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REPORT

2024.12.05

アーティスト活動10周年を目前に――水瀬いのりの“お気に入り(=ブックマーク)”が詰まった“Inori Minase LIVE TOUR 2024 heart bookmark”最終公演レポート

アーティスト活動10周年を目前に――水瀬いのりの“お気に入り(=ブックマーク)”が詰まった“Inori Minase LIVE TOUR 2024 heart bookmark”最終公演レポート

こんなにも伸び伸びとしたライブを披露する水瀬いのりを観たのは初めてかもしれない。今年9月から兵庫、広島、愛知、福岡、北海道、千葉の6都市7公演を巡ったライブツアー“Inori Minase LIVE TOUR 2024 heart bookmark”の最終公演。11月3日、千葉・LaLa arena TOKYO-BAYで行われたライブでの彼女は、バンドの演奏とファンの歓声にその身を委ねて、心から楽しそうに歌っていた。アーティスト活動8年目にして辿り着いた境地、等身大の“素直な自分”としてステージに立っていた彼女の今をレポートする。

TEXT BY 北野 創
PHOTOGRAPHY BY 加藤アラタ(Kato Arata)/三浦一喜(Miura Kazuki)

水瀬いのりが“heart bookmark”に込めた想いとこだわり

今年8月にリリースされた1stハーフアルバム『heart bookmark』を引っ提げた今回のツアー。“heart bookmark”とは水瀬本人が考案したタイトル。来年にはアーティスト活動10周年を迎えるなかで経験したたくさんの思い出を“心のしおり”に例え、その思い出の1つ1つをこれからも大切にしていきたいこと、しおりを挿んだその先には続きのページ(=物語)があるということ、さらには彼女自身の“お気に入り(=ブックマーク)”が詰まったライブであることなど、様々な想いが込められている。

また、本ツアーではいくつかの新しい試みが見受けられた。1つ目はバンドメンバーの増員。“いのりバンド”と呼ばれる彼女のライブのバックバンドは、ギター2名、ベース、ドラムス、キーボードの5人編成がこれまでだったが、今回はそれに加えてバイオリンとパーカッションが参加。千葉公演は、バンドマスターのみっちーさんこと島本道太郎(b)、ふっふーさんこと藤原佑介(ds)、おばちゃんこと小畑貴裕(key)、じっじーさんこと植田浩二(g)、どらちゃんこと沢頭たかし(g)、にゃんちーこと若森さちこ(per)、すまりこと須磨和声(vi)、そしてマニピュレーターのあらちゃんこと荒島弘樹がライブをサポートしていた。

にゃんちーとすまりは、今年2月・3月に行われたファンクラブ限定のアコースティックライブ“いのりまち町民集会2024 -ACOUSTIC LIVE Wonder Caravan!-”で初めて水瀬のライブをサポート。その時の出会いがきっかけで、水瀬本人たっての希望により本ツアーへの参加が決まったという。実際、彼女の持ち曲にはストリングス入りのナンバーも数多くあり、キャリアを重ねるにつれて曲調の幅も広がっているなかで、それらを生演奏で再現できるのみならず、いつもとは違ったアレンジに挑戦できるという意味でも、バイオリンとパーカッションの参加は良い結果をもたらしていたように思う。

2つ目はシンクロライトの導入。シンクロライトとは、LEDライトの端末をライブ運営側が制御し、楽曲や演出に合わせて一斉に色を切り替えることで、ライブの一体感を演出するシステム。今回のツアーでは入場時に腕輪型のシンクロライトが貸し出され、特定の楽曲で会場全体が同じ色に染まって美しい景色を作り上げた他、バンドメンバーの紹介時には各メンバーの担当カラーに切り替わるなど(いのりバンドのメンバーには担当カラーが割り振られている)、ライブの臨場感を高めるのに一役買っていた。

そして、これはライブ中のMCで触れられていたのだが、水瀬本人がセットリストの大枠を考案したというのも、本ツアーならではの変化と言えるだろう。前回のツアー“Inori Minase LIVE TOUR 2023 SCRAP ART”では、まずプロデューサーがベースとなる案を考えたうえで自身の歌いたい楽曲をパズルのように当てはめていったとインタビューで語っていたが、今回は最初に自分で楽曲を選定したうえで、スタッフとの協議・調整を経てセットリストを確定したという。インタビューやMCでも度々語っているとおり、アーティスト活動を始めた当初はどちらかというと受け身で、与えられた楽曲や提案されたセットリストをいかに歌い表現するかというスタンスで活動してきた水瀬だが、4thアルバム『glow』(2022年)では“自分らしさ”を見つめ直すことでより等身大の自分を作品に落とし込み、それが最新作『heart bookmark』のコンセプトに繋がっていったことを思うと、セットリストにおいても“自分らしさ”を追求した本ツアーは、今の彼女のモードを知るうえで重要な公演になっていたように思う。

ライブだから伝えられるファンへの真っ直ぐな気持ち

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