――シンフォニックメタルと呼ばれるジャンルもあるくらいなので、クラシックの素養はメタル向きだったのかもしれないですね。ちなみに豊田さんはAve Mujicaのライブをご覧になったことは?
豊田 映像では拝見させていただいております。本当に「現地に行きたい!」と何度思ったことか(笑)。あの空間にいることにすごく特別感があるのがAve Mujicaのライブ……というかマスカレード(Ave Mujicaのライブの名称)だと思うので。
渡瀬・高尾 ありがとうございます!
豊田 それとライブにもストーリー性があって、演奏の間に皆さんの会話やセリフがあることで生まれる没入感、楽曲の受け取り方の深みが増して自分が見えていなかったところまで魅力に触れられるのがAve Mujicaのマスカレードなんだと感じます。すごく作り込まれた世界観ですよね。
高尾 私も個人的に、お客さんが夢の中にいるような感覚になっていただければと思いながらパフォーマンスさせていただいているので、その感想は本当に嬉しいです!楽曲の合い間に幕間劇があるのですが、この間の4th LIVE(2024年12月15日に行われた“Ave Mujica 4th LIVE「Adventus」”)では初めて実際にその場で声を発してセリフを演じたんです。その流れからそのまま演奏すると、セリフの時の気持ちが込み上げてきて、演奏中に涙をこらえるのに必死になったりして。それくらい演者側も世界観に入り込んでライブをしている感覚があります。
渡瀬 それまでのライブでは事前にセリフ音声を収録して皆さんにお届けしていたんです。その中でも1st LIVE(2024年1月27日に行われた“Ave Mujica 1st LIVE「Perdere Omnia」”)では、収録音声に合わせて私たちが動いて演技をする見せ方だったのですが、4th LIVEはそれに似たものを感じましたし、その時以上に自分たちもその世界に入り込む感覚が強くありました。
高尾 確かに。1st LIVEの時はしゃべれない人形としてステージに立っていたけど(※メンバーが人形という設定で物語を演じていた)、4th LIVEはちょっと人間になれた感じがした。
渡瀬 ね。「私たち、しゃべってる……!」って思った(笑)。
――でも、ステージ上でセリフも発して演じるのは負担も大きかったのでは?
高尾 私は負担だと思うことが全然なくて。ふわふわしている感覚というか、流れに身を任せていたら、気付くとライブが終わっていた感じでした。
渡瀬 すっごーい!
高尾 でも、みんなそうじゃない?
渡瀬 それで言うと、私も4th LIVEはある意味全然緊張しなくて、自然体でできた感覚があったかも。没入はしているんだけど、自分がこの辺(自分の頭の上を指す)にいて客観視しているような感じがあって。
高尾 えー!それって幽体離脱ってこと?
豊田 幽体離脱のお話、この間のインタビューでもしていましたよね?
高尾 でも、それは別のメンバー(佐々木李子)だったので。もしかしたら最終的にAve Mujicaのメンバーは全員幽体離脱できるようになるのかなあ。次は私かもしれない(笑)。
渡瀬 私もりこち(佐々木の愛称)の話を思い出して「ああ、この感覚かなあ」と思った(笑)。
豊田 4th LIVEは私も映像で観ていて、生声のセリフが加わることで皆さんが演者としてキャラクターと重なった感覚がすごくありました。もちろんそれまでのマスカレードもセリフはあったのですが、リアリティが変わったというか本当にそこにいるという実感があって。きっと受け取る側も少しずつAve Mujicaの世界観がわかってきたなかで、会場全体を通してひとつの世界観が出来上がっている感じが、画面越しからも伝わってきたんだと思います。でも配信だと最後まで観られなかったんですよね。「えー!ここから先は観れないんですか?」と思って。
――配信ではカットされましたが、現地ではTVアニメ『BanG Dream! Ave Mujica』#1の先行上映が行われた後に、同アニメのOPテーマ「KiLLKiSS」をサプライズでライブ初披露したんですよね。
豊田 番組のリスナーさんに「現地までライブを観に行きます!」という方がいたので、Xで感想をパブサしていたんですけど、その方がネタバレがない状態で私にどう感想を伝えようか、ということをポストしているのを見かけて(笑)。あの衝撃を会場で受け止めたのは羨ましいなあと思いました。
高尾 歓声がすごかったよね。
渡瀬 すごかった!父が会場まで観に来てくれていたんですけど、普段は泣かない父がボロボロ泣いたと言っていたんですよ。
高尾 私も色んな方から「ライブで涙が出ました」という感想をいただいて。別に泣かせるような演出があったわけでもないので私たちもびっくりしました。「KiLLKiSS」はどちらかと言うと疾走感があって、泣くような曲ではないので「涙?」と思って。
豊田 きっとみんなに共通して訴えかけるものがあったんでしょうね。
――TVアニメの#1でメンバーが仮面を外した流れで、皆さんも初めて仮面を外した状態でステージに立ったわけですからね。お二人としてはどんな気持ちでしたか?
渡瀬 なんか変な気持ちでした。私たちは普段の活動において顔を隠しているわけではないので、みんなもそれぞれの顔を知っているはずなんですけど、Ave Mujicaとしては初めてステージ上で顔を出すのはとても緊張して。「こんなに気持ちが変わるんだ……!」と思いました。
高尾 出る直前まで、みんなで「仮面を付けてないけどいいのかな?」という話をしていたもんね。でも、私はすごく楽しくなりました。「KiLLKiSS」の冒頭はメンバーみんな後ろを向いて顔を見せない状態でスタートして、イントロでバンドがインするタイミングで一斉に前を向いて顔を見せる、という演出だったので、後ろを向いている時はみんなの反応に対する期待感ですごく高揚して。
渡瀬 わかる!前奏のストリングスの時からお客さんがざわついているのがわかったんですよ。アニメ#1の流れで、私たちが後ろを向いていたので、きっと察していたんでしょうね。「これはもしかして……!」みたいな気持ちが背中から伝わってきました。
高尾 私もその雰囲気を背中にすごく感じながら、「今から(顔を)見せるよ!」と思ってスタンバイしていました(笑)。最初はアイデンティティが無くなってしまうかもしれないという不安もありましたけど、それ以上に皆さんが喜んでくれていたので、あの時はすごく気持ち良かったです。
渡瀬 気持ち良かった!1年以上顔を隠して、仮面のインパクトも込みで伝えてきたバンドだったけど、私たちの表情がしっかりと見えるのはきっと嬉しいだろうなと思いますし。
豊田 素顔で向き合えるというのは、ライブにおいて大事なことですものね。
――表情の話で言うと、「KiLLKiSS」の2サビに入る前、高尾さんが“code ‘KiLLKiSS’ uh..,”とつぶやいてポーズを決めるアクションが素晴らしかったです。
高尾 あの部分はレコーディングの時も1000本ノックみたいな感じで何度も録らせていただいた箇所なんです。「ここのセリフでこの楽曲の良し悪しが決まります」と良い意味でプレッシャーをかけていただきながら、「まだいける!」と何度もチャレンジしてOKをいただいたのが音源になっているのですが、アニメのライブ映像ではオブリビオニスが口に手を当てている描写があったので、ライブ本番ではそれに合わせてやらせていただきました。でもアニメでは(オブリビオニスの)目の部分が映っていないので、目の表情は私のオリジナルです(笑)。
――それとアウトロの掻き回しの時に、渡瀬さんがステージの前の方に前進してきたのも印象的でした。個人的には0th LIVE(2023年6月4日に行われた“Ave Mujica 0th LIVE 「Primo die in scaena」”)のラストでの動きを思い出したんですよね。それはつまづいて態勢を崩したのをフォローするために前に出たという話でしたが。
渡瀬 あの時は意図せず転ばせていただいて(笑)。でも、0th LIVEと合わせようという意識はまったくなくて、(客席の)みんなの熱気がすごかったので、自分も近くでそれを味わいたい!と思って。気付いたら前に出ていました。みんなの表情がすごく良かったんですよね。とても記憶が高揚しました。
高尾 (他のメンバーも)みんな笑ってたよね。最後の掻き回しも今までで一番長くしようという話を事前にしていて。ドラムのあかねん(米澤 茜)が、「こういう風にしたい」っていうドラムパートの掻き回し映像をみんなに送って共有してくれたんです。
渡瀬 あの映像、1分くらいあったよね?
高尾 そうそう。「掻き回しが1分もある!」と思って(笑)。私も今までで一番クレイジーな弾き方をしたいなと思ってやった掻き回しでした。
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