TVアニメ第2期の放送終了から約4年半の時を経て、この秋、ついに公開された劇場版『ゾンビランドサガ ゆめぎんがパラダイス』。佐賀を舞台にご当地アイドルとして活躍するゾンビィたちの物語は、本作で地球を越えて宇宙にまで飛び出し、空前絶後のスケールで話題をさらっている。そんななか、リスアニ!ではフランシュシュのキャスト6名への直撃インタビューに続き、本シリーズの音楽プロデュースをTVアニメ1期から一貫して担当する、SCOOP MUSIC代表の佐藤宏次への取材を実施。今回の劇場版のために制作されたフランシュシュの新曲4曲――「またたく宇宙(ソラ)に憧れて」「今を未来をありがとう」「今日が歴史に残るなら」「悠久ネバーダイ」の制作の裏話について語ってもらった。
※本記事には劇場版『ゾンビランドサガ ゆめぎんがパラダイス』のネタバレとなる情報が含まれています。
INTERVIEW & TEXT BY 北野 創
――今回の劇場版に登場した新曲は、どのような発注から制作がスタートしたのでしょうか。
佐藤宏次 『ゾンビランドサガ』の音楽制作に関しては、TVアニメ第1期の頃から毎回同じ行程で、基本的にまずシナリオ、その後に音楽メニューをいただき、それをもとに皆さんと打ち合わせをして内容を詰めていく流れです。作中のどんな場面でどんなことをやりたいか、という意向は監督やプロデューサー陣が思い描いているものがあるので、そういった思いの丈を直接聞いたうえで、それを噛み砕いて音楽的なものに落とし込んでいく。例えば「またたく宇宙(ソラ)に憧れて」の場合は、宇田総監督のお話から「ワンフレーズを繰り返すような曲」がいいんだろうなと解釈して、それを作家と共有して制作を進めました。
――「またたく宇宙(ソラ)に憧れて」は、劇場公開に先駆けて本予告PVで使用されたほか、劇中では序盤の佐賀万博の視察シーンでBGMとして流れ、SAGAアリーナでのフランシュシュのライブシーンでも歌われました。
佐藤 これは“佐賀万博のテーマソング”として制作したもので、ライブシーンで歌う楽曲に関しては途中で変更もあったのですが、この曲で締め括るということは、多分、主要スタッフの全員が共通認識だったと思います。私の中では「FLAGをはためかせろ!」(TVアニメ『ゾンビランドサガ』第12話挿入歌)や「追い風トラベラーズ」(TVアニメ『ゾンビランドサガ リベンジ』第12話挿入歌)と同じ立ち位置の曲というイメージで作っていて。要は“ライブの最後に歌う曲”ですね。これは自分の好みでもあるのですが、やっぱりどうしても明るい曲で終わりたいんですよね。最後は明るい曲で泣きたい。
――わかります。
佐藤 これは僕の中でのアイドル像みたいな話なのですが、ライブの現場で明るい曲を歌っているのを見て泣けるのが、エモーショナルで一番いいなと思っていまして、第1期の頃から、ライブシーンでは明るい曲を最後に置くように意識しています。
――この楽曲を制作したのは、作詞が古屋 真さん、作曲・編曲が加藤裕介さん。『ゾンビランドサガ』シリーズではお馴染みのお二人です。
佐藤 これも毎回同じやり方なのですが、まずシナリオを送って、「この場面でこういう風に使いたい」という情報と、こちらで考えた音楽的なアプローチを各作家に説明したうえで一度作ってもらう、という流れでした。二人とも作品のことはわかってくれているので、特に歌詞に関しても特別なことは何もしていません。
――加藤さんには「明るい曲調」や「リフレインするメロディ」といったイメージをお伝えしたのでしょうか。
佐藤 もっと具体的な話、例えば「平メロでこうして、サビでこうしたい」というような話もしています。ただ、それがどう落とし込まれるかは加藤のクリエイティブに任せていますね。そこからメロディをシンセで弾いたラフ音源をもらい、「ここをコーラスにしよう」とか「もっと音を被せていこう」とお互いに意見を出し合って、最終的にまとめてもらいました。彼とは付き合いが長いので、当然の様に私の想像を超える曲が出来上がって来るとは思っていました。
――古屋さんの歌詞についてはいかがでしたか?
佐藤 各楽曲に関しての「何を言いたいか」と「何を言ってはいけないか」だけ、監督陣からイメージをもらっていたので、それを共有しつつ、古屋は誰よりも作品の肌感がわかっていると思うので、それ以上の細かい話は特にしていません。具体的には、もう1年以上前の話なのであまり覚えていないのですが……(笑)。ただ、「またたく宇宙(ソラ)に憧れて」に関しては、立ち位置上“佐賀万博のテーマソング”という建て付けなので、「みんな佐賀に来てね」という広告的な音楽を目指しました。なので2番は佐賀の地名や名物を織り込んだ歌詞になっていますし、“佐賀から宇宙へ”という佐賀万博のテーマも絡ませています。
――“永劫未来は100万カラッツ”というフレーズに唐津(カラッツ)を忍ばせているところが上手いなと思いました。
佐藤 そこはもう流石!古屋 真!と私も思っております。直前に「すきっちゃん!からチュッ」(2024年12月に配信リリースされた佐賀県唐津市とのスペシャルコラボソング)を作っていたので余計に(笑)。
――“佐賀万博のテーマソング”として作られた一方で、映画のライブシーンではドラマも加わって感動を呼ぶ作りになっていました。これは楽曲制作時から意図していたことなのでしょうか。
佐藤 ライブシーンの最後に歌うことはわかっていましたが、正直、アニメがどのように描かれるかは制作上あまり考えていませんでした。ただ、歌詞に関して古屋はある程度そこも想像して書いているとは思います。シナリオを読んでいますからね。ただ、時間軸的にはあくまでも、たまたま佐賀万博の曲をあのタイミングで歌ったら、ああいう出来事が起きた、というだけなので、それが発生することを前提に楽曲を制作する必要はなくて。その意味では、あのタイミングで歌われる曲が「またたく宇宙(ソラ)に憧れて」ではなくてもよかったんだと思います。そういう意味では意図していたという感じでしょうか。
――なるほど。楽曲自体はブラスを敷いた華やかなサウンドに仕上がっていて、フランシュシュの楽曲としては新鮮さを感じました。ゆうぎり役の衣川里佳さんはキャストインタビューで、本楽曲のことを「ゾンビィゴスペラーズ」みたいと言っていましたが。
佐藤 アハハ(笑)。とても良いところをついてくれてますね。確かにこの曲はゴスペルからの流れのR&Bですね。なので、この曲ではハーモニーをしっかり聴かせたいと思っていたので、キャストの皆さんは歌うのが大変だったと思います。
――本作のEDテーマにあたる壮大なバラード曲「今を未来をありがとう」も、古屋さんと加藤さんが作詞・作曲・編曲を担当しています。この楽曲はどんなイメージで制作されたのでしょうか。
佐藤 この曲に関しては、主にアニメーションプロデューサーの大塚 学(MAPPA)さんの想いがあったと思います。「宇宙が出てくるので壮大な曲にしたい」と。それと「雄叫びをワンポイントに入れたい」ともおっしゃっていました。結果、キー的な問題と、リリィならそこまで重くならなそうということで、雄叫びのパートは田中(美海)さんに歌ってもらって。でも、あのシャウトが入ったことで、良い意味でオマージュ感が強くなってしまったと思うんですよね。別にオマージュするつもりは毎回さらさらないんですけど(笑)。多分、映画館でこの曲を聴いた人は、頭にとある曲が薄々と浮かんだと思うのですが、それを言葉にするのはヤボかなと(笑)。
――はい(笑)。歌詞に関しても何か指定はありましたか?
佐藤 いえ、歌詞は完全にこちら側で進めました。これも練度の高い作品ファンの方なら「こういうことで作ったんじゃないかな?」と想像してくれるんじゃないかと思っているので、あまり明け透けにお話をしない方がいいかなと思っていて。ただ、間違いなくちゃんと何かしらの意味は込めて制作しています。だけど解釈は自由でいいと思っています。映画を観終わった後に「あの曲はこういう意味だったんじゃないか」とみんなで語ってもらえると嬉しいですね。その楽しみを我々が奪ってはいけないので。
――わかりました。しかし、フランシュシュの楽曲でここまでスケール感のあるビッグバラードは初めてですよね。
佐藤 そうですね。「光へ」(TVアニメ『ゾンビランドサガ』EDテーマ)をバラードと言っていいかはわからないですが、それを含めると「夢を手に、戻れる場所もない日々を」(TVアニメ『ゾンビランドサガ リベンジ』EDテーマ)、「カレーメシ」ならぬ「輝いて」があるので(笑)、これで4曲目なのですが、それらよりももっと壮大に、スケール感を大きくしようと思って作りました。フランシュシュは曲数が少ないので、1曲1曲、特にバラードは似たような感じにならないよう、より差をつけるようにしています。
――ちなみに「今を未来をありがとう」はオーケストラも入っていますが、オケは生演奏ですか?
佐藤 オーケストラでは無いですが、ほぼ生ですね。映画館の音響で楽しんでもらいつつ、ぜひCDとハイレゾでも聴いてほしいです。劇場は5.1ch、CDや音楽配信は2chなので、聴こえ方が少し違うはずです。もちろん5.1chもミックスしているエンジニアも2chと同じですし、こだわっているのですが、そもそも2mix(ステレオ)で成立するものとして作っているので、聴き比べてもらうと「あ、こうなっていたんだ」という発見があると思います。
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