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2024.01.24

fripSideの過去、現在、未来が繋がる――熱狂の一夜となった“fripSide 20th Anniversary Festival 2023 -All Phases Assembled-”をレポート!

fripSideの過去、現在、未来が繋がる――熱狂の一夜となった“fripSide 20th Anniversary Festival 2023 -All Phases Assembled-”をレポート!

2002年の結成以降、アニメ/ゲームシーンにおけるデジタルサウンドを現在まで牽引してきたfripSide。八木沼悟志が生み出し、人々を熱狂させてきた数々の楽曲たちは、2000年代、2010年代、現在とシーンに計り知れない影響を与えてきた。そして幾度となく歴史を塗り替える音楽を鳴らすfripSideには、八木沼と数々のボーカリストたちの歌声があった。あれから20年あまりが経った2024年1月8日、神奈川・ぴあアリーナMMにて開催された“fripSide 20th Anniversary Festival 2023 -All Phases Assembled-”はそんな歴代のボーカリストが集まった一大フェスだ。およそ4時間にわたる熱狂の一夜をレポートしていこう。

★ライブのセットリストをまとめたSpotify playlist「fripSide 20th Anniversary Festival 2023 -All Phases Assembled-」はこちら

PHOTOGRAPHY BY 中村ユタカ/伊藤真広
TEXT BY 澄川龍一

20周年フェスの幕開けは、歴史の始まりと共に――fripSide 1st Phase 2002-2009

2023年6月の延期から約半年、会場をぴあアリーナMMに変えて開催されたfripSideの20周年記念フェス。アリーナクラスでのワンマンは実に2年ぶりということもあり、ここ最近のライブハウスやホールの雰囲気とはまた異なる、大勢の観客と共に開演を待つこの雰囲気も懐かしくもある。またそこにはかつてのボーカリストも含めたものになるという期待感も含むもので、naoとの1st Phase、南條愛乃との2nd Phase、そして上杉真央&阿部寿世との3rd Phaseと、それぞれのフェイズを楽しみにしながらもそれがどう融合していくのかという、まさにフェスのようなワクワク感がアリーナを埋め尽くしていた。

やがて会場が暗転すると、巨大なステージ中央のLEDモニターには、時計の画像が映し出された。第1期のアンセム曲「hurting heart」の物悲しいピアノver.の旋律と共に、その時計の針はゆっくりと、本来とは逆に進んでいく。そしてその背景には、まだ記憶に新しいコロナ禍での風景など様々な世界情勢を思わせる映像がフラッシュバックしていく。そしてそれが最後には壮大な地球の映像をバックに、“2002”という数字とそこから旅が始まったことを示す一文が記され、歴代のCDジャケットが次々と映し出されていく。会場には、これまでライブのオープニングで鳴らされてきた印象深いインストゥルメンタルが流れている。それが終わったとき、これも変わらずfripSideのトレードマークとなっていた“This desire is bound in the melody”というサウンドロゴが鳴らされ、いよいよ待ちに待った20周年フェスが幕を開けた。そしてフェスらしくモニターに映されたアタック映像には、“fripSide 1st Phase 2002-2009”という文字が打ち出される。最初のアーティストは、第1期fripSideだ。

待ってましたとばかりの大歓声のなか、そのまま間を置かずにあの印象的なボーカルメロディが鳴り響く。その声は紛れもなく初代ボーカリスト、naoのものだ。そしてそこで聴かれるメロディは、これまでのfripSideのライブを彩ってきた名曲「magicaride」のイントロである。ゆったりとした冒頭のメロディを歌いきったあと、爆発的なバンドサウンドが加わり加速、ステージ奥には真っ赤な衣装をまとったnaoの姿があった。彼女が「盛り上がっていくぞー!」と叫びステージ前方へと躍り出る。そしてその隣りには、多くのシンセに囲まれた八木沼の姿。2000年代を席巻した第1期fripSideがそこにいる――そのルックだけでも感動的だったが、naoの喉から聴かれる凛とした、巨大なアリーナに突き抜かれるようなボーカルの魅力はあの頃のまま、センティメンタルなメロディに変わらず瑞々しさを与えている。特にサビでのハイトーンは絶品で、改めて彼女の唯一無二の声というものがこの1曲で味わうことができた。もちろん観客は開幕から耳をつんざくような大歓声、そして眩しいばかりのペンライトでそれに応える。そんな光景を、終始嬉しそうに見渡しながらプレイする八木沼の姿もまた印象的だった。

そのままセットは続いての「never no astray」へ。初期fripSideらしい少し青さも残る切ないメロディが印象的なこの楽曲でもnaoの甘く切ない声は素晴らしい。初めて第1期のライブを観るファンも多いであろうなかで、観客を一気に引き込んでいく。そして続くMCではnaoが「fripSide……1st Phaseでーす!」と、どこかたどたどしい自己紹介からスタート。およそ20年前にこの2人でスタートしたfripSide、八木沼も「お客さんが0人だったのが、まさかこんなことになるとは……」と感慨深く語っていた。また肩肘張らない2人のトークも懐かしくもありつつ新鮮な雰囲気で、楽曲の張り詰めた空気とは一変してのリラックスした空気が感じられた。そこから「spiral of despair」でセットが再開すると、再びキリッとした緊張が戻る。硬質なビートの中でnaoの浮遊感のある独特なボーカルが聴かれたあとは、これもまた人気の「sky -version 2008-」へ。歌い出しから大歓声が起こるなか、青い色のペンライトが会場に灯される。途中で八木沼のコーラスも入ると、naoもまた八木沼のほうを向いてハーモニーを聴かせる姿が、ノスタルジックな魅力の楽曲にさらなるエモーションを加えていた。そして続く「save me again -version 2023-」(『infinite Resonance 2』のアレンジだ)でも、八木沼によってサビのハモメロがリフレインされるなか、そこにnaoが加わるエンディングも感動的だ。直後のMCでも「先生(八木沼)のコーラス、イケボイケボ」と言うと、少し照れた仕草を見せる八木沼という、1期ならではの関係性が見られるのもほっこりさせる。続いて披露されたのは「Red -reduction division-」。赤くライトアップされたステージ上で真っ赤な衣装のnaoが立ち、その背後には赤い月が照らされているという幻想的なステージに、観客のボルテージもさらに上昇。必殺の破壊力を持つサビに、赤いペンライトと共に大きく腕を振り上げる姿が多く見られた。先のMCでは「1期の曲でこんなにも盛り上がってくれて嬉しいです」と言っていた八木沼だったが、さらなる熱狂の渦にある会場の、すり鉢状の客席を見上げながら嬉しそうな表情を浮かべていた。そこから、ダンサーを従えて切ないボーカルを聴かせる「come to mind -version 2022-」を聴かせたあとは、この1st Phaseの最後のMCへ。八木沼は「2期の南條(愛乃)さん、3期の2人と古い曲を大切にカバーしてきてくれたんですね。これがfripSideの良さ」と語る。こうして第1期の曲が埋もれずに歌い継がれてきたからこそ、この日を迎えられ、そしてこのような熱狂を生んだのだ。そしてその大きな立役者であるnaoに、八木沼は「naoちゃん、改めて来てくれて本当にありがとう」と感謝を述べた。そして最後のブロックに突入、「true eternity」では爽やかなサウンドにnaoも観客と共に大きく手を振る。そしてそのあとに歌われたのは、第1期fripSide最後の楽曲にして唯一のアニメ主題歌である「flower of bravery」だ。まさかこの曲を聴くことができるとは……というこの日最大のどよめきをアリーナに起こし、オレンジとピンクが入り混じるなか、伝説の1st Phaseのステージは幕を閉じた。

お祭りを彩るゲストとのコラボレーション――fripSide 2nd Phase×angela

1st Phaseの衝撃がまだ余韻としてアリーナに残るなか、続いてのアタック映像に映されたのは、“南條愛乃×angela”というもの。観客としては息を整える間もなく訪れたコラボに観客は大歓声を送る。しかしその次に鳴らされたのは「sister’s noise」のイントロなのだから、その歓声はもう一段階大きくなっていくという、ちょっとした狂乱状態のなかセットがスタート。まずはステージ前方から南條が最初のフレーズを歌えば、後方からリフターで登場したangelaのastukoがそのあとを継ぐ。南條のボーカルによるfripSideも2年ぶりながら、そこにatsukoのパワフルな歌唱が加わることで、またangela・KATSUのギターも合わさって、これまでとはまた違う太いサウンドが形成されていく。そのなかで南條とatsukoのパフォーマンスは自由で、8人のダンサーがステージを彩るなか2人が手を繋いだりしながらこのコラボを楽しむ姿が見られた。そこからKATSUだけが残って、続いてはfripSide 3rd Phase×KATSUのコラボへ。

曲は2期の「LEVEL5 -judgelight-」だ。オレンジの異なる衣装を身につけた上杉と阿部のボーカルは、先ほどの「sister’s noise」を引き継ぐかのように、全体的にサウンドもリフトアップされた印象。特に阿部のボーカルはドスンとパワフルな印象が強い。八木沼も途中でシンセから離れてKATSUと絡んだりと、コラボを楽しんでいる様子だった。

この日の出演アーティスト全員の顔見せが終わったあとは、fripSide 2nd Phase×angelaのステージへ。fripSideのライブでは2017年のさいたまスーパーアリーナで行われた15周年ライブ以来となるこのコラボレーション。まずはangela×fripSideによる「僕は僕であって」からスタート。南條とatsuko、久々に完全体となるこの2組のパフォーマンスはとにかく爆音でストロング、そのなかでダークでヒロイックなムードの中でatsukoと南條のハーモニーは、およそ5年ぶりとは思えないほど息がぴったり。KATSUが客席を煽るなか観客も骨太なレスポンスを返すという重厚なステージを展開していく。

続くMCでは八木沼が「angela×fripSideです!」と名乗ったあとに、angelaも自己紹介。過去の共演では(あるいはfripSideがいないところでも)「私たち、fripSideです!」と言ってきたatsukoだが、今回は「私たちは、第4期fripSideでーす!」と怪気炎をあげる。アニソンシーンを代表する男女デュオ2組が揃ったところでMCは実に騒がしく、久々の2nd Phaseの顔見せにも肩の力が抜けたムードが漂う。そのなかで続いて披露されたのはfripSide×angelaとしてリリースされた「The end of escape」。「僕は僕であって」の雰囲気を引き継いで、よりダークなムードのなかでおどろおどろしいデジタルサウンドが聴かれる。ここでも南條とatsukoは手を繋ぎながらリラックスした雰囲気を見せつつも息のあったユニゾンを聴かせたり、途中KATSUの狂乱のギターソロも含めて双方のアグレッシブな側面が見られたステージとなった。

歴史を背負いながら、新しい今を作り上げる――fripSide 3rd Phase

実にフェスらしいお祭り感たっぷりなコラボが見られたあとは、現在のfripSide・3rd Phaseのステージへ。上杉真央、阿部寿世のツインボーカル体制として2022年に幕を開けた第3期fripSideは、今年に入ってもカウントダウンライブを含めて1月から精力的なライブを行ってきた。この日の4日前には東京でツアーファイナルを迎えたばかりということで、中3日というスケジュールでの登板となったのだが、逆に言えばグループの状態として温まり切った状態でステージに立っているともいえる。1曲目「Invisible Wings」からそれを裏づけるような、力強い初動を見せつけてきた。4日前の東京公演も素晴らしかったのだが、今回はそこにさらなる気合いが乗っているのか、とにかくボーカルのアタックが強い。デビュー以降、その実力が広く知られていたが、ここではこれまでの経験を踏まえて生まれた熱量と気合いとなってパワフルに響いている、そんな印象だった。続く「dawn of infinity」では第3期の特徴でもある2人のハーモニー、そしてダンスを交えたステージングが大いに発揮され、それに対して観客もオレンジ色のペンライトを輝かせて応える。思えば2年前にさいたまスーパーアリーナでの初お披露目の際に披露されたこの曲だが、この日見せた2人のパフォーマンスは、それを圧倒的に凌駕する成長を感じさせるものだった。

短いMCで八木沼が「ここからは3期の盛り上がりを見せたい」と宣言してからは、まさに現在のfripSideを見せる、最新アルバム『infinite Resonance 2』からの楽曲たちが続く。キレのあるシンセリフが鳴らされるなか阿部が観客を煽る「an Effect of Fate」では、上杉の凛々しいボーカルを聴かせる。そこに阿部がハーモニーを乗せるなど、第3期ならではの重曹的なボーカルを聴かせていく。そこから英語詞の「more than you know」をクールに聴かせたあとは、一転して美しいバラード「Insoluble Snow」をエモーショナルに聴かせる。八木沼のソングライティングが様々なアプローチを見せるなかで、そこに対応する2人のボーカルのクオリティの高さが第3期の魅力だが、その凄みが存分に発揮されていった。続いては阿部のソロステージとなり、「with a smile」のポップなサウンドが鳴るなか、キレのあるダンスを見せながらキュートなボーカルを聴かせるというパフォーマンスを展開。

初見の観客もいただろうが、そんな人たちも一気に惹きつけるチャーミングな魅力を見せていった。対して上杉のソロステージでは、王道fripSideサウンドの「Distance to starry sky」を堂々と歌唱。とにかく凛とした歌唱は彼女の大きな魅力だし、その声が持つ説得力は彼女にしかないものだ。

個々に魅力的なボーカリストを擁する第3期fripSideだが、そんな2人のボーカルが合わさってのパワフルな楽曲というのも大きな魅力だ。シャープな鳴りのシンセを含む白熱のバンドサウンドが聴かれる「The Light of Darkness」や、スリリングなボーカルリレーも印象的な「Your Way」と、ロッキンな爆音のなかでしっかりと主張できるボーカルという構成が現在のfripSideの大きな武器になっている。

ここまでほぼ休みなくタフなステージを見せたあとのMCでは、八木沼が「fripSideというユニットの重い重い歴史があるなかで、色んな覚悟を持って色んな努力をして、fripSideのボーカルとして成長してくれているなと、お父さんは強く感じています。ありがとう」とコメントした。それに対して上杉が「私たちも長い歴史の一部として、このステージに立てたことがすごく嬉しく思っています」と言えば、阿部も「angelaさんが第4期と言っていましたけど、私たちまだまだ譲る気はありませんよ!」と頼もしい言葉を残した。そのあとは第3期のテーマを刻み込んだ「infinite Resonance」を熱く聴かせ、最新シングルにして現在のfripSideのライブアンセムにもなりつつある「Red Liberation」へと繋げる。これこそが今のfripSideであると宣言する力強いサウンド、そしてこの先の未来を大きく期待させるパフォーマンスを残して3rd Phaseのステージは幕を閉じた。

次ページ:あの日残された、声という忘れ物を取り戻しに――fripSide 2nd Phaseは

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