INTERVIEW
2025.08.20
アニソン界を牽引する稀代のエンターテイナー・オーイシマサヨシが贈る最新作は「かごめかごめ/ふたりキャンプ feat.SPECIAL OTHTERS」は、TVアニメ『地縛少年花子くん2』(後編)OP主題歌とTVアニメ『ふたりソロキャンプ』ED主題歌をカップリングした豪華なダブルAサイドシングル。オーイシ流アニソンの最新形を見せてくれる「かごめかごめ」。彼とは真逆のスタイルを貫くバンド・SPECIAL OTHERSとの意外性満点のコラボが味わえる「ふたりキャンプ」。テイストも制作アプローチも全く異なる2曲に、アニソンアーティスト・オーイシマサヨシの新しい魅力が詰め込まれた。
INTERVIEW & TEXT BY 阿部美香
――オーイシマサヨシさん待望のニューシングルがリリースされました。ダブルA面、ダブルアニメ主題歌という豪華な内容で、聴き応えも満点です。まずは現在放送中のTVアニメ『地縛少年花子くん2』(後編)OP主題歌「かごめかごめ」のお話から伺います。『地縛少年花子くん』シリーズとの音楽を通じたお付き合いも、もう長くなりましたね。
オーイシマサヨシ そうなんですよ。遡ると最初は2020年ですね。第1期にあたる『地縛少年花子くん』のOPテーマ「No.7」を地縛少年バンド名義でPENGUIN RESEARCHの生田(鷹司)くんと一緒に歌って、2025年には『地縛少年花子くん2』(前半)のOPテーマ「L’oN(ライオン)」をソロで歌わせていただき、今回は『2』(後半)で「かごめかごめ」のオープニングを担わせてもらい。続けて3度もOPテーマに携われるのは、とても嬉しかったですね。
――しかも「No.7」と「L’oN」は、作詞・作曲・編曲などはANCHORさんとZiNGさんが担当し、オーイシさんはシンガーとして参加されていましたが、「かごめかごめ」はついにオーイシさんご本人の作詞・作曲・編曲です。
オーイシ アニメ側としては、今までとちょっと主題歌の雰囲気を変えたいという意図がありました。じゃあオーイシ作ってみます!と、今回は全部やらせていただいたんです。しかも『2』(後編)は、大きな別れに直面したり、物語が分岐するクール。今まで以上にシリアスな展開になっていく。そういう作品の内容の変化に合わせようと僕も心しました。
――“雰囲気を変える”といっても色んな方向性が考えられますよね?
オーイシ アニメ側のオファーにあったのは、明るい雰囲気の4つ打ちリズムが入った踊れる曲。作品が暗い感じなのに明るい曲にすることで、そのコントラストが逆にホラー感に繋がるという意図でした。ただ、明るすぎるとそれはそれで上手く着地しない気もしたので、僕のほうで一応解釈を入れて、4つ打ちダンスっぽい感じは出しながらも、ちょっとおどろおどろしい雰囲気だったり、怪しい雰囲気を盛り込むことで、現代ミュージックっぽく着地させたっていう感じでしたね。
――確かに楽曲そのものに、色んな要素が詰め込まれていますね。サウンドにはダークな雰囲気が漂いつつ。
オーイシ そう。せっかく僕が全部作るので、好きなことを色んな引き出し開けて詰め込みたいと思ったんです。『花子くん』の世界観に“境界”という、この世でもあの世でもない、その真ん中地点にある特殊な場所っていうのが出てくるんですけど、そこは存在自体が曖昧で、色んな世界がくっついている感じ。それを主題歌でも表現できないかな?と、AメロもBメロもサビもイントロも全部、こう……色んなドア開けて別の曲がくっついてるような感じにしたら、境界っぽくて面白いかな?と。トラップっぽいリズムが出てきたかと思うと、ピアノとストリングスと和楽器のメロディアスなパートが出てきた!……と思ったら、サビはハウス。色んなジャンルを渡り歩いて、行ったり来たりしている感じが出したかったですね。
――そういう手法で楽曲制作することは多いですか?
オーイシ いえ、バンド上がりの人間なので、普段は全体から作るんです。例えばいつもだとサウンドにも1つの統一感を持ちたいので、同じ楽器、ドラムやベースをAメロからサビまで全部打ち込んでアレンジをまとめていくんですけど、今回は全体の青写真は一応ありながら、Aメロの次はBメロ……という感じでブロックごとに作っていまして。音もシンセの乗り方とかキックの音色を変えたり色々やりながら、トラックだけでもかなり日数かけて詰めていきましたね。やっててすごく楽しかったし、僕自身も新しいドアを開けられた気がします。
――オーイシさんの楽曲はいつも凝りに凝った作りですが、「かごめかごめ」は特にそうですね。
オーイシ 最近めちゃくちゃ思うんですけど、音楽の聴き手がすごく耳が良くなってきてませんか?どんな急な展開をされても受け入れる態勢ができている、すごく柔軟で敏感なリスナーさんが増えてきてる気がするんです。もし昔にこういう曲を出したら、なんでこんなに色んな曲をくっつけてるんだろう、忙しい曲だな!となるけど、今は今っぽい曲として受け取ってもらえるじゃないですか。ある種、そういう“現代耳”を持ってるリスナーさんのことを信じてアレンジしたというのはあります。
――特にアニソンと呼ばれるカテゴリーは、ジャンルレスな創意工夫の塊に感じます。
オーイシ アニソンもすごく変わってきてますよね、JポップやJロックからすごく良い刺激を受けて。じゃあアニソンシンガーが何をやるべきか?アニソンって何なんだろう?みたいなものを、改めて考える時期に来てると思うんですよ。それも含めて、確実に音楽レベルも上がってきている気がするので、僕もそれに置いていかれないようにしなきゃいけない。頑張らなきゃな、と思います。本当に。
――作詞はどういうアプローチで?
オーイシ 『花子くん』の世界観により良い着地をさせたくて、作中のセリフをそのまま歌詞で使わせてもらったり、結構な挑戦的なことをしました。絶対、リテイクが来るだろうなと思って入れたんですけど、むしろそこがいい!と言ってもらえて、嬉しかったです。あと『花子くん』の世界で僕が好きなのが、噂話についてなんです。噂話が捻じ曲がり、どんどんそれが凶悪化して、人を怖がらせる怪異になっていく。その世界観自体、今の世の中をすごく風刺してるなと思っていて。極端に言えば、噂話で人をいくらでも追い詰めることができる。SNSでの誹謗中傷の根幹にあるのは、「アイツってこうらしいよ?」という噂話に過ぎなかったりもする。それが肥大化して、巡り巡って本人の耳に入ると凶器にもなるんですよ。そこは『花子くん』の世界にも通じるものがあるし、今の世の中での立ち回りってすごい難しい。そんな気持ちを、上手く曲に落とし込めたらいいなと思いながら、歌詞を書きました。
――オーイシさんのリアルもこの曲に込めてある。
オーイシ そうですね。噂話とか人を貶める話って聞き手によってはすごく甘い蜜だし、そこに虫が寄ってたかってきて食らい尽くすじゃないですか。で、蜜の味がしなくなったら別の噂話に食らいついていって、「あれ?そういえばこないだ炎上してたアイツって誰だっけ?」と、出がらしみたいに処理されることが得てしてあると思うんですよ。僕ら表に立つ人間だけでなく、そうじゃない人達だって同じですよね。優しい人ほど心を痛める時代だというのが、『花子くん』のキャラクター達にもあったりするんですよね。そういう意味でも、『花子くん』という作品世界の奥深さやある種の怖ろしさを、この曲に込めたかった。世相と『花子くん』の一番の共通点を抽出できたんじゃないかな。
――そういえば童謡の「かごめかごめ」も、実は恐ろしい歌だという噂話もありますよね。
オーイシ 今回「かごめかごめ」を盛り込んだのは、『花子くん』の作中からインスパイアされたものですが、確かにそうなんです。童謡の「かごめかごめ」も、噂が邪魔して色んなイメージがついてしまっている、そういうところもリンクできたらいいなと。
――歌詞に潜んだ作中のセリフについては、リリースに先駆けて公開されていたMVのコメント欄でも、ファンの方がさっそく指摘していました。皆さん感動されていましたし、あのセリフが曲にあるということは、そこまでは絶対にアニメ化されるんだろう!という考察もされていて。
オーイシ はい、僕も拝見しました。皆さんすごいですよね、ファンの皆さんの解像度の高さと愛情の深さが。だから『花子くん』に限らず、作り手にも愛がないとすぐバレてしまうから、適当なことは書けない。今回も、改めてアニメを第1話から全部見返してコミックも読み返し、先にいただいていた脚本も何度も読んで作った曲なので、自信を持ってお届けできます。
――そういえばラジオ(オーイシマサヨシのMBSヤングタウン)でお話されていましたが、この曲のボーカルは、インフルエンザ罹患中に高熱の中で自宅録音されたとか?
オーイシ そうなんです。後日、体調の良い時にもう一度録り直したんですけど、それを超えられなかったという。おそらく1テイク目だった爆発力みたいなのが音に乗ってたのかな。熱に浮かされたアンニュイさも良かったのかもしれない(笑)。他の曲でも、過去の自分との戦い、みたいなプレッシャーありきの難しさはあるのかもしれないですね。
――ボーカルでいうと、お得意のハイトーンも健在です。特にサビはコーラスの重なりもありますし、声の圧もすごい。
オーイシ 最近は、よくミックスボイスを表立って使ってますね。この曲でいうとサビ頭とか。以前は、そういう歌い方や声をヘビメタっぽいとか処理されがちだったんですけど、今はミックスボイスもよく使われますし、そういう歌唱もリスナーさんにとっては常識になってきてるから、こちら側としてはすごく表現しやすくなりました。ボーカルの幅みたいなものも、広がってきてますよね。
――オーイシさんらしからぬ、ちょっとチルいラップとのギャップも聴き応えありますし。
オーイシ ヒップホップカルチャーに詳しいわけではないですけど、今やポップスにおけるラップって必要不可欠になってきていると思うんですね。1個のトレンドの取り入れ方として、そういうこともポップスの範疇ではやっていきたいなと。でも僕、昔……Sound Scheduleと同じ頃、20歳くらいだったかな?当時流行っていたリンプ・ビズキットのコピーバンドをやっていたことがあって(笑)。
――意外!ラップ+メタルなゴリゴリのミクスチャーじゃないですか(笑)。
オーイシ めちゃくちゃFワードを叫んでました(笑)。それくらいの時代から、ヒップホップ、ラップというのも多様化していて、音楽も色んなものを受け入れて進化しているのは、面白いですよね。
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