INTERVIEW
2025.07.10
ロックンロールをベースにしながらも、楽曲やアルバムごとに様々な音楽要素を取り入れ、現代的なポップセンスとキャッチーさを有したサウンドで人気を集める4人組ロックバンド、go!go!vanillas。彼らの「No.999」(TVアニメ『ゲゲゲの鬼太郎』)以来、2度目となるアニメタイアップ曲が、話題作『SAKAMOTO DAYS』第2クールのエンディングを彩る新曲「ダンデライオン」だ。かつて最強の殺し屋として恐れられていたが、今は愛する家族との日常を何よりも大切にしている主人公・坂本太郎の内面に寄り添った、心地良い温もりを感じさせる本楽曲はどのように生まれたのか。牧 達弥(vo、g)、長谷川プリティ敬祐(b)、柳沢進太郎(g、vo)、ジェットセイヤ(ds)の4人に話を聞いた。
INTERVIEW & TEXT BY 北野 創
――皆さんが今回TVアニメ第2クールのエンディング・テーマを担当する『SAKAMOTO DAYS』には、どのような印象をお持ちですか? 作品の魅力や面白さを感じる部分を教えてください。
牧 達弥 魅力はたくさんありますけど、何より(原作の)絵の上手さがヤバいですよね。戦闘シーンもスピード感が感じられるし、1枚でゾクッとする。鈴木(佑斗)先生は映画が好きらしいんですけど、映画監督のような視点で作品を作っている感じがめちゃくちゃかっこいいと思います。僕もマフィア映画が大好きなので、殺し屋同士の争いならではの緊張感、ヒリヒリ感があるのもいいし、ジャンプ漫画としての熱量や仲間との絆、守るものに対する想いが、クサすぎることなく描かれているのも好きです。
ジェットセイヤ キャラクターの描き方って、大体似てくる部分があると思うんですけど、この作品は1人ずつ個性がしっかりとあって、主役だけが目立つわけではなく、みんなの生い立ちも気になる深みがある。それと映画や色んな文化のルーツを感じさせる描写があるところがいいなと思います。俺らも楽曲の中に、コアな人だけにわかってほしい要素を入れたりするんですよね。そこは今の時代の作品らしさを感じます。
長谷川プリティ敬祐 ジャンプの作品として新しいなと思ったのは、坂本(太郎)は“昭和のおやじ”に通じるかっこ良さがあるところで。坂本は多くを語らないんですよね。表情もコロコロ変えることはないし、なんというか、言葉にはしないけど“背中で語る”みたいなかっこ良さがある。
柳沢進太郎 『忍空』の主人公(風助)でも坂本よりは喋っていたからね(笑)。坂本の寡黙だけどしっかりと熱を持っているところもかっこいいけど、僕は敵キャラがかっこいいところもワクワクしました。やっぱり敵キャラにも魅力があると、どっちの立場でも楽しめるので作品の世界にどんどん引き込まれるんですよ。物語的にもまだ全容が明らかにされていない状態なので、毎週楽しみにして「ジャンプ」を読んでいます。あと、個人的に嬉しいのが、坂本と(朝倉)シンが一緒に戦うシーンが多いところ。この2人の名前が合わさると“シンタロウ”で、僕と同じ名前なんですよ。
一同 ほんとだ!(笑)。
セイヤ 進太郎は実際にシンっぽいんですよね。(髪型が)真ん中分けで一緒なので(笑)。
柳沢 じゃあこの楽曲がリリースされたら、金髪にします(笑)。
セイヤ じゃあ俺は白髪と丸メガネになります。
長谷川 坂本じゃん!(笑)。
牧 なら俺は神々廻になるわ(笑)。
柳沢 いきなり全員がそれぞれの好きなキャラのコスプレでライブをし出すっていう(笑)。
――期待しています(笑)。この流れで好きなキャラクターを教えてもらってもいいですか。
牧 僕は神々廻ですね。表情を動かさないタイプのキャラクターが好きなんですけど、神々廻は戦闘シーンでも飄々としているじゃないですか。ピンチの状態でもクールなところ、いい奴すぎないけど憎めないところも好きです。
長谷川 僕は篁さんですね。『SAKAMOTO DAYS』の連載が始まる前に、鈴木先生の読み切り(『骸区』)があって好きだったんですけど、「あの作者の人の新連載だ!」と思って『SAKAMOTO DAYS』を読んでいたら篁さんが登場したので「えっ!こんなスターシステムがあるんだ!」と思ってテンションがブチ上がりました(笑)。規格外に強いキャラクターってやっぱりかっこいいじゃないですか。敵側が「それは反則だろ、無理無理!」ってなる感じの圧倒的な強さ。篁さんのそういうところが好きです。
柳沢 僕はシン……ではなくて楽が好きです(笑)。それこそ篁さんと対峙した時に「無理無理!」って言ってすぐに退散しますけど、それが逆に強者を感じるんですよね。勝てない相手とわざわざやらない。バトルマンガの場合、だいたいはそのままやられるか、誰かが助けに来る展開になると思うんですけど、敗走するパターンもあるんだと思って新鮮でした。キャラデザもかっこいいので、コスプレするならシンよりも楽がいいです(笑)。
セイヤ 俺はJCC編入試験の試験官で映画監督でもある京のアホさが好きですね。自分も映画が好きなので、シンをカメラに収めたい気持ちがわかるし、顔の描き方もいいなと思って。ギャグとシリアスのギャップがいいなって思います。
――ちなみに皆さんはどんなアニメや漫画が好きですか?音楽的に面白いなと思うアニメソングがあれば教えてほしいです。
牧 僕は今『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』を観ている流れで、ちょうど『機動戦士Zガンダム』を観直しているんですけど、80年代のアニメの楽曲って素晴らしすぎるなと思っていたところでした。当時の日本のポップスの作り方や構成ってすごく凝っていて、メロディも他にはない強度を感じるんですよね。今の時代はオマージュで色んなアプローチができますけど、当時の楽曲はオリジナルならではのエネルギーの強さを感じます。
長谷川 めっちゃわかる。自分の好きな『ガンダム』は……。
セイヤ いや、話のテーマが変わってるんだけど(笑)。
長谷川 でも、好きなアニメと言えば『機動武闘伝Gガンダム』なんですよね。“努力・友情・勝利”という意味ではジャンプ要素もめちゃくちゃ感じられる作品だし、子供の頃に観ていたのもあって、今観返しても燃えます。で、アニソンだと『スレイヤーズ』の1期EDテーマだった「KUJIKENAIKARA!」(林原めぐみ・奥井雅美)です。サビに「ずっぱら、ずっぱら」って感じのベースラインがあるんですけど……。
柳沢 えっ!そのプレイが得意なのは、そこからなんですか!?普通にファンクバンドとかからの影響だと思ってた。
長谷川 あまり意識してなかったんだけど、「俺のファースト“ずっぱら”は何だろう?」と考えた時に、他にも色々ありつつ、最初は「KUJIKENAIKARA!」だったと思う(笑)。
――アニソンがプレイスタイルにも影響を与えていたかもしれない、と。柳沢さんはいかがですか?
柳沢 俺も『ガンダム』だったら『(機動戦士ガンダム)第08MS小隊』ですね。グフが切られるシーンは一生忘れないと思います。やっぱり敵キャラクターが好きなので、「ああ、俺の大好きな機体が……」と思いましたし、シロー(・アマダ)がニュータイプではなくて、普通の人間が泥まみれで戦う感じも少年心にグッときました。アニソンで言うと、『カードキャプターさくら』の「プラチナ」(坂本真綾)が名曲すぎてびっくりしました。女の子向けの作品には触れてこなかったので、最近初めて知ったんですけど、調べたら菅野よう子さんが楽曲を作っていたので、「そりゃそうだ!」って納得しました(笑)。
――この流れだと、セイヤさんも好きな『ガンダム』の話になりそうですが……?
セイヤ 俺、意外と『ガンダム』は通ってないんですよね(笑)。アニソンの話で言うと、『ONE PIECE』の初代EDテーマだった大槻マキさんの「memories」がめっちゃ好きで。これは後々気付いたんですけど、自分の音楽のルーツにあるJUN SKY WALKER(S)の森純太さんが作曲していたんですよね。しかも親友が自分の結婚式で、この曲を男4人兄弟で歌ったんですよ。俺も乱入したんですけど、半泣きになりながら「いい曲やなあ」ってなった思い出があります。
――今回のエンディング・テーマ「ダンデライオン」は、ハードボイルドな側面もありつつ温かな雰囲気があって、『SAKAMOTO DAYS』にとても寄り添った楽曲だと感じました。作詞・作曲を担当した牧さんは、制作にあたって、どんなことを考えましたか?
牧 作品サイドからは“坂本が戦いから帰ってくる場所”“解放された瞬間”といったテーマをいただいたうえで、あとはエンディング・テーマであることを踏まえて、自由に制作させていただきました。僕自身、作品を読んだうえで考えたのは、坂本という人物を内面から見るということ。周りの人から見た“坂本”像をなぞるのではなく、「坂本はきっとこうなんだろうな」と思ったことを歌詞にしてみました。
――第1クールのエンディング・テーマだったConton Candy「普通」は、坂本の奥さんと娘、坂本 葵と花の視点というイメージが強かったですが、この楽曲は坂本自身の視点になっているわけですね。
牧 そうですね。プラスして、この作品の良いところはシリアスとギャグ、緊張と緩和のバランスが絶妙なところだと思っていて。なので歌詞にも、殺し屋という職業柄を踏まえて“生と死”の要素を入れました。葵との出会いは、坂本にとっての癒しであり、殺伐とした世界の中で見つけた安寧の地だと思うのですが、彼は今までたくさんの人を殺めてきた業を背負っている。葵と花に対しても、ただ愛を注ぐというよりは、血塗られている自分が幸せになっていいのか、自分がいることによって家族が危険にさらされる可能性があるのではないか、という葛藤があるなかで、それでも絶対に守り続ける、という想いの強さがある。それが坂本の本質だと思うんですね。
――間違いないと思います。
牧 僕は歌詞で“影法師”と書きましたけど、坂本は家族や仲間に対してベタッと張り付いているのではなく、遠くから見ている感じがするんですよね。自分が近づくことで失ってしまうかもしれない怖さがありつつ、それでも守りたい気持ちがある。その意味で、ただ温かいのではなく、温かさと冷たさがぶつかり合っているような楽曲にしたかったんですよね。なので“血生臭い生家”みたいにゾクッとするような言葉を入れつつ、優しい言葉を間に挟んであげるようなイメージで作りました。
――それで言うとタンポポの英名にあたる「ダンデライオン」という曲名もすごくいいですよね。優しさも強さも感じさせる、坂本らしいタイトルだなと思って。
牧 ありがとうございます。このタイトルにも色々な意味を重ねていて。まず坂本の奥さんと子供は2人とも“花”に結びつく名前なので、この曲のタイトルも花の名前にすることで、坂本も家族として2人と同じところに入れてあげたい思いがありました。で、色々調べていく中で、「ダンデライオン」という言葉の語源は、タンポポの葉のギザギザした形がライオンの歯に似ているから、ということを知って。ライオンは坂本の強さに当てはまりますし、タンポポの花言葉には“永遠の愛”や“幸せ”といった意味もあるらしいので、ピッタリだと思ったんですよね。
――なるほど。
牧 それに加えて、さっきお話しした“影法師”はタンポポの綿毛の胞子とも重ねていて。タンポポは綿毛になると花言葉が“別れ”や“今までの自分との決別”といった意味になるらしいんですよ。なおかつタンポポの綿毛というのは少し触れただけで飛んで行ってしまう。それもまさに坂本の家族に対する想い、いつ自分の手から離れていってしまうかわからない、という影の部分も表すことができると思って、この曲名にしました。
――そこまで色んな意味が重なっていたんですね!他のメンバーの皆さんは、牧さんの作ったデモを聴いてどう感じましたか?
柳沢 いや、もう、これがエンディングで流れたらバッチリでしょう!って思いました。僕は92年生まれなんですけど、小さい頃からCSのアニメ専門チャンネルとかで昔のアニメの再放送をずっと観ていたので、アニメのエンディングと言えば、キャラクターが右から左に向かって走っていくイメージなんですよ。この楽曲は、デモを聴いた時点でその絵がバッと浮かんできたんですけど、実際に今回のアニメのエンディング映像を観させてもらったら、坂本が左に向かって歩いていたので感動しました。
長谷川 歌詞も、情熱と冷静、優しさと怖さ、生々しい言葉と幻想的な言葉、色んな要素が入っていて、すごく多面性がある。それって『SAKAMOTO DAYS』全体に宿る多面性ともフィットしていると思うんですよね。面白いところもかわいいところもあるし、燃えるところも悔しいところもある。色んな感情が味わえる作品にすごくフィットした歌詞だと思います。
セイヤ 漫画も最初の掴みが大事なように、歌詞を書く時は最初のワードがすごく大切だと思うんですよ。この曲は“影法師”から始まるところがすごくいいなと思っていて。そこからのストーリーも、手紙じゃないですけど、坂本の心の内が見えるような内容になっているので、きっと作品ファンの方も「おお」ってなってくれると思います。映画化された際には、ぜひテーマソングにしてほしいですね(笑)。
――歌詞の結びが“僕らのデイズ”なのもいいですよね。もちろん『SAKAMOTO DAYS』という作品名に合わせたフレーズだと思うのですが、作品を離れた我々の日常にも寄り添ってくれる言葉になっていて。
セイヤ この最後のフレーズ、実は“僕らのデイズ”にするか“SAKAMOTO DAYS”にするか、二択があったんです。でも、やっぱりみんなにも聴いてほしい曲なので“僕らのデイズ”にしました。
牧 きっとこの歌詞に書かれている感覚は、誰しもがわかるものだと思うんです。大切な家族がいる方であれば特に。
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