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REPORT

2023.10.16

大きな変化の中で歌い続けた先に待っていたのは目標としていた大舞台――。ASCA、デビュー5周年ツアー“ASCA 5th ANNIVERSARY TOUR 2023 −ⅤⅤⅤ−”を振り返る

大きな変化の中で歌い続けた先に待っていたのは目標としていた大舞台――。ASCA、デビュー5周年ツアー“ASCA 5th ANNIVERSARY TOUR 2023 −ⅤⅤⅤ−”を振り返る

ASCAのデビュー5周年ツアー“ASCA 5th ANNIVERSARY TOUR 2023 −ⅤⅤⅤ−”のファイナル公演が、10月6日、東京・新宿BLAZEで開催された。ASCA自身がライブのMCで語ったところによると、ライブのサブタイトルに冠された“ⅤⅤⅤ(読み方:ファイブファイブファイブ)”とは、5周年を象徴すると同時に、“人生の転換期”を意味するエンジェルナンバー“555”にあやかって名付けたものだという。今年2月に声帯ポリープの摘出手術を受け、“新しい喉”と向き合いながら歌う彼女にとって、今はまさに転換期。ASCAは5周年という節目を越えて、どのような変化を遂げようとしているのか。その方向を指し示すのが、今回のライブだった。

PHOTOGRAPHY BY 草刈雅之
TEXT BY 北野 創

BURNOUT SYNDROMES熊谷との新曲コラボも!熱気渦巻くライブ前半戦

初日の大阪・ umeda TRAD、ASCAの地元でもある愛知・SPADE BOXと、東名阪のライブハウスをバンドと共に回ってきた今回のツアー。最終日ももちろんオールスタンディングで、新宿BLAZEのフロアは立錐の余地もないほどの賑わいに。まずはサポートバンド=AS課のSaku(g)、中村 圭(b)、関口孝夫(ds)、重永亮介(key)が入場してスタンバイすると、続いて袖口にゴージャスなフリルの付いた衣装を纏ったASCAが登場。同柄の布で華美に装飾したマイクスタンドの前に立つと、一発目からライブの鉄板曲「RESISTER」を披露して、一瞬で会場の熱気を沸点まで引き上げる。そこから間髪入れず歌ったのは「セルフロンティア」。彼女のキャリアに欠かせない『ソードアート・オンライン』シリーズ関連のタイアップ曲を冒頭から惜しみなく畳みかける。

それら立ち上がり2曲のアッパーな熱を引き継ぎつつ、バンドが演奏のテンポをやや落とすと、ASCAは会場に向けて「みんな、声出したいよね!」と煽って、ハード&ワイルドなロックチューン「NO FAKE」に突入。彼女が敬愛してやまない阿部真央が書き下ろしたこの楽曲、この5年で明らかに厚みを増したASCAの歌声(特に低中音域)がよく映える。ASCAはステージの上手・下手に備え付けられたお立ち台に上がって激しい身振りも加えながら歌唱。オーディエンスも熱狂的な声とクラップで応酬する。ラストの「Say!」(ASCA)、「NO FAKE!」(観客)というやり取りは、“声と声”というよりも、もはや“魂と魂”のぶつかり合いといった様相だ。

続く「regain」も阿部真央が提供したナンバーで、“妥協は要らない”というフレーズのリフレインとASCAの絡みつくような歌声でディープに幕を開けつつ、激しいロックンロールに展開。Sakuがステージ前に躍り出てギターソロを披露した際には、ASCAも背中合わせになってノリノリに。あらゆる感情を糧にして突き進むような、体当たりの歌声とパフォーマンスで魅せていく。MCパートで大きく声を上げて盛り上がるフロアを見て、「楽しそうで嬉しい」と声をかけたASCAは、続いて今回のツアーのために制作したという新曲「眠くて眠くて本当に無理です。」を披露。カッティングギターが牽引するファンキーなグルーヴと、ASCAのときに気怠さも感じさせる艶やかな歌声が印象的なこの楽曲、「完成させるためにはみんなの手が必要です」とのことで、社員(※ASCAのファンネーム)たちはASCA社長の合図に合わせてクラップをして共に楽曲を作り上げていく。

ASCAは「まだまだ一緒にクラップを楽しんでいきましょう!」と呼び掛けると、シーズン的にもぴったりの軽快なナンバー「金木犀」を歌唱して、引き続きファンとの手拍子を使った交流を楽しむ。そして同曲をワンコーラス歌い終わったところでバンドが演奏テンポを一気に落として、てにをは「ヴィラン」のカバーへと移行。意表を突いたメドレー展開に客席が沸くなか、さらにカンザキイオリ「命に嫌われている。」のカバーへと展開し、クリアで透明感に満ちたA・Bメロからサビの激情的なパート、ラストの“生きて、生きて、生きて、生きて、生きろ”という心からの叫びに至るまで、変幻自在の歌声でシンガーとしての表現の多彩さを見せつけた。

そして、ここからは音楽家・梶浦由記との交流で生まれた2曲を。まずはTVアニメ『ロード・エルメロイⅡ世の事件簿 -魔眼蒐集列車 Grace note-』特別編の主題歌「君が見た夢の物語」。梶浦が手がけた同アニメの劇伴より、メインテーマとなる楽曲のメロディを引用した妖しく幻想的なアップナンバーだ。ASCAは艶味を帯びたボーカルでその世界観を表現していく。続いて、梶浦とASCAの初邂逅となった同アニメのEDテーマ「雲雀」をしっとりと歌い紡ぐ。

ここで再びMCパートに。ASCAが「よくぞ歌舞伎町という修羅のような場所を掻き分け、辿り着いてくれました」と呼び掛けると、ファンは“修羅”という言葉に敏感に反応。ASCAもニヤリとして、「“修羅”と言えば、素敵なバンドとのコラボ楽曲、聴いてくれましたか?」と、BURNOUT SYNDROMESとのコラボレーションで生まれた新曲「KUNOICHI」をアピールする。ツアーの大阪、愛知公演でも披露されたこの楽曲、ファイナルの東京公演では、なんと楽曲を書き下ろしたBURNOUT SYNDROMESのボーカル・熊谷和海をゲストに迎えて2人で歌唱することに。ステージに呼び込まれた熊谷は「ASCAさんのライブ、(ファンとの)雰囲気がいいですよね」と絶賛。また、相手のいる男性と彼に想いを寄せる女性の恋愛模様を“落ち武者”と“くノ一”になぞらえて描いた本楽曲の歌詞の真相について、ASCAが熊谷に直撃する場面も。SNSでは女性ファンから「この“落ち武者”、クズすぎん?」という意見が多く見られるものの、熊谷としては男性側のピュアな気持ちも描いたつもりだったと語る。その会話を受けて披露された「KUNOICHI」は、熊谷の生歌が合わさることで男女2人の心情の機微をより細かに表現しつつ、和の旋律とダンスミュージックの要素が合わさった楽曲として、フロアの熱気を“秘めた恋心”のように熱く燃え上がらせた。

「今思うのは、歌い続けること」――終わらない物語を目指して

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