『LIVE STAGE「ぼっち・ざ・ろっく!」』シリーズ初のライブイベント“LIVE STAGE「ぼっち・ざ・ろっく!」at KT Zepp Yokohama”が、6月22日、神奈川・KT Zepp Yokohamaにて開催された。
2023年に初演、2024年に続編が上演され、『ぼっち・ざ・ろっく!』の世界を舞台ならではの演出技法で表現して好評を博した『LIVE STAGE「ぼっち・ざ・ろっく!」』。キャスト陣が実際にバンド演奏を行うのが見どころのひとつとなっていたが、本公演では、その“ライブ”にフォーカスを当て、これまでの舞台の流れを踏襲しつつ、全編をライブ中心に構成。結束バンドとぼっちのロックをリアルに体感できるステージとなった。
※本記事には大阪公演のネタバレとなる情報が含まれています。
TEXT BY 北野 創
PHOTOGRAPHY BY 金山フヒト(Xallarap)、宇津木朋花(Xallarap)
『LIVE STAGE「ぼっち・ざ・ろっく!」』は、はまじあきによる人気コミック「ぼっち・ざ・ろっく!」(「まんがタイムきららMAX」連載中)および同作のアニメ『ぼっち・ざ・ろっく!』を原作にしつつ、「悪い芝居」の山崎彬による脚本・演出で、オリジナルの要素も取り入れることによって、舞台だけでしか表現できない面白さを追求しているのが大きな魅力となっている。
今回のライブイベントでも、舞台独自の要素は健在で、開演前の前説では、伊地知星歌(演:河内美里)、PAさん(演:堀 春菜)、廣井きくり(演:月川 玲)が登場。きくりが居酒屋にスマホを忘れて紛失するくだりなどを上手く絡めて観劇の諸注意を行う寸劇によって、気付けば会場は作品の世界に染まっていた。
オープニングムービーを経て、ついにライブが開幕……と思いきや、「転がる岩、君に朝が降る」の音源がBGMとして流れ始め、制服およびジャージ姿の後藤ひとり(演:守乃まも)、伊地知虹夏(演:大竹美希)、山田リョウ(演:小山内花凜)、喜多郁代(演:大森未来衣)が4人並んで歩きながらステージに登場する。BGMと会話の内容から察するに、舞台の続編「PARTⅡ 秀華祭」のクライマックス、ひとりが楽器店で新しいギターを購入した帰り道のシーンの再現だ。そして4人はお辞儀して客席に向けて手を振り終演……ではもちろんなく、ここでひとりが「この景色、見たことある!」とメタ的な発言をして気付き、彼女のイマジナリー空間へ。スクリーンに登場したギタ男との対話により、ひとりは「結束バンドのみんなとZepp会場でライブを行う」という夢を強く願って叶えることに。これは夢なのか現実なのか。訝しがりながらも、ついに結束バンドのライブがスタートする。
開幕の合図とばかりにドラムが力強く打ち鳴らされると、喜多ちゃんが「結束バンドです」と挨拶して、ライブ1曲目に相応しい楽曲「青春コンプレックス」へ。想像以上にタイトかつパワフルなドラミングの虹夏、あくまでもクールに熱いグルーヴを紡ぐリョウ、うつむきがちな姿勢で強烈なギターソロを弾くひとり、キラキラした笑顔と歌と演奏で陽性のエネルギーを発散する喜多。これまでの舞台でのライブ演奏と比べて、バンドとしてのパフォーマンス力と結束力が明らかに向上していることが一聴してわかる。
挨拶代わりのMCに続いては、「ひとりぼっち東京」「Distortion!!」「ひみつ基地」を連続で披露。「ひとりぼっち東京」でのライトハンドや激しいストロークを伴った演奏で魅せるひとりのギターヒーロー感、「Distortion!!」におけるリョウやひとりが伸び伸びと動きながら楽しそうに演奏する姿、「ひみつ基地」で喜多ちゃんが「まだまだいけますか~!横浜~!!」と呼び掛け、サビでリョウと虹夏がコーラスを重ねる場面など、どの楽曲にも見どころが用意されている。4人ともカラフルな髪色のウィッグに制服姿というキャラクターそのままの見た目ということを含め、ひとりのZepp会場でのライブという夢だけでなく、作品ファンの「もし結束バンドが実在するとしたら」という夢が叶っているような感覚だ。
ここでひとりがはたと我に返り、「これは夢と現実、どっちですか!?」と戸惑っていると、星歌とPAさんが登場して「夢と思ったら夢で終わってしまうんじゃないですか?」と問いかける。そして台風の日に上手くできなかったあの曲をやれば、きっと夢もリアルになるはずと呼び掛け、「見せてよ、ぼっちちゃんのロックを」(星歌)との言葉に続いて、ライブハウス・STARRYでの初ステージが新たな世界線で再現される。「初めまして、結束バンドです!」(喜多)という挨拶に続いて披露されたのは「ギターと孤独と蒼い惑星」。だが、あの日の苦汁を嘗めたライブと違うのは、今、彼女たちの目の前には、Zepp会場を埋め尽くすオーディエンスがいるということ。その熱気も込みで、記憶を塗り変えるような会心の「ギターと孤独と蒼い惑星」を4人は披露した。
その流れから、グランジ感の溢れる演奏がライブハウスという空間にとても似合っていた「ラブソングが歌えない」を挿み、「あのバンド」へ。ひとりの覚醒的なギターソロから始まり、ひと際、焦燥感に満ちた演奏と歌で各々のパッションをぶつける4人。アルバム『結束バンド』に倣った曲順ということを含め、作品へのリスペクトを感じさせる熱いブロックだった。
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