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INTERVIEW

2025.11.21

スマートフォンゲームアプリ『転生したらスライムだった件 魔王と竜の建国譚』の主題歌第五弾「Glitter」をデジタルリリースした寺島拓篤。2026年2月にTVアニメ『拷問バイトくんの日常』エンディング主題歌「明日天気になぁれ」のリリースも発表されたばかりの彼に、楽曲制作の裏側や作品に対する思い、声優でもありアーティストでもある自身の活動の根底にあるものについてじっくり語ってくれた

スマートフォンゲームアプリ『転生したらスライムだった件 魔王と竜の建国譚』の主題歌第五弾「Glitter」をデジタルリリースした寺島拓篤。2026年2月にTVアニメ『拷問バイトくんの日常』エンディング主題歌「明日天気になぁれ」のリリースも発表されたばかりの彼に、楽曲制作の裏側や作品に対する思い、声優でもありアーティストでもある自身の活動の根底にあるものについてじっくり語ってくれた

TVアニメ『転生したらスライムだった件』の第1期OP主題歌「Nameless Story」から実に7年。その歌声で物語と視聴者とを繋いできた寺島拓篤が、スマートフォンゲームアプリ『転生したらスライムだった件 魔王と竜の建国譚』(配信:株式会社バンダイナムコエンターテインメント)の主題歌第五弾「Glitter」を歌う!新たな幕開けを迎えるゲームを彩るきらめく一曲について聞く。

INTERVIEW & TEXT BY えびさわなち

『転生したらスライムだった件』と寺島拓篤の歴史を振り返る

――最初に『転生したらスライムだった件』(以下『転スラ』)の主題歌を歌ってから7年。寺島さん自身の楽曲と、熊田茜音さんの楽曲の作詞を担当された分なども含めて、ここまで8曲。今回9曲目となります。ずっと1つの作品の歌詞を書いてきたからこそ感じる『転スラ』の魅力と、気持ちの変遷を教えてください。

寺島拓篤 毎回、少しずつ視点を変えながら『転スラ』と向き合ってきたのですが、中でもアプリゲーム『転生したらスライムだった件 魔王と竜の建国物語」(以下『まおりゅう』)は、『転スラ』の本筋のラインとも違う魅力を既に発揮している、ある種独立した面白さがあるくらい広がっているコンテンツだと思っています。それはもちろん土台に『転スラ』のストーリー展開の面白さやキャラクターの魅力があるからだと思います。楽曲担当として歌詞を書いている身からすると、書けることがいっぱいあることがすごいと思います。「スライムである」ことが一番目立つトピックですけれども、それだけじゃなく、いろんな柱があるところが面白いです。

――そのなかでは同じく『転スラ』で主題歌を担当するR・O・Nさんとの共作もありました。ほかのアーティストと制作することで、寺島さんの『転スラ』への解像度などに影響はありましたか?

寺島 「Trinity」はR・O・Nさんが先に歌詞を書いてくださって、空けてくださった部分に僕が歌詞を書いていくという共作だったのですが、僕はこれまでずっと独自の感覚で作詞をやってきたので、ほかの方がどういうふうに歌詞を作っているのか知らなかったんです。自分とは違う温度感や言葉選びといったものを具体的に感じることができたのは大きかったです。どうしても自分の視点に固まってしまいますから、「こういう言い回しもありなのか」という、自分の中にはなかった表現を聴き手として耳にするのではなく、作り手として横に並んで見ることができたのはありがたかったです。どこから見ても面白く感じるポイントがある作品ですが、見方だけじゃなく「読後感をどう伝えるか」という表現に繋がりましたし、影響を受けたからこそ出たものもあったと思います。ただ、解像度に変化があったというよりはアウトプットするときにどう出すかの変化でした。作品を見るうえでの解像度の‟角度“のようなもので、R・O ・Nさんと共作することで、また違う視点で物語を見て、それをどう表現するかという新しい力を得たと思います。

――『転スラ』の作詞で意識するのはどんなことですか?

寺島 まずはエピソードや一番トピックになるものを抽出するところから始めています。今回に関しては「新たな幕開け」というテーマと、作中でもデザイン的なキーになっている「光の三原色」をモチーフにしました。今までも“精神的な光”を描いてきましたが、今回はもっと物理的かつ科学的な光を軸に表現したい思いがありました。『転スラ』のいいところは、主人公が元々は僕らがいるような、こちら側の人間でバリバリの社会人だったので、現実的なことを描いても不自然にならないことですよね。ファンタジーなのに我々の世界とも繋がりがあるという大前提があるので、僕らが見ている視界を共有できるようなリアルな歌詞を書いても浮かないのはいいなと思います。ある意味地に足の着いたメッセージを描けるんです。

――『まおりゅう』では言葉選びなどでアニメシリーズの楽曲と変えている部分はありますか?

寺島 作品のキーワードとして「鏡」があったので、それをなんとか入れようと思っていました。そこから物語が展開していくうえで大切なものを探すのは面白いのですが、逆に「鏡」が縛りになってしまって難しいと感じることもありました。ただ、今回は今までのものを結集するような感じだったので、もう一度これまでのことを振り返って、作ってきた作品を見つめ直したのですが、それが鏡を見るという行動と重なる部分もあって、より自然に書くことができました。

「キラキラ」を意味する「Glitter」というタイトルに込めた思い

――新たに『まおりゅう』を彩る主題歌「Glitter」ですが、どこに視点を置いて作詞をされたのでしょうか。

寺島 一番は「プレイヤーに寄り添う」こと。ゲームの中からゲームのプレイヤーのことをちゃんと観測しているリムルのような感覚もありますが、歌詞の中でも‟まだ見ぬまっさらな明日を君と迎えに行こう“というところの「君」はプレイヤーのことでもあるし、逆にプレイヤーから見たリムルのことでもあるように感じるんです。でもリムルの視点でもあるので、プレイヤーから見る仲間たちの表現でもあるし、制作側からプレイヤーの皆様へ、という視点でもあるように感じています。でも突き詰めていけば、ゲームをプレイするうえで取り巻く一人ひとりと共に先へ行こうという視点なので、やっぱり「プレイヤーのことを見るリムル」が一番近いのかなあとも思います。

――“リムルに近い”とのことですが、それは「Glitter」に限ってのお話ですか?以前は明確にリムル視点で書かれた歌詞もあったかと思いますが……。

寺島 ひょっとしたら書き上げてから気づいたかもしれないです。「新たな幕開け」というキーワードは非常に大きなフックだったので、点というミクロなものではなく、もっと大きな視点だったんですよね。だから自分でも気づかないうちに出来上がっていた視点なのかなと思います。これまでのような「絶対にこの人の視点で最後まで書き上げるんだ」という僕の細かいこだわりを取っ払うことができたからこそ、今までにない書き方ができたのかもしれないです。

――これまでの主題歌の要素がちりばめられていました。作詞で一番意識されたのはどんなことですか?

寺島 メロディの中に‟光のtrinity“という言い回しがハマる箇所があったんです。前回の楽曲のタイトルだと気づいたときに、新たな幕開けにするなら今までの曲を全部持っていけたらいいかもと、自分の担当した曲に限らずできるだけ今までの『転スラ』を彩った楽曲のタイトルを引き連れていきたいと考えました。リムルもそうなんですよね。いろんなものを飲み込んで、全部を連れていくんです。飲み込まなくとも仲間と手を取り合って、いろんなものと一緒に先へ進んでいくのがリムルの素晴らしさだと思うので、僕も描いてきた楽曲のタイトルを引き連れていきたいと作詞に取り掛かったんですが、全部はムリでした(笑)。全部は入れられないなかでTVシリーズや映画の中からどれくらいのこだわりで引っ張っていくかを自分の中でケリをつけるのが一個大きなところだったと思います。今までやらなかったような言葉の抜き方をした実感のある作詞でした。

――その「Glitter」のトラックの印象を改めて教えてください。

寺島 以前にも『転スラ』で光をテーマに曲(「ヒカリハナツ」)を書いたこともありましたが、同様にすごく前向きでポジティブでドラマチックな雰囲気もあって、ある種近いところにいる楽曲になりそうだなと思いました。歌詞については、さっきお話ししたようなR・O ・Nさんとの制作で歌詞の書き方や視点をちょっと変えることができた経験があったので、プレイヤーの皆さんが自分のことのように思えるような等身大の言葉を使った言い回しを入れられないかと考えながら作ったんです。サビがすごく難しかったので、どういうふうに書くかは悩みみました。でも、トラックは新しい幕開けを感じる清々しさと開けた感覚、それにワクワク感や今まで積み上げてきた雰囲気もある、すごくいいものになったという実感があります。

――「光」をモチーフにした楽曲はこれまでにも作っていますが、今回はどう表現しようと考えましたか?

寺島 悩みました。アニメ表現としての「光」は、発光しているところから色の差で見せる光などさまざまな表現方法があるんですけど、音に関しては、“新たな幕開け”ですし、ソーシャルゲームというジャンルにおいてさらに格が上がった感じが出せたらいいなと思っていました。作中でリムルがどんどん進化して魔王になるように、『まおりゅう』においても新たに出てきたキャラクターがどんどん新しい面を見せるように、楽曲でもストリングスをきれいに使うことでちょっと高尚なイメージが出せるのではないかと考えて。それを明確に入れるためにはどうしたらいいかなと考えながらアレンジのオーダーをしていきました。

――そんな曲のタイトルを「Glitter」としたのはなぜですか?

寺島 僕、「Glitter」という言葉が好きなんです。キラキラしていてかわいいイメージもありますが、今までもキラキラ系のワードは何度か選んで、使ってきているんですよね。例えば「shining」とか 「PRISM」とか、そうしたキラキラ系の言葉は限られているので、いつどのカード(単語)を切るかという感覚でしたが、今回は小さな光の粒がたくさん集まったことで映し出される人や景色を彩る要素になっているスマホの液晶画面からタイトルが浮かびました。1つだけでは見えないけれど集まることで輝きを放つ液晶画面の光は、プレイヤー一人ひとりの輝きと同じだということを表すなら、光の粒が集まってキラキラしている「Glitter」が一番適切だなと思って決めました。パーッと光を放っているというよりは光の粒がキラキラしている感じがぴったりだなと思い至ったんです。

――完成した今の感想をお聞かせください。

寺島 歌っていて「難しい曲だな」という感想ではあったのですが、それ以上に仕上がりがすごく好きで、移動中などの時間に自分でもかなり聴いています。自分の曲を普段から聴くことはありますが、「Glitter」は単純に好きな曲だなと感じているのもあって、とにかく頻繁に聴いていますね。すごく好きな仕上がりになりました。

――特に気に入っているところは?

寺島 1番サビの‟朝焼けを乱反射して君を描け“というところは、すごく好きな部分です。視覚的な話ですけど、この世にあるものはすべて光が反射することで姿形が見えるように出来ているのは常識ではありますが、毎朝、朝陽が自分の体に当たって、また新たな自分を形作ってくれているのだということをきれいに描けたなと感じているんです。しかも音としても‟乱反射して”の部分がメロディにハマりきっていない感じがしていて……。そこがむしろ「乱反射」の言葉の表す通り、1つの光になっているのではなくポリゴンのような多面的な光になっていると感じられるので、とても好きなところです。

――ローンチから4年となったこの『まおりゅう』を「Glitter」でどんなふうに彩りたいですか?

寺島 「今までの物語を引き連れて新しいところへ行く」という美味しいところ取りみたいなものを狙いました。

――でもずっと主題歌を歌っている寺島さんが歌っているからこそ、アニメで描かれてきたリムルたちの物語から地続きであるという感覚がありますよね。

寺島 それは嬉しいですね。最初にアニメのオープニングをやらせてもらったところから、僕自身の歌が『転スラ」のエッセンスになっているのだとしたら、寺島拓篤というアーティストに新たな価値が生まれたと思いますし、本当に感謝です。「新たな幕開け」という役割を果たす曲が出来たと思っているので、実際に実装されたときには、皆さんの感想も聞いてみたいです。

――寺島さんのライブにおいてはどんな立ち位置になりそうですか?

寺島 実は“光の曲”はライブのオープニングにもできるし、アンセム的にエンディングにも持っていけることが強みだなと思うんです。『ELEMENTS』(2024年発売のコンセプトEP)を経験しているから属性で話をしますが、光属性の曲はそういう二面性を持っていると思っています。だからライブの真ん中で歌うよりも、どちらかというと最後に持っていきたいですね。アニメのエンディングもそうですが、次回に繋ぐブリッジにもなっていると思うので、そこで新たな扉を迎える、まっさらな明日を迎えに行く、そんなメッセージとともに次のライブをぼんやりとでも約束できる歌になる気がするので、ライブの最後にぴったりなのではないでしょうか。

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