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INTERVIEW

2025.10.22

【連載】ReoNa 3rdアルバム『HEART』リリース記念「リスアニ!’s Heart」第4回:Ryo’LEFTY’Miyata×ハヤシケイ×傘村トータ、ReoNaに託した自身の“ハート”を語るクリエイター鼎談!

【連載】ReoNa 3rdアルバム『HEART』リリース記念「リスアニ!’s Heart」第4回:Ryo’LEFTY’Miyata×ハヤシケイ×傘村トータ、ReoNaに託した自身の“ハート”を語るクリエイター鼎談!

ReoNaの約2年ぶり通算3枚目のニューアルバム『HEART』のリリースを記念した集中連載企画「リスアニ!’s Heart」。堀江晶太×冨田明宏による濃密な特別対談をお届けした第3回に続いての連載第4回は、ReoNaのデビューから楽曲提供を続け、『HEART』ではリード曲となる表題曲を手がけたハヤシケイ(LIVE LAB.)、その「HEART」のアレンジャーであり、異色を放つ「オルタナティブ」を書き下ろしたRyo’LEFTY’Miyata(以下、レフティ)、『HEART』には「生命換装」「オムライス」に加えて新曲「芥」を提供し、独自の感性でReoNaに寄り添い続けている傘村トータ(LIVE LAB.)の3人に、ReoNaへの想いと提供楽曲についてをたっぷりと語ってもらった。

また、本記事の公開と同タイミングで、レフティが提供した楽曲「オルタナティブ」のリリックビデオがYouTubeのReoNa公式チャンネルにて公開された。薄暗いレコーディングスタジオに置かれた水槽、ミキシングコンソールのメーターと鉢の中の魚以外は動きがない画作りのなか、曲に合わせて淡々と流れていくリリックが、楽曲のインパクトをさらに際立たせる映像に仕上がっている。ぜひ併せてチェックしてほしい。

■【連載】ReoNa 3rdアルバム『HEART』リリース記念「リスアニ!’s Heart」

【連載】ReoNa 3rdアルバム『HEART』リリース記念「リスアニ!’s Heart」

INTERVIEW & TEXT BY 阿部美香

ReoNaのもとに集まり、共鳴するクリエイター同士

――ハヤシケイさんと傘村トータさんは、ReoNaと同じLIVE LAB.に所属するクリエイターであり、これまでも数々の楽曲で、絶望系アニソンシンガー・ReoNaの世界を一緒に作り上げていらっしゃいますね。

ハヤシケイ はい。といっても、こうして面と向かって傘村さんとお話する機会は普段あまりないんです。そもそもボカロPとしての傘村さんは存じていましたが、その時から人物像を出さない人だったので、自分の中では結構“謎の人”で。メッセージ性の強い曲を書いている不思議な人という印象がありました。今は、同じLIVE LAB.で活動させてもらっていますが、不思議な印象はまだ続いているかも知れないです(笑)。

傘村トータ 僕もハヤシケイさんと直接お会いすることは多くないので、楽曲を通して存じ上げている感覚でした。お会いしてみると、すごく寡黙で繊細な方という印象です。

ハヤシ あまり人に心を開かないタイプなので……(苦笑)。

傘村 僕にとってはハヤシケイさんこそ不思議で謎です(笑)。

Ryo’LEFTY’Miyata

――レフティさんは、ハヤシケイさん作詞・作曲の神崎エルザ starring ReoNaの楽曲「Girls Don’t Cry」で編曲を担当されていましたが、ソロアーティスト・ReoNaへの楽曲提供は今回の『HEART』が初参加になりますね。

レフティ はい。なので傘村さんとはまさに今日がはじめましてで、お会いできて嬉しいです。

傘村 こちらこそ、光栄です。

――レフティさんとハヤシケイさんは、実はお付き合いが長いそうですね。

レフティ そうなんですよ。ケイくんとは世代も同じ。いにしえの話になってしまいますけど、お互いがボカロPをやっていた時代からの付き合いで。

ハヤシ レフティさんがやっていたバンドと一緒にライブをやらせてもらったりする機会もありましたね。

レフティ 実は、僕はケイくんに頭が上がらないんですよ。昔やっていたユニットの相方が“歌ってみた”を始めた時、ケイ(KEI)くんの「Hello, Worker」を僕がピアノアレンジしてカバーさせてもらったんです。その曲でフォロワー数がすごく伸びたんですよね。そこからちょこちょこ一緒にライブをやったりしていたんですけど、しばらくご一緒するチャンスもなく。なので去年の「Girls Don’t Cry」もそうですし、久しぶりにReoNaちゃんを通じて一緒に曲作りができ、クレジットに名前が並ぶのは感慨深かったです。

――お互いのクリエイティブには、どんな印象がありますか?

レフティ ケイくんは……さっき傘村さんが話されていたことにも繋がるんですけど、内面にある鬱屈としたものが現れている気がします。都度都度をアウトプットできる人は、想いを歌に込めたりしない。僕は何でも興味を持ってやってしまう方なので。

ハヤシ レフティさんは作詞も作曲も編曲も、何でもできますからね。

レフティ 体質の違いは感じますよね。

ReoNaチームの妥協なき楽曲制作、“音楽とはかくあるべき”という哲学

――ReoNaとのクリエイティブでいうと、お付き合いが長いハヤシケイさん、傘村トータさんが、これまで手がけた中で特に印象深い楽曲を挙げていただくとすると?

ハヤシ “最初”という意味で、やはり「SWEET HURT」ですね。当時は僕自身もメジャーシーンやプロの音楽の世界がわからない状況だったんです。それまではボカロPやバンドマンの延長で、趣味的に曲作りをしていたので、アニメソングを書くこともまだそんなに経験がないことでしたし、右も左も分からない中で、とにかく必死で書きました。

傘村 すべてが思い出深いのでとても難しいですが……今あえて挙げるとすれば「生きてるだけでえらいよ」です。ReoNaと種の部分から話しながら一緒に作った曲なので。自分自身にもこんな扉があるということを、発見できた曲でした。

ハヤシケイ

――ReoNaに自分自身を投影するような曲作りをされているんでしょうか。

ハヤシ 僕は、ReoNaの主題歌を書いているイメージが強いです。もちろんアニメタイアップの時は、作品という軸が1つあるのですが、もう1つの軸としてReoNaの存在そのものがある。それに対して自分がどんな曲を書くかな?というのを考えますね。

傘村 僕もそうです。ReoNaが歌うから意味のある曲にしたい。ReoNaとの初めましての曲は「unknown」でしたが、彼女のことをゼロから教えてもらいながら書いた時から、ReoNaというアーティストのタイアップのつもりで曲を作っているので、ケイさんと同じ認識です。

レフティ 僕も今回、初の楽曲提供に際して、ReoNaちゃんともスタッフの皆さんとも、じっくり話をさせていただいたのですが、ReoNaチームとしての哲学・思想をとても感じました。そういうしっかりした哲学を持って活動しているアーティストが、日本にどれだけいるんだろうか?と思うと、ReoNaチームの素晴らしさを実感します。だから僕も同じ方向を向いて取り組める。“絶望”だったり今回のアルバムテーマの“ハート”と自分の共通点を探して楽曲を作っていけるので、できたものは彼女の曲でもあり、自分の曲でもあるんですよ。特に『HEART』の制作では、“音楽はかくあるべきだ”と思う瞬間がたくさんありました。だからこそ、こうして1本線の通ったプロダクトが、ずっと生み出されているんだなと思いますね。

ハヤシ 確かにそうですね。“絶望”という大きな柱が1本立っているからこそ、迷わずにいられますよね。

傘村 そう思います。ReoNaがよく「背中を押さない、手を引かない」と言いますけど、僕も「不用意に、勝手に背中を押していないだろうか?」「無理矢理手を引こうとしてはいないだろうか?」と常に振り返りながら作詞をしています。元々自分が書いていた曲は“絶望”を歌ってはいなかったし、どちらかというと背中を押したい、手を引きたいタイプの人間だったので、ReoNaが大事にしていることを、こちらが崩してはいけない!と、いつも考えますね。

レフティ 僕も色々なアーティストさんと楽曲を作ってきましたが、“絶望”を歌う曲は初めての体験でしたね。でも同時に、“絶望”があるから“希望”もあると思うんです。そして誰しもが、そういうものを抱えているから、救いでもある。そういう表裏一体のメッセージがある気がします。

傘村トータ

――メッセージを共有するからこそ、ただの楽曲提供に終わらない深い関係性をReoNaチームには感じます。

ハヤシ おそらく、クリエイターが作詞・作曲を始める早い段階から、アーティスト本人が制作に関わってくる例って、とても珍しいと思うんです。

レフティ そうですよね!そして僕がめちゃめちゃ感じるのは、チームに流れる圧倒的な音楽愛ですね。一緒に作品を作っていて、この人たちは確実にミュージックマンだな!と実感する度に、喜びを感じてました。それこそこのアルバムでは、ケイくんが作詞・作曲、僕がアレンジをやらせてもらった「HEART」と、僕が作詞・作曲・編曲した「オルナタティブ」を、洋楽ロックが好きなら絶対に憧れるロンドンのアビーロードスタジオでレコーディングしましたが、普通……そこまでしないですよね?(笑)。でもそれを実現するくらい、音楽を突き詰めようとするチームの意志が、僕もすごく嬉しかったです。

ハヤシ 確かにReoNaチームにはそういう気風がありますね。ReoNaが届けるべきメッセージは何なのか?を、すごく考えて、音楽で創意工夫する。時に過剰かな?と思うくらい、本気度が違うというか。

傘村 なので、気持ちがいいくらい真剣にぶつかることができるんです。そして激しくぶつかったぶん、しっかりと返ってくる。かといって、すごく厳しいかというとそういうわけでもないんです。逃げたり、甘えたりすることも結構許してもらえてます(笑)。

――まさに“逃げて逢おうね”ですね。

傘村 そうですね。でも妥協だけは絶対に許してもらえない。このチームなら何があっても最後は絶対にいいものが出来上がる、という信頼感があるので、安心して音楽に没頭できます。

――そんな妥協のない音楽から生まれるアーティスト・ReoNaの魅力を、皆さんはどこに一番感じていらっしゃいますか?

ハヤシ やはりライブだと思いますね。声が圧倒的に強いというのが間違いなくあって、ステージで第一声を発した時に、空気が明らかに変わる。それは唯一無二と言っていいんじゃないでしょうか。

傘村 僕もそう思います。一時期、洋楽・邦楽を問わず、見聞のために色々なアーティストさんのライブを観に行っていた時期があるのですが、ReoNaのライブはその誰にも負けていない。

レフティ 僕もそれは今回のレコーディングで実感しました。ReoNaの歌声は空気を変える力がありますよね。

次ページ:「“HEART”とは何か?」から始まったアルバム制作と「HEART」

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