――そして高校在学中の2014年、Rico名義で歌手デビューします。早くも歌手になる夢を叶えたわけですが、当時はどんな気持ちで音楽活動に向き合っていましたか?
佐々木 嬉しい気持ちはもちろんありましたけど、秋田から東京に来て、すごくキラキラした世界に触れて、色んな大人の皆さんと一緒にデビューのためにレコーディングをして……その時にほぼ初めて芸能界にしっかり飛び込んだので、最初はちょっと怖いというか、ビビってました(笑)。
――ビビってたんですね(笑)。
佐々木 はい。すごく周りを気にしすぎてしまって。その頃は自分の意見を言うのもすごく怖かったですし、目の前のことに本当に精一杯だったので……今振り返ると、自分がなくなりかけていたような気がします。まだまだ子供だったなと思いますし、色んな失敗や後悔もたくさん経験しました。でも、その経験があったからこそ、デビューや楽曲をいただけるのは当たり前のことではないと心から思いますし、一緒に音楽を作る皆さんへの感謝の気持ちを大切にできています。いつか、昔お世話になった皆さんにも恩返しをしたい気持ちで頑張っています。
――Rico時代は、元Superflyの多保孝一さんが楽曲提供されていましたよね。
佐々木 あ、そうなんです!Superflyさんもずっと好きで聴いていて、小学生の頃からカラオケで十八番でしたし、セリーヌ・ディオンさんもそうですけど、魂で歌っている方が大好きで、「こういうアーティストになりたい!」と思っていたので、すごく良い経験になりました。
――当時、自分の中で「こういう歌手になりたい」という具体的な理想像はありましたか?
佐々木 いえ、活動しながら探していた気がします。まず歌手になりたいと思ったきっかけが、“何かの役になる”のではなく、“自分だけの音楽を見つけたい”と思ったことだったので。でも、やっぱり“魂で歌う歌手になりたい”というのはひとつ大きくありましたし、その頃からロックやかっこいい雰囲気が好きだったので、それは今でも軸のひとつになっていると思います。
――その後、2016年から声優としての活動も始めます。それも以前から夢見ていたことだったのですか?
佐々木 はい。アニメは小学生の頃から好きだったのですが、高校生の時に『ラブライブ!』や『プリパラ』が大好きで、そこで声優さんが声だけではなく、実際にステージに立って、お芝居もしながらキャラクターとして歌をうたっている映像を観て「声優さんはこんなこともできるんだ!すごい!」と思って。特に憧れの存在は三森すずこさん。
――『ラブライブ!』では園田海未役として、μ’sで活躍していました。
佐々木 アーティスト活動も声優もやられているのを見て「私もやってみたい!」と思ったんです。ちょうどその頃にタイミングよく、事務所の社長さんに「李子はアニメも好きだし、声優にも挑戦してみない?」と言っていただけて、お芝居のレッスンや声優のワークショップに通うようになりました。それまで経験のあったミュージカルのお芝居とはやり方が全然違っていて、難しさも感じたのですが、逆に燃えるというか「もっと研究したい!」という気持ちになって、声優の世界に飛び込むことができました。
――先ほど『プリパラ』の名前が挙がりましたが、佐々木さんは同作の後継シリーズとなる『キラッとプリ☆チャン』でだいあ/虹ノ咲だいあ役を務めました。
佐々木 自分が好きだった作品に声優として出演させていただけて本当に嬉しかったです。「アニー」の時と同じで、夢は思い続けていたらいつか叶う、小さいものでも大きいものでも夢を持つのはすごく素敵なことなんだなって改めて思いました。しかも『プリ☆チャン』では(白鳥アンジュ役の)三森すずこさんともアフレコをご一緒させていただけて……思い描いていた夢が現実になって、もう、嬉しすぎてアフレコ現場で泣きました(笑)。
――当時、三森さんにそういった想いは直接お伝えしたのですか?
佐々木 はい。アフレコブースで「ずっと憧れていて……」とお話しさせていただいて。でも、あまりにも想いが溢れて大号泣しそうになったので、さすがにそれは迷惑になってしまうと思って、席を外してお手洗いでワーッて泣いていました(笑)。一歩ずつ、本当に少しずつですけど、前に進めていることを実感できましたし、まだまだ頑張りたいという気持ちにもなりました。
――だいあ役で歌ったキャラクターソング「フレンドパスワード」は、アーティスト名義でもセルフカバーしていますし、本当に大切な作品になっているんですね。
佐々木 キャラクターとしてではなく、佐々木李子として向き合って歌いたい楽曲にも巡り合うことができましたし、『プリ☆チャン』では幕張メッセという大きな会場で初めてソロで1曲歌わせていただく経験もさせていただいて。もっと大きな存在になりたいと思えた、すごく大切な経験です。
――その他に声優の活動で、ご自身の中で転機になった出来事や作品はありますか?
佐々木 声優としては、やはりデビュー作の『想いのかけら』ですね。東日本大震災復興応援キャンペーンの一環として、NHKで放送されたアニメなのですが、役を演じるのは初めての経験で、そこでアフレコの大変さ、マイクの前で情景や距離感を声だけで表現しなければいけない難しさを知りました。その時に共演した安野希世乃さんや声優の方々の生のお芝居を間近で体験して、そのすごさに圧倒され、もっと勉強しないといけないと感じました。
――『想いのかけら』では、アーティスト・佐々木李子としてED主題歌「想いのかけら」の歌唱も担当していました。
佐々木 はい。作品や楽曲を通じて、東北の方から「元気をもらいました」というお声をたくさんいただいて。その時に、音楽だけではなく、作品を通しても、色々なメッセージを伝えることが出来ることを知りましたし、私も色んなキャラクターを演じることで、作品に込められた想いやキャラクターの気持ちを多くの人に届けたい、と思うきっかけになりました。他にも『バンドリ!(BanG Dream!)』はもちろん転機になった作品ですし、全部が今の自分に繋がっています!
――Ave Mujicaの三角初華/ドロリス役もそうですが、『かげきしょうじょ!!』の山田彩子役にせよ、『ワールドダイスター』の流石知冴役にせよ、佐々木さんはやはり歌える役どころを多く演じている印象です。
佐々木 自分自身がすごく共感できるキャラクターを演じさせていただくことが多くて、演じながら自分も元気づけられることが多いです。『かげきしょうじょ!!』の山田ちゃんは「私もこういう気持ちになったことがあるな」と感じましたし、キャラクターに色んな大切なことを教わりながら、自分も学びながら進んできた感じです。キャラクター1人1人との出会いにも本当に感謝しています。
――キャラクターソングを歌う際に意識していること、普段のアーティスト活動に影響なり還元されている部分はありますか?
佐々木 キャラクターとして歌う時は、普段の佐々木李子ではしないような表現をすることが多いです。例えば『邪神ちゃんドロップキック』のぽぽろんちゃんのキャラクターソングは、普段の私とは真逆と言っていいくらい声色の違う、アイドルのようなかわいい声で歌い続けなくてはいけないので大変なんです。でも、そのおかげで普段使わない部分で歌う感覚を知ることができましたし、自分は低音を響かせる歌い方だということに気付くことができて。それとキャラクターになりきることで初めて知れる気持ちもあります。ぽぽろんちゃんは世渡り上手で小悪魔っぽい感じですけど、私は自分の曲でそういう気持ちを歌うことはなかったですし、作詞する時もそういう言葉は出てこない。その意味で、自分の世界が広がっていく感覚があります。
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