6月15日、声優アーティストユニット・DIALOGUE+がKT Zepp Yokohamaにて“DIALOGUE+ライブハウスツアー「カクノゴトキロックンロール!」”の神奈川公演を開催。メンバーの宮原颯希の活動制限を受け、今回のツアーからライブは7人での実施に。これまで非常に多くのライブをこなし、3月末にも8人での対バンライブを開催した1ヵ月半後から始まった“今”の姿を見せるツアーの集大成にふさわしい、凄まじい密度で高い質のパフォーマンスをみせる、会心の公演となった。
TEXT BY 須永兼次
PHOTOGRAPHY BY 金子 弘
この日は結成6周年を目前にした“DIALOGUE+の日”と称し、朝からFC会員向け生配信やYouTubeでの過去のライブ映像のプレミア公開、更にはライブの第2部として「DIALOGUE+WITH special edition“DIALOGUE+Re:ステージ!JAM!!”」といった対バンライブの開催など、ログっ子(※DIALOGUE+のファンネーム)にはたまらない1日に。そのクライマックスを飾ったのが、この“「カクノゴトキロックンロール!」”ファイナルだ。
Interludeが流れ7色の逆光のライト光るなか7人が入場し、「Sincere Grace」からライブはスタート。改めての“始めの一歩感”を感じさせるかのようなこの曲では、歌でもダンスでも美しさに重点を置き、磨かれてきた高いパフォーマンス能力を発揮。冒頭の円状のフォーメーションも、人数が変われば間隔も大きさも変わるはずなのに、実にきれいに形作っていく。曲明けには稗田寧々がステージ中央のお立ち台へと登り、「みんな、楽しみ尽くす準備はできてるかー!?」とシャウトしログっ子を煽って、「ロックンロール!」へ突入。3対1対3に分かれたり、2-A’メロではソロを歌う飯塚麻結のまわりを他6人が周回したりとめまぐるしく入れ替わるフォーメーションでチームワークをみせながら、ハイスピードなロックチューンで一気に盛り上げゆく。ただやはりこの曲は、センターボーカルの1人である稗田寧々が要所で際立つ曲に。逆三角形のフォーメーションを取った際にはその頂点に位置し、突き抜けるような歌声で引っ張る。また一方で、2サビ明け間奏にてステージの端で跳ねて思い切り楽しむ、村上まなつの姿も印象的だった。
そしてそのままシームレスに、飯塚麻結がサビをアカペラで力強く美しく歌い上げ「シュガーロケット」へ。狭い隙間を抜けていったり鋭いスピンをみせたりと引き続きパフォーマンスでも魅せつつ、勢いのある曲にのせ、今度は全員でパワフルに観客を牽引する。2-Bメロの難解なメロディラインも揃えて鋭くきれいに歌唱し、落ちサビでの飯塚・緒方佑奈・守屋亨香の3人の力こもった歌声も心を引き付けていけば、後奏では横1列フォーメーションの端の村上が、続いて内山悠里菜が順にスピンし視線を惹きつける。さらに守屋の鮮烈な歌い出しから始まった「ユートピア学概論」では、ステージのアグレッシブさは更に増すばかり。鋭く歌声を響かせながら、1サビの“バンザイしたら”のフレーズでぴょんぴょん跳ねる稗田のパフォーマンスには、さすがに驚かされた。そんなこの曲の中では、いじらしささえ感じる1-Bメロの鷹村彩花の歌声のキュートさが、良好なアクセントの役割も果たす。
冒頭の4曲を締め括ると、この日最初のMCパートは主に内山が進行を担当。ツアーファイナルの本公演が生バンドを背負ってのものだと改めて説明し、今回のツアーからライブは7人体制となることにも言及。「正直めちゃくちゃ寂しいです。でも、それで頑張ることをやめるのは絶対に違うと思うので、私たちは私たちにできることを全力でやります!」と意志を示し、「私たちと一緒に、全力で楽しんでいきましょう!」と呼びかけ、「人生イージー?2023」からライブ再開。サビでの前列後列のスムーズな入れ替えなど、7人になってもスムーズで美しいパフォーマンスを見せていくこの曲。2-Aメロ冒頭で稗田が“故障”する場面や2-Bメロのソロでせり出た緒方などで、ステージ中央のお立ち台を用いて見せ場となるメンバーを効果的にフィーチャーしていく。また大サビ直前「みんなで」のフレーズでぎゅっと7人が集まった光景も、今だからこそより胸を熱くするものに見えた。続く「ドラマティックピース!」でも場内をノらせつつ、2-Aメロのセリフ調のフレーズではコロコロ表情を変えながら、個性をみせながらリレー。2サビ明けの間奏では飯塚が、続いて守屋がフィーチャーされるダンスパートでもログっ子を沸かせる。かと思えば歌唱においては、1-Aメロ冒頭の鷹村やラストの緒方のソロにどこか艶っぽさが乗っていたのもこの曲ならではのポイントだ。
そして最新シングル「アリバイなカーテシー」は、「ブーメランなティアラ」のフレーズ部分に代表される歌詞に連動したものも含めて、トイ感のあるサウンドにマッチするコミカルさも散りばめられた振付が楽しませてくれる曲に。だがその一方で、ノールックで後退して後列のメンバーとすれ違ったりと、ハイレベルな要素も数多く存在。間奏部分ではタップダンスの音に合わせて飯塚と村上がダンスをみせたりと、見せ場満載の最新曲でログっ子を楽しませ尽くすと、そのまま「20xxMUEの光」へ。この曲のセンターボーカル・守屋と村上を先頭に、ハイスピードなナンバーで爆走していくかのような姿をみせるDIALOGUE+。2番に入って村上が歌声で遊び始めれば、守屋は愛らしさを前面に出して各々の魅力をぶつけ合っていき、それがまたもログっ子の心を捉えていく。こうして駆け抜けた後の「わたしたちのラプソディー」では、冒頭からフロアに大きなコールとジャンプが起こり、場内はさらにヒートアップ。パフォーマンスにはサウンドにマッチする麗しさも付加されつつ、2-Bメロ「とろけそうです」のフレーズで飯塚は、ぴょんと片脚を上げてそこにかわいらしさもプラス。しかも動き自体も大きくて、ステージ映えするものだった。また、落ちサビでの2パートが並行して歌われる部分も7人で美しく歌い彩っていくと、ラストも華麗にポージング。歌詞も相まって、その姿は『DIALOGUE+』という物語が続いていくことを宣言しているかのようにも見えた。
またも一気に5曲披露したDIALOGUE+。鷹村が「もう、怒涛だね!」と振り返りながらMCを進行し、話題は本ツアーでの印象に残ったエピソードへ。中でも飯塚は「誰しもが誰しものカバーができる集団になってきたことが、『強いわぁ』って思いました」と自然と醸成されたチームワークに言及した一方で、内山は「お弁当にエビが入ってて、甲殻類の見た目が苦手なので、ねーね(稗田)に剥いてもらった」との裏話を披露。これには鷹村が「お弁当の時間だいたいいちゃついてるよね?」と突っ込む。そして村上によるバンドメンバーの紹介に続いて、「ここまで5公演の日替わり曲の中から、ぜひ生バンドで聴いてもらいたいかっこいい曲を持ってきました!」との言葉を導入に、「凍てついて秒速」がスタート。直前までの和やかな雰囲気は一変し、キリッとした表情でシリアスかつ攻撃性ある歌声とパフォーマンスで、拍子を取ることさえ難しい難曲に真正面からぶつかり力強い姿を見せていく7人。要所要所で振付の切れ味をより鋭くさせるなどして、歌唱とパフォーマンスの凄みで圧倒する曲としていく。歌唱後には村上の進行により、メンバーの動きをログっ子が真似るというコミュニケーションで更にライブの空気に没入させると、「カクノゴトキdance」がスタート。その村上や、1-Aメロ冒頭のソロパートを飾った緒方と鷹村といったセンターボーカル3人が、とにかく際立つ曲に。またサビに入ると、逆三角形のフォーメーションを取りながら、その内側でポジションを次々に入れ替えていき、やがて横一列にも展開する……という実に難解なことをやってのける。観る側としては何も考えずとも楽しめる曲ではあるのだが、ぜひパフォーマンスの細部にまで注目してみてほしい曲だと、このパフォーマンスを通じて改めて思わされた。
そして曲明け、ピアノソロ流れるなかオレンジの逆光がステージを包むと、スタンドマイクの前に7人が立ち、緒方の「これからも続く、私たちの道。少しでも、君と一緒にいられますように」の言葉に続いて「あたりまえだから2025」を歌唱。そのタイトルどおり、歌詞の一部を“今”の想いにより合致するものにして披露していく。手での振付と温かな歌声をもって、ファンへと想いを丁寧に伝えていくように歌われるこの曲は、“DIALOGUE+の日”に改めて歌われることに大きな意味があったように思う。また、Dメロではハモリも交えるなど技術的にも聴かせつつ、大サビ前の内山のソロの持つイノセントさ・ピュアさが、今日もまたたまらなく胸を打つ。歌唱後の温かで長く続いた拍手は、この曲がログっ子の胸に染み渡っていたことを示していたようだった。
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