リスアニ!WEB – アニメ・アニメ音楽のポータルサイト

REPORT

2023.12.27

ファンと共に築いてきた10年を歌で振り返る。“南條愛乃 10th Anniversary Live -FUN! & Memories- supported by animelo”の2日目“Memories”公演で見えた、南條愛乃ソロワークス10年の軌跡、そしてファンへの感謝の想い。

ファンと共に築いてきた10年を歌で振り返る。“南條愛乃 10th Anniversary Live -FUN! & Memories- supported by animelo”の2日目“Memories”公演で見えた、南條愛乃ソロワークス10年の軌跡、そしてファンへの感謝の想い。

声優の南條愛乃による、ソロ活動10周年を記念したワンマンライブ“南條愛乃 10th Anniversary Live -FUN! & Memories- supported by animelo”が2023年12月23、24日に、彼女の地元である静岡県の、富士市文化会館 ロゼシアター 大ホールにて行われた。“FUN!”と称したDAY1は、文字通り彼女とファンの強い結びつきを感じさせる、熱く盛り上がる楽曲を中心に行われたが、対してDAY2となる”Memories”では、彼女の真骨頂でもある歌を聴かせるバラードを中心としたエモーショナルな楽曲中心と、セットリストを大幅に変えての構成となった。そこで見えてきた彼女の10年とはなんだったのか。同時に掲載された”FUN!”のレポートと合わせて読めば、その本質に触れられるはずだ。

※1日目“FUN!”のライブレポートはこちら

PHOTOGRAPHY BY 江藤はんな(SHERPA+)
TEXT BY 澄川龍一

DAY2は、光に満ちたステージで優しく、丁寧に10年を辿る

熱狂と大歓声に彩られた、言い換えれば非常にタフだった“FUN!”の翌日、会場の富士市文化会館 ロゼシアターは昨日と変わらずライブへの期待感に溢れていた。彼女がこれまで様々な場所で発言してきたとおり、この“FUN! & Memories”は2日間でそれぞれ異なるステージが見られるということを多くの観客は知っている。昨日の熱狂を経てどんなステージを見られるのか、そうした緊張感というものもこの日の開演前には感じられた。

開演時刻になり会場が暗転すると、昨日と同じように水の中を泡立つSEが聴かれ、ステージ上の幕がゆっくりと左右に引かれる。いつもの布陣にかつてのメンバーだった森藤晶司(key)を加えた昨日と同じ編成のバンドメンバーがスタンバイするなか、流れてきたのはデビューミニアルバム『カタルモア』の冒頭に収録された小曲「blue」だった。昨日は10周年記念作『ジャーニーズ・トランク』のオープニングである「blue -青の記憶-」だったが、10年の中での現在地を示す幕開けの“FUN!”に対して、この日は始まりを示す「blue」からのスタートとなった。いずれにせよ、昨日とは異なるステージになるというのはここからも伺える。そして森藤のピアノに導かれるように南條愛乃がステージに現れ、中央で歌い始めたのは、こちらも『カタルモア』に収録されたバラード「光」だ。昨日と変わって赤くドレスアップされたステージ上で、昨日と同じく白い衣装に身を包んだ彼女は、こちらも優しく包み込むような歌声をしっとりと響かせていく。バンドの演奏もタイトながら、彼女の感情を際立たせるようエモーショナルな鳴りをしている。それを観客は着席したままじっと聴いている。ライブのスタートからゆったりとした始まりを告げる滑り出しだったが、それがこの日のスタンダートであり、南條愛乃の大きな魅力の1つである“バラードで聴かせる”ことを示すものだった。

 

楽曲が終わり、昨日とは打って変わって歓声ではなく大きな拍手が鳴り響く。これもまた昨日とはことなる光景だし、以降もこうした観客の反響は続く。ステージ上のパフォーマンスも大きな変化があったと同時に、それを見つめる観客もまた、昨日と違ったこの日の楽しみ方を感じ取ったようである。そこから続いて佐々木のピアノから、南條の1stシングルとなるバラード「君が笑む夕暮れ」へと続く。会場のライティングや客席が、夕暮れ時のような淡いオレンジ色で統一されるなか、切ないボーカルがドラマチックに響きわたる。「光」にしてもこの曲にしても、やはりこうしたバラードが彼女のキャリア初期には印象に残っていた。そんな10年前の想いにふけるような瞬間を経て、最初のMCでは、「今日は“Memories”ということで、より振り返るような」セットになると語る南條。お次は、星野が使っていたハイチェアーを拝借して、自身も座りながら「今日もいい天気だよ」を披露。ステージ中央には傘をさしたMaiMaiとAkanekoのダンサー2名が彩る。そうした動のダンサーに対して、それを傍で座って見つめながら歌う静の南條、という構図がまた面白い。ちなみに、この日の構成や演奏、もちろん南條のパフォーマンスは昨日とがらっと変わっていたが、ダンサーの見せ方も当然変化が見られ、そうした全体の見せ方の違いも非常に興味深いものがあった。

そうしたゆったりとした曲が続いてくこの日、この時点で夕暮れから雨、のち晴れといったような、季節や天候の移ろいが表現されているような印象が残った。それはまるで、移ろいゆく光景をこの10年という時間になぞらえているようにも感じられていて、それをゆったりとした曲調で丁寧に、じっくりと10年を辿るように歌っている南條……とも感じられる。そうした感慨のなか歌われたのはオリジナル楽曲のメドレー。まずは「黄昏のスタアライト」のカップリングとなった「優しくつもる言葉の花」。“青く晴れた空に思った”というフレーズで始まるこの曲も、移ろいゆく時間というものを感じさせる。そこからクリスマスイブというこの日にぴったりでもある「リトル・メモリー」へと続くと、南條はゆったりとしたリズムに乗せて、時折マイムを交えながら会場を歩く。そこからキラキラとしたサウンドの「Gerbera」では観客と一緒に手を振りながら高く伸びる歌声を聴かせた。

 

メドレーのあとのMCでは、「リトル・メモリー」から、6年前のクリスマスに行われた5周年ライブを思い出を語る南條。こうしてまた“Memories”を想起させるエピソードを聴かせたあとは、地元・静岡での開催もあり披露したかったという「7月25日」を披露。最初の“ずっと続いてた 昨日の雨上がり”という歌い出しからグッと引き込まれる。明るく照らされたステージも相待って、優しくも温かく、またどこか慈悲深くもあるようなボーカルが聴こえ、素晴らしいパフォーマンスを展開する。ピアノのイントロから始まる「and I」では、ほんの少しリズムをラフにした歌い方が印象的で、それがまた涙腺を刺激する。そうしたボーカルを聴かせる楽曲を経て、今度は懐かしいMVを背景に「光のはじまり」へと続く。一転してアッパーなサウンドに白い光で埋め尽くされ客席も、躍動感溢れる南條の歌声に歓声を送っていた。

前半最後の楽曲に行く前に、MCで「まだライブでやったことのない曲がありまして」と話す南條。「できるかなー。緊張するね」とそわそわしながらも森藤のピアノから始まった「It’ll be dawn soon.」では凛々しい表情を見せ、空間的なサウンドのなかで実に幻想的なボーカルを聴かせる。このステージがまた絶品で、コンテンポラリーダンス調の振り付けのダンサーを両脇に従えて、またフレッシュなステージを見せていった。

次ページ:様々な想いを胸に歩いた10年。きっとその先にも刻まれていく“Memories”たち

SHARE

RANKING
ランキング

もっと見る

PAGE TOP