決して平坦ではない道程を真っ向から表現した楽曲は、どのような過程を経て生まれたのか。共同で作詞を行い、過去の思いと現在の決意を詰め込んだ「Beyond Days」の制作秘話を本人たちに訊く。

INTERVIEW & TEXT BY 青木佑磨(学園祭学園)

「私たちはファイター」闘い続ける2人の関係

―― “寿 美菜子&高垣彩陽”名義でのコラボシングル「Beyond Days」が11月12日にリリースされます。まずは楽曲のお話の前に、今年は5年ぶりのスフィア単独ライブ公演(LAWSON presents スフィアライブ2025 「Welcome!!!!!」)が行われたり、活動を共にするタイミングも多かったと思います。改めてスフィアの中においてこのお2人ってどういった関係性なんでしょうか?

高垣彩陽 最年少と最年長だね(笑)。

寿 美菜子 そこが第一に挙がってくるね。そして曲の話にも繋がってくるんですけど、物事に対しての考え方や取り組み方が近くて。基本的にスフィアって割と全員真面目と言ってもらえることがありがたいことに多くて、そのなかでも特にこの2人はディレクションや周りからいただいた言葉を内に秘めながら、1度持ち帰って黙々と向き合っていくタイプというか。はるちゃん(戸松 遥)とあきちゃん(豊崎愛生)は良いことも悪いことも受け止めたあと一旦脇に置いておいて次へ進んでいける印象があるんですけど、私たちは1回立ち止まって考える時間を大事にしている2人なのかなって思います。その内に秘めて考えていることをお互いによく話すことが多かったかな。

――グループ内で起きた出来事に対して、それにどう思ったかというような感想戦が行われるということですかね?

高垣 そうですね。それも含めてですし、スフィア以外でもストレートプレイの舞台でも一緒に共演したり。作品でもこの2人で一緒に、深く長くやることが多くて。それぞれに葛藤を抱えつつ2人で色んなことをシェアしてきましたし、地道に重ねてきた感じなんです。

寿 「共に闘ってきた」っていう言葉が一番似合うね。

高垣 「研鑽」だね、2人とも努力型っていうか。そういう関係性ですね。

――一対一で会話されるときはどんな内容が多いんですか?

寿 結構悩みとかも話しますね。といってもずっと重たく頭を抱えてることっていうよりかは、「こういうことがあって、こう感じたからこうしてみた」みたいにお互いにシェアしあうみたいな。スフィアのメンバーはみんなそれぞれにそういう話ができるけど、中でも彩陽が一番ディープに話している印象はあります。

――建設的な会話というか、論理的な会話という感じですかね。

高垣 論理派という感じでは全然ないんですけど「私はあのときこう思ってた」とか、「あの場では言わなかったけどこう思ってたんじゃない?」とか、そういうことをお互いにシェアして。だいたいそういうときは同じ気持ちを抱えていたりするので……“なんかモヤったら美菜子”という(笑)。美菜子が逆に気にして「あの進め方で大丈夫だった?」って聞いてくれたり。誰かが置いてけぼりになってないかをいつも気にかけてくれるので、そこにもすごく救われています。その場で言えなくても美菜子に言って昇華できたら「うん、まあいっか」ってなれる。「美菜子がわかってくれていたらいいや」と思えることが、スフィアに限らずどんな仕事のことでも現場のことでも結構あるんですよ。一緒に悩めるというか、ベクトルが近いんだと思います。

寿 ね。わかり合える感じ。

――小さな棘や小石とかを見過ごさずに一旦確認する感じというか。

寿 気遣いの仕方とか、見ているポイントが似てるんだと思います。

高垣 あんまり似てる似てないで考えたことなかったけどそうなのかもね。

――ポジティブなタイプの人にとっては「いいじゃんそんなの」というようなことも、ちゃんと考える時間を設けてみるんですね。

高垣 そうそう!それこそはるちゃんはあまり気にせずに先に進めてるなとか、愛生は飲み込みつつちゃんと前を見られているなとか。でも私はまだ引っかかってるなという部分があるときに、美菜子に話すと「こういう見方もあるよ」というところまで連れて行ってくれる。

――その関係性は、今回の共同での物作りにおいてはいかがでしたか?意見は合いやすいのか、対立しながら話し合うのか。

寿 対立はまったくなくて、「こう感じてるから今作詞をするのは難しいな」「どうやってこれを書いたらいいか悩んでる」というようなことを、それも彩陽にだから全部一旦説明しようって。彩陽なら聞いてくれると信じて。だから逆に彩陽が書いてくれたものが一番いいのは大前提で、それを受けて「だったらこういうのも好きだな」とか、想いを素直に伝えられました。

高垣 ハッキリ言ってくれるからね。歌詞を投げたときにも「これだと別の意味にも受け取られちゃうかも」とか指摘してくれて、そのうえで一緒に違う言い方を考えてくれたり。共作の面白い所でしたね。そもそも今回コラボ楽曲を作ろうとなったのもお互いにソロアーティストデビュー15周年で、お話をいただく前に私たち勝手に「もしかしたらウチらでコラボからのツーマンライブあるんじゃない!?」「ていうかやりたいよね!?」みたいに話していたんですよ。

寿 そうそう予言してた!

高垣 今年の年明けくらいにそんな話をしていたら、すぐあとに本当にマネージャーさんから連絡が来て。

寿 話してた1週間後とかですよ。びっくりして鳥肌立った。

高垣 ソロアーティストとして同じ年にデビューして、私が7月で美菜子が9月だから時期も近くて、ディレクターも一緒。愛生とのコラボのときも安心感しかなかったけど、美菜子も頼り甲斐ありまくる!!と思いましたね。今回は自分たちで作詞をしたので、自分たちが動かないと進まないというのがあって。美菜子が細かい所まで確認して進めてくれるから、「私こんなことまで気にしたことなかったな」って気づくことも多かったです。「いつまでに打ち合わせをして、この週までに歌詞を上げて、この週で直して」みたいなスケジュールも一旦全部美菜子が組んでくれて頼もしかった。

寿 ワンコーラスはここまでに上げる、とかね。

――ワンコーラス分の歌詞のような過程の締切まで細かく決めたんですか?

寿 はい。そのうえでここまでにフルコーラス分を書いて、みたいに。

高垣 そもそも私はソロの10周年のときに書いた「Dear One」以降作詞してないんです。でも美菜子が最近の自分のEPでもたくさん作詞をしていたことは知っていたし、「美菜子、2人で書くって言うかな……」と思ってはいたんです。でも私は自信がないから「2人を知る人に客観的に歌詞を書いてもらうのもアリかな?」って打ち合わせで提案したら、「いやそこは闘おうよ」って美菜子が。

――逃げの選択は許されなかった。

高垣 はい(笑)コラボ曲のコンセプトを決めるときに、美菜子が「私たちってファイターだよね」って言ってくれて。努力して悩みながらも闘い続けている。挑み続けている。研鑽し続けている。2人の共通点として「常に闘っている」という部分を挙げてくれたんですよね。

――チャレンジすること自体が曲の根幹ですもんね。

高垣 それに「1人じゃないから大丈夫だよ」って言ってくれて。私は弱気になってたんですけど「逃げんな!」と背中を押された感じです(笑)。

寿 だってファイターだよ!ってね(笑)。

――寿さんの中で自作詞は当然という感じだったんですか?

寿 ほかの方に書いてもらうパターンも考えはしてみたんですけど、そこまでの打ち合わせで楽曲を藤田淳平さんに激しめのものを書いてもらうところまで決まっていたので、ワードは強めになるだろうな、そして私たちの生き様に近い形の歌詞になっていくと思ったときに、ズレがないものにしたいとなるとやっぱり自分たちで書いたほうがいいんじゃないかって。自信がないとは言うけど彩陽が書いた歌詞も見てきたし、「あぁ〜〜!」って言いながら最後にはきちっとやり切るのが彩陽なので。

高垣 過去には自分も泣きながら書き、そして最終的に心配させすぎてマネージャーを泣かせたことがある(笑)。

寿 そういう彩陽を知ってるから何ら心配はなかったです。説得に成功したって感じでした。

高垣 私もそう言われたら「そうか……確かに……」ってなるから。

寿 マインドコントロール(笑)。

高垣 美菜子が「一緒に」って言ってくれるのが本当に心強かった。

寿 1コーラスは楽曲打ち合わせの1ヵ月後には上がってたんですよ。

高垣 だから「共作していく方法とか、詞の構成を先に決めよう」って私が提案したら、美菜子は「フルが来てから考えたい」って。そういうところも違いがあって面白かったですね。でもとりあえず2人で一緒にどんな歌詞の方向性にしていくか話そうとなって。美菜子の家に集まって、美菜子の手料理を食べながら。何かの参考になるかもって録音しながら「これについてどう思う?」みたいな深い話をして。そのときの会話が結構土台になってるよね。

寿 ワードのヒントを集めて、そこから歌詞に入れ込んだこともあるね。

――ひとつ話は戻るんですが、作曲が藤田淳平さんに決まったのはどういった経緯で?

寿 これは私が最初に藤田さんがいいんじゃないかと提案しました。どなたに依頼するかを考えてるときに、彩陽の楽曲をいっぱい聴いてクラシカルな感じがいいのかアニソンにも通用するロックな感じがいいのか、どういう塩梅がいいかを考えていたんです。彩陽からも私のダンサブルな面を出す楽曲のアイデアをもらいみんなで悩みながらも、やっぱり藤田さんだと。藤田さんの楽曲って彩陽の元々あるいいところと、チャレンジしてるところの両方が入っている印象があって。藤田さんならどんなジャンルでも、私と彩陽の歌声がユニゾンでもハモっても特徴的に聴こえるように作ってもらえるんじゃないかなと思ってお願いさせてもらいました。

――そのあとどんなオーダーをして今回の楽曲に繋がったんでしょうか?

寿 最初の打ち合わせで藤田さんにお願いすることが決まって、そのあと一緒に話し合う場を作ってもらったんです。それぞれが考えていることを伝えて……めちゃくちゃ優しく聞いてくれたよね。

高垣 うんうん。すぐに楽曲を想像してくださったみたいで。私たちのことをわかってくれてましたね。

寿 私はそこで藤田さんとはじめましてだったんですよ。もちろん彩陽の曲も聴いているし、間接的には知っていたんですけど。たくさん話して、藤田さんからも「そんなに色んなことを考えているんですね」って言っていただけて。じゃあそれでいいのかな、私たちがいっぱい考えてきたことをそのまま言葉にしたらいいんだなって少し自信になり。じゃあやっぱり歌詞は私たちで書こうって決心できました。

――なるほど。詞先ではないまでも、藤田さんに最終的にこういうことを伝える曲になるというイメージが共有できていたんですね。

寿 しかもその時点でツーマンライブのバンドメンバーが決まっていて、バンマスがベースの山田章典さんになることも決まっていたので、ベースが響くような曲を作ってほしいということも伝えました。

――そんなにも具体的にツーマンまで見据えて作られているのはかなり計画的ですね。

高垣 今言った藤田さんへの要望をまとめて出してくれたのは、ほとんど全部美菜子です(笑)。あと私たちの共通のディレクターさんが、メタル的なハードなサウンド感もいいんじゃないかと提案してくれて。周年曲ってバラードだったり感謝を伝えるためのキラキラした方にも振れるんですけど、もちろん感謝を込めつつ「私たちはファイター!」という強い方向に進んでいきました。

――感謝が軸ではないですが、お2人がなぜ15年後の今もここに立っているのかの理由が伝わる曲になっていますよね。それが聴けるのはファンの皆さん的にも嬉しいことなんじゃないかと。

寿 だといいですね。ファイターなりの想いをいっぱい詰め込みました。

手を取り合って泣いた日を歌に――思いを込めた「Beyond Days」

――実際の作詞作業はいかがでしたか?

高垣 これが怖くて……。

寿 えぇ!?(笑)。

高垣 フルコーラスの音源が上がってきて、まずは美菜子がどちらがどの部分を書くかをざっくり分けてくれて。大体いつ頃までにワンコーラス分に歌詞をつけて、みたいな計画を立ててくれたんですよ。その話をした夜に、ベッドの中でスマホを見たら「イントロとサビ考えてみたよ」って届いてて。「えぇっ!?怖い!!」って飛び起きて(笑)。

――しごできが恐怖に繋がることがあるんですね。

高垣 申し訳なくて。私なんにもしてない!って。やばい、このスピードで進んでくんだって思ったら、恐ろしかったですね……。

――4人ユニットではなく一対一での作業だからこそ感じる仕事の仕方の違いですね。

高垣 予想はしてたけどそれ以上でした!しかも自分が思うように時間を使えない日常生活にフラストレーションを抱えている時期だったので、余計に焦っちゃって(笑)。

寿 申し訳ない……(笑)。

高垣 いやいや!誰かが進めないと進まないし、まずは美菜子が書いてくれたサビに向かう言葉に繋げばいいんだって指針になってありがたかったです。

――寿さん的には楽曲を聴いてインスピレーションでスラスラ書けてしまった感じですか?

寿 そうですね、曲を聴いてイメージが湧いたというか。スラスラという程ではないんですが、「これしかない」という方向性で。まだ仮ではあるものの「こういうことを歌いたいってことであってるよね?」という意味で私は投げたつもりだったんですが、ここまで脅かしているとは(笑)。

高垣 ワァーー!!ってなったよ。(笑)

寿 ご飯を食べながら話したことをまとめると、こんなイメージであってるよね?という確認のつもりだったんですけどね。

高垣 最初に上がってきたものの精度が高過ぎて、やっぱこの人すごいわって。これは追いつけないかもって思って……(歌詞カードを見ながら)「追いつけない」。

――その夜の気持ちがそのまま歌い出しの歌詞に!?

寿 「追いかけても 追いつけない」(笑)。

――周年曲には珍しく、1番AメロBメロの流れは抑圧に対する感情じゃないですか。「それに対してどうしてきたか」と展開していきますが、お2人が表現するものとしては意外性がありました。

寿 そうですね。周年という部分にはあんまりとらわれてないと思います。最後の“We’ll sing for you Staying by your side”に一番思いは込められていて。私たちの軸になる言葉だし、これまでもみんながいたから歌えてきたし、これからもみんなの側で歌い続けるよ、というのが15年の歩みの結論なのかなって。

――最初のお2人の関係性についての話で出てきた、小さな躓きでも見過ごさずにきたというのがそのまま1番の歌詞に反映されていますよね。

寿 そうなんです。だからその加減も悩ましくて。

高垣 音のハードさにも引っ張られる時もあり、歌詞を見たディレクターさんから「これは暗過ぎじゃない?」って言われたり。

寿 救いがない感じになるかならないかの瀬戸際を狙う言葉選びは悩みどころでしたね。沈みかけているのか、もう沈んでいるのか。

高垣 私たちって元々声優のオーディションを受けつつも、歌というものに対して特別な思いを持って事務所に入ってきていて。歌をいつか歌いたい、アーティストデビューも夢としていたけど、それぞれのタイミングもあって、私と美菜子はスフィアを始めたあとにソロデビューをしているんです。ほかの2人と比べると少し時間が掛かっていて。お互いに「ここでデビューできるかも」と期待したら「やっぱりご縁がありませんでした」とか……。上手くいかない経験があったりして。そういう悔しさやもどかしさを分かち合った瞬間があるんです。事務所からの帰り道、2人で一緒になって。みんなでいるときにその話をすることはないけど、「実は今結構悔しい」みたいな気持ちを吐露したら「一緒だよ」って言ってくれて、2人で手を取り合って頑張ろうって泣いた日があるんです。その日がソロデビューするまでの力になっていたから。1人じゃないって思えたし、悔しさを分かち合えたから。だから私のデビューが決まって美菜子も喜んでくれたし、美菜子のデビューが決まったとき私もすごく嬉しかったし。夢への重みを分かち合ったから、相手の夢が叶うことが自分の夢にもなっていたんです。そんな2人が一緒に15周年を迎えられて、一緒に何かを作るという、そこに自分はすごく趣があったんです。今回のジャケットはその日の私たちを描いてもらってます。

寿 それを今の私たちが見ているっていう構図にしてもらいました。写真風イラストの中の服装はそれぞれのデビューシングルの格好にしていただいたんです。

高垣 あの日の再現を今の私たちが実写でやるのは少し違うなとなって。私たち的には聖地みたいな場所があるので、実際にそこで写真を撮ってそれをイラストに起こしてもらいました。分かち合ったあの日があって、悔しさとか、叶わないことを叶えるために頑張るとか、そういうキラキラしただけじゃないものが私たちの力になっていたから。だから1番の歌詞は自分の中の葛藤が多くなりましたね。

――1番までで抑圧とそれに対して闘うと決めるところまでが描かれたうえで、2番以降が共に並び立つ者としてのお互いへのリスペクトが書かれていますよね。

寿 すごい!伝わってる!

高垣 嬉しい!そうなんです、お互いのことを書こうってなって。だから1番と2番で結構視点が変わるんですよ。

――今の2人に辿り着いた感じがしますよね。こちらのパートの作詞はいかがでしたか?

高垣 照れ臭かったよね。

寿 お互いの好きなところを書くからね。

高垣 こっちが相手の好きなところとかすごいなって思う部分を書く分には色々浮かぶんですけど、今回の作詞の作業の中で「何パターンかあるんだけどどれがいいかな」って相談しあうことが多くて。相手に投げて意見をもらって決める場面が多かったんですけど、私について書いてくれている詞がいくつも届くと全部恥ずかしくて(笑)。なんて返したらいいかわかんないんですよ!

――案として複数種類の「自分褒め」が来るんですもんね。

高垣 そうそう!「あ、ありがとう……」しか言えない。「どれも嬉しい!」ってなっちゃう(笑)。

寿 彩陽が結構「美菜子にはこういうイメージがあるからこの言葉を入れたい」が明確にあったりしてね。

高垣 「好奇心」は絶対入れたい!とかね。「踊る」とか「躊躇わない」とか。

寿 めちゃくちゃ強くイメージを持ってくれていて。私は曲と彩陽を重ね合わせたときに思い浮かぶ言葉を選んでいたので、彩陽の言葉選びを見て「そんなに私のことを思っていてくれるんだ」って嬉しかった(笑)。

――自分が書いたパートで特に気に入っている部分などはありますか?

高垣 1Bの“重なる手のひら 分かち合えたから ここからまだやり直せるよ”かな。実際に手を取り合って泣いたあの日のことは絶対に入れたいと思っていて。パート的にはここから初めてハーモニーが重なるんですよ。だから歌詞とパート割りの意味が繋がるからここは「重なる」を使いたかった。あと「やり直せる」のというのは……美菜子の趣味が陶芸なことから。

――それは意外な所からのアイデアですね。

高垣 陶芸って焼くまでは、ほぼ出来上がっていても最初から壊してやり直せるって話を聞いて。美菜子が「陶芸ってやり直せる所が好きなんだよね」って言っていたのが印象深かったんです。私は「もうだめだー!」ってなることが多いんですけど、美菜子と一緒だったらやり直せるかもって。そう思えたら強くなれるかもって希望が見えたので歌詞に入れました。

寿 ゼロからでも、途中からでも陶芸はいけるんですよ。私個人的には、“掻き鳴らす 叫びたい情熱も恐れも携え 明日を迎え撃てばいいじゃない?”からの流れがお気に入りですね。ここは彩陽を怯えさせるほどの早さで書いた初稿そのままなんですよ。結局こういうことなんだよな、みたいな。怖いとか、不安とかがあって、やる気ももちろんあるけど尻込みしそうになるとき。それでも「明日を迎え撃てばいいじゃない?」という言葉がすごくしっくりきていて。ディレクターさんからは2、3回「迎え撃つ」はちょっと強いんじゃないかって言われました。でも「いやここは譲れません!」って。

高垣 「私もこれがいいです!」って。

寿 これ以外はないですって言い続けて受け入れてもらいました。そのあとの“We say “you’re not the only one.””も、ほかの英詞もそうなんですけどすごくハマりがよくて。“Where you are You shine more”も彩陽のデビューシングル「君がいる場所」と私の「Shiny+」をイメージして書いたものだったり。“We’ll sing for you Staying by your side”も本当にそういうことだよなって気持ちが込められたのでよく書けたなと思いますね。

――周年曲に固執せず単体の楽曲として成立したうえで、掘り下げれば掘り下げる程たくさんの文脈が込められている曲ですよね。

高垣 そうなんです。コラボだから出来た楽曲だと思います。

――“明日を迎え撃てばいいじゃない?”は掛け合いから合流してハーモニーになるパートなので、お互いが信頼して背中を任せ合って闘っている感じがしますね。

寿 本当にそう。彩陽に「掻き鳴らす」って絶対言ってほしくて。藤田さんに激しい曲をお願いしたのにも通じるんですけど、彩陽の魂の叫びの声が聴きたかったんです。彩陽が言わなさそうなことを言ってもらう、私の理想を叶えてもらったパートでした。

次ページ:互いへのリスペクトに満ちた同時レコーディングと、15年分のモチーフを散りばめたMV

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