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INTERVIEW

2025.08.16

共に歩んだ6年を振り返る――LiSA、『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』主題歌の「残酷な夜に輝け」で再び『鬼滅の刃』とタッグを組む!

共に歩んだ6年を振り返る――LiSA、『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』主題歌の「残酷な夜に輝け」で再び『鬼滅の刃』とタッグを組む!

「紅蓮華」「炎」「明け星/白銀」、そして「from the edge」(FictionJunction feat. LiSA)を含めた『鬼滅の刃』×LiSAのコラボレーションの歴史に加わった新たな1曲。それが、梶浦由記が作詞・作曲・編曲を手がけた、現在公開中の『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』主題歌「残酷な夜に輝け」だ。『鬼滅の刃』への想い、梶浦由記とのタッグに賭ける想いをLiSAに聞いた。

INTERVIEW & TEXT BY 阿部美香
LIVE PHOTOGRAPHY BY Viola Kam (V’z Twinkle)

全員を抱きしめられるような曲に!「残酷な夜に輝け」に込めた「無限城編」への想い

――2019年からスタートしたアニメ『鬼滅の刃』シリーズとのコラボも、もう長くなりましたね。

LiSA はい。今年がデビュー14周年になるんですけど、『鬼滅の刃』シリーズの主題歌を初めに担当させていただいてから6年になりました。LiSAというアーティストの人生の3分の1以上……2分の1に近い年月を一緒にしていると思うと、改めて、こんなに長くご一緒させてもらっていることに感謝です。

――作品とのお付き合いでいうと、今回の『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』主題歌「残酷な夜に輝け」は、4年ぶりということに。

LiSA そうですね。『テレビアニメ「鬼滅の刃」無限列車編』のオープニングテーマとエンディングテーマを「明け星/白銀」で歌わせてもらって以来なので。そこから4年経って、アニメのお話の中で言うと煉󠄁獄杏寿郎さんを倒した、上弦の参・猗窩座との邂逅がここで描かれる。そういった物語を通じて、またこうして梶浦さんとご一緒させてもらえるのも嬉しかったですし……私も一緒に戦いに臨む気持ちで、挑みました。

――梶浦さんとのコラボレーションも、『鬼滅の刃』がきっかけでしたからね。

LiSA そうなんです。「紅蓮華」以外は梶浦さんに書いていただいてきた曲です。だから『鬼滅の刃』との年月は、梶浦さんとの年月でもあるんです。

――最初の「竈門炭治郎 立志編」のエンディングテーマ「from the edge」(FictionJunction feat. LiSA)の頃は、梶浦由記さんの唯一無二の世界観と音楽性に、LiSAさんがどう“楽器”として役割を果たしていくか? 梶浦さんの世界にどう寄り添うか?をテーマに歌ったと話していたのを思い出します。そこから6年経った今、思うことは何でしょう。

LiSA 私も色んな方々に楽曲提供をしていただいてますけど、それこそこんなに同じ方に1つの作品でお世話になることって、そうそうなくて。LiSA曲としても、梶浦さんの楽曲がすごく増えていて、新しい曲をいただく度に、毎回、梶浦さんは今回、どんな将棋を打たれるのでしょうか?……と、対決してるような気持ちでいたんですよ。

――名人戦みたいな(笑)。

LiSA そうそう(笑)。でも、こうして何曲もご一緒させてもらううちに、梶浦さんの世界がLiSAを受け入れてくれるようになったというか。楽曲を通じて“LiSAという楽器”の味わい深さを、認識してくださっている印象があります。特に今回は楽曲を作る時も、今までよりもっと受け止めてくれる姿勢でいてくださったというか。大きく扉を開けて迎えてくれたところからの始まりでした。

――具体的には、どういうお話から制作がスタートしました?

LiSA アニメの制作側と梶浦さんがお話されて制作が始まり。最初に私が梶浦さんにいただいたのが、この曲のワンコーラスだったんです。梶浦さんご自身、作品の一部である劇伴を書かれる音楽家でもあるから、『鬼滅の刃』もすごく大事にされている。そのうえで、私が歌う曲だというのもすごく考えてくださる作家先生なんですね。なので一旦、Aメロ・Bメロ・サビという、ちゃんとしたポップスとしての構成をきちんと作ろうと言ってくださって。

――映画をご覧になった方はおわかりだと思いますが、確かに難しい構成ですね。

LiSA そうなんですよ。だから最初にいただいたワンコーラスは、今とはサビも全然違っていて。この曲の打ち合わせの段階では、まだ調整中の様子でした。なので私から、純粋に梶浦さんと作りたいもの、『鬼滅の刃』の楽曲ならLiSAはこうしたい!というのをお伝えしたくて、直接、梶浦さんのスタジオに何度かお邪魔して、いろんなお話をさせてもらったんです。

――どんなことをお伝えしたんですか?

LiSA 私はこの主題歌で、全員を抱きしめるような、戦うみんなを抱きしめてあげられるような……母性だったり、優しさだったり。みんなを讃えてあげる役割を持った楽曲になるといいなって思ってますとお伝えしました。そのあとに今の「残酷な夜に輝け」が完成したんです。

――だからなんですね。この劇場版で描かれるのは、竈門炭治郎たちが鬼の根城「無限城」に落下し、鬼殺隊と鬼の最終決戦の火蓋が切って落とされる……という戦いに向かう第一章。死闘が待ち受けているにも関わらず、マイナー調で進んでいく「残酷な夜に輝け」がサビでメジャー展開になっていくのに驚きました。

LiSA そう、梶浦さんがそうしてくださったんですよ。前を向いて終われる曲にしたいという気持ちは強かったと思うので、それを私なりに噛み砕いて解釈して、歌う立場から梶浦さんにお伝えしました。

――そのお話を知らずに聴いた最初も、マイナーからメジャーに移っていく曲構成にフィルムスコアリングっぽさをとても感じたのですが、本編を拝見して符に落ちました。

LiSA だからこその難しさも、すごくありますよね。作品を意識した展開はもちろんですけど、色んなポイントがある中で、楽曲単独でもすごく完成された梶浦さんならではの1曲を仕上げられるって、梶浦さんって本当に素晴らしい方ですよね!

梶浦由記とのコミュニケーションが生んだ楽曲へのアプローチ

――完成した楽曲を受け取って、LiSAさんが感じたことは?

LiSA 梶浦さんと歌詞についてのお話はしていなかったんですけど……みんなが戦うための覚悟みたいなものが、すごく詰まってる歌詞だなと思いました。それだけじゃなく、劇場版を観た後だとなおさら、それ以上に込められているものがたくさんあることを、それぞれに感じられるというか。覚悟を持った人が、大切な人に向けた想いだったり。そういう、戦う人の歌ですよね。この物語に出てくる戦う人全てに寄り添える楽曲になって、良かったなと思います。

――音楽的にもアグレッシブな要素がたくさん詰め込まれています。壮大なストリングス、壮大な混声合唱が盛りこまれているのもそうですが、中間部にテンポダウンして歌い上げるゾーンも印象的ですし、LiSAさんのボーカルがオペラ調に響いたり、静かに語るように歌うパートもあります。ゆったりとしたメロディはゆるやかな起伏に富み、大きなフレージングが必要とされています。歌唱的にも非常に難曲だと思いましたが、どうアプローチしていったんですか?

LiSA それこそ梶浦さんが、ワンコーラス目でポップスとしての構成をしっかり作ってくれたので、LiSAの歌らしさというのは、ある意味、そこで役割を果たせると思ったんですね。LiSAとして歌いきれる場所がある。なので、そこ以外はちゃんと内容に添いたかった。いつものLiSAを演じなくても、曲としての良さをそのまま、物語の語り部として寄り添える表現をしたいと思いましたね。

――だから色々な歌唱法にもなっていった。“LiSA”を前面に押し出さずとも、いい曲だから。

LiSA そうですね。なので……大変でした(笑)。

――特に苦労されたのは?

LiSA 後半のサビですね。“夢見ていたんだ 君が側にいて 懐かしい青空を見上げてた”からのパート。そこまでは、すごく強い気持ちで歌っているんですけど、ここに差し掛かった瞬間に、なんだろう……我に返るじゃないですけど、ふと昔を思い出すような目線になるんです。この楽曲自体の構成が複雑なぶん、ブロックごとに人格だったり視線が変わるというのかな? 自分の中にたくさんの人格を持って表現していくので、ガラリと変化するたびに切り替えながら、だけどそれがバラバラにならないように歌い繋ぐのは、やっぱり難しかったです。

――それが、さっきLiSAさんがおっしゃっていた、物語の語り部として寄り添う表現だったわけですね。

LiSA もう1つ捕捉すると……今回の舞台は“無限城”じゃないですか。無限城は無限に広がっている空間なので、この曲が入り組んだ構成になっているのも、当然だなって思いますよね(笑)。

――歌に関して、梶浦さんからはどんなディレクションが?

LiSA 梶浦さんのスタジオにお邪魔してお話しした後、何回かそこで仮歌を録らせていただいたんです。その時、私は“私のいつもの声でこの曲を表現すると明るくなりすぎてしまうから、物語に沿うには、もう少し悲壮感のある表現をしたほうが良いのでは?”って相談したんです。実際、最初に梶浦さんの楽曲を歌わせてもらった「from the edge」の時は、少しそうしていたんです。そうしたら梶浦さんが、「LiSAさんの声は、明るさや希望を持っていることが強みだから、そのままでいいの。私が楽曲で悲壮感を表現するから」と言ってくださって! だから迷うことなく、自分らしく歌いました。

――梶浦さんの書かれた歌詞も素敵ですよね。“一人じゃないと叫びながら 一人ぼっちで血濡れる僕ら”のフレーズは、まさにですよね。

LiSA かっこいいですよね!私が一番印象的なのは、サビ頭とラストに出てくる“行け”ですね。言葉は同じなのに、それぞれの“行け”に込められた意味の解釈が、全然変わってくるんですよ。どう変わるかは、ぜひ皆さんに劇場で体感していただけたらと思います。

――作品にしっかり寄り添った曲でありつつ、LiSAさん本人が共感できる部分もある曲だと思いますが。

LiSA そうですね。私……ライブする時、めちゃくちゃ戦っているんです。1分1秒、目の前にいるキミと最高の時間を過ごしたいから。だから炭治郎たちが必死で戦うように、私もライブではいつもズタズタです(笑)。

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