REPORT
2025.06.20
Myukが6月7日に東京・shibuya WWW Xにて、東名阪ツアー<Myuk Live Tour 2025 Message from “Marie”>のファイナル公演を行った。
Guianoとの4作目のコラボレーションとなる新曲「マリー」がTVアニメ『ずたぼろ令嬢は姉の元婚約者に溺愛される』(以下、『ずたぼろ令嬢』)のEDテーマに起用されることが決定し、7月5日に本楽曲を配信リリースするMyuk。今回のツアーは新曲「マリー」と同じタイトルになっており、本楽曲の歌詞の一節を軸にしたコンセプトライブ。本編は一切のMCを排除し、Myukが朗読する<マリーからの手紙>を軸に音楽の旅をテーマにした1つのストーリーが浮かび上がってくるような内容となっていた。
TEXT BY 永堀アツオ
PHOTOGRAPHY BY 木村泰之
開演時間になると、童話のオープニングのようなドリーミーなSEがフロアに流れ始め、Myukと共に、彼女の楽曲に作曲や編曲でも関わっている大久保友裕(g)と山口寛雄(b)、ソロアーティストとしても活動している西野恵未(key)、the peggiesの大貫みく(ds)という豪華なバンドメンバーが姿を表した。オープニングを飾ったのはアコースティックギターの弾き語りにダンスビートが加わる「Black Sheep」。場内からは早くもクラップが沸き起こり、Myukは“自分が選んだステップ”で踊ろうと呼びかけながら、 はぐれものと言われても“私は音楽を歌い続け”るという強い決意を表明。続く「Gift」では手紙を読むような語り口で優しい笑顔を届けると、「夜の舞踏会」ではラテンのビートと弾む恋心でフロアを踊らせ、TVアニメ『約束のネバーランド』Season 2のEDテーマとなったメジャーデビューシングル「魔法」では、オーディエンスの1人1人に呼びかけるように心を込めて歌唱。「Black Sheep」の黒い羊、「Gift」で漏らした“真っ白 雪のような”吐息とため息、ハミングとともに“赤い花”を送った「夜の舞踏会」、“蒼い世界”や“蒼の空”に君を想う「魔法」。黒、白、赤、青という4色を提示した冒頭の4曲は、ここから始まる4つの章のイントロダクションになっているようにも感じた。
ここでMyukは椅子に座り、小さなテーブルランプを灯すと、「お元気ですか?この手紙があなたに届くことを願っています。私は相変わらず旅をしているよ。随分と色々なところに行ったの。この景色、あなたに見せたいな」と綴られたマリーからの手紙を朗読。童話「うさぎとかめ」をモチーフにしたボカロ系のロックチューン「愛の唄」では、“誰かに届く歌を歌いたい”という思いと“あなただけを歌っていたい”という葛藤や、他人と比較してしまう焦燥に悩まされながらも、最後は「少しだけ私を愛せた」というフレーズに辿り着く。そしてライブは「うさぎとかめ」から「ブレーメンの音楽隊」へ。“物語の最後尾 君との記憶を辿る旅をはじめようか”と歌い出す「encore bremen」ではファンキーなダンスビートに乗せて“もう一回だけの旅をしようか”と諦観にも似た姿勢を見せながら、改めて「歌」と「旅」というテーマを提示し、オーディエンスを物語の中に引き込んでいった。
「旅はそう簡単ではなくて。時には困難もあって、危険も孕んでいる。だけど、未知なる場所に足を踏み入れるほうが、知ってる道だけ歩き続けるよりずっと良いの。ねぇ、そう思わない?」という朗読に導かれた「Arcana」からは、Myukの多彩な音楽性と奥深いボーカル表現が堪能できる時間が続いた。“旅の話をしよう”というアカペラから始まり、彼女のルーツである民謡のような唱法を響かせた「Arcana」ではまだ旅の途中であることが知らせる中で、“この目で見た全て これからもこの声で記す”と宣言。「みにくいあひるの子」が下敷きになっている「フェイクファーワルツ」ではオルタナティブロックバンドのような激しい演奏に乗せて、煌めく夢を探しているという思いをストレートに描き出し、ピアノをメインにハンドマイクで歌い上げたラブバラード「Sakura」では和風のメロディラインで“今もまだ あの日のまま”“あなたを 探すよ”という痛みにも似た儚い感情を表現した。
「孤独を感じる時もあるけど、そんな時は、あなたのことを考えるの。そうすると、不思議と横に感じられるから」という朗読を挟んで演奏されたのは「ひとりじゃないよ」。“もうひとりじゃないよ”と繰り返しながら、“遠く離れた場所でも ずっと これからを色づけていく”と音楽を通した繋がりを感じさせる曲を体全体を使ってパフォーマンス。ドラマチックに展開する「シオン」では“未来が待ってる”“未来を描いている”というフレーズを観客と共有し、弾むポップソング「pancake」では会場全体をスイートなムードで包み込んだ。
スクリーンに満点の星空が広がる中で、Myukは4つ目の手紙を読んだ。「たくさんの星の瞬きを見ている時、こんなふうに思う。遠く離れていても、あなたが幸せでいてくれたらそれだけでいいなって。今、この瞬間も、あなたと過ごしたあの時間も、同じ時は2度とない。もう戻れない。でも、それが生きてるってこと。あなたとの全部、覚えていられてたら良いのに。まるで秒針を止めるみたいに」。そして、アコースティックギターの弾き語りで歌い始めた「わたしね、、」で、“大切なあなたを 守れる勇気を 探しに旅に出ます”と告げながら、“二人で行こう”と呼びかける。友達から始まる初々しいラブソング「あふれる」には“魔法かけてきたでしょ”というフレーズがあり、“物語を終わらせたくないさ”と歌っていた「魔法」がフラッシュバックする。
そして、「転んでも傷だらけになっても私は旅を続けたい。だって、世界は美しい。傷跡を忘れるほどに」という朗読から本編のクライマックスである「マリー」へ。“忘れないで あなたは美しい”“覚えていて あなたは美しい”というメッセージをエモーショナルに歌い上げて、最後に「今は今しかないから。泣いて霞んでしまうより、はっきり世界を見たいんだ。でも、もしあなたがどうしようもなく悲しくなって、泣きたくなったら、いつだって泣いていいよ。ただ、あなたの笑顔は誰よりも美しいってこと、忘れないでね。愛を込めて。from Marie」という手紙が読み上げられ、物語はエンディングを迎えた。
大きな拍手を受けてステージに戻ったMyukは、今度は彼女からマリーに宛てた手紙を朗読した。「手紙をくれてありがとう。今日、私は大切な人たちとライブをしています。私が今回のライブを通して伝えたったのはね、人生は色々とあるけど、例えこの世界が醜く見えても、変わらない美しさだってあるってこと。そして、例え自分に嫌気がさしても、あなたは美しいってこと。マリーゴールドの花のように。いつもありがとう。またお会いしましょう。あなたが帰って来るまでずっと愛を歌っているね。それまでお元気で」。
ラストは「今日は会いにきてくれて、この空間を一緒に作ってくれて、私の歌を受け取ってくれて、最高に幸せな時間を本当にありがとうございます」と観客に感謝の思いを伝えた。さらに、来年3月にデビュー5周年を迎えることに触れ、Zepp Diver Cityでのライブ開催を告知。「5周年もその先も、ずっとあなたに歌を届けることが、歌い続けることが私の夢です。またどうかお元気で、次の旅でお会いしましょう」と挨拶し、「かぐや姫」をモチーフに描いたラブソング「花はかぐや」へ。ディスコビートに自然と手拍子が巻き起こり、“愛を歌っているんだよ”というラインを響かせる。そして音楽の旅をテーマにした物語の幕は閉じた。Myukの旅は続く。地図ではなく、物語を広げて、次はどこへ?
<セットリスト>
1 Black Sheep
2 Gift
3 夜の舞踏会
4 魔法
5 愛の唄
6 encore bremen
7 Arcana
8 フェイクファーワルツ
9 Sakura
10 ひとりじゃないよ
11 シオン
12 pancake
13 わたしね、、
14 あふれる
15 Marie
EC1 花はかぐや
●リリース情報
「マリー」
7月5日配信
予約リンクはこちら
https://myuk.lnk.to/0705pspa
Myuk 公式サイト
https://myuk.jp/
Myuk 公式X
https://x.com/myukmusic
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