INTERVIEW
2025.09.24
2009年11月リリースの「only my railgun」以降、fripSideと『とある科学の超電磁砲』は長く蜜月の時を過ごしてきた。そのなかで生まれた数々の楽曲たちをコンパイルしたベストアルバム『とある科学の超音楽集 -A Certain Scientific Railgun:Music Chronicles-』がこのたびリリースされる。2代目ボーカリスト・南條愛乃時代のオリジナル音源によるDISC-1と現在の第3期fripSideによるセルフカバーによるDISC-2、およびインストを収めたDISC-3というまさにfripSideによる『超電磁砲』音楽の決定盤といえる本作について、そして第3期始動から3年が経過したグループの現在地について、コンポーザー/プロデューサーの八木沼悟志に話を聞いた。
INTERVIEW & TEXT BY 澄川龍一
――今回は9月24日にリリースされるベスト盤『とある科学の超音楽集 -A Certain Scientific Railgun:Music Chronicles-』について伺いたいのですが、まずはその前に8月に行われた“Animelo Summer Live 2025 ThanXX!!”(以下、“アニサマ”)についてもお伺いします。fripSideが出演された8月29日のDay1でfripSideは、黒崎真音さんのトリビュートパートにも出演されましたね。
八木沼悟志(以下、sat) そうですね。ああいう形で真音ちゃんと急なお別れになってしまって、僕とmotsuさんにとってはALTIMAでも一緒だったので、いずれしっかりとした形でどこかでやれたらいいなとは思っていました。それがこうしてゴーサインが出てやっとできたので、とにかくやれて良かったなと思っています。
――satさんにとって真音さんはレーベルメイトであり、ALTIMAのメンバーでもありますしね。またALTIMAが生まれたのも2011年の“アニサマ”。あの時に初披露した「I’ll believe」が聴けたのもグッときました。
sat そう。「『I’ll believe』だけはやらせてください」って僕から言ったんですよ。知名度的に「Burst The Gravity」の案もあったんだけど、やっぱりどうしても“アニサマ”では始まりの曲をやりたくて、そこは直談判させてもらいました。
――当日はものすごい盛り上がりでしたが、ステージ上の緊張感はいかがでしたか?
sat 緊張感はそこまでなかったかな? fripSideの2人(上杉真央、阿部寿世)はもちろんのこと、KOTOKOさんもmotsuさんも、真音ちゃんも僕の中ではミュージックファミリーの一員。そうしたなかでレーベルも含めて真音ちゃんのために何かできないかという思いを、“アニサマ”という場をお借りしてきちんと具現化できて良かったなとすごく思っています。
――とはいえ途中でmotsuさんも込み上げるものがあって、やはりエモーショナルな空間になりましたよね。
sat 長いキャリアであんなに歌詞を飛ばしたのは初めてな気がする。プロ意識の高い人なだけに僕もびっくりでしたよ。「あれっ、ラップしてないけどどうした?」って。そしたら泣いているから、こっちももらい泣きしちゃうじゃないですか。
――そうした感動的なトリビュートが真音さんの映像で締め括られた直後に、今度はfripSideのステージが始まったわけですよね。
sat あれね、お客さんも言っていたけど、僕らやってるほうも心が追いつかないままで。なんならfripSideのロゴムービーも10回くらいリピートしといてほしいなって思いながら「Red Liberation」に入っちゃって(笑)。
――あの熱量の高さは凄まじかったですね。やはりあの曲をもって、今のfripSideの強度を改めて感じることができましたし。
sat そうですね。ありがたくも前半のトリというところをいただいて、今の僕らにとってはすごく大役というか、特にあの2人にとってはね。2年連続とはいえまだ2回目だから、やっぱりメンツを考えるとすごい大抜擢というか。そこでちゃんと第3期のオリジナル「Red Liberation」をやれたのは大きくて。「only my railgun」ではなく「Red Liberation」から会場も盛り上がってくださっていたじゃないですか。そこは良かったなと思っています。
――そうした今のfripSideを見せたあとに、satさんのMCから「only my railgun -version 2024-」が披露されました。“アニサマ”では久々となりますし、これも非常に盛り上がりましたね。
sat そうですね。“アニサマ”でfripSideが出て「only my railgun」を歌わなかったのはほとんどないんですよ。そこで“アニサマ”さんが20周年ということで「ここはやらなければ」という感じでした。
――やはり“アニサマ”の歴史でも欠かせない曲ですよね。
sat 嬉しいですよね。あれだけのお客さんにああやって歌ってもらえる認知度があるということだから、ありがたいですよね。
――そんな「only my railgun」を含む『とある科学の超電磁砲』におけるfripSideの楽曲をコンパイルのが今回の『とある科学の超音楽集 -A Certain Scientific Railgun:Music Chronicles-』です。fripSideとしては毎年秋にオリジナルアルバムをリリースしていましたが、今年はベスト盤という形になりました。
sat まずは去年が『超電磁砲』のアニメ15周年で、そこで現体制での「only my railgun」がリリースできたというところが、1つのターニングポイントだったと思います。この先も『超電磁砲』ワールドは続いていくと思うんですけど、今はアニメだけじゃなくて遊技機周辺でも盛り上がっている。そこでまずこれまでの楽曲を集めたアルバムを出したいなとレーベルと話しまして、またそこで遊技機用に新曲も作らせてもらってそれがすごくいい曲になったから、これを早く発表したいということもありました。
――確かにTVアニメ4期の発表もあった後で、『超電磁砲』への機運が高まっているタイミングでのリリースにもなりますよね。
sat そうですね。あと、第2期のバージョンも収録していますが、今回全曲リマスターをしているんですよ。「only my railgun」も16年前の曲ですから、初期の楽曲は今とは音の作りも違うんです。今聴いてみて音質的に少し弱いと感じる部分を修繕しました。なので聴いた感じもクオリティがすごく上がっていると思う。もちろん、あくまでもバージョンアップであって、みんなが思っている良さというものを打ち消すものでは決してなくて、音質の向上というところが一番大きいかな。
――fripSideと『超電磁砲』とのコラボについて、いわばfripSideのメジャーデビューとも関わるのですが、改めて「only my railgun」の登場は衝撃的でした。
sat うん。
――作品人気のタイアップであったし、fripSideの存在がセンセーショナルでもあったわけですが、やはり「only my railgun」は格別で、『超電磁砲』の作品性あるいは御坂美琴の“超電磁砲”という能力が、fripSideの音楽と見事シンクロしたことが大きい。特に、これはアルバムのライナーノーツ(今回のアルバムブックレットには八木沼氏によるライナーノーツが収録されている)でsatさんも発言しているのですが、「only my railgun」でsatさんが“Super Saw”というシンセの音色を採用したことが大きくて、これってアニソンにとっても大きな発見だったんじゃないかなと。
sat そうなんですよ。僕もライナーでああやって発言した後にもう一度昔の音源を聴き直してみたんですけど、第1期fripSideってそこまでSuper Saw(※ノコギリ波を重ね、それぞれの音高を少しずつずらすシンセサイザーのサウンドの一種)していないんですよ。もちろん多少はあるんですけどそこまで主張していない。やっぱりこの「only my railgun」でfripSideとSuper Sawの親和性というものを完成させたんだなって改めて思いました。自分でも「これは大発明だ!」って(笑)。
――コアなfripSideファンにはお馴染みですが、改めてこのSuper Sawという代名詞が有効的に採用されたのは「only my railgun」だったわけですよね。
sat そうですね。手前味噌だけど他のアーティストさんがSuper Sawを刻んだら「fripSideっぽい」って言われていたのもあって。だから改めて僕らの専売特許という意識はありますよね。
――ですから改めて、fripSideが『超電磁砲』あるいは美琴と出会っていなければ、fripSideのメジャーデビューはまた違ったものになっていたかもしれない。
sat 今みたいになってなかったかもしれないですね。僕らアニソンを作っている人間として、面白いのはそこなんですよね。その作品の世界観を表現するためにクリエーションをすると、それが自分の音楽にプラスになる時がある。作品に引っ張られて自分の音楽も進化していく、みたいな。それがアニソンクリエイターの面白さじゃないですかね。
――つくづく歴史的に重要な楽曲になりましたね。そこからTVシリーズ、OVA、ゲームまで数々『超電磁砲』の楽曲を作っていくわけですが……。
sat いや、僕も聴き返してみて「よく作ったな」と思います。「これどうやって作ったんだろう?」と思ったりもしますし(笑)。
――TVシリーズだけでも3期あって、それぞれ2曲ずつ作っているわけですが、fripSideあるいは『超電磁砲』らしさがありつつもバラエティに富んでいるところが大きいですよね。
sat そうですね。
――そこはsatさんのクリエイティビティもそうですが、TVシリーズの放送が空いているのも大きいのかなと。2期が放送されたのも1期の4年後となる2013年で、その間fripSideがアーティストとして巨大化したのちに「sister’s noise」の大ヒットへと繋がっていくという。
sat そうですね。『超電磁砲』の1期と2期、3期の間で僕らも色んなアニメの主題歌を担当させていただいて、その経験値をまた持ち寄って臨めたという、いいサイクルがあったんじゃないかなと思います。
――そうですね。
sat あとはやっぱりライブでのお客さんとの対話があった。それこそ「only my railgun」や「LEVEL5 -judgelight-」、「future gazer」や初期の曲はライブで何回もやっていくうちに少しずつ形を変え、お客さんとのコール&レスポンスも含めて、お客さんとfripSideと、『超電磁砲』との一体感みたいなものを徐々に熟成させながら次の新譜に取り組むという、それもまたいいサイクルだったと思うんですね。だから後期の、例えば「final phase」や「dual existence」を作る時には、ライブでお客さんと対話することも前提で作っていったりして。そこに『超電磁砲』3期の世界観にそぐうようにという。そういうクリエイティブオプションが発動されて、こうした色とりどりの曲を生み出せたんじゃないかなって僕自身は解析してます。
――そうした作品と作品の間のクリエイティブの進化というものを、楽曲に注ぎ込むという。それこそ第3期は前期から約7年ぶりですから、「final phase」での「待ってました」感は強かったですよね。
sat そう。あの曲では「待ってました感」を出したかったんです。それにまた、いいオープニングムービーがついたじゃないですか。あれは最高だった。
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