INTERVIEW
2025.04.23
女性アニソンシンガーとして様々な実績を残し、現在も精力的に活動を続ける奥井雅美。彼女の新曲「Baby Baby Baby」は約3年ぶりとなるソロでのアニメタイアップ。ボーカル兼作曲のボンジュール鈴木との共作と話題性が高く、彼女の新たな一面を見せた1曲となっている。今回の楽曲に込めた想いに加え、今後目指していきたい方向性についても語ってもらった。
INTERVIEW BY はるのおと
TEXT BY 河瀬タツヤ
――今回の「Baby Baby Baby」はランティスから約8年ぶりのシングルリリースとなります。
奥井雅美 もう歌手としてはキャリアも長く、今ここに来てシングルリリースやソロでのタイアップをいただけるとは思っていなかったんです。そんななかで約8年ぶりの(ランティスからの)リリースということにまず驚いています。すごくありがたい話だなと思ったので頑張りました。
――表題曲「Baby Baby Baby」は、TVアニメ『履いてください、鷹峰さん』のOPテーマになっています。本作はお色気要素のあるラブコメ作品で、奥井さんがこういった作品の主題歌を歌うのは少々驚きました。
奥井 過去にはセクシーな感じの作品、TVアニメ『爆れつハンター』のEDテーマ「MASK」やアニメ『これが私の御主人様』のOPテーマ「TRUST」も歌っていますけど、(楽曲は)そういう雰囲気で攻めなかったので、そう思われるのかもしれませんね。これまでのかっこいい系の奥井雅美だったり、ステージで火を焚くようなJAM Projectでの熱い音楽のイメージが強いと思いますけど、その反動でソロのオリジナル曲ではバラードをやっていたりもするので「奥井雅美と言えば」みたいなのは意外と自分ではわからないんです。そういう意味では、私と若い頃から関わっていない方のほうがこれまでとは違った一面を発見してくれる。今のレーベル担当の方は私よりお若いのですが、おかげで今回の「Baby Baby Baby」ではアニメ関連ではやったことがないようなジャンルの曲に挑戦させていただけて。自分の中の可能性を感じられる1曲になりました。
――奥井さん自身で作詞をされていますが、作品に触れたうえでどういった歌詞にしていこうと思ったのでしょうか?
奥井 上辺だけ見るとちょっとエッチな部分が出てくるんだけど、読み進めていくとヒロインの鷹峰(高嶺)さんの恋心というピュアな部分がすごく感じられる作品で。アニメではセクシーな部分が押し出されるということはわかっていたけど、個人的には内面の部分を表現したかったので、そこを探って作詞していきました。
――そして今回の楽曲はボンジュール鈴木さんとの共作です。お二人は同じ事務所に所属しているなど共通点もありますが、以前から知り合いだったのですか?
奥井 元々知り合いで、その後で事務所も一緒になっているんです。ボンちゃん(ボンジュール鈴木)は私がOPテーマ「輪舞-revolution」を歌ったTVアニメ『少女革命ウテナ』が好きで、リスペクトは仲が良くなっても感じる時がありますし、音楽的な部分でも背中を見られているなと思います。今回アニメ制作サイドからいただいた参考曲は私がこれまでやってきた90年代や00年代初期のアニソンの雰囲気とは違ったすごく大人っぽい曲だったので、これは私が作るよりもボンちゃんに楽曲制作してもらったほうがより良くなるのではと事務所の社長とも話をして、せっかくならボンちゃんと一緒に歌ったらどうかなとなったんです。そうすれば私には出せない色を出せるし、良い化学反応も生まれるだろうということで。
――ボンジュールさんの印象もお聞きしてみたいです。
奥井 彼女はロリータ衣装のインパクトが強いですけど、楽曲作りに関してはものすごく職人だと思うんです。彼女が作った曲に私が歌詞と仮歌を入れて「ボンちゃんはこの部分をどう歌うのかな?」と思いながら渡したら、私の予想以上に自身に合った歌い方をしていたし、レコーディングの時にその場で曲やアレンジを変えたりしていて。音楽作りの職人的な部分から彼女のセンスの良さを感じました。あと、彼女と同世代の人たちは打ち込みからアレンジまで全部自分でやられる方が多くいるので、そこは本当にすごいなと思います。
――やはり自分の引き出しにないものに触れるのは楽しいものですか?
奥井 私は元々バックコーラスをやっていた人間なので、割と難しいことをやりたがるんですよ。これまであまりやっていないことに挑戦することは自分のためにもなるし、自分にないものに触れるのはすごく楽しいです。例えば「宝箱-TREASURE BOX-」は草野華余子さんに曲を作ってもらいましたけど、彼女の曲を自分が歌うのとLiSAちゃんが歌うのでは全然違うものになるところとかすごく面白いなと思うし、ボンちゃんも彼女の歌声を聴いたら自分と全然違う感じで攻めてくるんだと感じて、ボーカリストとしてもすごく刺激になります。アニソンシンガーでも若い世代の人たちはどんどん歌い方が変わっているので、その人たちの曲を次の世代が聴くことでさらなる変化に繋がっていくんだろうなと思いますね。
――今回の楽曲はボンジュールさんとのデュエットです。彼女の歌を聴いて普段とは違う歌い方を意識されたりということは?
奥井 それは全然ないですね。例えばロックだったらこう歌う、16ビートのダンスミュージックだったらこう歌うとか、若い頃からサウンドに合った歌い方に変えていたので。今回はメロディも大人っぽくてちょっと色気があり、かつかわいさもあったりする曲なので、自分のキャラクターも残しながらしっかりサウンド感に合うものを目指して歌いました。ただボンちゃんはフランス語や英語が堪能なので、そういう意味で新たな刺激は受けたし、新たな引き出しも開きました。例えば歌詞のフランス語の部分はボンちゃんが曲を作った時に適当に歌って入れた部分だったんですけど、「このフランス語は素敵だから絶対に残したほうがいい」と思って彼女と相談して入れたりもしました。
――奥井さん的に特にお気に入りのフレーズを教えてください。
奥井 これは昔からなんですけど、アニメのタイアップであっても日常生活でも使えるようなフレーズを歌詞の中に入れたいと思っていて。例えば自分が聴いてキュンとなったり、背中を押されたりするような、自分が普段から言いたい言葉を歌詞にできるだけ盛り込んでいます。そういう意味で全部お気に入りなんですけど。デモにも入っていた“DuDaDan DaDaDa oh Baby”というボンジュールさんのコーラス部分がすごく好きで。あとDメロの“キミとだから”の部分は曲の中でグッとくる部分なのでとてもお気に入りです。なので歌い分けの順番もDメロを中心に決めていきました。
――ちなみにDメロの前のささやくようなパートはボンジュールさんですか?
奥井 ボンちゃんのフランス語ですね。あれはセリフというか、歌詞カードに乗らなくていい演出的な部分なので、いわば調味料です(笑)。
――フランス語ができる人は是非解読してほしいですね。最終的に出来上がった曲を聴いた時はどうでしたか?
奥井 アレンジャーはいつも一緒にやっている鈴木Daichi秀行くんなのですが、トラックダウンも含めてすべてがお洒落で今っぽくなったので、私はもう大満足です。1人で作ったらこんな感じにはならなかったし、自分の中ですごく盛り上がっています。
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